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ウィスキーの飲み方:初心者がストレートを味わうための7つの手順

もっとも魅力的で、とっつきにくい飲み方

ウィスキーという酒のもっとも美味い飲み方は、ストレートだが、もっとも“とっつきにくい”飲み方でもある。興味はあるけれど、ストレートはアルコールが強すぎてなんとなく敬遠している人も多いだろう。しかし実際は手順さえ知ってしまえば、ウィスキーのストレートはほぼ誰でも飲める。この記事では、初心者がストレートを味わうための手順をガイドをする。

もっとも魅力的な飲み方、ストレート。愉しむためには手順が必要。

ウィスキーのストレートはゴクゴク飲まない

ストレートのとっつきにくさは、なんと言ってもそのアルコール度数の高さにある。ビールなら5~8%、ワインなら10~15%といった度数だが、この度数の感覚でウィスキーを飲むと大変だ。ウィスキーの平均的な度数は40~60%といったところ。ウィスキーのストレートはごくごく飲まない。ほんのわずかに、少量、口に含むようにしてほしい。

かつての私も含め、この基本を知らない人は多い。学校では教えてくれないし、社会人になっても、誰かから教わらない限り「あんな高い度数の酒を飲む人は、きっと酒が強いに違いない!」と思ってしまうのも無理はない。有名メーカー各社のHPでさえ、ストレートの説明は「そのまま飲みます」ぐらいにしか書いていない不親切な状況では仕方ないが、実際はストレートを愉しむ人は、酒が強いわけではない。愉しみ方を知っているだけなのだ。


ウィスキーのストレートを愉しむ7つの手順

かならず成功するウィスキーのストレートの愉しみ方の手順を下記に書いた。度数が高くて飲みづらい、というハードルをらくらく乗り越えられるはず。

  1. グラスに注ぐ。この記事に掲載した写真のようなグラスが香りを集めやすいが、まずはこだわりすぎず。バーであれば、最適なグラスで出してくれるはず。
  2. さて、まずは色を愉しんで。といっても、「キレイだな」とか、「濃い色だな」といった程度でOK。色にもたくさんの情報が含まれているが、ここでは省こう。
  3. 次に香り。ストレートの最大の愉しみ。ただし、吸い込みすぎに注意。グラスと鼻を近づけすぎず、まずは遠めからそっと、一気に吸い込まず、ゆっくり吸い込んでほしい。ワインより、もっと繊細に。どんな香りがするだろうか。グラスをすこし揺らして、なかの液体をくるくる回してもいい。さて、ふたたび慎重に、どんな香りがするだろうか。
  4. いよいよ飲む。飲むというより、ほんの少量含む。唇にそっと液体をつける感じで。少しだけ口に含んでも、一気に飲み込んではいけない。舌の上でころがして、口の中をひとめぐりさせてみよう。どんな味や、そして香りがするだろうか。味わったなら、ゆっくり飲み込んで。
  5. 飲み込んだ後、すぐにもう一口、といってはいけない。飲み込んだ後も、香りが続くのがウィスキーという酒のおもしろいところ。余韻と呼ばれているが、この余韻も設計されている。ノドから上がってくる香りはどんなだろうか。口を閉じたまま鼻呼吸してみると、どんな香りがするだろうか。どれぐらいその余韻は続くだろうか。そして、どんな変化をしていくかも愉しんでほしい。
  6. さて、やっと次の一口、と行く前に、チェイサーを飲んでほしい。チェイサーとは“追っかけ”で飲む、水やソーダ水だ。ウィスキーとチェイサーは交互に飲む。口の中をリフレッシュするという効果と、アルコール度数の高い酒をゆっくり愉しむという効果がある。これを知っているかどうかは、初心者の分かれ目だ。
  7. 次の香りや、一口を。一杯あたり、20~30分かけて飲む。くれぐれもビールやワインのスピード感覚で飲むことは無謀だと覚えておいてほしい。ウィスキーの香りは30分なら30分の間で変化することがある。よく言う「ウィスキーが開く」というやつだ。ワインでもいうのだけれど、まるで香りのつぼみが花開くかのような、そんな体験もできる。
とにもかくにも、ウィスキーのストレートを愉しむこつは「ゆっくり」「少しずつ」だ。この基本をおさておけば、かなりとっつきやすくなるはずだ。


今宵も、よいウィスキーライフを。


補足:「どんな飲み方でもいい」に隠された本音

ちなみに、ウィスキーの飲み方なんて何でもいい、という立場をこのブログはとらない。そのありふれた意見なら、他をあたってほしい。たいていウィスキーを提供する側の人々は、いろいろ配慮して、公には“本音”を話せない。それこそストレートに“本音”を表現すれば、「ストレートが一番美味い」と思っているに違いなのだが、それではハイボールや水割りを否定しているように受け取られてしまう。だから、ストレート以外の飲み方をしている人に配慮するあまり、「飲み方はそれぞれ素晴らしい」と大人の意見を言ってしまう。究極は好みだし、それはそれで間違ってないのだが、飲み手としては、「先達の本音のオススメの飲み方を聞いた上で、自分で判断するよ。はじめっから本音を隠さないでくれよ」と思うものだ。だから当ブログでは意見をハッキリとさせているし、今後もそのつもりだ。
“ウィスキーをいつでも一番安定して、美味しく飲めるのがニート(ストレート)だ”
(参考記事:ウィスキーの飲み方は、ニートで。




