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Yuji Kawasaki そのウィスキーをもう一杯: エッセイ:バーの知識

活字とウィスキーと空席

拙著『Japanese Whisky』が出版されてより、数か月間。いろいろな方と語り合う機会に恵まれました。それは私の「バー体験」をより豊かにしてくれるものでした。
その経験を言葉にして、数人の方とシェアしていました。万人向けではないけれど、バーが好きな方の中にすこし共感があれば嬉しいです。




活字とウィスキーと空席


活字は踊る
本の上で
ブログから飛び出して

もともとそれは
バーの暗いカウンターの上で
ひらひらと踊っていたのだけど

きらきらひかるグラスと
ウィスキーのあやしい液体に
すっかり魅せられてしまった!

活字たちは気持ちが高ぶって
多くの人に会いに行こう!と思ったのだ

・・・それはやがて、
フランスでInstagramにのっかり
スコットランドでNewsになり、
アメリカでRetweetされる

もとはといえば、活字たちは、
ただの言葉
それも、他愛のない言葉

あるかどうかもわからない、
バーで流れるジャズの、音と音のスキ間に消えてしまう、
そんな他愛もない言葉

翌朝には忘れ去られてしまうだろう、
その言葉たち


活字たちはもともと存在しない


この街で行き交う人々が
どんなに忙しそうで、
どんなに暗い顔をしても、
あるいは楽しいことがあっても、
笑い声が聞こえたとしても、
それらはまるで風のように透明で、
よく考えれば、ふたしかな存在


行き交う人々のなかの
ひとりの若者が、
バーの重たい扉を開ける
するとそこには空席がある

その空席は語りかける

透明な風のような若者に、
「座っていけよ」と

若者はついその気になり腰掛ける

その若者は空席を喜ぶ
バーテンダーや常連客もきっと、
若者が空席に出会えたことを、
微笑ましく思っていただろう

空席がひとつ消えたとき、
若者には居場所が与えられる

透明な空っぽのグラスには、
ウィスキーが注がれる

若者の透明なこころに生まれたことばたちは、
やがて活字となる


すべては、
このバーで生まれた言葉たち!


活字と、ウィスキーと、空席は、
ひととおりの、物語

活字と、ウィスキーと、空席は、
ひととおりの、感謝のことば

「活字と ウィスキーと 空席」は、
あしたもつづく、素敵ななにか




Yuji Kawasaki そのウィスキーをもう一杯: エッセイ:バーの知識

初心者にオススメのウィスキーとは

さまざまなオススメの「角度」

「はじめてウィスキーを飲むなら、なにを飲めばいいですか」
という質問は、個人的にもよく聞かれるものだ。

その時々の思い付きを話したり、いっそ個性的な銘柄を挙げたり、その人の食や酒の好みを伺ってそれと似たようなものを挙げてみたりしてきたが、はたしてそれはどれぐらい役に立ったのだろうか。

とはいえ、その質問をする人にとっては、「ウィスキーを好きな人から、なにかひとつアドバイスがほしい」ということであったろうから、その要望には都度、答えることができていたのだろう。

きっと、具体的な銘柄をひとつ、その人が思う好きな銘柄を挙げることは、とても誠実な答えの一つだろうと思う。自分が好きなものを勧めることは、あらゆることの基本だろう。
ただ、それが本当にその人にオススメすべきものであったかどうかは、正直、よく答えがわからない。

もし「ウィスキー初心者のビッグデータ」でもあれば、Amazonが使う協調フィルタリングのアルゴリズムでもって、似たような好みの人を探り当てて、統計的にぴったりのオススメでも出すのだけれど、それもかなわない。
では、「初心者が好みそうな」バランスの取れた、まろやかなウィスキーはどうだろうか?これもきっとあてずっぽうにならざるを得ない。
または「よく売れているウィスキー」はどうだろうか。これはビッグデータ的な解釈に近いし、高い確率でおいしいと思ってもらえるのではないだろうか。酒屋さんの売れ筋ランキングを見てもらえばいいだろう。

初心者にオススメのウィスキーとは?


