レビュー:山崎 ヘビリーピーテッド 2013 教育的なウィスキー

山崎 ヘビリーピーテッド 2013 (YAMAZAKI HEAVILY PEATED 2013)を飲んだ。56点。
全国で3,500本限定で出されるものだ。国内のウィスキー市場で3,500本は、そこそこ見かけるレベルだ。
山崎の中でも、ピート香の効いた原酒を厳選したものらしい。

全国限定3,500本 山崎ヘビリーピーテッド2013

ピートとはなにか?
ウィスキーは原料のモルトを乾燥させるとき、温風を必要とする。その温風をつくるのに、スコットランド、とりわけアイラ島ではピート(泥炭)という、アイラ島ではそこらへんを掘ったら出てくる手近な燃料を使う。この燃料のピートがウィスキーに独特の芳ばしさ、くせになる香味をもたらすのだ。

まろやかで知られる山崎が、ピートをヘビーに効かせた・・・さてはてその香味は・・。


【評価】
グラスから立ち上る香りは、フルーティ、なかでもベリー系だ。ピーティ(ピートの芳ばしい香り!)だが、どこまでもフルーティ。
グラスを傾け口に含めば、柔らかく樽香、アルコールの刺激、ほのかに香るピート。スパイシー。穏やかでふくよか。
山崎好きの人がピートとは何かを知るのに最適なウィスキー。おそらくサントリーが山崎好きの人に向けた“教育的ウィスキー”だろう。(限定の山崎ミズナラもそうだ)こういったサントリーの飲み手を開拓する、育てる意欲は素晴らしい。ただし、それ以上のアピールは感じられない。ピートはヘビリーではなく、ややピート、ぐらいの感じだ。

【Kawasaki Point】
56point
※この点数の意味は?

【基本データ】
銘柄:山崎 ヘビリーピーテッド 2013 (YAMAZAKI HEAVILY PEATED 2013)
地域:山崎、大阪 YAMAZAKI, OSAKA
樽:Oak, Mizunara, オーク、ミズナラ
ボトル:Distillery Bottle, オフィシャルボトル

それほど「ヘビリー」ではないが、山崎の中ではピーティ

新品のボトル。くすんでいるわけではなくそういう印刷。

ほのかに香るピート。スパイシー。穏やかでふくよか。

大阪・京都の天王山のふもと、名水で知られる山崎蒸留所の場所を地図で確かめてみて。
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映画のレビュー:『天使の分け前』 世界初のウィスキー映画

映画 『天使の分け前』(Angels' Share)を見た。小気味よい展開。2013年カンヌ映画祭審査員賞受賞。
世界的にも珍しいスコッチ・ウィスキーを前面に押し出した映画だ。
といっても、スコッチ・ウィスキーをつくろう!とか、ウィスキーをめぐる愛憎劇とか、そういう類のものではない。この映画でのウィスキーは舞台装置であり、“きっかけ”なのだ。(だからウィスキーを知らない人にもオススメできる)

『天使の分け前』公式画像。引用

といっても、蒸留所の見学ツアーのシーンや、たくさんの樽の眠る貯蔵庫のシーン、テイスティング、オークションのシーンなど、ウィスキーに興味がある人やウィスキー好きの人が「ニヤッ」とすることは間違いない。ウィスキー評論家のチャールズ・マクリーン(雑誌「ウィスキー・マガジン」創始者)が、ウィスキー評論家の役でかなりガッツリ出演していたことは驚きだ(しかも演技も上手かった・・)。

ではどういったストーリーなのか?
その詳細に言及してしまうと、シンプルなだけに即ネタバレとなる。
全編を通して感じられるのは、イギリス映画的なシニカルなユーモア。皮肉が効いてるっ!ってやつだ。
ウィスキーなどぜんぜん知らない荒くれ者が(映画の中の表現では「クズ」)が主人公で、実はよい鼻を持っていることを発見する。・・・といっても、彼が隠れた天才的なテイスティング能力を発揮し、更生する・・・・という単純な流れでなく、ウィスキーに興味を持つきっかけに過ぎない。

