カクテル:スコッチキルト Skye's 楽しい夜は・・

ウィスキーベースのカクテルは、その酒の歩んできた歴史にも興味を持たせてくれる。

「スコッチ・キルト」は、スコッチ・ウィスキー(スコットランドのウィスキー)と、ドランブイというリキュールをベースにしたカクテルだ。この「ドランブイ」、満足させる酒、という意味なのだけど、その誕生ストーリーも満足に値するものだ。
その昔、王の座をかけた戦いに敗れ、スカイ島に逃げ落ちたプリンス・チャールズ。彼の首には多額の賞金がかかっていたのだけど、敗れた彼を裏切らず、フランスに亡命させたのがマッキノン家。これに恩義を感じたプリンス・チャールズは、王家に伝わる「ドランブイ」のレシピを、マッキノン家に明かしたとな・・・。

今回はスコッチ・キルトを作るにあたって、そんなドランブイのゆかりの地、スカイ島でつくられる「タリスカー」というウィスキーがチョイスされた。

シェーカーにタリスカーとドランブイを・・・

そしてオレンジビターズ・・・

氷を入れて・・

シェイクされる直前のシェーカーを覗くと・・

シェイクが始まった

後もう少し・・・

シェイクがおわり・・

スコッチ・キルトが注がれた

オレンジピールをツイストして・・

スコッチ・キルトの完成


 【評価】
グラスに鼻をやれば、葉巻の煙が重厚な甘みと混じる。
口に含めば、少し背筋を伸ばして、お店の音楽に浸りたくなる。よく冷えており、棒アイスのような清涼感。
重厚でありながら、お菓子のようなチャーミングな甘み。楽しい夜にどうぞ。

【Kawasaki Point】
-
(カクテルには点数をつけない)

【基本データ】
カクテル名:「スコッチ・キルト Skye's」 ※私が勝手に名づけた
ベース銘柄:タリスカー10年、ドランブイ
Bartender:倉橋裕 (Kurahashi Yuh)


このスコッチ・キルト、一般的なレシピでは、シェイカーを振らない。グラスの中でステアするだけ。今回はタリスカーとドランブイというふたつのスカイ島生まれの酒をより調和させるため、シェイクされた。それが功を奏して、よい冷たさにつながっていた。


それにしてもウィスキーベースのカクテルには、さまざまなエピソードが隠されている・・。
ウィスキーを愉しむときには、その隠されたエピソードにも注目してほしい。きっと楽しい夜になるはずだ。


カクテル:ニューヨーク 甘い誘惑のオレンジ色

お洒落なカクテルは、ウィスキーを親しみやすい存在にしてくれる。
スタンダードカクテルの「ニューヨーク」といえば、あのオレンジ色が人気。大都会の朝日なのか夕日なのか、甘い誘惑なのか凛とした主張なのか・・。仕事帰りの女性が背筋を伸ばして飲んでいたなら、オッと目を引く、そんなイメージのカクテルだ。

癒しを求めたくなるオレンジの色合い

 【評価】
グラスに鼻をやれば、薬草の香りと、火薬、バラのエッセンス、ミント。
口に含み飲み込めば、ノドは熱く、口の中は冷たい。口に残るレモングラスの香り。

【Kawasaki Point】
-
(カクテルには点数をつけない)

【基本データ】
カクテル名:「ニューヨーク」
ベース銘柄:ワイルドターキー8年、カネマラ
Bartender:小嶋修 (Osamu Kojima)


