レビュー:ザ・ニッカ40年熟成 観客が目を閉じ・・・

ザ・ニッカ 40年熟成(The Nikka 40yo)を飲んだ。98点。
ニッカ創業以来の渾身の作だ。創業80周年を記念してつくられた数量限定のボトルで、原酒の一番古いものは余市の1945年(終戦時)、それから宮城峡の1969年(宮城峡設立時)ということだ。

細かい説明は省こう。このボトルの中身はどのような香味だろうか?


【評価】
グラスに鼻を近づける。厚みが深く、どこまで嗅いでも確かめようのない流れ出る音楽。安らぎとハーモニー。脳に快感を届ける。美しい重低音。クヌギと蜜、海岸。火花。果物であり海岸であり山であり、空であり土である。
不思議な心持ちのまま、口に含む。いくつかのウィスキーを、同時に味わっているかのような、オーケストラがクライマックスに達し、観客が目を閉じ音楽とひとつになる瞬間。余市のシグネチャーであるスパイスが終始美しく効いている。決して調和を目指し穏やかになることを目指して作られた味ではなく、ガツンとくる。
前も後も、この瞬間のために存在しているという瞬間。

【Kawasaki Point】
98point
※この点数の意味は?

【基本データ】
銘柄:ザ・ニッカ 40年熟成(The Nikka 40yo)
地域:Japan
樽:Oak, オーク
ボトル:Distillery Bottle, オフィシャルボトル

定価50万円のウィスキーだけあって箱も凝っている

開封前

12年と同じ形のボトルだが、文字はプリントではなく、彫ってある

オリジナルグラス付き

開封

斜め上からの写真。
エンブレムと文字のエンボス(彫込)が分かるだろうか

流れ出る音楽

オーケストラがクライマックスに達し・・・

前も後も・・・







レビュー:グレンゴイン 10年 画家が手を止めて・・・

GLENGOYNE 10yo(グレンゴイン 10年熟成)を飲んだ。88点。
グレンゴインは、スコットランドの中でもとても美しい風景の中にある蒸溜所として有名だ(ウィスキー映画『天使の分け前』のロケ地でもある)。その酒がどんな場所で作られたかなど、口の中に入れてしまえば関係ない・・・そういう見方もできるだろうし、その酒にまつわるすべての風景、人々、物語がおもしろい・・・そういう見方もできる。あなたはそのどちらだろうか。
さて、このウィスキーの香味を確かめよう。

グレンゴイン10年熟成

【評価】
グラスから立ち上るアロマに鼻を近づける。むせるほどの麦の生命感。穏やかな甘みを幾重にも重ねてできる透明感。パステルの黄色が広がる。
ひとたび口に含めば、あっさりと進み、アフターテイストとして上がってくる甘みの充実感。すっきりと透明でガラス細工のように繊細だが、力強い後味。その後味にじっくり付き合えば、暗く深い影も持っていることがわかる。
カンバスに向かう画家が手を止めて、思わず風景に見とれてしまう圧倒的風景の美しさ。

【Kawasaki Point】
88point

【基本データ】
銘柄:GLENGOYNE 10yo(グレンゴイン10年熟成)
地域:Highland, ハイランド
樽:Oak, Sherry オーク、シェリー
ボトル:Distillery Bottle, オフィシャルボトル


蒸溜所の設立は1833年

2匹のガチョウが向き合うエンブレム

10年熟成

穏やかな甘みを幾重にも重ねてできる透明感

カンバスに向かう画家が手を止めて・・・



よく出来た蒸溜所ムービー。旅情をかきたてる。





レビュー:ボウモア2000 13年 ハートブラザーズ ガラス細工の・・・

BOWMORE 2000 13yo Heart Brothers(ボウモア 2000 13年熟成 ハートブラザーズ for 信濃屋)を飲んだ。83点。
このボトルのアロマやいかに。

ボウモア 2000年蒸留 13年熟成

【評価】
グラスに充満する香りを吸い込めば、イタリアンパセリごしのイチゴ。燃え尽きた炭。ナイフを入れたマンゴー。
目を瞑って口に流し込めば、温かく柔らかい、だがすっきりとまとまったガラス細工のよう。そのつるんとした表面に水が流れていく。だが灼熱の後味。
フレンドリーだが決して近寄り過ぎない、凛とした輝きを持つウィスキー。

【Kawasaki Point】
83point
※この点数の意味は?