まずウィスキーは立ち直りの“きっかけ”を与える。彼女との間に子供ができて、今のままじゃダメだと立ち直ろうとし始める彼を導いてくれる良き指導者がいる。ハリーというオジサンだ。ワルたちの社会奉仕活動の取りまとめ役だ。このオジサンがなかなか良い味をだしている。主人公のロビーに子供が出来たことを知ると、「もらいものだが」といって、スプリングバンクの32年を棚からスッとだしてくる。いかにグラスゴーが舞台でも、スプリングバンクの32年が出てくるというのは、この指導者のハリーがウィスキー好きであることの良い紹介の仕方だ。

次にウィスキーは、主人公が小さな旅をするとき、人間のいろんな面を知る“きっかけ”を与える。
前半では主人公がいかに「クズ」かということが丁寧にリアリティをもって描かれている。この主人公目線でウィスキーをめぐる大人たちを映し出すことで、皮肉が効いてくる。希少価値の高いウィスキーが高騰していく一方で、本当にその味が分かるのか、といった“矛盾”や、正しいことと正しくないことの“ものの見方”が、印象づけられる。善と悪をハッキリ分けてしまうハリウッド映画にはない複雑性を奏でている。

最後は小気味よく締めくくる“きっかけ”としてウィスキーが最高の登場をする。
これはぜひ観てほしい。まさに『天使の分け前』だ。


この映画の感想を、ウィスキーの香味の表現に置き換えるなら、苦く、ビターで、ヒリヒリとする刺激を持ちながらも、まろやかな樽香、そして、ミントのような爽快な後味、やや長めのホワイトオークの余韻・・。といったところだろうか。
複雑な味わいだが、「クズ」と呼ばれる若者の状況に対する監督の愛情が感じられ、「善き指導者」への想いが明確に感じられる。そして、ウィスキーはブルジョアないしエリートと呼ばれる層が似合う飲み物ではなく(それはワインに任せておいて)、もっと幅広く人間に希望をもたらす飲み物であるという感覚も全体に流れている。


尚、日本の著名なウィスキー評論家の土屋守氏は「オークションで1億円を突破するようなウィスキーが“モルトミル”であるというのは、やられた!という感じ」という趣旨のことを書いていた。
ウィスキー好きの人向けの、ちょっとマニアックな話だ。


たまには映画をつまみに・・・、今宵もよいウィスキーライフを。


天使の分け前 [DVD]
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レビュー: ブルイックラディ X4+3 意外なウィスキー

BRUICHLADDICH X4+3(ブルイックラディ エックス4 プラス3)を飲んだ。68点。
かなり変わったウィスキーだ。「X4」は、なんと4回蒸留!そして「+3」は3年熟成という意味だ。(蒸留回数についての参考記事はこちら)。ブルイックラディ蒸留所のマスターディスティラリーであるジム・マッキュワン氏が“デザイナーズウィスキー”と名づけて世に問うシリーズのひとつ。

BRUICHLADDICH X4+3
(ブルイックラディ エックス4 プラス3)


【評価】
グラスから立ち上るのは、アンズの香り、蜂蜜漬けの梅。バニラ。煙。甘い香り。
グラスを傾けて唇から少量流し込めば、すっと入ってくるシェリー酒のような、木の酸味、後味が甘ったるくしびれる煙で不快ではない。まろやかだが、アルコールが上がってくる。
3年熟成でこの香味は意外だが、絶妙なバランスの粋なウィスキー。

【Kawasaki Point】
68point
※この点数の意味は?

