レビュー:インヴァーリーブン1991 15yo 揺れる船の中の窓から・・・

Inverleven 1991 15yo by Gordon & Macphail(ゴードンマクファイルのインヴァーリーブン1991 15年熟成)を飲んだ。78点。

Inverleven(インヴァーリーブン)は1991年にすでに閉鎖した蒸留所だ。スコットランドのローランドに位置し、バランタインの原酒のひとつとして使用されていたようだ。すでに閉鎖されていることもあり、シングルモルト(※)で出てくることはあまりないだろう。このボトルの原種は閉鎖された年のもの。(※参考:ウィスキーのシングル・モルトとは何か?)

さて、どのような香味だろうか。

インヴァーリーブン 1991 15年熟成

【評価】
グラスを揺らし、目を閉じ、鼻に近づける。揺れる船の中の窓から、夜の海を眺める。ランプ、蝋燭、洋ナシ。
口に含む。ただただクリスマスプレゼントを待つ少女、それを眺める両親の幸せな眼差し。絨毯の温かみ。

【Kawasaki Point】
78point

【基本データ】
銘柄:Inverleven 1991 15yo(インヴァーリーブン 1991 15年熟成)
地域:Lowland(ローランド)
樽: Bourbon(バーボン)
ボトル:Gordon & Macphail(ゴードン&マクファイル)

Single Lowland Malt Scotch Whisky

Inverlevenの閉鎖の年である1991年の蒸留

ランプ、蝋燭、洋ナシ。

絨毯の温かみ



レビュー:ラフロイグ2000 16yo 赤く燃える灰・・・

Laphroaig 2000 16yo by Douglas Laing's Series Old Particular(ラフロイグ2000 16年熟成 ダグラスレインのオールドパティキュラーシリーズ)を飲んだ。80点。

ラフロイグといえば、「Love or Hate」(大好きか大嫌いか)といわれる強烈な個性の銘柄として知られている。(ただ、不思議なことに個人的には「ラフロイグを大嫌い」という人にあまり出会ったことがない)

さて、このラフロイグはどのような個性だろうか。

ダグラスレイン ラフロイグ2000 16年熟成

【評価】
グラスから立ち上る香りは、分厚い煙の向こうの"かぼす"。アーモンドと灰と赤く燃える炭と、スタンウェイのピアノ。
口に含む。古い新聞に包まれた真鍮のブローチ。
石造りの階段をコツコツ登る。友人に会いに行く午後5時。

【Kawasaki Point】
80point

【基本データ】
銘柄: Laphroaig 2000 16yo(ラフロイグ 2000 16年熟成)
地域:Islay(アイラ島)
樽: Bourbon(バーボン)
ボトル:Douglas Laing(ダグラスレイン)

オールドパティキュラーシリーズは古風なラベル

分厚い煙の向こうの かぼす

友人に会いに行く午後5時






レビュー:グレンエルギン1995 21yo ドラゴンシリーズ 夜になっても・・・

Glen Elgin 1995 21yo Whisky Trail Dragon Series by ELIXIR Distillers(エリクサーディスラーズのウィスキートレイルのドラゴンシリーズ番目、グレンエルギン1995 21年熟成)を飲んだ。85点。

いろいろなラベルがあるが、ドラゴンとは、どのようなイメージだろうか。ファンタージの象徴か、恐怖の象徴か、それとも宝石を守る者なのか・・・

さて、このボトルはどのような香味だろうか。

グレンエルギン 1995蒸留 21年熟成

【評価】
グラスを近づければ、美しく解放的な香り。バナナ、オレンジ、ピーチ、そして、バナナ。またピーチか。夜になっても気温が下がらない南国。
口に含む。ほんのわずかにブラックペッパー。フルーツと、熱い風。
ファンタジーへ誘われる味。

【Kawasaki Point】
85point

【基本データ】
銘柄: Glen Elgin 1995 21yo(グレンエルギン 1995 21年熟成)
地域:Highland(ハイランド)
樽: Bourbon(バーボン)
ボトル:ELIXIR Distillers(エリクサーディスラーズ)

ドラゴンが飛んで行く

ウィスキートレイルのドラゴン5番目

1995年蒸留2017年ボトリング

EIXIR DISTILLERSはボトラーズだが近々蒸留所を持つらしい

おそろしいドラゴン

またピーチか。

夜になっても気温が下がらない南国。ファンタジーへいざなわれる。


レビュー:厚岸2018 New born bourbon barrel 重く決まる左ストレート

厚岸 Single Malt Spirit 2018 Bourbon Barrel Non Peated(AKKESHI 2018 New born )を飲んだ。88点。

