レビュー:スプリングバンク 10年 輝きながら絡まるような

SPRINGBANK 10yo(スプリングバンク 10年熟成)を飲んだ。85点。
昔は多くのウィスキー蒸留所でひしめいたキャンベルタウンという港町で、今も現役でつくられるウィスキーだ。かつてその港町には100を超える蒸留所があったと言われるが、今ではいくつか、数えるほど。淘汰されていく蒸留所もあれば、このスプリングバンクのように生き残る蒸留所もある。
さてはて、このボトルの香味やいかに?

スプリングバンク 10年熟成

【評価】
グラスを傾け鼻を近づければ、柔らかくも主張の強いピート、奥で支える旨みの複雑さはチーズのようで。アプリコットと枝。これぞスコッチという香り。
口に含めば、塩気が柔らかくピートと溶けていく。しかしすべてがつかめるような単純さはなく、それはまるで奥が深くて暗い洞窟を眺めているよう。あさっりしているのに優しい。くどくないピートが、音と音が輝きながら絡まるようなピアノのようにポロポロこぼれていく。鼻から抜ける熱気。

【Kawasaki Point】
85point

【基本データ】
銘柄:SPRINGBANK 10yo(スプリングバンク 10年熟成)
地域:Campbeltown, キャンベルタウン
樽:Oak, オーク
ボトル:Distillery Bottle, オフィシャルボトル



1828創業

柔らかくも主張の強いピート、奥で支える旨みの複雑さ

モルトの香水と呼ばれる

すべてがつかめるような単純さはなく




スプリングバンク蒸留所はキャンベルタウンという港町にある。地図で確かめてみて。




レビュー:ハイランドパーク 18年 ほどよい煙たさとのどごし

HIGHLAND PARK 18yo(ハイランドパーク 18年熟成)を飲んだ。85点。
かなりの定番モルト。さてはてその香味やいかに。

ハイランドパーク18年熟成 ボトルは開けたて

【評価】
グラスに鼻を近づければ、すっきりとした森の香り。柑橘、杏子。夏の池。爽やかでありながら渋い。ホッと落ち着くような。
口に含めば、ころころと舌の先にパウダーシュガーのまぶしてある小さなお菓子が転がる。焦がした樽。バランスのとれた正十四面体。
深すぎず浅すぎず、熱すぎず冷たすぎず、ほどよい煙たさとのどごしのウィスキー。

【Kawasaki Point】
85point

【基本データ】
銘柄:HIGHLAND PARK 18yo(ハイランドパーク 18年熟成)
地域:Islands, アイランズ
樽:Oak, オーク
ボトル:Distillery Bottle, オフィシャルボトル


1798年創業

ハイランドパークのロゴ

爽やかでありながら渋い。ホッと落ち着くような。

ほどよい煙たさとのどごしのウィスキー


イギリスの中でもかなり北の方にあるオークニー諸島のメインランド島。
ここにハイランドパーク蒸留所は位置している。地図を拡大して確かめてみて。




レビュー:グレンモーレンジ1981 10年 不安の入り混じる夜・・・

GLENMORANGIE 1981 10yo Natural Cask Strength(グレンモーレンジ 1981 10年熟成 ナチュラル・カスク・ストレングス)を飲んだ。87点。
もう30年以上も前の1981年に蒸留したグレンモーレンジ。10年寝かせて、樽出しのままボトリングしたのがこの一本だ。

グレンモーレンジ1981 10年熟成

【評価】
グラスから立ち上る香りをかげば、夜の岸辺で波面がわずかに揺れているのが分かる。すこしの光が反射しているが、それはほとんど闇を強調するだけ、不安の入り混じる夜に、果物の香りが薄く漂う。シンナー。
口に含めば、倉庫の錆びた鉄の扉をギィーっと開ける。埃っぽさと大きな空間。小さな木の丸テーブルが中にあり、ロウソク一本火が燈っており、照らされたリンゴ、オレンジ、それからバナナ。
夜の潮風が少し肌寒い港。

【Kawasaki Point】
87point

【基本データ】
銘柄:GLENMORANGIE 1981 10yo Natural Cask Strength(グレンモーレンジ 1981 10年熟成 ナチュラル・カスク・ストレングス)
地域:Highland, ハイランド
樽:Oak, オーク
ボトル:Distillery Bottle, オフィシャルボトル



Natural Cask Strength 樽出しそのまま、という意味


真ん中の写真は当時の蒸留所の風景だろうか




表の左上は熟成年 1981/3/3

表の右上はボトリング年 1991/4/18

不安の入り混じる夜に、果物の香りが薄く漂う

照らされたリンゴ、オレンジ、それからバナナ


グレンモーレンジ蒸留所の場所を地図で確かめてみて。グレンモーレンジとは静寂の谷間という意味のようだ。





レビュー:カバラン ソリスト ビーニョ 上品に木に生った・・・

KAVALAN SOLIST VINHO(カバラン ソリスト ビーニョ)を飲んだ。85点。
カバラン(カヴァラン)は、台湾の蒸留所のウィスキーで、「SOLIST」は旗艦モデルと位置づけられているシングルモルトなのだろう。Sherry Cask(シェリーカスク), FINO(フィノ)につづいて、今回はVINHO(ヴィーニョ)。この名前は、要するにすべて「どの樽で熟成したか」をあらわしている。
シェリーは、シェリー酒の樽で、フィノはシェリー酒の中でも独特の酸味があり、今回のビーニョは、ポルトガルのワイン樽だ。
さてはて、その香味やいかに。