カクテル:スコッチキルト Skye's 楽しい夜は・・

ウィスキーベースのカクテルは、その酒の歩んできた歴史にも興味を持たせてくれる。

「スコッチ・キルト」は、スコッチ・ウィスキー(スコットランドのウィスキー)と、ドランブイというリキュールをベースにしたカクテルだ。この「ドランブイ」、満足させる酒、という意味なのだけど、その誕生ストーリーも満足に値するものだ。
その昔、王の座をかけた戦いに敗れ、スカイ島に逃げ落ちたプリンス・チャールズ。彼の首には多額の賞金がかかっていたのだけど、敗れた彼を裏切らず、フランスに亡命させたのがマッキノン家。これに恩義を感じたプリンス・チャールズは、王家に伝わる「ドランブイ」のレシピを、マッキノン家に明かしたとな・・・。

今回はスコッチ・キルトを作るにあたって、そんなドランブイのゆかりの地、スカイ島でつくられる「タリスカー」というウィスキーがチョイスされた。

シェーカーにタリスカーとドランブイを・・・

そしてオレンジビターズ・・・

氷を入れて・・

シェイクされる直前のシェーカーを覗くと・・

シェイクが始まった

後もう少し・・・

シェイクがおわり・・

スコッチ・キルトが注がれた

オレンジピールをツイストして・・

スコッチ・キルトの完成


 【評価】
グラスに鼻をやれば、葉巻の煙が重厚な甘みと混じる。
口に含めば、少し背筋を伸ばして、お店の音楽に浸りたくなる。よく冷えており、棒アイスのような清涼感。
重厚でありながら、お菓子のようなチャーミングな甘み。楽しい夜にどうぞ。

【Kawasaki Point】
-
(カクテルには点数をつけない)

【基本データ】
カクテル名:「スコッチ・キルト Skye's」 ※私が勝手に名づけた
ベース銘柄:タリスカー10年、ドランブイ
Bartender:倉橋裕 (Kurahashi Yuh)


このスコッチ・キルト、一般的なレシピでは、シェイカーを振らない。グラスの中でステアするだけ。今回はタリスカーとドランブイというふたつのスカイ島生まれの酒をより調和させるため、シェイクされた。それが功を奏して、よい冷たさにつながっていた。


それにしてもウィスキーベースのカクテルには、さまざまなエピソードが隠されている・・。
ウィスキーを愉しむときには、その隠されたエピソードにも注目してほしい。きっと楽しい夜になるはずだ。


カクテル:ニューヨーク 甘い誘惑のオレンジ色

お洒落なカクテルは、ウィスキーを親しみやすい存在にしてくれる。
スタンダードカクテルの「ニューヨーク」といえば、あのオレンジ色が人気。大都会の朝日なのか夕日なのか、甘い誘惑なのか凛とした主張なのか・・。仕事帰りの女性が背筋を伸ばして飲んでいたなら、オッと目を引く、そんなイメージのカクテルだ。

癒しを求めたくなるオレンジの色合い

 【評価】
グラスに鼻をやれば、薬草の香りと、火薬、バラのエッセンス、ミント。
口に含み飲み込めば、ノドは熱く、口の中は冷たい。口に残るレモングラスの香り。

【Kawasaki Point】
-
(カクテルには点数をつけない)

【基本データ】
カクテル名:「ニューヨーク」
ベース銘柄:ワイルドターキー8年、カネマラ
Bartender:小嶋修 (Osamu Kojima)


ニューヨークという名前だけに、アメリカ・ウィスキー(バーボン)のワイルドターキーを使用している。それから今回は、アイリッシュのカネマラも使用。


大都会の朝日なのか夕日なのか、甘い誘惑なのか凛とした主張なのか・・

ノドは熱く、口の中は冷たい。口に残るレモングラスの香り。

カクテルの面白さは、癒しでありインスピレーションであるところだろう。
また、ウィスキーの別の魅力をぐっと引き立てること。

今夜も、よいウィスキーライフを。


カクテル:白州12年の粋な水割り OK Twist

ウィスキーを飲むならストレートを推奨している私だが(参考記事)、初めてウィスキーを飲むには、ウィスキーベースのカクテルが取っ掛かりやすいかもしれない。

今回紹介するのは、「白州の水割り」。

え、水割りってカクテル?と思うかもしれないけれど、水割りも、奥が深い。
その作り方ひとつで「すごいカクテル・・」となる。

オレンジピール(皮)をバーナーで炙って、香りを引き立て・・

叩いたミントの葉を乗せて、グラスをかぶせる



香りが移ったグラスに、白州12年を注ぐ・・・

軟水を注いで・・・
白州12年の水割り OK Twistの完成。


 【評価】
グラスに鼻をやれば、木の葉のうまみを感じる。乾燥したまつぼっくり。濡れた腐葉土。焼いたオレンジの苦味。
口に含めば、ほろ苦さを感じさせながら森の水、ごくっと飲み込めば、樽の木の香りをほわっと残す。第一印象からノドごしまで、苦味が温かく、爽やかにまとまりながらも、飲みごたえ充分。
都会的な苦味を加えた白州の水割りである。水割りだから、喉ごしまで愉しめる。

