レビュー:リトルミル 1965 31年 まるでメリーゴーラウンドの憧憬

LITTLEMILL 1965 31yo Signatory's Silent Still Series (シグナトリーのサイレント・スティル・シリーズ リトルミル 1965 31年熟成)を飲んだ。89点。

リトルミルはスコットランド最古の蒸留所と言われるが、1994年に閉鎖しており、それ以降はもう新たな原酒が出てくることはない。蒸留所の経営はとかく安定しない。失われていく蒸留所もあるし、その代わりに、新たに産声を上げる蒸留所もある。永遠はあり得ず、時が流れている、ということなのだろう。そんなことを思うと、今、この時代にたまたま出会えたウィスキーに対して、感慨深くなる。

サイレント・スティル リトルミル31年熟成

【評価】
グラスに顔を近づければ、すっきりとした香りに驚く!鮮やかな花々なのに、画用紙に描かれた水彩画のようなソフトフォーカスな印象。桃、プラム、オレンジ、イチゴなどの果物。
口に含めば、あっさりとしたバニラに、クッキーの粉。そして、まるでメリーゴーラウンドが廻るような鮮やかな憧憬が浮かぶ。
長熟だが、鮮やかさとソフトフォーカスの同居した、美しいウィスキーのひとつ。

【Kawasaki Point】
89point

【基本データ】
銘柄:LITTLEMILL 1965 31yo (リトルミル 1965 31年熟成)
地域:Lowland, ローランド
樽:Oak, Bourbon, オーク、バーボン
ボトル:Silent Still Series Signatory (シグナトリーのサイレント・スティル・シリーズ)

サイレント・スティル・シリーズ

ボトラーはシグナトリー

サイレント・スティル・シリーズは
現在稼動をしていない蒸留所のシリーズである






レビュー:バルメナック 1972 28年 含蓄のある味わい

BALMENACH 1972 28yo HIGHLAND SELECTION(バルメナック1972 28年熟成 ハイランドセレクション)を飲んだ。86点。
マッカーサーやハンキーバニスターの原酒として使われているようだが、いずれにせよ日本ではあまり知られていない銘柄のひとつだろう。

バルメナック1972 28年熟成

【評価】
グラスから立上るのは、石の上のすこくだかれた麦に少しかかったハチミツ。周りには色とりどりのコスモス。周りは少し冷えていて透き通った風。
口に含めば、豊かな味わいのあるスムーズさ。焦がした麦の芳醇さ。石で砕いた花弁。
しっとりしっかり味わいを伝えてくる。熟成した香りよ。含蓄のある味わいのウィスキー。

【Kawasaki Point】
86point
※この点数の意味は?

【基本データ】
銘柄:BALMENACH 1972 28yo HIGHLAND SELECTION(バルメナック1972 28年熟成 ハイランドセレクション)
地域:Highland, ハイランド
樽:Oak, Bourbon, オーク、バーボン
ボトル:Distillery Bottle, オフィシャルボトル

石の上のすこくだかれた麦に少しかかったハチミツ

少し冷えていて透き通った風



限定のハイランドセレクション

熟成した香りよ。含蓄のある味わいのウィスキー

バルメナック蒸留所はイギリスのスコットランド、ハイランドのスペイサイドにある。
ぜひ地図で確かめてみて。

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レビュー:SMWS 秋の試飲会 ~12本のレビューを一挙掲載~

スコッチ・モルト・ウィスキー・ソサエティの秋の試飲会に行ってきた。(The Scotch Malt Whisky Society Autumn Bottles Sampling)
それ何なの?と思われる方が日本でも99.9%以上と思われるニッチな会だが、わかりやすく言えば、「5,000円で、12種類のウィスキーが飲み放題の会」だ。すべてのウィスキーは、世界最大のウィスキー愛好家団体のソサエティが、各蒸留所から直接買い付けた樽から、なにも混ぜず・加えずの状態でボトリングしたものだ。12本のボトルの中にはかなり長熟で価格が高いものも含まれるのでお得でもある。
春夏秋冬のリズムに合わせ、年4回開催される。(各地の開催情報はこちら

今回も、2013年秋の試飲会、12本のボトルのレビューをランキング形式で一挙掲載する。
(参考:今年の夏のレビュー春のレビュー

SMWS 2013 秋のサンプリング会 スタート!