オススメのウィスキー「体験」とは


ではもうひとくせ、ふたくせあるような「おすすめ」を聞きたい人がいた場合はどうだろうか?(申し訳ない!この記事では最後までオススメ銘柄はでてこない。)

それを真摯に考えると、「初心者にオススメのウィスキー」はかなり難しいが「初心者にオススメのウィスキー体験」なら、少し実りあるアドバイスができるのではないかと思えてくる。
「自分がどんなウィスキーが好きかについて自信がない人」が初心者だとするならば、以下のようなウィスキー体験をしてみるのが、きっとその後のウィスキー人生にプラスになるはずだ。

どんなことでも初心者には「ガイド」があったほうがい。それが本やブログでもいいだろうし、おすすめのアルゴリズムでもランキングでもいいだろう。近いうちにウィスキーの知識が完ぺきなAIも登場してくるだろう。ただ、この時代にもっとも贅沢なガイドは、あなたに向き合ってくれる「生身の人間」であることは間違いない。

その意味で、ウィスキーの最高のインストラクターはバーテンダーだ。

(バーという場所への抵抗がある方は、ぜひこちらの記事を読んでみてほしい。:ウィスキー初心者が初めてバーで注文するとき、知っておきたいこと(前編)

初心者にとってバーテンダーに手ほどきをしてもらえることほど、良いウィスキー体験はないだろう。「お酒のことをちょっと知っていないとバーではなんだか恥ずかしい」と思うなら、それは間違いだ。むしろお酒のことをしらないことは素晴らしいことで、これからできるウィスキーの香味体験を思えば、出会いの衝撃を最大に愉しめるというよいポジションなのだ。


初心者とバーとウィスキー


できればバーテンダーに「ウィスキーのことを知らない」とストレートに告げてみよう。すると会話が始まり、おそらく目の前にいくつかのボトルが並ぶだろう。あるいは、会話の結果、ひとつのウィスキーを提示されるかもしれない。
大切なのは、ウィスキーのことをその場で教えてもらうことだ。そしてあなたがウィスキーを口に運ぶとき、バーテンダーはあなたの反応を見ていてくれるだろう。それによって、あなたに何をお勧めするかが変わってくるだろう。

あるいは(そういったバーが増えればいいと思って書くのだが)、バーによっては「初心者のためのテイスティング・セット」を提供してくれるところがあるかもしれない。つまり、2千円か3千円ぐらいで、5~6種類のウィスキーをほんの少量ずつ味わわせてくれるところだ。これがあれば素晴らしい初心者体験になるだろう。


なぜバーを頼っていいか?


だれでも同じボトルを購入できるこの時代において、ボトルを買って飲む方が圧倒的にmlあたりの価格はお得なのに、それでもバーが続くのはなぜだろうか?それは、バーとは「飲料」の提供にプラスして「体験」ができる場であるからだ。それは照明とインテリアと音楽がつくりだす雰囲気かもしれない。年季の入ったバーカウンターかもしれない。重たい扉を開けるときの感触かも知れない。あるいはバーテンダーが広げてくれるあなたのウィスキーの世界かもしれない。それらの「体験」にバーの本質がある限り、あなたがウィスキーの初心者として真っ先に頼りにしていいのは「バー」なのだ。
(むろん、あなたにとっておいしいと感じるウィスキーと、そうでないウィスキーとがあるように、バーについても好みが生まれるだろう。そうしたとき、あなたはもはや「初心者」ではない・・・)


参考になれば幸いだ。
今宵も、よいウィスキーライフを!


Yuji Kawasaki そのウィスキーをもう一杯: エッセイ:バーの知識

書評:北のライオン 大人のウィスキー漫画

もしも、ウィスキーのことを好きになる、ちょっとほろ苦くて、大人の、キレイな一枚一枚の絵がつらなった、粋なストーリーの漫画があったなら・・・?

北のライオン(1)
北のライオン(1)

ぜひ紹介したい漫画がある。『北のライオン』は、まさに冒頭に挙げたような要素のつまった漫画だ。コミック版はA4版で全ページフルカラー、わせせいぞうの綺麗な絵をじっくり眺めるのにふさわしいサイズだ。(Kindle版もあるけれど、この作品に関しては印刷の美しさが意味をもってくると思う。今ドキちょっと珍しい・・・)

毎回、ひとつのウィスキーがさらりとおシャレに登場する。決してウィスキーのウンチクが主体の漫画ではない。ウィスキー自体と、それよりももっとウィスキーを取り囲む人々への愛にあふれている作品だ。