ニューヨークという名前だけに、アメリカ・ウィスキー(バーボン)のワイルドターキーを使用している。それから今回は、アイリッシュのカネマラも使用。


大都会の朝日なのか夕日なのか、甘い誘惑なのか凛とした主張なのか・・

ノドは熱く、口の中は冷たい。口に残るレモングラスの香り。

カクテルの面白さは、癒しでありインスピレーションであるところだろう。
また、ウィスキーの別の魅力をぐっと引き立てること。

今夜も、よいウィスキーライフを。


カクテル:白州12年の粋な水割り OK Twist

ウィスキーを飲むならストレートを推奨している私だが(参考記事)、初めてウィスキーを飲むには、ウィスキーベースのカクテルが取っ掛かりやすいかもしれない。

今回紹介するのは、「白州の水割り」。

え、水割りってカクテル?と思うかもしれないけれど、水割りも、奥が深い。
その作り方ひとつで「すごいカクテル・・」となる。

オレンジピール(皮)をバーナーで炙って、香りを引き立て・・

叩いたミントの葉を乗せて、グラスをかぶせる



香りが移ったグラスに、白州12年を注ぐ・・・

軟水を注いで・・・
白州12年の水割り OK Twistの完成。


 【評価】
グラスに鼻をやれば、木の葉のうまみを感じる。乾燥したまつぼっくり。濡れた腐葉土。焼いたオレンジの苦味。
口に含めば、ほろ苦さを感じさせながら森の水、ごくっと飲み込めば、樽の木の香りをほわっと残す。第一印象からノドごしまで、苦味が温かく、爽やかにまとまりながらも、飲みごたえ充分。
都会的な苦味を加えた白州の水割りである。水割りだから、喉ごしまで愉しめる。

【Kawasaki Point】
-
(カクテルには点数をつけない)

【基本データ】
カクテル名:「白州の水割り OK Twist」
ベース銘柄:白州12年熟成 (HAKUSHU 12yo)
Bartender:小嶋修 (Osamu Kojima)

 ※今回のカクテルの名前は私がつけた。
単に「水割りです」と出されたが、勝手に、
「白州12年の水割り OK Twist (≒オサム・コジマ創作)」
と呼ぶことにした。


ウィスキーでカクテルを愉しむのも、また、良し。
そのウィスキーの魅力に気がついたなら、他のカクテルや、ぜひストレートでも味わってほしい。
きっとさらに愉しみが広がるだろう。

次回はよりクラシックなカクテルの「ニューヨーク」を取り上げる。女性ファンも多いお洒落なカクテルだ。お楽しみに。


レビュー:カリラ12年 心を溶かすウィスキー

CAOL ILA 12yo (カリラ12年熟成)を飲んだ。89点。
ゆっくり時間をかけ、味わって飲んでほしいウィスキーのひとつ。


【評価】
グラスを傾け、鼻を近づければ、スモーキーな塩。甘い柑橘の香り。いぶした鮭の皮。黄色のマーガレット。ざらつきやトゲを感じるものの、甘さが調和し、心地よい。
口に含めば、煙突の煙が広がる。そのすぐあとに広がる花のうまみが滑らかで、このギャップにより魂がほだされる。
煙たさと滑らかさ、熱さと冷たさのギャップを包含している、心を溶かすウィスキー。

【Kawasaki Point】
89point
※この点数の意味は?

【基本データ】
銘柄:CAOL ILA 12yo (カリラ12年熟成)
地域:Islay, アイラ
樽:Oak, Bourbon,  オーク、バーボン
ボトル:Distillery Bottle, オフィシャルボトル

ウィスキーを飲むときはチェイサー(水)を忘れずに。
このカリラはあともう少し・・・

CAOLILAを注ぐ・・

スモーキーな塩。甘い柑橘の香り。

煙のすぐあとに広がる花のうまみが滑らか

心を溶かすウィスキー

イギリスはアイラ島とジュラ島の間の「アイラ海峡」に位置するカリラ蒸留所。
カリラからただよう潮の香りはこの海の香りだ。

大きな地図で見る


レビュー:SMWS 春の試飲会 ~12本のレビューを一挙掲載~

スコッチ・モルト・ウィスキー・ソサエティの春の試飲会に行ってきた。(The Scotch Malt Whisky Society Spring Bottles Sampling)
分かりやすく言うと「5,000円で12種類のウィスキーが飲み放題」、という大変お得な会だ。まぁご想像の通り、アルコール度数の高いウィスキーをガバガバ呑めはしないのだけれども。春夏秋冬の季節ごと、全国で年4回開催されている、通称「おとなの飲み放題」だ。(開催情報はこちら

スコッチ・モルト・ウィスキー・ソサエティは、ボトラーズ。いろんな蒸留所から樽を買って、いい感じの時に瓶詰めして販売する。このボトラーズの特徴は、会員しか買うことが出来ないという点だ。(実際には会員に買ってもらったものを譲り受けたりすれば、会員じゃなくても手に入れられるけど)また、このボトルを入れているバーもちらほらある。