【基本データ】
銘柄:BLUICHLADDICH X4+3(ブルイックラディ エックス4 プラス3)
地域:Islay, アイラ
樽:Oak, オーク
ボトル:Distillery Bottle, オフィシャルボトル

アンズの香り、蜂蜜漬けの梅




3年熟成でこの香味は意外だ
実験的なウィスキーを続々リリースしているブルイックラディ蒸留所の位置を地図で確かめてみて。

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レビュー:グレントファース1989 15年 SMWS 63.15 大人のミックスジュース

Glentauchers 1989 15yo SMWS 63.15(スコッチ・モルト・ウィスキー・ソサエティのグレントファース1989 15年熟成)を飲んだ。88点。SMWSは世界最大のウィスキー愛好家コミュニティ。会員しかそのボトルを買えないが、バーなどでは結構お目にかかる。今回のボトルは旧ラベル。





【評価】
グラスから立ち上る香りは、果実感。ミックスジュースのよう。しとやかで、大人のミックスジュース。甘く酔ってしまいそう。
グラスを傾け口に含めば、洋ナシ、赤いフルーツの果実と果汁、煙も感じるが、まるでワインのような果実感。後味に煙とスパイシーを残す。
複数種のフルーツの香りが調合されたウィスキー。

【Kawasaki Point】
88point
※この点数の意味は?

【基本データ】
銘柄:Glentauchers 1989 15yo SMWS 63.15(グレントファース1989 15年熟成)
地域:Highland, ハイランド
樽: 不明
ボトル:Scotch Malt Wisky Society スコッチ・モルト・ウィスキー・ソサエティ



SMWSのボトルには蒸留所名は書かれず、蒸留所コードが記されている。
グレントファースは63番。このボトルはこの蒸留所の15番目のリリース。

ワインのような果実感。大人のミックスジュース。スパイシーな後味



レビュー:スプリングバンク1973 18年 ラムカスク ~激しいドラマ~

Springbank 1973 18yo Rumcask(スプリングバンク 1973年 18年熟成 ラムカスク)を飲んだ。88点。
現在はほとんど流通していない、いわゆるオールドボトルである。さてはて香味やいかに。

1991年9月にボトリングされている

【評価】
グラスを傾け香りを味わえば、アルコールの刺激、甘みと重みの含まれた酸味、そして甘みの奥にうっとりする木の香り。清涼感もある。木に擦り付けたアッシュ(灰)だが、まろやか。雨上がりの草花。古い洋書の読書。永い時間を連想させる。
いよいよ口に含めば、うっとりする甘みの後に、スパイシーさが上がってきて、その後、アルコールが全体を覆い、すべての要素をまとめて、旨みと調和させる。
激しいドラマを見せるウィスキー。

【Kawasaki Point】
88point
※この点数の意味は?

【基本データ】
銘柄:Springbank 1973 18yo Rumcask(スプリングバンク 1973年 18年熟成 ラムカスク)
地域:Campbeltown, キャンベルタウン
樽:Rum Butt, ラム
ボトル:Distillery Bottle, オフィシャルボトル



今はほとんど蒸留所が残っていないキャンベルタウンという港町で、操業を続けるスプリングバンク蒸留所の位置を地図で確かめてみて。

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レビュー:ブルイックラディ ロックス 実験的なウィスキー

BRUICHLADDICH ROCKS(ブルイックラディ ロックス)を飲んだ。56点。

ブルイックラディ蒸留所は一度は閉鎖していたものの、ジム・マッキュワン氏が「なんとかならないか」と皆に頼まれ、2001年に蘇らせた、いわゆる「復活系蒸留所」だ。このジム・マッキュワンは、天才的なブレンド技術を持つことで知られるスター・ブレンダーだ。世界一のピートを効かせたウィスキー「オクトモア5」(※レビューはこちら)も彼の仕事。また、この蒸留所は昨年、レミーコアントロー社に買収されたが、ジム・マッキュワンが買ったときの値段の5倍で取引された。ジムは引き続き蒸留所にいるが、今年の8月に引退を予定している。

ボウモアでマスターブレンダーをやった後、地元のアイラ島のブルイックラディを復活させ、企業価値を5倍に高め、商業とアートのバランスを取り、引退を決めている男。毒舌でも知られ、自らのウィスキーをべた褒めする、ひとクセあるカッコいい男なのだ。

今回の「ロックス」はそのジムが「デザイナーズ・ウィスキー」と名づけ、世に放つシリーズ。ラベルにはブルイックラディの「18億年前の岩盤を通ってきた水を使用し・・・云々」の説明がある。アイラ島の地層ってなんだか古くて、世界から調査に来るみたい。それが味にどう影響するのかは・・不明。

