レビュー:ハイランドパーク オーディン 深く甘い・・・

Highland Park Valhalla Collection ODIN 16yo(ハイランドパーク ヴァルハラコレクション オーディン 16年熟成)を飲んだ。87点。

ハイランドパークが北欧神話の神々にインスパイアされてリリースしているValhalla Collection(ヴァルハラ コレクション)のひとつ。世界限定17,000本。“ヴァルハラ”とは北欧神話に登場する宮殿のようだ。シリーズではこれまで北欧神話の神々である、ソー(雷神)、ロキ(トリックスター)、フレイア(豊穣の女神)が発表されてきた。そして今回の“オーディン”は、北欧神話の主神とされ、このヴァルハラコレクションの完結を意味している。

どのような香味をみせてくれるのだろう。

独特のケースに収められた ハイランドパーク オーディン

【評価】
グラスを鼻に近づける。甘く香る蜂蜜。色とりどりの花々。色彩が強く浮かぶ。真新しい木の船で旅に出よう。明るい太陽の光る海原。爽やかな風。
口に含む。木でできた本棚、並ぶ分厚い布のハードカバー。金の箔押しのタイトル。古い知識の宝庫。しっかり木を感じさせるし、しっかりと甘い。ただこの甘さは軽薄なものではなく、深く甘い。
遠い地の友を思いながら、しっとりと味合うウィスキー。

【Kawasaki Point】
87point
※この点数の意味は?

【基本データ】
銘柄:Highland Park Valhalla Collection ODIN 16yo(ハイランドパーク ヴァルハラコレクション オーディン 16年熟成)
地域:Islands, アイランズ
樽:Oak, オーク
ボトル:Distillery Bottle, オフィシャルボトル

木製ケース。ヴァイキング船の竜頭みたいだ。
北欧の木を愛でる文化は日本と通ずるところがある。

甘く香る蜂蜜。色とりどりの花々。

知識に貪欲な神オーディンは
賢い巨人ミーミルが守る泉の水を飲ませてもらう代償として
その片目を失ったと伝えられる。
オーディンはこれにより知恵と知識を得た。

ボトルの独特な質感

の甘さは軽薄なものではなく、深く甘い

遠い地の友を思いながら、しっとりと味合うウィスキー


ハイランドパーク蒸溜所は北海を囲むオークニー諸島に位置する。
オークニー諸島では冬にオーロラが見られることがある。
北方神話ではオーロラはオーディンのもとに集まる偉大な戦士の魂を先導する、
勝利の女神の鎧のきらめきが生み出したものだとされている。





レビュー:ブラッドノック 2001 10年 Tokyo Bar Show うなるほど華やかなのに・・・

Bladnoch 2001 10yo for Tokyo International Bar Show(ブラッドノック 2001 10年熟成 東京バーショー2015向けリリース)を飲んだ。88点。

先日開催されていた東京Bar Show向けの一本。カスクストレングス(樽出しそのまま)で。

ブラッドノック 2001 10年熟成

【評価】
グラスにそっと鼻を近づける。甘い蜜とロウ、洋ナシとチョコレート、オレンジピール。重くて黒くてどっしり、なのに爽やか。
グラスを傾け、口に含む。焦がしたオレンジピール。フローラルで濃厚、華やかな香りなのに、やはり爽やか。
うなるほど華やかなのに、後味がさわやか。

【Kawasaki Point】
88point
※この点数の意味は?

【基本データ】
銘柄:Bladnoch 2001 10yo for Tokyo International Bar Show(ブラッドノック 2001 10年熟成 東京バーショー2015向けリリース)
地域:Lowland, ローランド
樽:Oak, Sherry オーク、シェリー
ボトル:Distillery Bottle, オフィシャルボトル

東京インターナショナルBarショウ向け

ローランド・シングル・モルト・スコッチ・ウィスキー


洋ナシとチョコレート、オレンジピール。

フローラルで濃厚、華やかな香りなのに、やはり爽やか



レビュー:響 12年 小川を流れる桜の・・・

響12年熟成(Hibiki 12yo)を飲んだ。76点。

「響(ひびき)」といえば、日本を代表するブレンデッド・ウィスキーの銘柄だ。2009年に発売された12年がそのディフュージョンラインとしての役割も担っていたが、今年あらたに年数表記のない「JAPANESE HARMONY」がリリースされ、ポジションをより明確にしている。このリリースに伴い、12年には終売の噂がある。