SMWS 2013年 春のボトルサンプリング会


今回は2013年春に発表された12種類のボトルのテイスティング・レビューを掲載する。
12位から1位までを一挙公開。
(ウィスキーの名前の冒頭についている数字は、SMWS独自の蒸留所と樽コード)


12位

R 1.4 PORTMORRANT1991 21yo (ポートモーラント1991 21年熟成)

【Kawasaki Point】
53point
【評価】
香りは、ミントキャンディ。古い木の棚。口に含めば、まとまった味わいだが、紹興酒。
ソサエティから出るラムとしてはハッキリ言って期待はずれ。前回のラム(R5.2)は良かったのに・・。


11位

33.128 ARDBEG 2005 7yo (アードベッグ 2005 7年熟成)

【Kawasaki Point】
68yo
【評価】
グラスに鼻を近づければ、炭の香りが強く主張する、青々とした茎の太い草を感じる。
口に含めば、煙が上がってくるが、同時に青臭い。


10位

37.53 CRAGGANMORE 1985 27yo (クラガンモア 1985 27年熟成)

【Kawasaki Point】
68point
【評価】
香りは甘くスパイシー。スパイスの上に柑橘のピール(皮)が乗る。アルコール感は強め。
口に含めば、刺激が小さく弾ける。アルコールに乗ってバーボン樽。肉汁、コンソメ、ブラックペッパー。香りの奥行きを感じる。
早めの時間に一杯飲みたい。



9位

93.54 GLENSCOTIA 2002 10yo (グレンスコシア 2002 10年熟成)

【Kawasaki Point】
71yo
【評価】
漂う香りは、清涼感のある、冬の生きている獣の毛の香り。
グラスを傾け一口含めば、鹿の毛を口に入れたかのよう。トウガラシパウダー。


8位

85.25 GLEN ELGIN 1999 13yo (グレンエルギン 1999 13年熟成)

【Kawasaki Point】
78yo
【評価】
グラスから立ち上る香りは、さわやかなぶどうとパイナップル、マスカットのミックスジュース。
口に含めば、少し煙たいバーベキューのほとりでかじった木の板。


7位

73.54 AULTMORE 1992 20yo (オルトモア 1992 20年熟成)

【Kawasaki Point】
80yo
【評価】
香りは、スイカ。ホースの水。陽炎と、山の上で突如吹く風の清涼感。
口に含めば、ヒレ肉、バターガーリック。木のうまみ。焦がした金網。


6位

29.128 LAPHROAIG 1990 21yo (ラフロイグ 1990 21年熟成)

【Kawasaki Point】
85yo
【評価】
薫るのは、燻製と、正露丸。少しのペッパー。
口に含めば、燻製したシャケトバ。囲炉裏の鉄瓶に垂らした醤油。
山荘にこもって書き物をしたくなるウィスキー。


5位

41.55 DAILUAINE 2004 8yo (ダルユーイン 2004 8年熟成)

【Kawasaki Point】
86yo
【評価】
グラスから薫るのは、花々がトラックの荷台に揺れて、麦畑を進む風景。
口に含めば、ゆっくりと分解されていく麦の味。まとまりと主張を感じる。


4位

64.42 MANNOCHMORE 1990 22yo (マノックモア 1990 22年熟成)

【Kawasaki Point】
86yo
【評価】
香りは、オレンジとグレープフルーツのかご。ガラスの中の煙。
口に含めば、シェリーの緩やかな香り。ぎゅっと詰まってはいない味。オレンジピールの苦味。
主張は強くはないが、何気ない午後に本を読みながら飲みたい。


3位

44.56 CRAIGELLACHIE 1989 23yo (クレイゲラヒ 1989 23年熟成)

【Kawasaki Point】
86yo
【評価】
グラスに鼻を近づければ、うっとりする畳の間の香り。バターの枯れた草。優雅。
ところが口に含むと、一転してスパイシー。花々の香り。うすくゆっくり二つ隣の席のドライフルーツを感じる。
香りと味に裏切りがあり、微笑をもたらすウィスキー。