主人公のライオンは、日本語が話せない。Keiko's Barという、亡き妻の名をとったバーを営んでいる。バーを訪れる人々のさまざまなストーリーが、どのコマをとっても額に入れて壁に飾りたいような絵で、しっとりと展開していく。

さびしい男の背中・・・、かつて愛した恋人・・・、きっぱりとした強い女の飲み方・・・、大和撫子な女の小唄・・・、故郷を想う人の・・・・

どの客人に対しても、ライオンは多くを語らず、いつもやさしい。
実際、現実のバーでも多くの「ちょっと良い話」がたくさんあると思うが、それらは毎夜、当事者の記憶の中だけに留まり生きつづけていく。だからバーという場所は、初心者にはわかりづらく、当事者にとっては大切な場所になる。
この作品は、そういったほとんど世に出ることのないバーでの「良い話」や、「大人の美しさ」みたいなものを、ライオンのKeiko's Barへ美しく投影しているのだろう。


ウィスキー好きに贈りたい秀逸な作品。


北のライオン(1)
北のライオン(1)




Yuji Kawasaki そのウィスキーをもう一杯: エッセイ:バーの知識

初心者にも分かりやすい:Bar(バー)はどんな場所? ~大人のため息編~

このシリーズでは、初心者の方にも分かりやすく、さまざまなBar(バー)の魅力を紹介する。
意外と気楽編』につづき、今回は、『 大人のため息 』編。 静かなバーの魅力とは?

オーセンティック・バー

もしも、心のどこかが満たされないままで、
「騒がしさに囲まれたまま日常がどんどん過ぎていく」という感覚をおぼえているなら、
あなたにはBar(バー)という場所がオススメだ。

バーといっても、ここで言っているのは、ダーツバーでもなければ、ガールズバーとも違う。
わりと静かな「オーセンティック・バー」のことだ。


オーセンティック・バーとは?

オーセンティック・バーとは、つまり静かなバーだ。言葉を直訳すれば、「正統派のバー」となるが、ワイワイやるよりも、しっとりとお酒を飲む感じのバーだ。このオーセンティック・バーの良さは、ワイワイ系のバーでは得られない、ディープなリラックスがある。
もしあなたが日常で肩肘張っていろいろと疲れて、そんなときにワイワイ系のバーでワーッとやるのは、さらにぐったりするかも知れない。でもそんなときに、肩肘張った大人がふっと力を抜いて、リラックスできるのがオーセンティック・バーだ。(家だと日常過ぎる)
そこは「大人がため息をつける場所」だ。ネクタイをゆるめて、重たいバッグを肩から外して、何なら腕時計もケータイもしまってしまおう、そして、ため息をひとつ。・・・心のこりがほぐれるだろう。


どんな場所?

ほとんどの場合、そのバーの扉は厚く、外から中が見えない。あえてそうしてある。外の世界と遮断された空間であるからこそ、リラックスできる。
扉を開けて入れば、わりと静かな音楽がかかっているだろう。お客もいるけどあまり大きな声で話してないだろう。酒のボトル以外の飾りっ気は少ない。シンプルな空間で、時計もない(少しだけ時間を忘れてほしい)。
そこでの主役は、空間と、お酒と、「あなたの時間」だ。あなたの時間を満喫すればいい。そして、そのサポートとして、つまり添え役としてバーテンダーがいて助けてくれる。
あなたはバーテンダーと会話をするかもしれないし、笑い声もあるだろう。ただ、皆、バカ騒ぎではなく大人の会話、というだけだ。


じゃ、どうやって愉しめばいい?

――会話は?
とくにしなくてもいい。ひとりで黙って飲んでいてもよい(それもカッコよい)。話したければ話せばいい。バーでの沈黙は気まずくない。バーテンダーもそっとしておいてくれるだろう。沈黙は、バーにとってのBGMのひとつだ。

――なにをすればよい?
頼んだカクテルや、ウィスキーをじっくり味わうだけもよし、味わいながらあれこれ思いを巡らすもよし
あなたは、グラスを傾けながら、いろんなことを思う。日常を忘れて、過去に思いをめぐらせて、楽しい思い出や切ない思い出に浸ってみるもよし、未来はこうなるかなと夢想してもよし(ぜひ楽しい未来を思い描いて)。

つまり、BAR(バー)とは、自分との時間をつくる場所だ。あなたの身体はバーの椅子に腰を下ろしているが、心はもっと自由でよい。そうこうして飲んでいるうちに、お酒の香りにも助けられて、いままでガチガチに固まっていた「これはこうだ」というものの見方が、「いや、こうも考えられるかな」「そんなに難しく考えなくてもよかったかな」という見方もできるようになる。これがバーのリラックスの秘密。明日への活力が得られる。


どんなときに行けばいい?