ニューボーンのウィスキーは、なぜこうワクワクするのだろうか。それが日本国内の生まれたばかりの蒸留所であればなおさらだ。厚岸(あっけし)蒸留所は、北海道の東、通称・道東(どうとう)と呼ばれる地域にある。(北海道はとても広い土地なので、本州の感覚で「同じ都道府県内」という感じではない。例えば札幌から厚岸までは車で5時間、350km。実に東京から名古屋までの距離に匹敵する!)
美しい自然と大きな海。牡蠣と湿原。長閑(のどか)な場所でのウィスキーづくり。ロマンティックだ。

同時に、怖くもある。ほかのウィスキーと同様に、フラットに接したいとも思う。だが表面的にどんなに否定しても、期待をして、そしてガッカリするのが怖くもある。

しかしそんなことを思っても思わなくても、グラスを手に取れば、香りが漂い、思考するより速いスピードで嗅覚は反応して、印象は決まってしまう。

さあ、グラスを手に取ってみよう。

厚岸シングルモルトスピリット 2018

【評価】
グラスから立ち上る香りは、堅い木の皮を装ったチョコレート。シュガーパウダーが、雪を表現しているのか。本物と見紛うパティシエの仕事。
口に含むと、熱いブランデーの焔が上がる。まるで若いボクサーのような真っ直ぐな眼差し。
重く決まる左ストレート。

【Kawasaki Point】
88point

【基本データ】
銘柄: 厚岸 Single Malt Spirit 2018 Non Peated(AKKESHI Single Malt Spirit 2018)
地域:北海道(Hokkaido)
樽: Bourbon(バーボン)
ボトル:Distillery Bottle (オフィシャル)

厚岸という地名はアイヌ語で「オヒョウニレの樹皮をはがすところ」

2018年1月にボトリング

まだフレッシュなシングルモルトは60度である

ノンピーティッド




レビュー:ブナハーブン1988 27yo BBR 美しい夜の・・・

Bunnahabhain 1988 27yo by Berry Bros & Rudd(BBRのブナハーブン1988 27年熟成)を飲んだ。89点。

BBR(ベリーブロス&ラッド)のボトリングだが、この星座シリーズのラベルは輸入元のウイスク・イーがつけたもののようだ。このウィスキーの蒸留日を誕生日ととらえ、いて座にしたようだ。ウィスキーはだいたい同じラベルのデザインになるので、変化があったほうがおもしろい。

ブナハーブン1988年蒸留 27年熟成

【評価】
そっと息を吸い込む。やわらかく鼻を包む煙。スウィートなのに緊張感がある。砂と砂の間に染み込む波を思わせる。やがてパッションフルーツ。
口に含む。前面のトロピカルな情熱の向こうに、ただただ消え去る煙。確かにあるが、つかみ取ることはできない。この相反する要素が、ウィスキーに物語を与える。
美しい夜の、意味深い短編の詩集。

【Kawasaki Point】
89point

【基本データ】
銘柄: Bunnahabhain (ブナハーブン)
地域:Islay(アイラ島)
樽: Burbon(バーボン)
ボトル:Berry Bros. & Rudd (ベリーブロス&ラッド)

Stellar Selection by Wisk-e

1988年12月12日に蒸留した原酒、「いて座」のラベル。

このいて座の絵は19世紀初頭に出版された星座カード「ウラニアの鏡」のものと思われる

砂と砂の間に染み込む波。

トロピカルな情熱の向こうに、ただただ消え去る煙

美しい夜の、意味深い短編の詩集。


初心者にオススメのウィスキーとは

さまざまなオススメの「角度」

「はじめてウィスキーを飲むなら、なにを飲めばいいですか」
という質問は、個人的にもよく聞かれるものだ。

その時々の思い付きを話したり、いっそ個性的な銘柄を挙げたり、その人の食や酒の好みを伺ってそれと似たようなものを挙げてみたりしてきたが、はたしてそれはどれぐらい役に立ったのだろうか。

とはいえ、その質問をする人にとっては、「ウィスキーを好きな人から、なにかひとつアドバイスがほしい」ということであったろうから、その要望には都度、答えることができていたのだろう。