2位

27.100 SPRINGBANK 2000 12yo (スプリングバンク 2000 12年熟成)

【Kawasaki Point】
87yo
【評価】
香りは、水仙のような華やかさ。鉄。水。
口に含んで舌でころがせば、華やかさは水に溶けて穏やかに香る。水苔。花弁を乾燥させた感じ
後味が鉄なのに、激しさではない。味わいを感じる。


1位

7.81 LONGMORN 1992 20yo (ロングモーン 1992 20年熟成)

【Kawasaki Point】
88yo
【評価】
香りは、缶詰のパイナップルの汁。湿度を感じる(ドライではない)。ホワイトペッパー。
口に含めば、ゆっくり滑らかなのに鋭くうまみ。ただし果実感ではない。
爽やかな夏の朝に、風でレースカーテンが揺れ、ゆっくり時間が流れるかのようなウィスキー。



今回のサンプリング会には、スコットランドはエディンバラから参加した人もいた。SMWSの会員で、日本旅行中にインターネットでサンプリング会があると知り参加したという、筋金入りのウィスキー好きだ。彼のお気に入りはオルトモアとラフロイグだった。ちなみに、グレンスコシアのスコシア(scotia)は、スコットランド(scotland)の古い言い方だ、というプチ情報もくれた。
また、参加者の中には私が11位にしたクラガンモアを1位に挙げる人もいた。また、6位のラフロイグは、「長熟の割りに期待を裏切られた」という声もあった。1位にしたロングモーンはやはり概ね評価が高かったようだ。

とにもかくにも春の宴は、さまざまの幸せそうな声で包まれていた。



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このブログ『ウィスキーをもう一杯』は、初心者から達人まで、ウィスキー好きの人のための情報を提供しています。さまざまなウィスキーのレビューから、関連情報まで、一愛好家の立場から発信しております。おかげさまで開始より多くのアクセスを記録しています。

アクセス元は、ウィスキーの銘柄を指定しての検索や、USKEBAというウィスキー関連サイトや、TwitterFacebook, 記事を取り上げていただいた個人のブログからのリンクが多いようです。

お知らせまでに、このブログ自身の情報を下記にまとめております。


この『ウィスキーをもう一杯』というブログはなんですか?コンセプトは?
ウィスキー初心者の方が見て「ほほ~」と興味深く感じ、達人の方が見て「なるほど!」と思えるブログです。詳しくは「このブログの説明」というページをご覧ください。

レビューの点数はどのような基準ですか?
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書き手はどんな人ですか?なぜ実名ですか?
書き手の私は普通のウィスキー好きです。ウィスキーといえば、「裕福そうな」「素敵なオジサマ」が飲んでいるイメージがありますが、残念ながら私はどちらのイメージにも当てはまりません。また、お酒に強いわけでもなく、たくさん飲むこともありません。家にウィスキーのボトルは2~3本しかありませんし、しかもプレゼントで貰ったものです。このブログに掲載しているウィスキーは、私一人、もしくは友人と連れ立って行ったバーで勧められたものです。頻度は週に1回か2回です。そういった飲み方をなさっている方は多いでしょう。ただ、私はあるときにふと「これを記録してみよう」と思い立ちました。
ブログを始めるにあたり、私の忌憚なき意見が読む方にストレートに伝わるよう、実名としました。

お読みいただいているあなたへ
当ブログをお読みいただきありがとうございます。このブログは、ウィスキーのように「クセがある」でも、「そのクセが素敵だね」と言われるブログでありたいと考えています。また、その違いをわかっていただけるあなたに書き続けたいと思います。


以上、お知らせでございます。


レビュー:ザ・ニッカ・ウィスキー 1999 34年 ~幻のウィスキーその2~

The NIKKA WHISKY 1999 34yo(ザ・ニッカウヰスキー 1999 34年熟成)を飲んだ。98点。
昨日の『レビュー:ザ・ニッカ・ウィスキー 1998 34年 ~幻のウィスキー~』に引き続き、今度は1999年版のウィスキーだ。この幻のウィスキーについては、1998年ものと1999年もの、片方に言及した記事は少数ながらあるものの、両方に言及し、かつテイスティング・コメントを掲載したのは、このブログが日本初(ということは世界初)となる。(なぜこのウィスキーが“幻”かは、1998年版の記事を参照してほしい)