ではどんなときにBAR(バー)に行けばよいだろう?下記にリストアップしたので参考にしてほしい。

  • トラブルが続いて少し疲れたとき (ため息をつきに行くのだ)
  • 何かに成功して、充実感を噛みしめたいとき (勝利に酔いしれる)
  • みんなとワイワイやった後、すこしクールダウンしたいとき (このまま家に帰りたくない)
  • このごろ忙しくて、自分の歩みを振り返ってないなと思ったとき (ちょっとほっとしたい)
  • なんだか分からないけれど、もやもやしたとき (気分に名前が付かないときもある)
  • 上記のすべてが入り混じった複雑な気分のとき (なんだか整理したい)


もしあなたがバー初心者で、バーの探し方や、注文の仕方、マナーについて知りたければこの記事が役に立つだろう。



ぜひBar(バー)の世界を愉しんでほしい。



Yuji Kawasaki そのウィスキーをもう一杯: エッセイ:バーの知識

初心者にも分かりやすい:Bar(バー)はどんな場所? ~意外と気楽編~

このシリーズでは、初心者の方にも分かりやすく、さまざまなBar(バー)の魅力を紹介する。
今回は、『 意外と気楽 』編。実は気楽に愉しめるバーの魅力とは?


もともと単なる酒場

Bar(バー)というと、なんだかカタッ苦しいイメージがあって、すごくドレッシーな格好じゃなきゃダメとか、フォーマルじゃなきゃとか、しきたりとかルールとかマナーとかたくさんありそうとか、ついでにマスターは頑固じゃないか!?とか、「ああ、そんなにいろいろ覚えなきゃいけないんなら、別に行かないよ」と思われがちな場所だ。

そのイメージは、だいたい間違いか、極端だ。

バーはもともと単に「酒場」であって、酒場であるからには、気楽な場所である。
極端なイメージになりがちなBar(バー)というものを、改めて説明すると、
世界各地の酒を集めて、この酒が香りがいいとかどうだとか、この酒とこの果物を混ぜると美味いとか、色がキレイだとか、酒にまつわる楽しいことを毎夜繰り広げていて、効率よく酒を出すためにカウンターをこしらえて、会話の邪魔にならない音楽を流している場所

という感じになる。要は「酒好きの楽しい場所」っていうことだ。
これがBar(バー)の定義であって、特別な服装とか特別なマナーはない


服装の気楽さ

けれど、「どんな服装で行けばいい?すごく緊張する」と思われる方は意外と多い。
ほとんどのバーではジーパンにTシャツでOKな懐の深さ、ではあるが、これでも不安な人に一応の目安を示しておくと「デパートに行くぐらい」の格好でOKだ。

Tシャツでウィスキーを愉しむ著者。日本の夏は暑いのだから。

「近所はOKだけど、デパートは無理だな」というラインの格好は、ちょっと考えたほうがいいが、普通の格好でデパートに行くぐらいの感じでよい。デパートが分かりづらければ、ファッションビル、人目の多い場所、などで違和感がない格好であればOKだ。ホテルのバーであれば、「そのホテルのロビーで違和感がない格好」だったら大体大丈夫だ。

(だいたいイギリスのような階級社会でもない日本で、ドレスコードなどほとんど無意味だと私は思っている。また、ドレスコードを言うなら、バーボン飲むならジーンズでいいでしょとか、そういう話になる。スーツでバーボンなんてそれこそドレスコード違反になってしまう。あ、これは蛇足)

ちなみにバーテンダーの人は割りとシャキっとした格好の場合があるが、同じ系統で揃える必要はない。どうしても不安なら、男性なら最初は「襟付き」のシャツでも着ていればいい。さらに不安ならジャケットを羽織ってもいい。数回も行けば、服装がさほど重要でないことが分かるだろう。

※ごくごく稀に(1%未満の確率で)ドレスコードが存在するバーもある。大体入る前に雰囲気が違うので誰でもわかる。ひとまずは行かなければいい。99%のバーにドレスコードはない。