【Kawasaki Point】
-
(カクテルには点数をつけない)

【基本データ】
カクテル名:「白州の水割り OK Twist」
ベース銘柄:白州12年熟成 (HAKUSHU 12yo)
Bartender:小嶋修 (Osamu Kojima)

 ※今回のカクテルの名前は私がつけた。
単に「水割りです」と出されたが、勝手に、
「白州12年の水割り OK Twist (≒オサム・コジマ創作)」
と呼ぶことにした。


ウィスキーでカクテルを愉しむのも、また、良し。
そのウィスキーの魅力に気がついたなら、他のカクテルや、ぜひストレートでも味わってほしい。
きっとさらに愉しみが広がるだろう。

次回はよりクラシックなカクテルの「ニューヨーク」を取り上げる。女性ファンも多いお洒落なカクテルだ。お楽しみに。


お知らせ:ブログ『ウィスキーをもう一杯』自身について~人気記事など~

いつもお読みいただきありがとうございます。
このブログ『ウィスキーをもう一杯』は、初心者から達人まで、ウィスキー好きの人のための情報を提供しています。さまざまなウィスキーのレビューから、関連情報まで、一愛好家の立場から発信しております。おかげさまで開始より多くのアクセスを記録しています。

アクセス元は、ウィスキーの銘柄を指定しての検索や、USKEBAというウィスキー関連サイトや、TwitterFacebook, 記事を取り上げていただいた個人のブログからのリンクが多いようです。

お知らせまでに、このブログ自身の情報を下記にまとめております。


この『ウィスキーをもう一杯』というブログはなんですか?コンセプトは?
ウィスキー初心者の方が見て「ほほ~」と興味深く感じ、達人の方が見て「なるほど!」と思えるブログです。詳しくは「このブログの説明」というページをご覧ください。

レビューの点数はどのような基準ですか?
「レビューの基準」というページをご覧ください。
尚、点数が「90点台」、「80点台」、「70点台」、「60点台」などそれぞれの点数のボトルをまとめて見ることも出来ます。PCでご覧いただいている場合は、このページの右側に記事の「ラベル」がありますので、お好きなものをクリックしていただけます。

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もしPCからご覧になっているのであれば、記事の右側に「週間人気記事BEST4」と、さらに下の方に「月間人気記事BEST5」が掲載されています。
尚、このブログの開始から現在までのTOP記事は「ウィスキー初心者が初めてバーで注文するとき、知っておきたいこと(前編)」です。

書き手はどんな人ですか?なぜ実名ですか?
書き手の私は普通のウィスキー好きです。ウィスキーといえば、「裕福そうな」「素敵なオジサマ」が飲んでいるイメージがありますが、残念ながら私はどちらのイメージにも当てはまりません。また、お酒に強いわけでもなく、たくさん飲むこともありません。家にウィスキーのボトルは2~3本しかありませんし、しかもプレゼントで貰ったものです。このブログに掲載しているウィスキーは、私一人、もしくは友人と連れ立って行ったバーで勧められたものです。頻度は週に1回か2回です。そういった飲み方をなさっている方は多いでしょう。ただ、私はあるときにふと「これを記録してみよう」と思い立ちました。
ブログを始めるにあたり、私の忌憚なき意見が読む方にストレートに伝わるよう、実名としました。

お読みいただいているあなたへ
当ブログをお読みいただきありがとうございます。このブログは、ウィスキーのように「クセがある」でも、「そのクセが素敵だね」と言われるブログでありたいと考えています。また、その違いをわかっていただけるあなたに書き続けたいと思います。


以上、お知らせでございます。


なぜウィスキーは最初から美味いと思えないか? 後編

なぜウィスキーは最初から美味いと思えないか? 前編からの続き。
前編では、人には「経験値を重ねウィスキーを好きになる臨界点」があり、それは「アクワイアード・テイスト(後天的な味覚)」と呼ばれていることを紹介した。
後編ではさらに掘り下げて、人がいかに「アクワイアード・テイスト」を獲得するか、そしてウィスキーを好きになるためにはどのようにすれば良いかを紹介する。「ウィスキーを好きになるメカニズム」について書かれた文章はほとんど見当たらないから、この記事はボリュームを持たせた。

ウィスキーはいかに人を魅了するか
いかにアクワイアード・テイスト(=後天的な味覚)は育つのか。
まだ味覚が育っていない子供の頃を考えてみるとわかりやすい。

子供にとっての味覚とは

実は人間には先天的な味覚も存在する。子供の頃、文句なしに「うまい!」と感じるのは、「甘み」と「塩み」だ。「甘み」は「エネルギー源」を意味している。糖のエネルギーがなければ人間は生きていけない。また、「塩み」も同様に生命維持に不可欠だ。
子供の味覚にとって「苦味」が意味しているのは「毒」だ。判断力のないうちは苦味は拒否することが生きるために必要なことだ。また、「酸味」が意味しているのは「腐敗」で、これも拒否したほうが得策なのだ。
だからお父さんのビールを一口飲まされた子供は「大人はなぜこの茶色い液体を嬉しがるのか分からない」と心の底から思う。だってそれは子供の味覚にとっての「毒」だから。