世界初、幻のザ・ニッカ・ウィスキーの
1998(右)と1999(左)の両方のテイスティングコメントを掲載
めぐり合えた仕合せ・・



【評価】
グラスに鼻を近づければ、深く、うっっっとりとする香り。鎖と岩と冬の腐葉土のニュアンス。やや感じる酸味の奥に、小さくてかわいらしい花が咲いている。乾燥させた草花。線香。校庭に引かれた白線の石灰。
グラスを傾け、口に含めば、驚くほど“しっとり”と入ってくる。重く、熱く、ジリジリとした余韻なのに、軽やかな香水が湧き上がり、鼻に抜けていく。うまみが幾重にも厚く重なっている。
いわゆるシェリー樽の、「甘い」とか「渋い」などという単純な言葉では評価できない、不思議な存在感を放つウィスキー。

※尚、1998年版の記事に書いた「どっちのほうが旨いのか?」という質問の答えだが、下記の通りだ。
もしあなたが、香水の華やかさ、フルーティさ、めくるめく香りの世界を堪能したければ1998年ものの方が旨い。そしてもしあなたが、シェリー樽の重厚な、岩と森と光と影、ドライな草花、次々と重なってくる味の世界を堪能したければ、1999年ものの方が旨い。
実は点数は同点なのだ。「ザ・ニッカ・ウィスキー 34年」というタイトルは一緒だが、1998と1999のウィスキーは全く別のコンセプトのウィスキーである。土台となっている長熟のグレーン・ウィスキーの表情の豊かさを味わうという意味では共通点があるのだけれども。(ウィスキー評論家の土屋守氏いわく「グレーンの質の高さに心底驚かされた」そうだ)

【Kawasaki Point】
98point
※この点数の意味は?

【基本データ】
銘柄:The NIKKA WHISKY 1999 34yo(ザ・ニッカウヰスキー 1999 34年熟成)
地域:Japan
樽:Oak, Sherry, オーク、シェリー
ボトル:Distillery Bottle, オフィシャルボトル

1000本限定。99年版は樽の絵入りのラベル。

なぜわざわざ「Real」Vintage と書いてあるのか。
また、社名であるニッカウィスキーに定冠詞「The」をつけて
リリースしたのはどのような想いだったか。

深く、うっっっとりとする香り。
通常のシェリー樽の陶酔感を超えている。

最低でも34年熟成以上なのだ。

裏書がシンプルだった1998年版に比較し、1999年版は充実。
テイスティングコメントの
「円熟感の中ですべてが調和します」というのが
一番言いたかったポイントなのではないだろうか。


レビュー:ザ・ニッカ・ウィスキー 1998 34年 ~幻のウィスキー~

The NIKKA WHISKY 1998 34yo(ザ・ニッカ・ウィスキー 1998 34年熟成)を飲んだ。98点。
これは、間違いなく幻のウィスキーである。ネット上でもそのテイスティング・レビューは見当たらないので、このブログがほとんど初めてのレビューだろう。代わりに見かけるのは「空きボトルは見たことがある」とか、「ウィスキー評論家の土屋守氏が、“もう一度飲みたいと切に願うウィスキーだ”と雑誌に書いてた」など、それも5~6年前の記事がほとんどだ。

このウィスキーは、ニッカが1998年と1999年にそれぞれ1,000本限定でリリースしたボトルだ。当時大変な人気で、しかも2013年現在ではもう14、5年前の話だから、現存するボトルはほぼ「幻」と呼んでよいだろう。余市蒸留所のモルト・ウィスキーと、宮城峡のグレーン・ウィスキーを1:1でブレンドしたものだ。
驚くべきは、34年以上熟成されたグレーン・ウィスキーを使っていることだろう。ややテクニカルな話ではあるが、ニッカの創業者の竹鶴政孝(たけつるまさたか=ジャパニーズ・ウィスキーの父)は、穀物からつくるグレーンウィスキーをつくるのに、“より効率の悪い”「カフェ式」と呼ばれる蒸留器を採用した。なぜ効率の悪い方を選択したのかと言えば、その方がより穀物の風味が強く残るからだ。その決定のおかげでニッカは、上質のグレーン・ウィスキーを手に入れた。竹鶴の職人らしいこだわりをうかがわせる話だ。彼は自分の作った蒸留所のグレーン・ウィスキーが34年熟成して世に出る日を見ずに亡くなった。当然、ウィスキーづくりとはそういう「自分の時間」を超えて取り組むものである。しかし、すごい情熱。