※とはいえ、タンクトップとビーチサンダルはラフすぎて大体どこでも嫌がられる。


酒の知識など必要ない気楽さ

「お酒の知識がほとんどなくて、ビールか酎ハイぐらいしか知らないから、本格的なバーには行きづらいな」という人も、気楽にいけるのがバーだ。バーテンダーは、お酒のインストラクターでもあるから、知識ゼロからバッチリサポートしてくれる。よいバーテンダーであるほど、あなたの知識レベルに合わせて話をしてくれるだろう。(といっても、質問攻めにしてはダメだし、完璧な知識を求めてもいけない)


結局「うまい」か「まずい」かの気楽さ

「お酒の味なんかよく分からない」という場合も、気にしなくていい。結局は「うまい」か「まずい」かの話だからだ。そして、酒のつくり手やバーテンダーは、どうにかしてあなたの「うまい」を引き出そうとしてくれている。
だから、気楽に飲んで、その感想を持てばよい。もちろんのこと、その感想に正解も不正解もないのだ。


こんなシチュエーションで気楽にいける

「どんなときにバーに行ったらいいの!?」と思われる方のために、ちょっと例を挙げてみよう。

  • 仕事帰りに同僚とふらっと
  • 仕事帰りにひとりで一杯
  • 食事をした後に少し落ち着きたくて寄ってみる
  • なんだかお酒が飲みたくなってドアを開ける
  • 人恋しくなって行ってみる
  • 独りになりたくて席に座る
  • お酒のことを知りたくなって行ってみる
  • デートでちょっとしっとり
  • 人と待ち合わせまでちょっと時間が空いたとき


もしあなたがバー初心者なら、上記の「特別な服装や特別なマナーはない、という気楽さ」を理解してほしい。それが基本だ。それでも、もっと知りたい、ということであれば、「バーの探し方」や、「注文の仕方」、「マナー」について書かれたこの記事が役に立つだろう。

ぜひ気楽に、Bar(バー)の世界を愉しんでほしい。



Yuji Kawasaki そのウィスキーをもう一杯: エッセイ:バーの知識

新・バーの十戒

「バーの十戒」と言えば、かの有名なマンガ「Bartender」の作者の城アラキさんが示したものだ。
例えば「カウンターで寝てはいけない」などマナーについて書かれている。
この「バーの十戒」に敬意を示しつつ、「新・バーの十戒」を発表する。「新・バーの十戒」は、より初心者にも分かりやすく、慣れた人なら「なるほど」と言える内容にした。


新・バーの十戒

  1. バーテンダーのことをバーテンと呼んではならない
  2. 酒の香りを匂いと言ってはならない
  3. バーテンダーを急かしてはならない
  4. 大声でしゃべってはならない
  5. 出された酒が好みではなかった時、嘘をついてはならない
  6. 乱れてはならない
  7. 酒の愉しみ方にルールがあると思ってはならない
  8. それが誰であれ説教をしてはならない
  9. 過去に安くしてもらったとしても言及してはならない
  10. 気に入らないバーには二度と足を踏み入れてはならない

新・バーの十戒:解説編

  1. バーテンという呼び方は、蔑視のニュアンスが含まれますのでご注意を。(バーテンダー+フーテン=バーテン、という説も)
  2. 「におい」には異臭というニュアンスがあるので、ぜひ「香り」と表現しましょう。
  3. 急かしたところでそのバーテンダーさんの能力以上には速くなりません。心に余裕を持ちましょう。
  4. だだっ広い空間ではないので、そのバーの雰囲気にあわせた声のボリュームを。
  5. 好みでない酒はそう伝えましょう。バーテンダーさんのメモリーに記録され、次回に役立ちます。
  6. 酒は「決して乱れず」が美しいです。飲みすぎず、姿勢も言動もシャンとしていましょう。
  7. 酒の飲み方はそれぞれお好きなように。ほかの人の注文にも正解・不正解はないのです。
  8. 最悪なのはマスターへの説教です。バーは良くも悪くもマスターの空間ですから、説教するぐらいなら行かなきゃいいんです。
  9. 何らかのタイミングで安くしてくれた情報を特に他のお客さんにバラしてはいけません。せっかくの厚意をアダで返さないように。そのとき一回きりのありがたいものとして心にしまっておきましょう。「あの時は安くしてくれた・・」などとチマチマしたことは言わないように。
  10. よいバーが栄え、よくないバーが廃れるように、よいバーには足を運び、よくないバーには二度と行かない、という直接行動でバーを評価しましょう。あなたの感覚で評価してください。