食するものによって味覚が発達する

甘いものだけでは栄養が偏る。子供の成長とは、甘み以外の経験を重ねることだ。
そして下記の3つの要素で「アクワイアード・テイスト」は育つ。
  • 頻度
  • 関連情報の豊富さ

これはまさにウィスキーを旨いと思うようになるプロセスと同じなので、ひとつずつ解説していこう。

経験の頻度を増す

その味を経験する頻度が高ければ高いほど、つまり回数も多ければ多いほど、その味に対する感受性が深くなる。これは私がウィスキーを最初50杯飲むまでは美味いと感じず、その後に「美味いかも!」と感じ始めたことと同じだ。コーヒーに砂糖やミルクを入れないと美味いと感じなかったのに、いつしか砂糖の量が減り、ミルクなしになり、ブラックでも美味いと感じるようになるのは、コーヒーの経験頻度が多くなり、その味の繊細さが知覚出来るようになったからだ。

経験の幅が拡がる

ある種の味の経験の幅が大きければ大きいほど、アクワイアード・テイストは開発されていく。ビールの飲み始めに、アサヒもキリンもサッポロもサントリーもないが、同じビールの中で幅をもって経験していくと、これらの違いに気がつけるようになる。最初は普通のビールと黒ビールの違いに気がつくようになる。その後に、ホップを利かせたビールと、ドライなビールの違いに気がつくようになるだろう。むろん、A~Bまでの狭い経験よりも、より幅広くA~Zまで経験したほうが、深く味わいを獲得できる。


関連情報の豊富さ

実はここが最大のミソで、「関連情報」により味覚は変化する。
中の液体の色が分からないようにした黒いグラスで、味を確かめることを「ブラインド・テイスティング」と言うが、これでは本当の「味」は分からない。色も味に影響するからだ。(※ブラインド・テイスティングは特殊な遊び、またはブランド名に左右されない特殊な審査に使用する)
嗅覚と味覚以外は、味に関係ないのでは?と思うだろう。実際には、視覚情報も味に関係する。青く着色した肉は、不味く感じてしまう。実際にレモン果汁はほとんど入っていないのに、黄色く着色された液体は、その味わいに「レモン感」が増されて感じられる。
また、視覚だけでなく、口にするウィスキーの味や香りについての情報も味わいに影響する。ウィスキーに薬の味がすることや、フルーツの香り、蜂蜜の香り、バターの香りなどがする、という情報があれば、味の感じ方が違ってくる。


味わいと記憶

ところで、なぜ関連情報でウィスキーの味わいが違うか?
それは、味わいとは、味に関する記憶だからだ。それこそが「アクワイアード・テイスト」の正体だ。
例えば、子供の頃分からなかった「酸味」がうまく感じられるのは、腐敗ではなく、「醗酵」という自然作用の恩恵を知り、記憶するからだ。「この酸っぱさは、よい酸っぱさだ!」と。「煙たさ」がうまく感じられるのは、火を使い肉や野菜が美味くなることを知るから。バーベキューの美味さは、あの煙たさと共に記憶されている。だから、ウィスキーの煙たさに出会ったとき、その記憶を引っ張り出して「美味さ」として知覚できるようになる。「ムムッ、この煙たさはおいしさの証だ!私にはこの経験があるゾ!」と。


ウィスキーの“香り探し”

数百種の香りの複合体であるウィスキーは、まさにアクワイアード・テイストのかたまりだ。
しかし、はじめてウィスキーに出会ったとき、その香りがあまりに多すぎて、面食らってしまう。ひとつずつの味わいの記憶をうまく引っ張ってこれない。「そんなにいっぺんに言われてもよく分からないよ」状態になる。だから最初、ウィスキーは美味いと思えない。香りの情報量が多すぎるのだ。
では、どうすればよりウィスキーの美味さに気づけるか?
それには、「ウィスキーの香り探し」をしてほしい。ウィスキーはただ漫然と飲むのではなく、その香りの要素をさがしながら飲むことが重要だ。そのための補助として、ウィスキーのテイスティング・コメントがある。このテイスティング・コメントを参考にしながら「ウィスキーの香り探し」をする。
「バナナの香りか・・・うん、確かにそんな香りがするな。。潮の香りもするのか?どれどれ。ほー、そういわれりゃそうだ」などと、ひとつずつ香りを探して、確かめてほしい。
そうするとあなたの脳が「おや、確かにこの香りは前にも味わったことがあるぞ。これはいいという記憶があるゾ。とすると、このウィスキーは、いいものがたくさん詰まった液体だ!」と認識できるようになる。果ては「この香りのハーモニーは、アートだ!」とすら感じるようになる。

