レビュー:ティーリング シングル・モルト レモンのゼリー

TEELING Single Malt(ティーリング シングル・モルト)を飲んだ。89点。

ウィスキー最古の地といわれるアイルランドから届けられるこのアイリッシュ・ウィスキーは、ちょっと変わっている。

ブランド名ティーリングの由来は、社長のジョン・ティーリング氏から。ハーバードでアイリッシュ・ウィスキーの歴史を研究したティーリング氏は、アイルランドで100年ぶりに新しい蒸溜所を開始した。そのクーリー蒸溜所は、その後ジム・ビームに買収され、ティーリング氏は今回の“ティーリング”立ち上げに至る。

もともとティーリング家はダブリンで蒸溜所を創業した家系だが、他の多くの蒸溜所同様、現在はなくなっている。“ティーリング”は現時点で、蒸溜所を持たないボトラーズブランド(原酒は他の蒸溜所から仕入れ樽の熟成を見極めてリリースしている)だが、「いずれは自前の蒸溜所を」という考えのようだ。

今回のティーリングは、シングル・モルト。ある原酒を5つの樽で熟成させ、再びひとつのボトルに入れたもの。かなり手の込んだ試みだ。(樽はシェリー、ポート、マディラ、ホワイトバーガンディ、それからカベルネ・ソーヴィニヨン)

さて、前置きが長くなったが、肝心のこのウィスキーの香味はどのようなものだろうか?

ティーリング シングル・モルト

【評価】
香りをかぐ。うっそうと生い茂る茂みのなかを歩く。まだ見えない花の香りに誘われて。急に開けて湖が見える。あたりに群生する赤、白、ピンク、紫、黄色の花々。青空が広がり、さわやかな気持ちにさせる。湖面に映る空が風で揺れて見える。
そっと口に液体をふくむ。ランチボックスを開け、ほんのひとくち、レモンのゼリーを口に含む。ライ麦パンのサンドイッチ。ハム、ライム果汁。
まるで新しい気持ちに生まれ変わる不思議な体験。

【Kawasaki Point】
89point

【基本データ】
銘柄:TEELING Single Malt(ティーリング シングル・モルト)
地域:Irish, アイリッシュ
樽:Sherry, Port, Madeira, White Burgundy, Cabernet Sauvignon, シェリー、ポート、マディラ、ホワイトバーガンディ、カベルネ・ソーヴィニヨン
ボトル:TEELING, ティーリング



フェニックスのようにダブリンに復活する予定のティーリング

箱のデザイン。質感に重きが置かれている。

アイリッシュの場合、ウィスキーの綴りは WHISKEY

SPIRIT of DUBLIN

ノンチル、シングル・モルト

赤、白、ピンク、紫、黄色の花々

レモンのゼリーを口に含む。ライ麦パンのサンドイッチ














レビュー:ハイランドパーク オーディン 深く甘い・・・

Highland Park Valhalla Collection ODIN 16yo(ハイランドパーク ヴァルハラコレクション オーディン 16年熟成)を飲んだ。87点。

ハイランドパークが北欧神話の神々にインスパイアされてリリースしているValhalla Collection(ヴァルハラ コレクション)のひとつ。世界限定17,000本。“ヴァルハラ”とは北欧神話に登場する宮殿のようだ。シリーズではこれまで北欧神話の神々である、ソー(雷神)、ロキ(トリックスター)、フレイア(豊穣の女神)が発表されてきた。そして今回の“オーディン”は、北欧神話の主神とされ、このヴァルハラコレクションの完結を意味している。

どのような香味をみせてくれるのだろう。

独特のケースに収められた ハイランドパーク オーディン

【評価】
グラスを鼻に近づける。甘く香る蜂蜜。色とりどりの花々。色彩が強く浮かぶ。真新しい木の船で旅に出よう。明るい太陽の光る海原。爽やかな風。
口に含む。木でできた本棚、並ぶ分厚い布のハードカバー。金の箔押しのタイトル。古い知識の宝庫。しっかり木を感じさせるし、しっかりと甘い。ただこの甘さは軽薄なものではなく、深く甘い。
遠い地の友を思いながら、しっとりと味合うウィスキー。

【Kawasaki Point】
87point
※この点数の意味は?