昨今のウィスキーブームの原酒不足により、各社がラインナップの再編をおこなっている今、新たに生まれるウィスキーもあれば、去っていくウィスキーもあるようだ。

さて、響12年はどのような香味だろうか。


【評価】
グラスを傾け、そっと鼻から息を吸い込む。草とさくらんぼ。野焼き。小川を流れる桜の花びら。うぐいす。
口に含めば、しっとりと熱い。炎を見つめる。舟を漕ぐ。通奏低音としての千歳飴のような甘み。
苦みと渋みと甘みが入り混じる。

【Kawasaki Point】
76point

【基本データ】
銘柄:響12年熟成(Hibiki 12yo)
地域:Japan, 日本
樽:Oak, オーク
ボトル:Distillery Bottle, オフィシャルボトル

ボトルキャップも『響』

これ以外にはない特徴的なボトル

ブランドにかける意気込みが伝わるエチケット

24面カットのボトル

小川を流れる桜の花びら

通奏低音としての千歳飴のような甘み







レビュー:SMWS 夏の試飲会 2015 ~12本のレビューを一挙掲載~

日がだいぶ長くなってきた。季節毎に開催されている、スコッチ・モルト・ウィスキー・ソサエティの夏の試飲会に行ってきた。(The Scotch Malt Whisky Society Summer Bottles Sampling)
5,000円(会員4,000円)でニューリリースのウィスキー12本の試飲ができる、という会だ。スコッチ・モルト・ウィスキー・ソサエティ(“SMWS”、または単に“ソサエティ”などと呼ばれる)は、世界最大のウィスキー愛好家団体で、そのボトルの豊富さと、統一されたデザインのスタイルにはファンが多い。

さあ今回もテイスティングした12本のボトルをランキング形式で一挙紹介しよう。


12個のグラスが並ぶ。それぞれの味わい


第12位
35.131 Glen Moray 1994 19yo (グレンマレイ 1994 19年熟成) 
【Kawasaki Point】
56point
【評価】
その香りは、芳ばしいバターケーキ。キャラメル。アールグレイ。
口に含めば、じっくり焼きすぎた魚の焦げの部分みたいな。


第11位
59.53 Teaninich 1983 31yo (ティーニニャック 1983 31年熟成) 
【Kawasaki Point】
67point
【評価】
骨董屋。埃っぽい棚の上にいかにも重要そうに飾られた地球儀。
万年筆のインクを滲ませつつ書かれる領収書。


第10位
29.160 Laphroaig 1997 17yo (ラフロイグ 1997 17年熟成) 
【Kawasaki Point】
73point
【評価】
かつて診療所であった孤島の小さな建物。
寂しげな夕刻の日差しが窓から差し込む。


ウィスキーの静かな語らい



第9位
3.238 Bowmore 1997 17yo (ボウモア 1997 17年熟成) 
【Kawasaki Point】
76point
【評価】
ヨードチンキ。い草。落ち着く香り。
どこか水のようなさらりとしたところもある。


第8位
1.187 Glenfarclas 1985 29yo (グレンファークラス 1985 29年熟成) 
【Kawasaki Point】
78point
【評価】
夏の農作業。野焼き。
生のトウモロコシをかじったようなジューシーさ。


第7位
55.27 Royal Brackla 1997 17yo (ロイヤルブラックラ 1997 17年熟成) 
【Kawasaki Point】
83point
【評価】
カラフルでトロピカルな鳥。バサバサと飛び立つ。アンリ・ルソーの夢。
しっかりとした生命力。剛健。


リリースされたウィスキーのカタログ


第6位
3.240 Bowmore 1998 16yo (ボウモア 1998 16年熟成) 
【Kawasaki Point】
84point
【評価】
わらび餅、きな粉。樹液。
口の中に少量の煙が広がって、思わず噛み締めたくなる。


第5位
36.84 Benrinnes 1989 25yo (ベンリネス 1989 25年熟成) 
【Kawasaki Point】
85point
【評価】
清涼な山の空気。峰を眺める。稜線を指でたどる。爽やかな気持ち。
ドロップ飴をなめているかのような甘み。歩き疲れたあとの山頂でのハイなランチ。


穏やかな照明


同点第3位
37.63 Cragganmore 1985 29yo (クラガンモア 1985 29年熟成) 
【Kawasaki Point】
86point
【評価】
小豆を蒸して、涼しげなゼリーに閉じ込めたような。和風の香草をいくつか。
涼しげな顔とは裏腹に、熱く溶け込み、口腔内を塗り替える。禅画の情熱的な筆致。


同点第3位
7.117 Longmorn 1990 24yo (ロングモーン 1990 24年熟成) 
【Kawasaki Point】
86point
【評価】
森のコテージ、鳥の声。かみたばこのかおり。落ち葉の掃除。
古い本のページを少しめくる。集中できずに外に目をやる。ほっと一息つく。



さて、今回は2本が同点1位だ。どんなウィスキーたちだろうか?