これがウィスキーというアクワイアード・テイストの獲得の仕方の最大のコツだ。
(このようにウィスキーとは、あなたの経験を映し出す酒だ。)


最後のまとめ

Q. なぜウィスキーは最初から美味いと思えないのか?
A. 後天的に獲得される「大人の味」(アクワイアード・テイスト)だから。

Q. どうしたらウィスキーが美味いと思えるようになるか?
A. ひとことで言えば「経験値を上げる」こと。
  次の3ステップを踏むと良い。

  STEP1. ちょくちょく飲んでみる(量ではない、頻度だ)
  STEP2. 多くの種類を試してみる(タイプの違うウィスキーを)
  STEP3. テイスティング・コメントを参考に「香りさがし」をする(これが最大のコツ)



この記事をきっかけに多くの人がウィスキーを愉しむことを願っています。
今宵も、良いウィスキー・ライフを。



なぜウィスキーは最初から美味いと思えないか? 前編

ウィスキーの飲み手としての大人(おとな)

二十歳(はたち)の誕生日にウィスキーを飲んだとして、それを美味いと感じることはないだろう。
法律上は大人でも、ウィスキーの飲み手としては、まだ大人とはいえない。

なぜウィスキーは最初から、うまい!と思えないのか?
言い換えれば、最初の内、ウィスキーがはまずいと感じられるのはなぜか?
ある時点まで「まずかった」ウィスキーが、ある時点から「うまく」感じるようになる。その時点はいつくるのか?

琥珀色の魅惑の液体、ウィスキー

ウィスキーの臨界点

私の場合は、ウィスキーなんて最初の50杯ぐらいは美味いと感じなかった。なんとなく、憧れで飲んでいた酒だ。ジャーキーをつまみながら、ジャックダニエルをロックで、そう言うとカッコよい。木のカウンターの焼肉屋さんで、そうですね、白州をロックで、そういうとなんだか大人な感じがした。けれども味はわからなかった。強めのチビチビやる酒だ、ぐらいに思っていた。
ある時点で「あれ、これって美味いかも」と思い始めて今に到る。今にして思えば、どのように味わえばよいか、ウィスキーってそもそもどんな酒か、そんな情報がもっとあれば50杯も飲まずに済んだのではと思うので、そんな人のために、このブログを始めたわけだ。

さて、誰にでも私が経験した最初の50杯のように、「経験値を重ねウィスキーを好きになる臨界点」がある。その臨界点より前までは美味いと感じないのだ。
これを、
アクワイアード・テイスト Acquired Taste = 後天的な味覚
と呼ぶ。
ネット上の多くの記事では、ここまでの説明で終わっているだろう。でも、ここからがポイントだ。
割と一般的な「アクワイアード・テイスト」には、何があるだろう?

  • わさび
  • サザエのにがいところ
  • コーヒー
  • ビール
  • シガー
  • 納豆
  • チーズ
  • 坦々麺
  • 本格カレー
  • キムチ
  • さば寿司
  • 燻製全般
  • ドリアン

こう並べると「あ~なるほどぉ」な感覚があるのではないだろうか。
味覚で説明すると、「酸味」「辛み」「苦味」「煙たさ」が代表的なアクワイアード・テイストだ。
もちろんあなたにも経験があるだろう。


では、人はどのようにしてこのアクワイアード・テイストを獲得するのだろうか?
そこにウィスキーを好きになるメカニズムのヒントがあるのではないだろうか?
それは後編に続く


ウィスキー初心者が初めてバーで注文するとき、知っておきたいこと(後編)

ウィスキー初心者が初めてバーで注文するとき、知っておきたいこと(前編)に続き、後編をお届けする。この記事は関心が高いみたいで、前編はすごいアクセス数だ。


Q. 飲みたいウィスキーの銘柄が決まりました。飲み方はどうしましょ?

飲み方はもちろん「ニート」にしてほしい。
ニート、というのがあまりに通っぽくてヤだなと思われる方は「ストレートで」とお願いしてみよう。きっと「度数が強いですが大丈夫ですか?」と聞いてくれるはずだ。あなたは、「少しずつ飲むので大丈夫」と答えてみよう。
尚、「チェイサーはいかがなさいますか」と尋ねられる場合がある。これは、「チェイサーは必要ですか?」という意味と、「チェイサーはお水ですか、ソーダですか」という意味が考えられる。チェイサーは水でもソーダでもいいが必ずもらおう。聞かれない場合は、後から勝手に出てくる。出てこなければ「チェイサーをください」と頼もう。

ただ、最初なので、もしどうしてもストレート(ニート)がキツくてだめそうな場合、ぎりぎりオン・ザ・ロックまでは認めよう。ウィスキーが徐々に薄まるので、段階的に香りを楽しめるだろう。(参考:ウィスキーの飲み方 オン・ザ・ロックは氷次第)ただし、あんまり氷をくるくると回し過ぎないように。急激に薄まってしまうのはNG.