今回は、2回連続で、このザ・ニッカ・ウィスキーの98年と、99年の2本のテイスティング・レビューを掲載する。月並みだが「どっちのほうが旨いのか?」という質問にも後ほど答えよう。


【評価】
グラスに鼻を近づければ、理性を飛び越えて“心地よい”と感じる香り。香水のようなシェリー樽の香り。長い時間をかけて日に焼けた窓の木枠。切りたての上質なハムの香りと、そのナイフに反射する光。深く記憶を呼び覚ますかのよう。「この香りなら、酔っ払ってもいいかも」と思わせる。
口に含めば、やわらかく入ってくると同時に、舌の外側で重みを感じ、鼻に抜けていくどこまでも上品に熟成した木と花の香り。
重みと気品のあるウィスキーである。

【Kawasaki Point】
98point
※この点数の意味は?

【基本データ】
銘柄:The NIKKA WHISKY 1998 34yo(ザ・ニッカ・ウィスキー 1998 34年熟成)
地域:Japan
樽:Oak, Sherry, オーク、シェリー
ボトル:Distillery Bottle, オフィシャルボトル

理性を飛び越えて“心地よい”と感じる香り

鼻に抜けていくどこまでも上品に熟成した木と花の香り

1000本限定なのはもったいぶったのではなく、
それが当時の限界だったのではないだろうか

1998年のボトルの裏書はいたってシンプルだ

男の隠れ家、2006年の3月号「幻の酒が飲める店」特集

ウィスキー編は土屋守が案内人だったのだ

土屋守氏が挙げた4つのウィスキーの中でも、
『これぞ僕が「もう一度飲みたい」と切に願うウィスキー』
という強い表現をしている。
土屋さん、2013年の今でも、実はまだ飲めますよ。

重みと気品のあるウィスキーである。

続編、『レビュー:ザ・ニッカ・ウィスキー 1999 34年 ~幻のウィスキーその2~』も掲載。


レビュー:グレンドロナック18年 スパイシーな装飾

GlenDronach Allardice 18yo (グレンドロナック 18年熟成 アラダイス )を飲んだ。83点。
アラダイスとは、グレンドロナック蒸留所の創始者のジェームス・アラダイスに由来。

【評価】
グラスに鼻を近づければ、シェリー樽の香り。線香の深さ。淵が焦げた木の板。消毒液と本。醤油の一升瓶。
口に含むと、飲み口は華やか。オイリーな木の香りだが、スパイシーな装飾が施されている。あれだけ主張したシェリー樽の香りはくどくなく、消える。スパイシーさだけを余韻として残し、コンパクトな重たさを最後に残す。
華やかで、うっとりしすぎないシェリー樽のウィスキー。

【Kawasaki Point】
83point
※この点数の意味は?

【基本データ】
銘柄:GlenDronach Allardice 18yo (グレンドロナック 18年熟成 アラダイス )
地域:Highland, ハイランド
樽:Oak, Sherry, オーク、シェリー
ボトル:Distillery Bottle, オフィシャルボトル

シェリー樽の香り。線香の深さ。
口に含むと、飲み口は華やか。

華やかで、うっとりしすぎないシェリー樽のウィスキー。

イギリスは東ハイランドにある、グレンドロナック蒸留所の位置を地図で確かめてみて。

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レビュー:イワイ トラディション 知られざる名ブレンデッド