【基本データ】
銘柄:Highland Park Valhalla Collection ODIN 16yo(ハイランドパーク ヴァルハラコレクション オーディン 16年熟成)
地域:Islands, アイランズ
樽:Oak, オーク
ボトル:Distillery Bottle, オフィシャルボトル

木製ケース。ヴァイキング船の竜頭みたいだ。
北欧の木を愛でる文化は日本と通ずるところがある。

甘く香る蜂蜜。色とりどりの花々。

知識に貪欲な神オーディンは
賢い巨人ミーミルが守る泉の水を飲ませてもらう代償として
その片目を失ったと伝えられる。
オーディンはこれにより知恵と知識を得た。

ボトルの独特な質感

の甘さは軽薄なものではなく、深く甘い

遠い地の友を思いながら、しっとりと味合うウィスキー


ハイランドパーク蒸溜所は北海を囲むオークニー諸島に位置する。
オークニー諸島では冬にオーロラが見られることがある。
北方神話ではオーロラはオーディンのもとに集まる偉大な戦士の魂を先導する、
勝利の女神の鎧のきらめきが生み出したものだとされている。





レビュー:ブラッドノック 2001 10年 Tokyo Bar Show うなるほど華やかなのに・・・

Bladnoch 2001 10yo for Tokyo International Bar Show(ブラッドノック 2001 10年熟成 東京バーショー2015向けリリース)を飲んだ。88点。

先日開催されていた東京Bar Show向けの一本。カスクストレングス(樽出しそのまま)で。

ブラッドノック 2001 10年熟成

【評価】
グラスにそっと鼻を近づける。甘い蜜とロウ、洋ナシとチョコレート、オレンジピール。重くて黒くてどっしり、なのに爽やか。
グラスを傾け、口に含む。焦がしたオレンジピール。フローラルで濃厚、華やかな香りなのに、やはり爽やか。
うなるほど華やかなのに、後味がさわやか。

【Kawasaki Point】
88point
※この点数の意味は?

【基本データ】
銘柄:Bladnoch 2001 10yo for Tokyo International Bar Show(ブラッドノック 2001 10年熟成 東京バーショー2015向けリリース)
地域:Lowland, ローランド
樽:Oak, Sherry オーク、シェリー
ボトル:Distillery Bottle, オフィシャルボトル

東京インターナショナルBarショウ向け

ローランド・シングル・モルト・スコッチ・ウィスキー


洋ナシとチョコレート、オレンジピール。

フローラルで濃厚、華やかな香りなのに、やはり爽やか



レビュー:響 12年 小川を流れる桜の・・・

響12年熟成(Hibiki 12yo)を飲んだ。76点。

「響(ひびき)」といえば、日本を代表するブレンデッド・ウィスキーの銘柄だ。2009年に発売された12年がそのディフュージョンラインとしての役割も担っていたが、今年あらたに年数表記のない「JAPANESE HARMONY」がリリースされ、ポジションをより明確にしている。このリリースに伴い、12年には終売の噂がある。

昨今のウィスキーブームの原酒不足により、各社がラインナップの再編をおこなっている今、新たに生まれるウィスキーもあれば、去っていくウィスキーもあるようだ。

さて、響12年はどのような香味だろうか。


【評価】
グラスを傾け、そっと鼻から息を吸い込む。草とさくらんぼ。野焼き。小川を流れる桜の花びら。うぐいす。
口に含めば、しっとりと熱い。炎を見つめる。舟を漕ぐ。通奏低音としての千歳飴のような甘み。
苦みと渋みと甘みが入り混じる。

【Kawasaki Point】
76point

【基本データ】
銘柄:響12年熟成(Hibiki 12yo)
地域:Japan, 日本
樽:Oak, オーク
ボトル:Distillery Bottle, オフィシャルボトル

ボトルキャップも『響』

これ以外にはない特徴的なボトル

ブランドにかける意気込みが伝わるエチケット

24面カットのボトル

小川を流れる桜の花びら

通奏低音としての千歳飴のような甘み







レビュー:SMWS 夏の試飲会 2015 ~12本のレビューを一挙掲載~

日がだいぶ長くなってきた。季節毎に開催されている、スコッチ・モルト・ウィスキー・ソサエティの夏の試飲会に行ってきた。(The Scotch Malt Whisky Society Summer Bottles Sampling)
5,000円(会員4,000円)でニューリリースのウィスキー12本の試飲ができる、という会だ。スコッチ・モルト・ウィスキー・ソサエティ(“SMWS”、または単に“ソサエティ”などと呼ばれる)は、世界最大のウィスキー愛好家団体で、そのボトルの豊富さと、統一されたデザインのスタイルにはファンが多い。