ウィスキーを飲む際のチェイサーとは何か

チェイサーは、「追っかけ水」とか言われたりする。ウィスキーを飲んで、ときどきこのチェイサーの水かソーダを飲むと良い。ウィスキーのような度数の高い酒をストレートでガンガン飲むと、血中アルコール濃度が急上昇することもある。ちょくちょく水をはさみながら飲むと、身体に優しいのだ。二日酔いになりにくい。また、香りも都度リセットすることができ、一杯のウィスキーをなんども愉しめる。
※ときどきチェイサーにビールを指定する豪傑がいるが、酔いたいだけなのだろう。
※ロックや水割りのときにこのチェイサーを頼んでも何らかまわない。



Q. ウィスキーは何分ぐらいかけて飲めばいいですか?

初心者が犯しがちな間違いに、ウィスキーをぐびぐび飲んでしまうということがある。ペースは大切だ。一杯のウィスキーは通常20~30分かけて飲んでほしい。最初であればなおさらだ。あなたがもし普段から度数の強い酒をガンガンいくタイプならあまり心配はないが、普段はビールなど、アルコール度数が6~8%程度の酒をごくごく飲んでいる人なら、ウィスキーのような40~60%のアルコールの酒をつい同じ感覚で飲んでしまう心配がある。ウィスキーはちびちびやってほしい。特に最初はまず、香りを愉しむこと。でも、吸い込みすぎてはいけない。これもむせてしまうので、そっと鼻から香りを吸い込んでほしい。最初の一口は、舌でなめる程度で良い。つぎに、ほんの少量ふくむ。少量であればあるほどよい。何事も、徐々に増やしていくことが肝心だ。ときどきチェイサー(水)を飲んで、血中のアルコールを急激に増やすことを防止しよう。チェイサーはなくなれば注いでくれるので、一杯のウィスキーに一杯のチェイサーだなどと律儀に考えなくても良い。チェイサーはぐびぐび飲んでよい。


Q. ウィスキーを飲んでいる間、どうすればよいですか?

基本は黙って飲んでいれば良い。あなたがバーで黙ってウィスキーを愉しんでいれば、それは傍から見て「絵になっている」はず。手持ちぶさたに感じるかもしれないが、何もない一見無駄な時間を愉しむという感覚で良い。もし一杯のウィスキーに向き合えば、あなた自身は愉しむことで結構忙しいかもしれない。
もちろん、最初だということをバーテンダーに告げていれば「いかがですか」と感想を聞いてくれるだろう。これには正直に答えてよい。バーテンダーが次からあなたにウィスキーを薦める際、何を薦めるかの道しるべとなるからだ。バーテンダーはあなたの感想を必要としているし、そこからあなたが知りたいウィスキーのさまざまな情報を提供してくれるだろう。「このウィスキーはこんな香りがしませんか?」などと。あなたは、どれどれ、とまたもう一口飲んでみるだろう。「あ、確かに」と思いながら、あなたの香り体験は豊かになっていくに違いない。
ウィスキーは黙って飲んでもよし、誰かと語ってもよしなのだ。

タバコは吸ってよいですか?

構わない。バーで禁煙のところはほとんどないが、お店に確認すればOK。あなたがさりげなくタバコをカウンターに置いておけば、灰皿を出してくれるだろう。当然、まわりにやや配慮しながら。
ところでバーには、タバコどころか、葉巻を置いているところもある。それは凄く深い香りの世界だが、また別の機会に。


Q. ウィスキーを堪能しました。さて、どうやって帰ればよいですか?

ウィスキーを1~2杯堪能したところで、あなたが帰りたくなったとする。あとはお金を払って帰るだけだ。(もっと堪能しても良いけれど、酒の基本は“決して乱れず”だ。最初はスマートに帰るのがオススメ)
カウンターに座ったままで、バーテンダーの人に、帰る旨を告げよう。「美味しかったです、お会計おねがいします」でも良いし、「すみません、チェックお願いします」でも良いし、単に「ごちそうさまです」でも良いだろう。バーテンダーの人もあなたが初めての人なら明確に「お会計」「チェック」という言葉が合れば分かりやすい。
もしあなたがそのバーを気に入れば、お金を渡したときや、おつりをもらったときに、「またきます」と告げても良いだろう。

バーの会計「チャージ料」とは?

もし明細を渡してくれるバーなら、明細を見ると、「チャージ料」という項目で500~1500円ぐらいかかっているだろう(チャージが1500円もかかるところは高級ホテルとか、そんなイメージ。大体数百円なのでご安心を)。これは席料と考えよう。またバーでは頼まなくても、黙っておしぼりや、おつまみ(ナッツやピスタチオ、チョコレートなど)が出てくる。これらもチャージ料の中に含まれている。



Q. 帰る前にしておくことはありますか?

存分に愉しんでほしい。ただ、気に入ったウィスキーがあれば、なにかにメモすることをオススメする。ウィスキーの名前はだいたい地名で、覚えにくいカタカナが多い。せっかく気に入ったものがあるのであれば、次に飲むときの最初の一杯をそれにしてもいい。だから、覚えておけるようメモするのも手だ。