そのウィスキーとは

同点1位
77.37 Glenord 2001 13yo (グレンオード 2001 13年熟成) 
【Kawasaki Point】
87point
【評価】
機械オイル、ガソリン。雨の中の作業で冷えたからだを、ヤカンの前で温めよう。
自らを温めるために飲む。男のウィスキー。


同点1位
30.84 Glenrothes 1980 34yo (グレンロセス 1980 34年熟成) 
【Kawasaki Point】
87point
【評価】
初夏の早朝、朝霧。森から抜けると、開けた草原。徐々に息を整える馬。
溶岩石に水が落ちる。滝のほとり。足を伸ばして馬と休もう。


注がれたウィスキーと、語らい


飲み語りしたあとで外にでると、驚くほどまだ明るく、暗くなる兆しも感じさせなかった。春のサンプリング会のときと違う明るさに、季節が移り変わったのだと、ふつうのコトながらしみじみ想う。
つぎのサンプリング会では、一体どのようなウィスキーに出会えるのだろうか。




レビュー:アードベッグ パーペチューム さわやかなようで・・・

ARDBEG PERPETUUM(アードベッグ パーペチューム)を飲んだ。87点。
1815年創業のアードベッグは今年で200周年だそうだ。「パーペチューム」はラテン語で「永久」。200周年の節目に永い時に思いを馳せる・・・と言うのは蒸溜所側の意図だが、これまでのアードベッグのライトなネーミング(ダジャレのアードボッグとか、W杯に乗っかったオーリヴェルデとか)に比べてやや力が入った大げさなものに感じる。
さて、どんな香味なのだろうか。

アードベッグ パーペチューム

【評価】
グラスから立ち上る香りは、透き通る草をなぜた大量の風。若草であり、穏やかな海のきらめきであり、老木の静かなたたずまいである。さわやかなようで、ライトではない。
口に含む。若木の香りが輪廻を描いて、老木までの想像をさせる。フレッシュだが、落ち着きがある。若さ、情熱、落ち着き、熟練、それらが同居している。
熱いウィスキー。

【Kawasaki Point】
87point

【基本データ】
銘柄:ARDBEG PERPETUUM(アードベッグ パーペチューム)
地域:Islay, アイラ島
樽:Oak, Bourbon, オーク、バーボン
ボトル:Distillery Bottle, オフィシャルボトル

1815-2015


ISLAY SINGLE MALT アイラ島のシングル・モルト

若草であり、穏やかな海のきらめきであり

200周年に永遠への願いを込めたのだろうか

若さ、情熱、落ち着き、熟練

熱いウィスキー。



イギリスはスコットランド西側に、淡路島程の大きさの島「アイラ島」がある。
アードベッグ蒸溜所はこの島にあり、この島で作られ、我々のBARまで運ばれてくる。




レビュー:ニッカ シングル・モルト・ウィスキー 23年 余市の行く末・・・

NIKKA SINGLE MALT WHISKY 23 YEARS OLD by Yoichi(ニッカ シングル・モルト・ウィスキー 23年熟成 余市蒸溜所)を飲んだ。88点。
このボトルは非売品で、中身は余市蒸溜所のもの。

“余市”といえば、原酒不足を理由として「余市」ブランドの刷新が図られるようだ。余市に限った話ではなく、世界的にNA(ノン・エイジ=熟成年数表記のない)ウィスキーが増加している。需要が供給を上回れば起こる現象のひとつだが、ファンは寂しい思いをするだろう。

NIKKA SINGLE MALT WHISKY 23yo

【評価】
グラスから立ち上る香りをかぐ。甘く香る潮騒。濡れた砂を踏みしめる。重厚な木のテーブル。厳しい冬を乗り越えた木立。少しふくよかで甘い。
グラスを傾け、口に含む。スイカのような清涼感。生木のやわらかさ。砂に染み込む。汗をかいた夏の夜に冷めやらぬ興奮。
濃密で強いウィスキー。

【Kawasaki Point】
88point

【基本データ】
銘柄:NIKKA SINGLE MALT WHISKY 23 YEARS OLD by Yoichi(ニッカ シングル・モルト・ウィスキー 23年熟成 余市蒸溜所)
地域:Yoichi, 余市町
樽:Oak, オーク
ボトル:Distillery Bottle, オフィシャルボトル

NIKKA WHISKYの歴史は余市蒸溜所から始まった

甘く香る潮騒

これと同じボトルが旧竹鶴邸にも展示されていた

スイカのような清涼感

竹鶴政孝は余市ブランドの行く末をどのように見守るだろう