同点11位
3.208 BOWMORE1989 24yo (ボウモア1989 24年熟成)
【Kawasaki Point】
73point
【評価】
香りは、ピーティ、酸味、太陽に灼けた砂。
口に含めば、ラベンダーが平べったく、かつ鋭く現れるが、まるでガラスケースの中に入っているようだ。
かつてそこになにか輝かしいものがあったことをうかがわせる遺跡のようなウィスキー。


同点11位
127.35 PORTCHARLOTTE 2003 9yo (ポートシャーロット2003 9年熟成)
【Kawasaki Point】
73point
【評価】
グラスから香るのは、強烈なピート、ペッパーと奥に隠れた柑橘。
口に含めば、ひたすらピートがあり、酸味とペッパー。おだやかさを感じる。
狭き門だが、くせになる可能性があるウィスキー。


同点9位
4.179 HIGHLAND PARK 1991 22yo (ハイランドパーク1991 22年熟成)
【Kawasaki Point】
78point
【評価】
グラスから立ち上るのは、かぼすとホワイトグレープフルーツの果汁に、それからペッパーを少しふりかけてシェイクした香り。木のコップに注がれている。
口に含めば、柑橘が持つべき甘みが舌の先で広がりながら、さっと消えてしまう。
余韻にわずかにオイリーさを感じるが、さらっと飲める。


同点9位
36.62 BENRINNES 1991 21yo (ベンリネス1991 21年熟成)
【Kawasaki Point】
78point
【評価】
グラスに顔を近づけると、すぅーっと垂直に細く立ち上る香り。色で例えるなら透明の青と水色の螺旋。わずかにペッパーを纏う。パイナップルをわずかに。
口に含めば、船で航海に出る気分。ジリリと熱く、バケットにレバーペーストを載せ、半分を一口で食べる。
食前酒にはぴったりな一杯。

ベンリネス1991 21年
ソサエティのタイトルは The Italian Job
訳せば「イタリアの仕事」


8位
53.191 CAOL ILA 1996 16yo (カリラ1996 16年熟成)
【Kawasaki Point】
82point
【評価】
香りは、木の酸味と煙。
口に含めば、ハーブの葉っぱを舌の上に載せて、甘みを味わいながら、煙が追っかけっこ。
穏やかですこし個性がくすぶったカリラ。冬ごもりしたときに飲みたい。


同点5位
29.140 LAPHROAIG 1995 18yo (ラフロイグ1995 18年熟成)
【Kawasaki Point】
83point
【評価】
香るのは、さわやかな柑橘をちりばめた、石釜の香り。
口に含めば、塩とあさりスープ。ディルとペッパー。鋭さではなく、角の丸い香り。
穏やかな情景の浮かぶラフロイグ。


同点5位
39.90 LINKWOOD 1990 22yo (リンクウッド1990 22年熟成)
【Kawasaki Point】
83point
【評価】
グラスから立ち上るのは、ポトフとブラックペッパー、少ししつこいくらいの木のこってりとした香り。
口に含めば、ポテトとブラックペッパーのスープ。
疲れたときの活力剤のような、日常にスパイスが欲しいときのためのウィスキー。


同点5位
44.58 CRAIGELLACHIE 1999 13yo (クライゲラヒ1999 13年熟成)
【Kawasaki Point】
83point
【評価】
グラスに鼻を近づけると、紫陽花のような香り。ハッサク。子供のビーチの砂遊び。
口に含めば、厚みのある草とミルク、干し草もある。
秋の星々をながめるときに飲みたいウィスキー。

クレイゲラヒ1993 13年熟成
ソサエティのタイトルは A Bittersweet Sensation
訳すと「ほろにがの大騒動」かな?