金色のシールは「ジム・マッキュワン」のサイン

【評価】
グラスから立ち上る香りは、ニューポットかと思うほどの麦の酸味だが、割とまろやか。男性的。
グラスを傾け、口に含めば、まろやかかつ滑らかで、麦が分解されていく不思議な味わい。ミネラリー(鉱物感)。甘み、渋み、これらを支える構造がさりげなく、主張しないので、ひたすらこの麦とミネラルに集中できる。
実験的なウィスキー。(ウィスキーとしての点数は低いが、この実験的な姿勢は評価したい)

【Kawasaki Point】
56point
※この点数の意味は?

【基本データ】
銘柄:BRUICHLADDICH ROCKS(ブルイックラディ ロックス)
地域:Islay, アイラ
樽:Oak, オーク
ボトル:Distillery Bottle, オフィシャルボトル

ひたすら麦とミネラル

18億年前の岩盤を通ってきた水を使用。ウィスキー界でもっとも古い岩盤だ。・・と書いてある。


ブルイックラディ蒸留所は湾を挟んでボウモアの向かい側にある。地図で確かめてみて。

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レビュー:マルス モルテージ 3 plus 25 夏の果実と、麦の香り

MARS MALTAGE 3 plus 25(マルス モルテージ 3 プラス 25)を飲んだ。87点。

WWA2013(ワールド・ウィスキー・アワード)で「ベスト・ブレンデッドモルト」に選ばれたボトルだ。この「ベスト」は世界の最高賞ということで、WWAのベストはそれなりにすごい。(シングルモルト部門では「アードベッグ・ガリレオ」や、ブレンデッド部門では「響21年」がそれぞれベストに選ばれている)
このウィスキーをつくっているのは「マルス蒸留所」という蒸留所だ。ジャパニーズ・ウィスキーの中でも、サントリーやニッカに比べれば知名度は低い。今回の初受賞で、このボトルは一気に売り切れ、その他のボトルにも注目が集まっている。(ちなみに、当ブログ選出2012の最優秀賞は、同じマルス蒸留所の「駒ヶ岳1985」だ。こっちをエントリーしても面白かったと思う)

「3plus25」というのは、鹿児島で3年寝かしたあと、信州で25年寝かしました、という意味。結局28年熟成。あんまりウィスキーが「お引越し」することはないので、珍しいといえる。今回の受賞で改めて味わってみた・・・さて、その香りと味はいかほどか。

初エントリーで初受賞、おめでとう!



【評価】
グラスに鼻を近づければ、甘くふくよかな香り。うっとりする、木の酸味とスパイシーさが、アルコールに乗る。木造校舎と砂煙。川魚の燻製。
口に含めば、爽やかな夏の果実の甘み。熱く上がってくるアルコールが、ジリジリと麦芽のうまみを分解する。その後に、ノドで感じる甘み。
爽やかで奥深いウィスキー。

【Kawasaki Point】
87point
※この点数の意味は?

【基本データ】
銘柄:MARS MALTAGE 3 plus 25(マルス モルテージ 3 プラス 25)
地域:信州、Shinshu
樽:Oak, オーク
ボトル:Distillery Bottle, オフィシャルボトル





うっとりする、木の酸味とスパイシーさが、アルコールに乗る

爽やかで奥深いウィスキー



レビュー:トーモア1983 28yo SMWS 105.19 賛美歌にスパイスを

Tormore 1983 28yo SMWS 105.19(スコッチ・モルト・ウィスキー・ソサエティのトーモア1983 28年熟成)を飲んだ。86点。
SMWSは世界最大のウィスキー愛好家コミュニティである。スコットランドの首都、エディンバラに本部がある。会員しかその酒を買うことは出来ず、本当にウィスキー愛好家のための集団だ。ボトルも特徴的。華美ではなく、スッキリとそぎ落としたデザインで、蒸留所の名前は書かれておらず、番号でどの蒸留所の何番目のリリースのボトルであるかを示す。このストイックさが(例えばワインなどとは違った)、ウィスキーらしいカッコよさだろう。
そして必ずどのウィスキーにもタイトルがついている。今回のトーモアには、
‘神の御子は今宵しも’ ‘O Come All Ye Faithful’
というタイトルがついている。美しい賛美歌のタイトルだと思われるが、なぜこのウィスキーにこのタイトルなのか、正直、意味は分からない。しかし、これは詩なので意味が分からなくてよい。
さて、その香りと味はいかほどに。

