レビュー:シングルカスク駒ケ岳1988 25年 スパイスにドラマを・・・

シングルカスク 駒ケ岳1988 25年熟成(Single Cask KOMAGATAKE 1988 25yo)を飲んだ。89点。
「駒ケ岳」は信州はマルス蒸留所の主力ブランドだ。蒸留所が20年以上の長熟ものを「シングルカスク(=樽だしそのまま、ブレンドなし)」で出すときは、「これはよくできてますよ!ウチの蒸留所の自慢のひと樽です」という自信の表れだ。
さてはて、その香味やいかに。

駒ケ岳1988 25年熟成

【評価】
グラスから立上る香りは、スパイシーなシェリーの香り、しっかりとでた渋みと、すこしの焦げ。どっしりとした安定感、そして清涼な空気。
口に含めば、すぅーっと入ってきて、スパイスの花火が、時間差でさまざま弾ける。そのあとの渋みは、落ち着きを取り戻す鍵となっている。花火の余韻を漂わす夜の静寂。
翌朝、山奥に流れる清涼な小川のほとりに咲く色とりどりの小さな花々。
そのスパイスにドラマを持っているウィスキー。

【Kawasaki Point】
89point

【基本データ】
銘柄:シングルカスク 駒ケ岳1988 25年熟成(Single Cask KOMAGATAKE 1988 25yo)
地域:信州、Shinshu
樽:Oak, オーク
ボトル:Distillery Bottle, オフィシャルボトル

マルス蒸留所のエンブレム(紋章)

山々の稜線


1988-2013 このカスク(樽)からは468本のウィスキーが生まれた

スパイスの花火が、時間差でさまざま弾ける

山奥に流れる清涼な小川のほとりに咲く色とりどりの小さな花々

信州はマルス蒸留所の位置はここ。地図を拡大して確かめてみて。
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レビュー:ブナハーブン1995 6年 リバースタウン 夜空を見上げた・・・

BUNNAHABHAIN 1995 6yo RIVERSTOWN(リバースタウンのブナハーブン1995 6年熟成)を飲んだ。87点。
著名なウィスキー評論家でもあるロビン・トチェック氏のリリーするシリーズ。

リバーストーンのブナハーブン1995 6年

【評価】
グラスから立上る香りは、穏やかでとろけるような優しさ、どこまでも優しい。煙と、夏野菜のようなみずみずしさ。イチジクの甘酸っぱさ。思わず飲み込んでみたくなる。
口に含めば、甘い木苺の香りがパッと広がって、煙は主張し過ぎないまでもこのみずみずしさを下支えする。
こころほぐされ、夜空を見上げたときのような静寂に出逢う、そんなウィスキー。

【Kawasaki Point】
87point
※この点数の意味は?

【基本データ】
銘柄:BUNNAHABHAIN 1995 6yo(ブナハーブン1995 6年熟成)
地域:Islay, アイラ
樽:Oak, Bourbon, オーク、バーボン
ボトル:RIVERSTOWN(リバースタウン)

6年熟成、樽出しそのままの60.1%


1995-2012

イチジクの甘酸っぱさ。思わず飲み込んでみたくなる。

夜空を見上げたときのような静寂に出逢う

ブナハーブン蒸留所はだいたいこのあたり。アイラ島とジュラ島との間の海峡。地図で確かめてみて。

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レビュー:ラフロイグ1998 11年 ハイスピリッツ 溢れるような力強さ

Laphroaig 1998 11yo by High Spirits Natural Cask Strength Selection(ハイスピリッツ社のナチュラル・カスク・ストレングス・セレクションのラフロイグ1998 11年熟成)を飲んだ。85点。

ウィスキーに佇まいを感じることがある

【評価】
目を閉じグラスをそっと鼻に近づければ、その香りはあっさりとして柔らかい。みずみずしく若々しい。森の泉のような透明感と深さ。
口に含めば、濃縮のグレープフルーツジュース。甘くみずみずしい煙。木の熟成した深みはないが、溢れるような力強さがある。
静謐さと情熱がバランスするウィスキー。元気さを取り戻す。

【Kawasaki Point】
85point

【基本データ】
銘柄:Laphroaig 1998 11yo(ラフロイグ1998 11年熟成)
地域:Islay, アイラ
樽:Oak, Bourbon, オーク、バーボン
ボトル:High Spirits(ハイスピリッツ社)


その香りはあっさりとして柔らかい

ナチュラル・カスク・ストレングス・セレクト

甘くみずみずしい煙

静謐さと情熱がバランスするウィスキー






レビュー: サマローリズ ピーティー1993 20年 噛み締めるような味わい

SAMAROLI 'S PEATY 1993 20yo(サマローリのピーティ1993 20年熟成)を飲んだ。83点。
アイラ島のラフロイグ、ボウモア、アードベッグの個性溢れる原酒をブレンドした1本。今回は開けたて。