補足

尚、城アラキさんのバーの十戒の中に「5千円以下ではカードで支払わない」という項目がありますが、これは完全に間違っています。カード払いができる店では、いくらであってもカードで支払ってよいのです。手数料がかかる云々の解説もありますが、金額に関わらず手数料は同じパーセンテージで掛かるので、金額によってカード支払いをする・しないを分ける意味がありません。また、店側のキャッシュフローを考えるなら、むしろ大きな金額では現金払いのほうが良いということになります。ただ、いずれにせよ、カード払いができる店では、いくらであってもカードで支払ってよいのです。それが不都合な店は、カード支払いを導入しなければ良いだけなのです。これは、そのお店の経営判断であって、お客さんが配慮することではありません。このカード支払いに関する十戒は、経営オンチな店を育ててしまう危険性があるので、特に言及しておきました。ちゃんと経営ができる、というのは良いバーの条件ですから。


酒の基本は決して乱れず。それさえできれば後は・・


以上、心の片隅に留めながら、今日もよいウィスキー・ライフを。



Yuji Kawasaki そのウィスキーをもう一杯: エッセイ:バーの知識

ウィスキー初心者が初めてバーで注文するとき、知っておきたいこと(後編)

ウィスキー初心者が初めてバーで注文するとき、知っておきたいこと(前編)に続き、後編をお届けする。この記事は関心が高いみたいで、前編はすごいアクセス数だ。


Q. 飲みたいウィスキーの銘柄が決まりました。飲み方はどうしましょ?

飲み方はもちろん「ニート」にしてほしい。
ニート、というのがあまりに通っぽくてヤだなと思われる方は「ストレートで」とお願いしてみよう。きっと「度数が強いですが大丈夫ですか?」と聞いてくれるはずだ。あなたは、「少しずつ飲むので大丈夫」と答えてみよう。
尚、「チェイサーはいかがなさいますか」と尋ねられる場合がある。これは、「チェイサーは必要ですか?」という意味と、「チェイサーはお水ですか、ソーダですか」という意味が考えられる。チェイサーは水でもソーダでもいいが必ずもらおう。聞かれない場合は、後から勝手に出てくる。出てこなければ「チェイサーをください」と頼もう。

ただ、最初なので、もしどうしてもストレート(ニート)がキツくてだめそうな場合、ぎりぎりオン・ザ・ロックまでは認めよう。ウィスキーが徐々に薄まるので、段階的に香りを楽しめるだろう。(参考:ウィスキーの飲み方 オン・ザ・ロックは氷次第)ただし、あんまり氷をくるくると回し過ぎないように。急激に薄まってしまうのはNG.

ウィスキーを飲む際のチェイサーとは何か

チェイサーは、「追っかけ水」とか言われたりする。ウィスキーを飲んで、ときどきこのチェイサーの水かソーダを飲むと良い。ウィスキーのような度数の高い酒をストレートでガンガン飲むと、血中アルコール濃度が急上昇することもある。ちょくちょく水をはさみながら飲むと、身体に優しいのだ。二日酔いになりにくい。また、香りも都度リセットすることができ、一杯のウィスキーをなんども愉しめる。
※ときどきチェイサーにビールを指定する豪傑がいるが、酔いたいだけなのだろう。
※ロックや水割りのときにこのチェイサーを頼んでも何らかまわない。



Q. ウィスキーは何分ぐらいかけて飲めばいいですか?

初心者が犯しがちな間違いに、ウィスキーをぐびぐび飲んでしまうということがある。ペースは大切だ。一杯のウィスキーは通常20~30分かけて飲んでほしい。最初であればなおさらだ。あなたがもし普段から度数の強い酒をガンガンいくタイプならあまり心配はないが、普段はビールなど、アルコール度数が6~8%程度の酒をごくごく飲んでいる人なら、ウィスキーのような40~60%のアルコールの酒をつい同じ感覚で飲んでしまう心配がある。ウィスキーはちびちびやってほしい。特に最初はまず、香りを愉しむこと。でも、吸い込みすぎてはいけない。これもむせてしまうので、そっと鼻から香りを吸い込んでほしい。最初の一口は、舌でなめる程度で良い。つぎに、ほんの少量ふくむ。少量であればあるほどよい。何事も、徐々に増やしていくことが肝心だ。ときどきチェイサー(水)を飲んで、血中のアルコールを急激に増やすことを防止しよう。チェイサーはなくなれば注いでくれるので、一杯のウィスキーに一杯のチェイサーだなどと律儀に考えなくても良い。チェイサーはぐびぐび飲んでよい。