カヴァラン ソリスト ヴィーニョ

【評価】
グラスから立ち上る香りは、さわやかな清流、抜ける青空、ふくよかであり、鋭角でありながらも先端は丸みを帯びている。マスカットのような。
口に含めば、マスカットの酸味がコクを持ちながら拡がり、長い熱帯魚の水槽を思わせる。フルーツのフレーバーが広がる。
上品に木に生った果実を味わう夜。

【Kawasaki Point】
85point

【基本データ】
銘柄:KAVALAN SOLIST VINHO(カバラン ソリスト ビーニョ)
地域:Taiwan 台湾
樽: VINHO,  ビーニョ
ボトル:Distillery Bottle, オフィシャルボトル



ぶどう酒の桶=ビーニョ樽ということなのだろうか

カスクストレングス。樽出しのボトル192本中の76本

マスカットの酸味がコクを持ちながら拡がり

上品に木に生った果実を味わう夜。





レビュー:カバラン ソリスト フィノ 春の陽射しが集まって・・・

KAVALAN SOLIST FINO(カバラン ソリスト フィノ)を飲んだ。87点。
カバラン(カヴァラン)は、台湾の蒸留所のウィスキーだ。亜熱帯の台湾でどのようなウィスキーづくりが可能となるのか。なんでも、熟成は早くすすむらしい。しかし、成長を早めた分、熟成の質が、深みが物足りなくなるのでは・・・と思われがちでもある。ところがこのシェリー(の中でもフィノ)樽で熟成された一本は・・・・・、さてはて香味やいかに。

カバラン ソリスト フィノ

【評価】
グラスに鼻を近づければ、あまい香りの中に、ジンジャーのスパイス。春の若草(芽吹きはじめ)。陽気な弦楽を奏でそうな。不思議な三重奏。明らかだがふくよかな調和。
口に含めば、春の陽射しが集まってとろけて蜂蜜になり舌の上に垂れてきたかのような。クリスタルボールに野原の風景を映して、それをいっぺんに味わったような。土の香りもあり、どっしりしている。
確かに感じる不思議な調和。

※カヴァランは注目すべきニューワールド・ウィスキーで、既にその個性を確立しているといえるだろう。

【Kawasaki Point】
87point

【基本データ】
銘柄:KAVALAN SOLIST FINO(カバラン ソリスト フィノ)
地域:Taiwan 台湾
樽: Sherry(FINO), Oak  シェリー、オーク
ボトル:Distillery Bottle, オフィシャルボトル

特徴的なロゴ

ソリストのシリーズはカスクストレングスのようだ


確かに感じる不思議な調和

漢字って面白い

カバランの蒸留所はこちら。地図を拡大して台湾を旅してみては。




レビュー:ロッホインダール2007 5年 キングスバリー 赤いカニが・・・

LOCHINDAAL 2007 5yo Kingsbury(ロッホインダール 2007 5年熟成 キングスバリー)を飲んだ。87点。
ロッホインダールは、一時期、ブルイックラディ蒸留所で作られていた、ピートを効かせたモルトだ(つまり煙り臭い)。同じ蒸留所のポートシャーロットよりもピーティで、オクトモアほどではない。
今回は5年という短い期間での熟成だが、果たしてその香味やいかに。

ロッホインダール2007 5年熟成

【評価】
グラスを傾け、鼻に近づけると感じる、酸味のある細い香り。郷愁がある。砂であり果物である。海での一日。甘くしびれる、赤いカニが逃げていく。
口に含めば、蜃気楼が立つほどじりじり熱い。この甘みはけだるさか、それとも一日海で泳いだ疲れなのか。
まどろむ午後の一杯。

【Kawasaki Point】
87point

【基本データ】
銘柄:LOCHINDAAL 2007 5yo (ロッホインダール 2007 5年熟成)
地域:Islay, アイラ
樽:Oak, オーク
ボトル:Kingsbury, キングスバリー社

ボトルの顔には大きく2007の文字

酸味のある細い香り。郷愁がある。

この甘みはけだるさか、それとも一日海で泳いだ疲れなのか

まどろむ午後の一杯


ブルイックラディ蒸留所はスコッチウィスキーの聖地、アイラ島の海岸沿いに位置している。






レビュー:カリラ1984 26yo ダンカンテイラー 港の絵描き

Caol ila 1984 26yo Duncan Taylor(カリラ1984 26年熟成 ダンカンテイラー社)を飲んだ。87点。

カリラ1984 26年熟成

【評価】
そっと目を閉じグラスに鼻を近づければ、果汁を混ぜた灰がキャンバスの上を流れる。黄色の絵の具と混ざる。赤を少し。少し離れた位置に木の絵筆でサッと緑が走る。港の絵描き。オイルにまみれた水夫。波の音。
口に含めば、フレッシュのグレープフルーツジュース。ミネストローネ。燻(いぶ)しのよく効いたベーコン。灰の混じったグレープフルーツジュース。
日に焼けた本のページをめくる。窓から少し風が吹く。あゝ、新緑の季節か。

【Kawasaki Point】
87point
※この点数の意味は?

【基本データ】
銘柄:Caol ila 1984 26yo (カリラ1984 26年熟成)
地域:Islay, アイラ
樽:Oak, オーク
ボトル:Duncan Taylor, ダンカンテイラー社

果汁を混ぜた灰がキャンバスの上を流れる


ダンカンテイラー社は老舗のボトラーだ

このボトルは世界に173本しかない・・・一期一会

窓から少し風が吹く。あゝ、新緑の季節か。

カリラ蒸留所は海に面している。それは26年たってもボトルの中身から感じられる。
ぜひ、地図で確かめてほしい。