サマローリのピーティ1993 20年熟成

【評価】
グラスを傾ければ、その香りは、ぼわっと広がる柔らかい煙とバラの花、鋭く迫る柑橘を伴った煙。古い樫の木、枯れた草。ふかふかの土。スモークチーズ。
口に含めば、するっと滑らかに入ってきて、さらっと広がる。トゲのある主張がノドに届く。先ほど香りで感じた煙が溶け合っており深みとなる。
熱く、あっさりとしている。確かめようとして噛みしめるような味わいのウィスキー。

※面白く、おいしいが、わざわざこれらをブレンドしなくてもいいのに、という気もする。サマローリの粋な遊びなのだろうか。

【Kawasaki Point】
83point

【基本データ】
銘柄:SAMAROLI 'S PEATY 1993 20yo(サマローリのピーティ1993 20年熟成)
地域: Islay, アイラ島
樽: Bourbon, Oak  バーボン、オーク
ボトル:SAMAROLI, サマローリ

ボトルのデザインはなかなかイカしてる

柔らかい煙とバラの花、鋭く迫る柑橘を伴った煙

煙が溶け合っており深みとなる

噛み締めるような味わい






レビュー:オクトモア06.1 スコティッシュバーレイ ただし初心者には・・・

OCTOMORE 06.1 SCOTTISH BARLEY(オクトモア 06.1 スコティッシュバーレイ)を飲んだ。85点。
オクトモアは今や「世界でもっとも煙臭い(ピーティな)ウィスキー」として知られている。フェノール値は世界最大で、オクトモアの記録を、新しいオクトモアが塗り替えているという状態だ。
意外にも飲み口は柔らかいのだが・・・、さてはて今回のオクトモアの香味やいかに。

オクトモア06.1
【評価】
グラスから立上るのは、酸味と煙!甘く脳髄を溶かす香り。ああ、血液の中に溶け込むに違いない。くらくらするほどの。
口に含めば、不思議。柑橘の後味。思わずふた口目。ふくよかな煙が膨らみながら、いや、その実、爆発しているのかもしれない、体の中に入り込む。
暖炉の積まれたレンガに手を掛ける、スス臭さの温かみ。すごい煙体験のウィスキー。

※ただし初心者にはお勧めできない

【Kawasaki Point】
85point
※この点数の意味は?

【基本データ】
銘柄: OCTOMORE 06.1 SCOTTISH BARLEY(オクトモア 06.1 スコティッシュバーレイ)
地域: Islay, アイラ島
樽: Bourbon, Oak  バーボン、オーク
ボトル:Distillery Bottle, オフィシャルボトル


甘く脳髄を溶かす香り。

スタイリッシュで主張のあるボトル

ふくよかな煙が膨らみながら・・・

すごい煙体験のウィスキー。


レビュー:ダルウィニー15年 角の取れたなめらかな・・・

Dalwhinnie 15yo(ダルウィニー15年熟成)を飲んだ。85点。
標高330mにあるという蒸留所は、スコットランドの中でも「最も高いところにある蒸留所のひとつ」だそうだ。シングルモルトの味わいに、蒸留所の立地は大きく関連しているといわれる。
さてはて、その香味やいかに。

ダルウィニー15年熟成

【評価】
グラスから立上る香りは、うっすら、ほんのり。ガラスの器に水を張って、小さな花びらを散らしたよう。わずかに煙がおおう。
グラスを傾けそっと口に含めば、ニスを塗っていない長い木のカウンターを、手でさすっているかのような、優しい印象。カウンターはまっすぐではない。手で触るとわかるでこぼこがあり、それも角が取れてなめらかで触感の楽しさになる。
美しく静かに飲めるウィスキー。

【Kawasaki Point】
85point

【基本データ】
銘柄: Dalwhinnie 15yo(ダルウィニー15年熟成)
地域: Highland, ハイランド
樽: Bourbon, Oak  バーボン、オーク
ボトル:Distillery Bottle, オフィシャルボトル 

ボトルキャップのマーク


The Gentle Spirit

明るい黄金色だ

紋章の左下に描かれているのは山だろうか


美しく静かに飲めるウィスキー

たまにはアップの画で。ダルウィニー蒸留所はかなりのどかな場所にあるようだ。地図を拡大したり縮小したりして確かめてみてほしい。
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レビュー:ブレア・アソール 12年 UD花と動物 こころそのものを・・・

BLAIR ATHOL 12yo UD Flora and Fauna Series(UD社の花と動物シリーズ ブレアアソール12年熟成)を飲んだ。89点。
ブレアアソールはかなり古い部類の蒸留所だ。このボトルはいわゆる「花と動物シリーズ」で、ラベルにはカワウソが描かれている。きっとこの蒸留所の立地に由来しているのだろう。
さてはて、肝心の中身の香味やいかに。

カワウソと濃いシェリーの色あい

【評価】
グラスから立上るのは、穏やかで、毛布でこころそのものを包み込むような優しい香り。深みを持っている。木の酸味がさわやかに調和しており、「行っておいでよ」と背中を押されている気分になる。
口に含めば、甘い飴が舌の上でとろける。スパイスが夜に読む物語のようで、わくわくした気持ちにさせる。
週末に別荘に訪れたような解放感と、安らぎを与えてくれるウィスキー。

【Kawasaki Point】
89point
※この点数の意味は?