【基本データ】
銘柄: BOWMORE 2000 13yo (ボウモア 2000 13年熟成)
地域:Islay (アイラ)
樽: Bourbon, Oak  バーボン、オーク
ボトル:Heart Brothers for Shinanoya ハートブラザーズ for 信濃屋

ボトラーはハートブラザーズ

信濃屋は日本の酒屋

灼熱の後味








レビュー:ベイリー・ニコル・ジャーヴィー ハチミツに果汁の・・・

Bailie Nicol Jarvie(ベイリー・ニコル・ジャーヴィー)を飲んだ。87点。
ウォルター・スコットの小説『ロブ・ロイ』の登場人物の名前のようだ。ロブ・ロイはスコットランドの実在した伝説的人物だが、そのエピソードはアウトローな雰囲気に満ち満ちている。(看守とウィスキー飲み勝負をして、看守を酔い潰して脱走したとかetc..)
きっとこのウィスキーを名づけた人は、そんな小説の雰囲気に憧れて登場人物の名をとったに違いない。さて、どのような香味のウィスキーなのだろうか。

ベイリー・ニコル・ジャーヴィー

【評価】
グラスから立ち上るアロマは、そよ風の運んでくるイチジクブレッド。モンシロチョウの飛び交う畑。風鈴にしてある備長炭の高い音。ニ長調。
そっと口に含めば、ハチミツに果汁のエッセンスを加えてアイスクリームのソースにする。バニラとクッキー。
上品でバランスの良いお菓子のような味わい。

【Kawasaki Point】
87point

【基本データ】
銘柄:Bailie Nicol Jarvie(ベイリー・ニコル・ジャーヴィー)
地域:Highland, ハイランド など
樽:Oak, オーク
ボトル:Blended, ブレンデッド

通称「BNJ」

トラディショナルなフォント

Very Old、中身は8年熟成以上のようだ

ちなみにキーモルトはグレンマレイと言われている

そよ風の運んでくるイチジクブレッド

上品でバランスの良いお菓子のような味わい






レビュー:カバラン 蒸溜所限定 スピード感のある短い曲・・・

KAVALAN Distillery Reserve(カバラン ディスティラリー・リザーブ)を飲んだ。89点。
カバランは台湾の蒸溜所で、いわゆる5大産地ではない“ニューワールド”系だ。新しい蒸溜所がどんどん生まれ、流通しているのは素晴らしいことだ。日本から最も近い国の蒸溜所でもある。
今回飲んでものは、カバランの中でも蒸溜所でのみ販売されている「蒸溜所限定」の一本。
さて、どのような香りと、味なのだろうか。

カバラン ディスティラリーリザーブ

【評価】
グラスから香るアロマは、甘い薪、ブッシュドノエル、リネンのテーブルクロス、ハチミツの皿。重厚な木の椅子。まっすぐ高い背もたれ。
グラスを傾け、液体を舌の上に流し込めば、一瞬にして柑橘が弾ける。イチゴ、マンゴー、さまざまな色合い。同時にピートが飛び出す!濃くてスピード感のある短い曲を聴いているかのよう。濃いバター。
陽気な煙を後に残す。

【Kawasaki Point】
89point

【基本データ】
銘柄:KAVALAN Distillery Reserve(カバラン ディスティラリー・リザーブ)
地域:Taiwan 台湾
樽: Oak,   オーク
ボトル:Distillery Bottle, オフィシャルボトル

銀色に光っている箱

KAVALANは漢字表記だと「金車」

このなんとも言えない“高級感”

2007年蒸留、2014年ボトリングの6~7年熟成。
わずか6、7年でこの熟成とは・・・
気候の生み出すマジックだ

濃くてスピード感のある短い曲を聴いているかのよう。





レビュー:リトルミル1988 23年 WA&3R 小さな暖炉・・・

LITTLEMILL 1988 23yo Whisky Agency & Three Rivers(リトルミル 1988 23年熟成 ウィスキーエージェンシーとスリーリバースのWネーム)を飲んだ。87点。

世界でこのボトルは162本しかないが、特別高価というわけでもない。あるひと樽の原酒が素晴らしかったので、それをボトリングしたらたまたま162本とれて、発売しただけ――。そんな小回りの効くリリースの仕方は、大手蒸溜所やメーカーではあまりされないが、ボトラーと呼ばれる瓶詰め業者にとっては得意技だ。(参考:ボトラーズとオフィシャルの違いとは?

リトルミルといえば「今はもうない」閉鎖系蒸溜所だが、スコットランドでは最古の蒸溜所だったとされている。もう数年すれば、原酒もほとんどなくなっていくのだろうか。
さて、このボトルの中身はどのような香味だろうか。

リトルミル 1998 23年熟成

【評価】
グラスから香るアロマは、優しいチョコレート、溶けたロウと鉄分。まっすぐに伸びる針葉樹。小さな暖炉。
口に含めば、一瞬で解ける鉄と、赤い果実の果汁。イチジク。フレッシュな酸味。
ゆっくりと楽しむことのできる一杯。

【Kawasaki Point】
87point
※この点数の意味は?

【基本データ】
銘柄:LITTLEMILL 1988 23yo (リトルミル 1988 23年熟成 )
地域:Lowland, ローランド
樽: Ex-Sherry Hogshead, Oak, シェリー、オーク
ボトル:Whisky Agency & Three Rivers ウィスキーエージェンシーとスリーリバースのWネーム

ドイツのボトラー Whisky Agencyと、
日本のボトラー Three Rivers。
Three Riversは「三河屋さん」

この綺麗なラベルは
Whisky Agencyでは「アートワークシリーズ」と
呼ばれているようだ

一瞬で解ける鉄と、赤い果実の果汁

ゆっくりと楽しむことのできる一杯