Q. ウィスキーを飲んでいる間、どうすればよいですか?

基本は黙って飲んでいれば良い。あなたがバーで黙ってウィスキーを愉しんでいれば、それは傍から見て「絵になっている」はず。手持ちぶさたに感じるかもしれないが、何もない一見無駄な時間を愉しむという感覚で良い。もし一杯のウィスキーに向き合えば、あなた自身は愉しむことで結構忙しいかもしれない。
もちろん、最初だということをバーテンダーに告げていれば「いかがですか」と感想を聞いてくれるだろう。これには正直に答えてよい。バーテンダーが次からあなたにウィスキーを薦める際、何を薦めるかの道しるべとなるからだ。バーテンダーはあなたの感想を必要としているし、そこからあなたが知りたいウィスキーのさまざまな情報を提供してくれるだろう。「このウィスキーはこんな香りがしませんか?」などと。あなたは、どれどれ、とまたもう一口飲んでみるだろう。「あ、確かに」と思いながら、あなたの香り体験は豊かになっていくに違いない。
ウィスキーは黙って飲んでもよし、誰かと語ってもよしなのだ。

タバコは吸ってよいですか?

構わない。バーで禁煙のところはほとんどないが、お店に確認すればOK。あなたがさりげなくタバコをカウンターに置いておけば、灰皿を出してくれるだろう。当然、まわりにやや配慮しながら。
ところでバーには、タバコどころか、葉巻を置いているところもある。それは凄く深い香りの世界だが、また別の機会に。


Q. ウィスキーを堪能しました。さて、どうやって帰ればよいですか?

ウィスキーを1~2杯堪能したところで、あなたが帰りたくなったとする。あとはお金を払って帰るだけだ。(もっと堪能しても良いけれど、酒の基本は“決して乱れず”だ。最初はスマートに帰るのがオススメ)
カウンターに座ったままで、バーテンダーの人に、帰る旨を告げよう。「美味しかったです、お会計おねがいします」でも良いし、「すみません、チェックお願いします」でも良いし、単に「ごちそうさまです」でも良いだろう。バーテンダーの人もあなたが初めての人なら明確に「お会計」「チェック」という言葉が合れば分かりやすい。
もしあなたがそのバーを気に入れば、お金を渡したときや、おつりをもらったときに、「またきます」と告げても良いだろう。

バーの会計「チャージ料」とは?

もし明細を渡してくれるバーなら、明細を見ると、「チャージ料」という項目で500~1500円ぐらいかかっているだろう(チャージが1500円もかかるところは高級ホテルとか、そんなイメージ。大体数百円なのでご安心を)。これは席料と考えよう。またバーでは頼まなくても、黙っておしぼりや、おつまみ(ナッツやピスタチオ、チョコレートなど)が出てくる。これらもチャージ料の中に含まれている。



Q. 帰る前にしておくことはありますか?

存分に愉しんでほしい。ただ、気に入ったウィスキーがあれば、なにかにメモすることをオススメする。ウィスキーの名前はだいたい地名で、覚えにくいカタカナが多い。せっかく気に入ったものがあるのであれば、次に飲むときの最初の一杯をそれにしてもいい。だから、覚えておけるようメモするのも手だ。


Q. 帰ったあとは?

楽しい酒を飲んだ、と記憶してほしい。もし楽しい酒を飲めたなら、このブログの記事を最低5人に熱烈に薦めてほしい。最後のは冗談だけど、きっとあなたは良いウィスキーデビューができるはずだ。
また、あなたがベテランなら、これらの記事をあなたが最初にバーでウィスキーを飲んだときのことを思い出して懐かしく思ってくれたに違いない。





Yuji Kawasaki そのウィスキーをもう一杯: エッセイ:バーの知識

ウィスキー初心者が初めてバーで注文するとき、知っておきたいこと(前編)

あのドキドキをもう一度

もし、あなたがこれまでバーでウィスキーを頼んだことがなければ、下記の記事が参考になる。もし、あなたが経験豊富な人なら、下記の記事は、はじめてのドキドキ感を思い出させてくれるだろう。