さあ今回もテイスティングした12本のボトルをランキング形式で一挙紹介しよう。


12個のグラスが並ぶ。それぞれの味わい


第12位
35.131 Glen Moray 1994 19yo (グレンマレイ 1994 19年熟成) 
【Kawasaki Point】
56point
【評価】
その香りは、芳ばしいバターケーキ。キャラメル。アールグレイ。
口に含めば、じっくり焼きすぎた魚の焦げの部分みたいな。


第11位
59.53 Teaninich 1983 31yo (ティーニニャック 1983 31年熟成) 
【Kawasaki Point】
67point
【評価】
骨董屋。埃っぽい棚の上にいかにも重要そうに飾られた地球儀。
万年筆のインクを滲ませつつ書かれる領収書。


第10位
29.160 Laphroaig 1997 17yo (ラフロイグ 1997 17年熟成) 
【Kawasaki Point】
73point
【評価】
かつて診療所であった孤島の小さな建物。
寂しげな夕刻の日差しが窓から差し込む。


ウィスキーの静かな語らい



第9位
3.238 Bowmore 1997 17yo (ボウモア 1997 17年熟成) 
【Kawasaki Point】
76point
【評価】
ヨードチンキ。い草。落ち着く香り。
どこか水のようなさらりとしたところもある。


第8位
1.187 Glenfarclas 1985 29yo (グレンファークラス 1985 29年熟成) 
【Kawasaki Point】
78point
【評価】
夏の農作業。野焼き。
生のトウモロコシをかじったようなジューシーさ。


第7位
55.27 Royal Brackla 1997 17yo (ロイヤルブラックラ 1997 17年熟成) 
【Kawasaki Point】
83point
【評価】
カラフルでトロピカルな鳥。バサバサと飛び立つ。アンリ・ルソーの夢。
しっかりとした生命力。剛健。


リリースされたウィスキーのカタログ


第6位
3.240 Bowmore 1998 16yo (ボウモア 1998 16年熟成) 
【Kawasaki Point】
84point
【評価】
わらび餅、きな粉。樹液。
口の中に少量の煙が広がって、思わず噛み締めたくなる。


第5位
36.84 Benrinnes 1989 25yo (ベンリネス 1989 25年熟成) 
【Kawasaki Point】
85point
【評価】
清涼な山の空気。峰を眺める。稜線を指でたどる。爽やかな気持ち。
ドロップ飴をなめているかのような甘み。歩き疲れたあとの山頂でのハイなランチ。


穏やかな照明


同点第3位
37.63 Cragganmore 1985 29yo (クラガンモア 1985 29年熟成) 
【Kawasaki Point】
86point
【評価】
小豆を蒸して、涼しげなゼリーに閉じ込めたような。和風の香草をいくつか。
涼しげな顔とは裏腹に、熱く溶け込み、口腔内を塗り替える。禅画の情熱的な筆致。


同点第3位
7.117 Longmorn 1990 24yo (ロングモーン 1990 24年熟成) 
【Kawasaki Point】
86point
【評価】
森のコテージ、鳥の声。かみたばこのかおり。落ち葉の掃除。
古い本のページを少しめくる。集中できずに外に目をやる。ほっと一息つく。



さて、今回は2本が同点1位だ。どんなウィスキーたちだろうか?


そのウィスキーとは

同点1位
77.37 Glenord 2001 13yo (グレンオード 2001 13年熟成) 
【Kawasaki Point】
87point
【評価】
機械オイル、ガソリン。雨の中の作業で冷えたからだを、ヤカンの前で温めよう。
自らを温めるために飲む。男のウィスキー。


同点1位
30.84 Glenrothes 1980 34yo (グレンロセス 1980 34年熟成) 
【Kawasaki Point】
87point
【評価】
初夏の早朝、朝霧。森から抜けると、開けた草原。徐々に息を整える馬。
溶岩石に水が落ちる。滝のほとり。足を伸ばして馬と休もう。


注がれたウィスキーと、語らい


飲み語りしたあとで外にでると、驚くほどまだ明るく、暗くなる兆しも感じさせなかった。春のサンプリング会のときと違う明るさに、季節が移り変わったのだと、ふつうのコトながらしみじみ想う。
つぎのサンプリング会では、一体どのようなウィスキーに出会えるのだろうか。