4位
1.174 GLENFARCLAS 1997 16yo (グレンファークラス1997 16年熟成)
【Kawasaki Point】
85point
【評価】
目を閉じてグラスに顔を近づければ・・、すこし奥まったところ、生垣に挟まれた狭い道をすこし歩き、小ぶりな鉄の扉を開ける。眼前に現れたレストランに期待値が上がる。
口に含めば、白いリネンのテーブルクロスの上に出された、バターの効いたスープ。フォークとナイフ。ロウソクと、ロウソクの光に照らされたオレンジ。
夏の宵の口の食事のひと時を想起させるウィスキー。


同点2位
17.34 SCAPA 2002 11yo (スキャパ2002 11年熟成)
【Kawasaki Point】
88point
【評価】
香りは、オレンジピールにかかったハチミツ!香水のように上品!太陽の光を想起させる。午睡(シエスタ)。うっとりする・・いつまでも香っていたい。
口に含めば、期待していた通りの塩キャラメル。船の木の板に塗ったオイル。
味わいの深い、映画のワンシーンのような洒落た一杯。

ソサエティのタイトルも Seaside holiday dram
訳せば「海辺の休日のひと口」



同点2位
71.39 GLENBURGIE 1985 27yo (グレンバーギー1985 27年熟成)
【Kawasaki Point】
88point
【評価】
香りは、夏のスイカ、腐葉土、ねっとりした温かみに湿度を感じる、イチジク、ほんのりと煙。
口に含めば、しっとり上品、イチジクの種を噛みながらよく味わっているような。スモーキーな紅茶。
昼下がりにゆったり味わいたいウィスキー。

ソサエティのタイトルは Sweetness gently tickled by oak
訳せば「オーク樽による甘美で優しいくすぐり」


1位
73.58 AULTMORE 1991 21yo (オルトモア1991 21年熟成)
【Kawasaki Point】
94point
【評価】
グラスに顔を近づけると、新鮮な驚き。水晶玉のアクアリウム、さわやかな森の香り、うすいスパイス。
口に含めば、バニラの木の香りがしっかり。スパイシーかつ中庸。チョコチップとスパイスが余韻として香る。
気の利いたバランスがとれた美しい一杯。

12本の中で頂点のオルトモア1991 21年熟成
ソサエティのタイトルは「Simple and seductive」
訳せば「シンプルで誘惑的」 う~んまさに!

バランスがとれた美しい一杯

今回のサンプリング会はハイレベルであった。点数も73~94点で、過去最高だ。
スキャパやバーギーを1位に推す声もあり、特にスキャパは「香り高い」という意見が多かった。
あっという間の2時間で、会が終わり店を出た。雨上がりの街は少し暗く、そして肌寒かった。もう秋なんだなと実感して、冬のサンプリング会はどんな風になるだろうかと少し考えたりした。

おのおの家路に着いて、余韻をかみ締めていたに違いない。



レビュー:ラフロイグ1990 21年 ハイスピリッツ 強いハチミツとバラ

Laphroaig 1990 21yo by High Spirits Natural Cask Strength Selection(ハイスピリッツ社のナチュラル・カスク・ストレングス・セレクションのラフロイグ1990 21年熟成)を飲んだ。87点。
(同じヴィンテージのカラーズコレクションとは異なる)

ハイスピリッツのラフロイグ21年 ヴィンテージは1990

【評価】
グラスから立ち上る香りは、赤い花の蜜。熟成され花畑に吹く風のような穏やかさをまとった煙。燻しの酸味と花の蜜がとろんととろけて黄金色の液体になったみたいだ。
口に含めば、強烈に熱く萌ゆるも、強いハチミツとバラの香りを放って、パッと消え、あっさりとしている。最後に木の香りを少しずつ伝え、このウィスキーのエンドロールのような。
変わった姿を見せるが、決しておどけているようでもなし、紗に構えているようでもなし、飽くまでも正統派であるが、個性の育った一杯といえる。

【Kawasaki Point】
87point

【基本データ】
銘柄:Laphroaig 1990 21yo Natural Cask Strength Selection(ナチュラル・カスク・ストレングス・セレクションのラフロイグ1990 21年熟成)
地域:Islay, アイラ
樽:Oak, Bourbon, オーク、バーボン
ボトル:High Spirits(ハイスピリッツ社)





丁寧なテイスティング・ノート

燻しの酸味と花の蜜がとろんととろけて

飽くまでも正統派であるが、個性の育った一杯