きっと、具体的な銘柄をひとつ、その人が思う好きな銘柄を挙げることは、とても誠実な答えの一つだろうと思う。自分が好きなものを勧めることは、あらゆることの基本だろう。
ただ、それが本当にその人にオススメすべきものであったかどうかは、正直、よく答えがわからない。

もし「ウィスキー初心者のビッグデータ」でもあれば、Amazonが使う協調フィルタリングのアルゴリズムでもって、似たような好みの人を探り当てて、統計的にぴったりのオススメでも出すのだけれど、それもかなわない。
では、「初心者が好みそうな」バランスの取れた、まろやかなウィスキーはどうだろうか?これもきっとあてずっぽうにならざるを得ない。
または「よく売れているウィスキー」はどうだろうか。これはビッグデータ的な解釈に近いし、高い確率でおいしいと思ってもらえるのではないだろうか。酒屋さんの売れ筋ランキングを見てもらえばいいだろう。

初心者にオススメのウィスキーとは?


オススメのウィスキー「体験」とは


ではもうひとくせ、ふたくせあるような「おすすめ」を聞きたい人がいた場合はどうだろうか?(申し訳ない!この記事では最後までオススメ銘柄はでてこない。)

それを真摯に考えると、「初心者にオススメのウィスキー」はかなり難しいが「初心者にオススメのウィスキー体験」なら、少し実りあるアドバイスができるのではないかと思えてくる。
「自分がどんなウィスキーが好きかについて自信がない人」が初心者だとするならば、以下のようなウィスキー体験をしてみるのが、きっとその後のウィスキー人生にプラスになるはずだ。

どんなことでも初心者には「ガイド」があったほうがい。それが本やブログでもいいだろうし、おすすめのアルゴリズムでもランキングでもいいだろう。近いうちにウィスキーの知識が完ぺきなAIも登場してくるだろう。ただ、この時代にもっとも贅沢なガイドは、あなたに向き合ってくれる「生身の人間」であることは間違いない。

その意味で、ウィスキーの最高のインストラクターはバーテンダーだ。

(バーという場所への抵抗がある方は、ぜひこちらの記事を読んでみてほしい。:ウィスキー初心者が初めてバーで注文するとき、知っておきたいこと(前編)

初心者にとってバーテンダーに手ほどきをしてもらえることほど、良いウィスキー体験はないだろう。「お酒のことをちょっと知っていないとバーではなんだか恥ずかしい」と思うなら、それは間違いだ。むしろお酒のことをしらないことは素晴らしいことで、これからできるウィスキーの香味体験を思えば、出会いの衝撃を最大に愉しめるというよいポジションなのだ。


初心者とバーとウィスキー


できればバーテンダーに「ウィスキーのことを知らない」とストレートに告げてみよう。すると会話が始まり、おそらく目の前にいくつかのボトルが並ぶだろう。あるいは、会話の結果、ひとつのウィスキーを提示されるかもしれない。
大切なのは、ウィスキーのことをその場で教えてもらうことだ。そしてあなたがウィスキーを口に運ぶとき、バーテンダーはあなたの反応を見ていてくれるだろう。それによって、あなたに何をお勧めするかが変わってくるだろう。

あるいは(そういったバーが増えればいいと思って書くのだが)、バーによっては「初心者のためのテイスティング・セット」を提供してくれるところがあるかもしれない。つまり、2千円か3千円ぐらいで、5~6種類のウィスキーをほんの少量ずつ味わわせてくれるところだ。これがあれば素晴らしい初心者体験になるだろう。


なぜバーを頼っていいか?


だれでも同じボトルを購入できるこの時代において、ボトルを買って飲む方が圧倒的にmlあたりの価格はお得なのに、それでもバーが続くのはなぜだろうか?それは、バーとは「飲料」の提供にプラスして「体験」ができる場であるからだ。それは照明とインテリアと音楽がつくりだす雰囲気かもしれない。年季の入ったバーカウンターかもしれない。重たい扉を開けるときの感触かも知れない。あるいはバーテンダーが広げてくれるあなたのウィスキーの世界かもしれない。それらの「体験」にバーの本質がある限り、あなたがウィスキーの初心者として真っ先に頼りにしていいのは「バー」なのだ。
(むろん、あなたにとっておいしいと感じるウィスキーと、そうでないウィスキーとがあるように、バーについても好みが生まれるだろう。そうしたとき、あなたはもはや「初心者」ではない・・・)


参考になれば幸いだ。
今宵も、よいウィスキーライフを!