この記事は長めなので前後編に分かれている。この記事は前編。


Q. どのバーに行ったらいいですか?

一番最初に悩むのは、やはり店だろう。バー選びでは2つの方法がある。

バー選びその1: 信頼できる人に連れて行ってもらう

やはり先達というのはありがたいもので、初めての店に入るときに、誰かに連れて行ってもらうのが一番安心できる。もちろんゲストとして扱ってもらえるし、頼み方から、価格まで、分かった人が隣に居るのはその人の見よう見まねができ、大変に心強いものだ。

バー選びその2: インターネットで検索しておく

バーの重たい扉を開けなくとも、検索すればいい。おすすめの検索方法は、「ウィスキー バー ○○(地名)」での検索だ。お店のHPから、誰かのレビューまでさまざま引っかかる。そのバーの大体の価格帯、営業時間や、定休日などの情報は必須だ。また、気に入ればリピーターになるかもしれないので、できるかぎりウィスキーに力を入れていそうなバーを探り当てよう。
ちなみに「ここで異性を口説いてください」という感じのムーディーな色付き照明の空間のところは、たいていがお酒よりもおしゃべりのための場だ。もし自分ひとりで行っても、静かに座って飲む姿が想像できるインテリアのバーを選ぶと良い。
尚、バーは予約してもしなくても良いが、ほとんどその必要はない。バーに行列はできない。入れなければ、また今度。無駄足を避けるために、行く直前に席が空いているかどうか確認の電話をするといい。


Q. お店に着きました。どのウィスキーを選んだらいいですか?

ご注文は?と言われたとき、なんと言えばよいのだろう。ウィスキーを飲みたいのは確かなのだけど・・。
また、お店によってメニューがあったり、なかったり。どうすればよいだろうか。

注文するウィスキーの銘柄選びその1: 決まった銘柄を注文する

すでに決めている銘柄があるなら、「○○はありますか」と頼んでみよう。
できれば年数も告げよう。「○○の○年をください」と。もしかしたらそのバーにはその銘柄は置いていないかもしれない。銘柄はあっても、思う年数のものはないかもしれない。おそらくバーテンダーの方は「こういうものならあります」と代替案を提示してくれるはずだ。嫌いな銘柄でない限り、従ってみよう。


注文するウィスキーの銘柄選びその2: バーテンダーさんに相談する

もし銘柄が分からなくても、あせる事はない。およそ地球上のほとんどの人間は、ウィスキーの銘柄なんて知らない。ウィスキーの銘柄なんて、知っているほうが圧倒的に少数派だ。知らなくて当然の顔をしていればいいのだ。
「なにかウィスキーを飲みたいんですが、よく知らないんです。なにがオススメでしょうか?」のひと言で充分だ。もしこのひと言で、困った顔をするようなバーテンダーなら、その場で帰っても良い。まぁ席に座った以上、一杯だけ付き合ってあげるのも良し。ただ、ほとんどのバーテンダーは「わかりました。こういうのはいかがですか?」とか「最初でしたらこういったものは?」などと聞いてくれるだろう。デキるバーテンダーなら、他のお酒や料理などを引き合いに出してあなたの好みを探ろうとするだろう。心からウィスキーが好きなバーテンダーなら「ウィスキーファンをひとり増やせるかもしれない!」と目の奥が輝いているはずだ。
いずれにせよ、「私は初心者です」と腹を割り、バーテンダーさんとコミュニケーションをとることが肝要だ。もちろん、その際に、あなたの好みに関するできる限りの情報を提供しよう。

一杯いくら?

最初に「初心者です」と腹を割れば、高いものを薦められることはない。ただ、気をつけておかないと、候補の中から、自分で高いものを選んでしまう場合がある。目安となるのは年数だ。一般的に長熟のウィスキーは価格が高い。12年までのものにしよう。幅があるので何ともいえないが、1杯あたり800~2000円だろう。値段を聞くのは野暮じゃない。堂々と「これだと1杯いくらですか?」と聞けばよい。返ってきた答えがもし予算内なら「ではそれをください」と頼もう。


前編はここまで。気になる飲み方や、飲んでいる最中、立ち去り方など、後編は後日UPする。

ウィスキー初心者が初めてバーで注文するとき、知っておきたいこと(後編)