華美ではなく、スッキリとそぎ落としたデザイン

【評価】
香りは刺激的。グレープフルーツを右手にもって、テーブルの上にはコンソメスープがある。スパイシーかつ、旨みのある香り。さらに辿れば、テールスープのスパイシーさだ。
口に含めば、一転してすっきりとした味わい。目が覚める!花々を感じる。濃縮されたうまみ。
確かに、賛美歌のような和声は感じるウィスキー。・・ただ、賛美歌よりもやや刺激的。

【Kawasaki Point】
86point

【基本データ】
銘柄:105.19 Yoichi Tormore 1983 28yo(トーモア1983 28年熟成)
地域:Highland, ハイランド
樽: 1stSherryHogg, 1度目のシェリー・ホグスヘッド
ボトル:Scotch Malt Wisky Society スコッチ・モルト・ウィスキー・ソサエティ

口に含めば、一転してすっきりとした味わい。目が覚める!

トーモアは「大きな丘」という意味。スコットランドのハイランド地域にあるその蒸留所の位置を、地図で確かめてみて。

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レビュー:モートラック2008 ザ・ファースト・ドロップ ~ウィスキー誕生前夜~

MORTLACH The First Drop 2008(モートラック ザ・ファースト・ドロップ 2008)を飲んだ。熟成していないで点数はつけず。
このウィスキーはいわゆる「ニューポット」というやつだ。ニューポットとは、樽に入れて熟成させる前のウィスキー。だから、液体はいつものあの琥珀色ではなく、透明だ。樽で熟成させてはじめてウィスキーと呼べるのだけれども、このニューポットは逆に「ウィスキー誕生前夜」を知ることが出来る通なアイテムといえる。(特にモートラックは「ジョニー・ウォーカー」の原酒として知られる)さて、ウィスキー誕生前夜の香りと味やいかに。




【評価】
香りは、麦の甘みと酸味。温度でいうなら“ぬる目”。麦を感じる部分は穏やかでロマンティックだが、同時に旨みより酸味が強いため、全体の香りのバランスは荒々しい。
恐る恐る口に含めば、強烈な麦の香りの主張。後味は穏やかな味わい。オイリーさ、粋なアルコール、ムンムンとした少し暑い日の麦畑。
ウィスキー好きのための麦の酒。(これが樽で熟成されてウィスキーとなるのだ)

【Kawasaki Point】
-point
※ニューポットは熟成させていないので、点数はつけない。

【基本データ】
銘柄:MORTLACH The First Drop 2008(モートラック ザ・ファースト・ドロップ 2008)
地域:Highland, ハイランド
樽:-
ボトル:Distillery Bottle, オフィシャルボトル

色は無色透明
麦を感じる部分は穏やかでロマンティックだが、
同時に旨みより酸味が強い

モートラック蒸留所の位置を地図で確かめてほしい。モートラックはゲール語で「お椀状のくぼ地」の意味。

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レビュー:アードベッグ ガリレオ 宇宙熟成記念ボトル

アードベッグ ガリレオ(ARDBEG GALILEO)を飲んだ。86点。
アードベッグがNASAのプロジェクトに協力したことがきっかけの、限定ボトル。だから名前が「ガリレオ」。別にこのウィスキーが宇宙で熟成されたわけじゃないが、そういう実験はしていて、「宇宙での熟成」がテーマらしい。そしてその実験にアードベッグの原酒が使われているとのこと。
尚、ウィスキー・マガジン社主宰のWWA(ワールド・ウィスキー・アワード)の2013年の、「ワールド・ベスト・シングルモルトウイスキー」に選ばれている。