【基本データ】
銘柄: BLAIR ATHOL 12yo(アベラワー 1994 18年熟成)
地域: Highland, ハイランド
樽: Sherry, Oak  シェリー、オーク
ボトル:UD Flora and Fauna Series(UD社の花と動物シリーズ)

ブレアアソール12年熟成



毛布でこころそのものを包み込むような優しい香り



甘い飴が舌の上でとろける

週末に別荘に訪れたような解放感と、安らぎを。

ブレアアソール蒸留所の位置を地図で確かめてみて。

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書評:北のライオン 大人のウィスキー漫画

もしも、ウィスキーのことを好きになる、ちょっとほろ苦くて、大人の、キレイな一枚一枚の絵がつらなった、粋なストーリーの漫画があったなら・・・?

北のライオン(1)
北のライオン(1)

ぜひ紹介したい漫画がある。『北のライオン』は、まさに冒頭に挙げたような要素のつまった漫画だ。コミック版はA4版で全ページフルカラー、わせせいぞうの綺麗な絵をじっくり眺めるのにふさわしいサイズだ。(Kindle版もあるけれど、この作品に関しては印刷の美しさが意味をもってくると思う。今ドキちょっと珍しい・・・)

毎回、ひとつのウィスキーがさらりとおシャレに登場する。決してウィスキーのウンチクが主体の漫画ではない。ウィスキー自体と、それよりももっとウィスキーを取り囲む人々への愛にあふれている作品だ。

主人公のライオンは、日本語が話せない。Keiko's Barという、亡き妻の名をとったバーを営んでいる。バーを訪れる人々のさまざまなストーリーが、どのコマをとっても額に入れて壁に飾りたいような絵で、しっとりと展開していく。

さびしい男の背中・・・、かつて愛した恋人・・・、きっぱりとした強い女の飲み方・・・、大和撫子な女の小唄・・・、故郷を想う人の・・・・

どの客人に対しても、ライオンは多くを語らず、いつもやさしい。
実際、現実のバーでも多くの「ちょっと良い話」がたくさんあると思うが、それらは毎夜、当事者の記憶の中だけに留まり生きつづけていく。だからバーという場所は、初心者にはわかりづらく、当事者にとっては大切な場所になる。
この作品は、そういったほとんど世に出ることのないバーでの「良い話」や、「大人の美しさ」みたいなものを、ライオンのKeiko's Barへ美しく投影しているのだろう。


ウィスキー好きに贈りたい秀逸な作品。


北のライオン(1)
北のライオン(1)




レビュー:アベラワー1994 18年 モリソン&マッカイ 狂おしいほどの麦

ABERLOUR 1994 18yo MORRISON & MACKAY Seriese:WORLD WONDERS(モリソン&マッカイのワールド・ワンダーズ アベラワー 1994 18年熟成)を飲んだ。88点。
毎回、世界の7建造物がラベルに描かれる「ワールドワンダーズ」のシリーズだが、今回のラベルは、アレクサンドリアの大灯台(Lighthouse of Alexandria)で、紀元前300年ごろ(古代エジプト)のお話。134mという高さを誇り、当時では世界でも最も高い建造物のひとつだったようだ。なんでも「攻めてくる敵の船をこの灯台の鏡で太陽の光を照射し、燃やすことができた」という伝説もあるようだ。
それが本当だったかなんてのは野暮な話だが、、さてはて、肝心の中身の香味やいかに?

アべラワー1994 18年熟成

【評価】
グラスから立上るのは、芳醇な麦麦しさと柾目の木の板がバランスし、墨汁の深み、スパッと割ったばかりの木の表面の清々しさ。
口に含めば、焦がした飴と、焦がした松の葉。花の蜜が舌を襲い、それが次には熱くジリジリと燃えながら、そのまま非常に長い余韻を楽しませる。
狂おしいほどの麦の魅力のプレゼンテーション。その香りの多面さよ。

【Kawasaki Point】
88point
※この点数の意味は?

【基本データ】
銘柄: ABERLOUR 1994 18yo(アベラワー 1994 18年熟成)
地域: Highland, ハイランド
樽: Bourbon, Oak  バーボン、オーク
ボトル:MORRISON & MACKAY, モリソン&マッカイ

アレクサンドリアの大灯台が描かれている

1994年1月2日蒸留、2012年11月6日ボトリング

すぱっと割ったばかりの木の表面の清々しさ

熱くジリジリと燃えながら、非常に長い余韻を楽しませる