イワイトラディション(IWAI TRADITION)を飲んだ。86点。
このイワイトラディションは、訳すと「岩井伝説」。ボトルが1,000~2,000円のブレンデッド・ウィスキーのどこが「伝説」なのか?というか、岩井って誰ですか?・・と思われがちだが、これが本当に、伝説的なウィスキーであるから、ウィスキーは奥深い。
短く言えば、岩井さんは、日本のウィスキーの祖父。ジャパニーズ・ウィスキーの父は、単身留学してウィスキー作りを学んで帰った竹鶴 政孝(たけつる まさたか)だ。竹鶴は、サントリーで山崎蒸留所を作り、その後ニッカウィスキーの創設者となった。その竹鶴に「行ってきなさい」と言った上司が、岩井 喜一郎(いわい きいちろう)だ。岩井さんが行かしてくれなかったら、今のジャパニーズ・ウィスキーはない、ということで、岩井さんがジャパニーズ・ウィスキーのおじいちゃん。
竹鶴は帰国後、岩井に留学の成果をまとめたノートを提出する。これが『竹鶴ノート』。

この『竹鶴ノート』を参考に蒸留器をつくった岩井喜一郎。その蒸留器で今もウィスキー作りを細々と(失礼!)行っているのが、マルス蒸留所だ。この蒸留所が、「岩井」の名を冠したブレンデッド・ウィスキーを出す意気込みやいかに。


【評価】
グラスから立ち上る、古めかしい木の香り。木造の校舎。日に焼けた木の板。煙。木枠の窓ガラス越しの青空。
グラスを傾け口に含めば、岩清水の香り。焼いた鮎のうまみ。スモーキー。
豊かなフレーバー。スモーキーさを味あわせる名ブレンデッド。知られざる、と言わざるを得ないのが惜しいところ。

【Kawasaki Point】
86point
※この点数の意味は?

【基本データ】
銘柄:イワイトラディション(IWAI TRADITION)
地域:信州、Shinshu
樽:Oak, オーク
ボトル:Distillery Bottle, オフィシャルボトル

IWAI TRADITION はまさに、岩井伝説。
古めかしい木の香り。木造の校舎。
岩清水の香り。焼いた鮎のうまみ。スモーキー。
信州はマルス蒸留所
知られざる名ブレンデッドウィスキー

信州はマルス蒸留所の位置を地図で確認してみて。

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レビュー:ラフロイグ2000 11年 リンブルグ・ウィスキーフェア ~煙たさと甘さのコラボレーション~

Laphroaig 2000 11yo  Limburg Whisky Fair(ラフロイグ2000 11年熟成 リンブルグ・ウィスキー・フェアー)を飲んだ。88点。
先日の、トマーティン1977 30年熟成に続いて、リンブルグ・ウィスキー・フェアのボトル。世界で276本限定。
ドイツのリンブルグで毎年開催されるウィスキー祭りの限定ボトル。珍しいのはラム酒樽フィニッシュということ。バーボン樽で寝かせたあと、最後が変わってる。最後にラム酒の樽に詰め替えて、少し寝かせて瓶詰めしているのだ。はて、どのような香味が付いているのか。


【評価】
グラスから立ち上る香りは、やわらかい煙とすぐ追っかけてくる砂糖の甘み。樽の淵についた砂糖。煙たさと甘さのコラボレーション。奥にしっかりとしたうまみの芯がある。
口に含めば、飲み口は柔らかく、まるでラム酒のよう。煙たさが柔らかさとなり、うまみをしっかりと届ける。若さがラムにより円熟味を加えられ、面白さとなる。
華やかさを加えたラフロイグ。


※それにしてもラフロイグは崩れない。若くとも長熟でも、今回のようにラム樽フィニッシュでも、その個性を保って、うまみを逃さない。よく「この蒸留所は○○年代がよかった」など言うことがあるが、ラフロイグは間違いなく“現役バリバリ”だ。

【Kawasaki Point】
88point
※この点数の意味は?

【基本データ】
銘柄:Laphroaig 2000 11yo  Limburg Whisky Fair(ラフロイグ2000 11年熟成 リンブルグ・ウィスキー・フェアー)
地域:Islay, アイラ
樽:Oak, Bourbon Hogshead, Rum, バーボン・ホグスヘッド、ラム
ボトル:Limburg Whisky Fair, リンブルグ・ウィスキー・フェア

One of 276 Bottles

2000年に蒸留され、寝かし、2011年に瓶詰めされている
やわらかい煙とすぐ追っかけてくる砂糖の甘み。
煙たさと甘さのコラボレーション