Q. 帰ったあとは?

楽しい酒を飲んだ、と記憶してほしい。もし楽しい酒を飲めたなら、このブログの記事を最低5人に熱烈に薦めてほしい。最後のは冗談だけど、きっとあなたは良いウィスキーデビューができるはずだ。
また、あなたがベテランなら、これらの記事をあなたが最初にバーでウィスキーを飲んだときのことを思い出して懐かしく思ってくれたに違いない。





ウィスキー初心者が初めてバーで注文するとき、知っておきたいこと(前編)

あのドキドキをもう一度

もし、あなたがこれまでバーでウィスキーを頼んだことがなければ、下記の記事が参考になる。もし、あなたが経験豊富な人なら、下記の記事は、はじめてのドキドキ感を思い出させてくれるだろう。

この記事は長めなので前後編に分かれている。この記事は前編。


Q. どのバーに行ったらいいですか?

一番最初に悩むのは、やはり店だろう。バー選びでは2つの方法がある。

バー選びその1: 信頼できる人に連れて行ってもらう

やはり先達というのはありがたいもので、初めての店に入るときに、誰かに連れて行ってもらうのが一番安心できる。もちろんゲストとして扱ってもらえるし、頼み方から、価格まで、分かった人が隣に居るのはその人の見よう見まねができ、大変に心強いものだ。

バー選びその2: インターネットで検索しておく

バーの重たい扉を開けなくとも、検索すればいい。おすすめの検索方法は、「ウィスキー バー ○○(地名)」での検索だ。お店のHPから、誰かのレビューまでさまざま引っかかる。そのバーの大体の価格帯、営業時間や、定休日などの情報は必須だ。また、気に入ればリピーターになるかもしれないので、できるかぎりウィスキーに力を入れていそうなバーを探り当てよう。
ちなみに「ここで異性を口説いてください」という感じのムーディーな色付き照明の空間のところは、たいていがお酒よりもおしゃべりのための場だ。もし自分ひとりで行っても、静かに座って飲む姿が想像できるインテリアのバーを選ぶと良い。
尚、バーは予約してもしなくても良いが、ほとんどその必要はない。バーに行列はできない。入れなければ、また今度。無駄足を避けるために、行く直前に席が空いているかどうか確認の電話をするといい。


Q. お店に着きました。どのウィスキーを選んだらいいですか?

ご注文は?と言われたとき、なんと言えばよいのだろう。ウィスキーを飲みたいのは確かなのだけど・・。
また、お店によってメニューがあったり、なかったり。どうすればよいだろうか。

注文するウィスキーの銘柄選びその1: 決まった銘柄を注文する

すでに決めている銘柄があるなら、「○○はありますか」と頼んでみよう。
できれば年数も告げよう。「○○の○年をください」と。もしかしたらそのバーにはその銘柄は置いていないかもしれない。銘柄はあっても、思う年数のものはないかもしれない。おそらくバーテンダーの方は「こういうものならあります」と代替案を提示してくれるはずだ。嫌いな銘柄でない限り、従ってみよう。


注文するウィスキーの銘柄選びその2: バーテンダーさんに相談する

もし銘柄が分からなくても、あせる事はない。およそ地球上のほとんどの人間は、ウィスキーの銘柄なんて知らない。ウィスキーの銘柄なんて、知っているほうが圧倒的に少数派だ。知らなくて当然の顔をしていればいいのだ。
「なにかウィスキーを飲みたいんですが、よく知らないんです。なにがオススメでしょうか?」のひと言で充分だ。もしこのひと言で、困った顔をするようなバーテンダーなら、その場で帰っても良い。まぁ席に座った以上、一杯だけ付き合ってあげるのも良し。ただ、ほとんどのバーテンダーは「わかりました。こういうのはいかがですか?」とか「最初でしたらこういったものは?」などと聞いてくれるだろう。デキるバーテンダーなら、他のお酒や料理などを引き合いに出してあなたの好みを探ろうとするだろう。心からウィスキーが好きなバーテンダーなら「ウィスキーファンをひとり増やせるかもしれない!」と目の奥が輝いているはずだ。
いずれにせよ、「私は初心者です」と腹を割り、バーテンダーさんとコミュニケーションをとることが肝要だ。もちろん、その際に、あなたの好みに関するできる限りの情報を提供しよう。

一杯いくら?

最初に「初心者です」と腹を割れば、高いものを薦められることはない。ただ、気をつけておかないと、候補の中から、自分で高いものを選んでしまう場合がある。目安となるのは年数だ。一般的に長熟のウィスキーは価格が高い。12年までのものにしよう。幅があるので何ともいえないが、1杯あたり800~2000円だろう。値段を聞くのは野暮じゃない。堂々と「これだと1杯いくらですか?」と聞けばよい。返ってきた答えがもし予算内なら「ではそれをください」と頼もう。


前編はここまで。気になる飲み方や、飲んでいる最中、立ち去り方など、後編は後日UPする。

ウィスキー初心者が初めてバーで注文するとき、知っておきたいこと(後編)



