レポート:北海道ウィスキーフェス2018

2018年8月5日に開催された北海道ウイスキーフェス2018に行ってきた。
今年は北海道命名150年に当たる年であり、さまざまなイベントが開催されている。

開催が第一回のイベントとは思えない盛況ぶりだった。北国での開催が待ち望まれていたのかもしれない。国内のほとんどの蒸留所が参加していたし、インポーターや酒販の方も多かった。


時間のない方のために簡単にまとめてしまうと、「A. 原酒不足から既存蒸留所は品薄」「B. 意気込む新蒸留所(国内も国外も)」「C. ジンの強化」といったところだろうか。


A. 既存蒸留所はどこも「長熟は売っちゃいました」という感じで、「原酒不足ですみません」といったノリだ。新しいことは特に何もない。

B. 新規蒸留所の勢いは増している。国内外の蒸留所が我こそは!と名乗りを上げている。もともとウィスキーが好きで携わっている人が始めるパターンもあれば、日本酒や焼酎などのメーカーが参入する形もある。

C. これはAとも似ているが、熟成の必要がないジンを売り出す蒸留所が多い。あくまで本命はウィスキーだが、熟成している間に、世界的なジンブームに乗って稼ぎを確保し、名を売ろうという動きだ。


いくつか特筆すべきところをレポートする。

厚岸蒸留所

北海道の東に位置する厚岸(あっけし)蒸留所はまだ若い。この8月にニューボーン(ほぼ熟成していない原酒)の第二弾がリリースされるようで、すこしテイスティングした。

香りは、甘いナッツとドライイチジク。
口に含めばうすくペッパーが広がり、イチジクに説得力を持たせている。
熟成への期待が持てる。

厚岸は牡蠣でも有名。
いつかウィスキーとペアリングできる時が来るだろう。


顕著なイチジク香

LAKES レイクス

こちらも若い蒸留所。レイクス蒸留所は2014年オープン。The ONEはブレンデッドだ。こちらも少しテイスティング。

香りはスムース。だが必要な深みを有している。
口に含めば、う~んギリギリスコッチの矜持を保つ!

ブレンデッドで出荷量と味わいのバランスを保つ

ブレンデッドの隣にはジンも。面白さとみるか苦労とみるか。

COMPASS BOX

コンパスボックス『ノーネーム』。今年5月発売。もはや名づけが面倒になってしまったのか、「これだけの個性に名前なんかいりますか」という意味での名前らしい。かなりピーティですよ、との声かけ。
すこしだけテイスティング。

その香りは、小川のほとりの野いちご。
えいっ、と口に含む。拡張して行く煙、だがこのウィスキーは輪郭を保ったまま。スウィートなトーン。中心に残していく煙。


左の黒いラベルが「No Name」

かなりピーティだがスウィートだった


嘉之助蒸溜所

鹿児島の新しい蒸留所。KINOSUKEと読む。酒造メーカーが母体。ニューボーンをいただいた。写真は撮り忘れた。少し味見。

香は甘ったるい。
味わいはヘーゼルナッツ。チョコレート。

う~んいつかまたお会いする日があれば・・・。


紅櫻蒸留所

札幌の「いつかはウィスキーをつくりたい」と思っている、今はジンの蒸留所。BENIZAKURAと読む。
「スタンダード」をいただく。なかなかセンスあるボトルデザインだ。ボタニカルの一部に北海道産を使用。昆布なども。
香味の特徴はほぼない。少し柔らかいニューポット。昨今の多様化するジンの世界においてはボトルデザインに込められた1984の精神ほどの輝きは感じられない。

美しいボトルデザイン


Belgian OWL

ベルギー産ウィスキーのOWL=「フクロウ」。これも少し頂いた。

香りは、濃くて古い樽。
口当たりはスームスだが濃いコクがある。

フクロウは様々な国の神話的な鳥



GAIA FLOW 静岡蒸留所

新興系蒸留所のひとつガイアフロー。そろそろ若いウィスキーはリリースされるのでは。
「アンピーティッド」のサンプルをいただく。
香りは、誠実な木の香り。
ああ、飲んでも誠実。

つづけて「ピーティ」のサンプル。
香りは、焦がした酸味。
飲んでもやはり誠実な。

長熟を期待したくなるような、現時点で華やかさはないが質実剛健といった味わいであった。





KYRO キュロ 蒸留所

2014年蒸留開始のまだ若いフィンランドの蒸留所「キュロ蒸留所」。フィンランドといえばサウナ大国だが、サウナで仲間で集まっていた時に話が盛り上がってこの蒸留所ができたらしい。なんともフィンランドなお話!
この蒸留所の原酒が今回一番WOW!であった。繊細でかつ複雑、しかもシンプル。今ジンの世界に求めるものはここにあると思う。そしてまだ若いライウィスキーにも今後期待が持てる。

ジンの NAPUE ナプエ を頂く。
洗練された酸味のやわらかなジン。香りのバランスが秀逸!

ライウィスキーの ユーリ を頂く。
よりコクのある酸味だ。これは期待できる!

ツチキエルマ はニューポット。
これは最高!スモークがすこし香る。


まだ日本での正規の販売店が決まっていない状態と聞いた。なんともったいない!

美しいジン。これはうまい。

やや熟成したジン

ジントニックとして。ストレートで十分うまいのに。

サウナで思いついた5人の若者たち、らしい。


ツチキエルマ。うまい!

サウナの話は本当なのだろうか。
素敵だと思うけれど、日本だと
「座禅を組んでいるときにひらめいた」というような感じに近いのでは。
本当にそんなことがあるのだろうか。・・・そうであってほしい。


KOVAL蒸留所

アメリカはシカゴの新興系蒸留所。
Millet ミレット は、「キビ」、、そう「きび団子」の、あのキビを原料に使用したウィスキー。ライ麦から作ったのがらいウィスキーと呼ばれるので、キビウィスキーと呼んでいいだろう。攻めてる。
香りも味もアメリカン!ただ、やや柔らかい。

Four Grain フォーグレイン は、4つの穀物を使用。これはすごくおいしい。
アメリカンウィスキーがここまで複雑性を増してるとは!

キビでウィスキーとは!

この蒸留所の本気を見た一本「フォーグレイン」



最後にフィンランドのウィスキーを樽買いしたというバーの
プライベートカスク3年熟成を頂く。


以上、もちろん紹介しきれるものではないが、少しでも・・・雰囲気が伝わったならうれしい。
今宵もよいウィスキーライフを!