名前が「ガリレオ」で、宇宙にウィスキーを送り出した記念ボトル・・・それだけ聞くと、敬遠しがちだが、さすがはラムズデン博士(アードベッグの責任者)。しっかりと仕上げてくる。
一瞬で売り切れたので、ほとんどの酒屋さんで今はもう在庫切れのはずだ。この3月に発表された2013のWWAの受賞ニュースの後でこのボトルが残っているバーがあれば、そこそこ貴重かもしれない。

アイラ島から飛び立っている・・

【評価】
グラスに鼻を近づければ、香りの高音部分のなめらかさと、花の蜜、海の潮。低音部分には、木の素朴さがある。香りだけでうっとりしすぎず、「飲んでみなよ」と誘われる感じ。
グラスを傾け唇から少量、流し込めば、口の中でピートが暴れるが、花の蜜がそれを覆う。花の蜜はピートを覆いはするが、密着はしない。その後味は美しく、ピートと蜜がそれぞれのメロディで、まるで対位法のように奏でられる。
煙の奥のアルコールが美しさをまとったウィスキーである。

【Kawasaki Point】
86point
※この点数の意味は?

【基本データ】
銘柄:アードベッグ ガリレオ(ARDBEG GALILEO)
地域:ISLAY, アイラ島
樽:Oak, Burbon, Marsala Wine,  オーク、バーボン樽、マルサラワイン樽
ボトル:Distillery Bottle, オフィシャルボトル



ワンちゃんも宇宙へ!
このあたりのユーモアが効いている

銀の箔押しのGALILEO(ガリレオ)

ゴールドに輝く色


宇宙に旅立った世界初のウィスキーをつくった蒸留所といえば?もちろん答えはアードベッグ。
そのアードベッグ蒸留所の位置を地図で確認してみて。

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レビュー:ストラスアイラ 12年 初心者も飲みやすいウィスキー

STRATHISLA 12yo(ストラスアイラ 12年熟成)を飲んだ。80点。
ストラスアイラといえば、有名な「シーバスリーガル」に使用されている。シーバスリーガルのキー・モルトだ。「キー・モルト」とは、そのウィスキーを構成する“主要なウィスキー”のこと。野球でいえば4番だし、サッカーでいえばエースストライカー、チェスでいえばキングといったところだ。
このストラスアイラを「初心者の方にもおすすめできるシングル・モルト」という声もある。まるでリンゴのような華やかな香りと味がするからだ。

ストラスアイラはシーバスリーガルのキー・モルトだ。

【評価】
グラスから立ち上る香りは、リンゴの蜜と酸味、アルコール刺激、ハチミツを2~3滴。
グラスを傾け口に少量含めば、樽の木の香りが華やぐ。樽の上に乗せられたリンゴ。滑らかでオイリー。
生チョコが合うウィスキー。

やや加水すると・・・ (まったく初めて飲む方は少し水を足してアルコールの刺激を消すといい)
香りは、さらにリンゴ。かじりたてである。種類はサンフジ。
飲むと、シェリー樽の香り、穏やかに入ってくるが、ぼやっと広がりすぎず、味のコンセプトは絞ってあるのが分かる。

さらに加水すると・・・
香りは、リンゴ飴。スパイス、シナモン。
飲めば、落ち着いた木の香り。その木にはリンゴの蜜が擦り付けてある。

【Kawasaki Point】
80point

【基本データ】
銘柄:STRATHISLA 12yo(ストラスアイラ 12年熟成)
地域:Highland, ハイランド
樽:Oak, Sherry,  オーク、シェリー樽
ボトル:Distillery Bottle, オフィシャルボトル

リンゴの蜜と酸味、アルコール刺激、ハチミツを2~3滴

ストラスアイラ蒸留所は1786操業。かなり古い部類。

ストラスアイラは、「アイラ川の広い谷間」を意味する。よくある「グレン~」のグレンよりもストラスは広い谷という意味らしい。この酒がどこで生まれたか場所をぜひ地図でも確かめてみて。