ウィスキーの飲み方 オン・ザ・ロックは氷次第

ウィスキーの飲み方はニート(ストレート)が一番だ。
ほかの飲み方はすべてデメリットがあるため、やめたほうがいい。
(参照:ウィスキーの飲み方は、ニートで

というのが私の基本姿勢だが、そんな私がなぜオン・ザ・ロックにもこだわりを持つのか?
それはオン・ザ・ロックが、とてもカッコいい飲み方だからだ。

琥珀色のウィスキーの中に浮かんだ氷の塊、その氷が放つ光。
ゆっくりとグラスを傾けると、光がさまざまに反射する。
少しずつ融けていく氷が、時間とともに味と香りをグラデーションする。

飲み終わると、氷の塊はすこし小さくなっている。
手につかんだグラスを回すと、氷がグラスにぶつかってキレイで涼しい音を立てる。

透明な氷のオン・ザ・ロック


まさにオン・ザ・ロックは、照明が薄暗いバーでこそ生きる洒落た飲み方だ。
(ちなみに、季節は夏が一番だ。まだクーラーがなかった時代の紳士の飲み物のイメージ)

ただ、気をつけてほしい。
オン・ザ・ロックは、とてもダサくなりがちな飲み方でもある。

そのポイントは、氷の質だ。
もしあなたがオン・ザ・ロックを頼んで、業務用冷蔵庫で作ったような気泡だらけの氷で出てきたなら、そのバーでは二度とオン・ザ・ロックを頼んではいけない。最低限、氷は透明でなければならない。
それも、「オン・ザ・ロックス」ではなく「オン・ザ・ロック」の形でなければならない。
もしグラスの中に2つ以上の氷が入っていたなら、失格だ。
グラスの中の氷はただひとつ、大きな塊が入っていなければならない。

これらのこだわりには、もちろん根拠がある。
一杯のウィスキーを愉しむ最適な時間は15~30分だ。その時間をかけて、ゆっくりと融けていく氷が最低限オン・ザ・ロックの礼儀なのだ。そのためには、氷屋さんで作った氷でなければならず、バーはコストをかけなければならない。

オン・ザ・ロックは、冷えていればいいというものじゃない。
もし冷凍庫から出てきた氷が何個か適当に入っていたら、すぐ溶けて、何を味わっているのか分からないままにそのウィスキーを飲み干さなければならなくなる。これはつくり手に失礼な飲み方だ。

とにかく氷の質で判断してほしい。
氷の質にこだわるバーでは、溶けにくいように表面積が小さくなるカットがされているだろう。球体になっていたり、ダイヤモンドカットだったり。

それらの氷の工夫を眺めることも、オン・ザ・ロックの魅力だ。
ともかく、オン・ザ・ロックは氷にこだわってほしい。




ウィスキーの飲み方は、ニートで。

結局、ウィスキーの一番美味しい飲み方はなんだろうか?

ご存知のようにウィスキーには飲み方の種類がいくつかある。
ストレートや、水割り、なかでもトワイスアップや、オン・ザ・ロックやら、ホットウィスキー、最近流行りのハイボール(ソーダ割り)などがある。

それぞれの飲み方に薀蓄があり、人によって流儀が決まっている場合もあるし、同じ人でもその日の気分や、このウィスキーにはこの飲み方、みたいに決めている人もいる。

だから、インターネット上に存在するどの記事を読んだって「正解の飲み方はない。好きなように飲むのが一番」と書かれている。どのバーで尋ねても、おそらくそんな答え方をされるに違いない。

ただこの記事にたどり着いたあなたには、上記のような毒にも薬にもならないような言葉ではなく、本当に私が一番良いと思っている飲み方を言ってあげたい。すなわち、、


ウィスキーはニートで飲んでください、と。


ウィスキーをいつでも一番安定して、美味しく飲めるのがニートだ。
ニートとは、ストレートのこと。Non Employment or Education... ではなく、NEATで、スコットランドでは「気ままに」という意味らしい。


ニート(ストレート)が一番美味しい3つの理由

1. 作り手の意図を感じられる
ウィスキーを瓶詰めする際のアルコール度数に、作り手はこだわりがある。そのウィスキーの香りがもっとも良く、個性が際立つアルコール度数まで加水して、瓶詰めされているのだ。アルコールの度数というのは、そのウィスキーの香り体験に大きな影響を与える。マスターブレンダーが「これで飲んでくれ」という状態が、瓶詰めされたままの状態なのだ。

2. 冷やすと香りが飛ぶ
ウィスキーは常温で味わってほしい。温度が低いと、人間は香りや味に対して鈍感になってしまう。
常温のコーラが甘ったるいのと同じで、冷やしたウィスキーは味気ない。

3. 加水すると繊細さが失われる
当たり前だが、加水するとウィスキーは薄まり、繊細な味と香りが消失してしまう。ただ、加水は非常に悩ましい。なぜなら、加水することにより気がつくことのできる香りも存在するからだ。しかし飽くまでも加水は、ストレートで味わった後の、補助的な愉しみ方だろう。


だからウィスキーを飲むなら、ニート(ストレート)で味わってほしい。

ニートのウィスキーと、チェイサー(ソーダ。光の関係で琥珀色に見える)

以上、賛否両論あるかもしれないが、それがまたウィスキーを飲む夜を楽しくさせる。
飲み方も意見も、ニート(気ままに)で。