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レビュー:ダグラスレイン バルブレア17年 香りの素晴らしさは・・

Douglas Laing Old Malt Cask BALBLAIR 17yo (ダグラスレイン社 オールド・モルト・カスク シリーズ バルブレア 17年熟成)を飲んだ。66点。
スコッチ・ウィスキー映画『天使の分け前』にも登場するというので、バルブレアを飲んでみた。ダグラスレイン社というボトラーの17年。(ボトラーズボトルとは何かはこの記事に詳しい

バルブレア17年 ダグラスレイン社

【評価】
グラスに鼻を近づければ、麦の酸味があるのに爽やかな木の落ち着き。若い木の木材。麦の甘みと主張。不思議なまとまり。すっぱすぎない。
口に含めば、アルコールの熱さと木のえぐみ、麦の酸味。スッと引いていくが、それだけで終わる。えぐみが後味。
香りの素晴らしさは特筆に値するウィスキー。

【Kawasaki Point】
66point
※この点数の意味は?

【基本データ】
銘柄:Douglas Laing Old Malt Cask BALBLAIR 17yo (ダグラスレイン社 オールド・モルト・カスク シリーズ バルブレア 17年熟成)
地域:Highlanda, ハイランド
樽:Oak, Sherry,  オーク、シェリー
ボトル:Douglas Laing, ダグラスレイン社

麦の酸味があるのに爽やかな木の落ち着き

シェリー樽の割りに明るい色
香りは特筆に価する


スコットランドでもかなり古い蒸留所のひとつと言われるバルブレア蒸留所の位置を地図で確かめてみて。

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レビュー:カリラ15年 80年代 熱く、端正で、馥郁たる・・

Caol iLa 15yo '80s(カリラ 1980年代 15年熟成)を飲んだ。84点。
いわゆるオールドボトルである。オールドボトルって旨いんですか?という質問がある。これは難しい質問だ。一般的に言って、オールドボトルは香味の点では新しいものに比べて不利である。保存状態によりその味わいは大きく異なるからだ。しかし「今はもうない香味」がそこにある限り、味わってみたいという魅力は尽きない。

80年代のカリラ

【評価】
グラスに鼻を近づければ、華やかな奥にほんのり焦がした麦の酸味、少し鼻に突撃するアルコール、主張があるのにふくよか。したがって奥行きがある。
口に含めば、熱く主張するアルコールに、焦がし麦の香りがすぐに追っかけてくる。熱く、端正で、馥郁たる後味のバックボーンがある。ピーティさは消えていないが、溶かされて、ほかの香りと融合している。
麦と馥郁たる香りのウィスキー。

【Kawasaki Point】
84point
※この点数の意味は?

【基本データ】
銘柄:Caol iLa 15yo '80s(カリラ 1980年代 15年熟成)
地域:Islay, アイラ
樽:Oak, Bourbon,  オーク、バーボン
ボトル:Distillery Bottle, オフィシャルボトル

「今はもうない香味」がそこにある限り

主張があるのにふくよか。したがって奥行きがある。

麦と馥郁たる香りのウィスキー


イギリスはアイラ島のカリラ蒸留所。カリラという言葉は海峡のことを指している。

予告:レポート:余市蒸留所

先日、余市蒸留所を見学し、ウィスキー作りの現場と、日本のウィスキーの父、竹鶴政孝の住まいに触れてきた。わざわざ、ウィスキーアンバサダーの箕輪さん、ウィスキーアドバイザーの小原さんにご案内いただき、現工場長の杉本さん(前マスターブレンダー)にもご挨拶し、お話を伺うことができた。
近々、レポートをUPする予定である。

貴賓室から余市蒸留所を見る。一般には非公開の貴重な体験だった。

蒸留所は素晴らしいが、現実的にすべての人が訪問できるわけではない。
このブログでの蒸留所レポートが、「行きたいがすぐには行けない」という人にとって有益な情報源となれば幸いである。楽しみにしていてほしい。