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Yuji Kawasaki そのウィスキーをもう一杯: エッセイ:ウィスキーの本や映画

「そのウィスキーをもう一杯」 書籍 & SNS

最新の記事情報や、ウィスキーに関するさまざまな話題を提供中。

5月29日発売書籍:
英語圏の各国のAmazonで予約販売中。(日本でも同様にAmazon.co.jpにて予約販売中)
発売日以降、各国の書店でもお求めいただけます。

Japanese Whisky: The Ultimate Guide to the World's Most Desirable Spirit with Tasting Notes from Japan's Leading Whisky Blogger



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書籍『Japanese Whisky』Amazon予約キャンペーン サイン入りポストカードプレゼント

1か月後に、当ブログのYuji Kawasakiがウィスキーレビュアーとして参加した
書籍『Japanese Whisky』が世界のアマゾン・書店で発売されます。
これを記念して、共著者であるBrian Ashcraftとの共同キャンペーンを開催します。(Brian Ashcraftもほぼ同様のキャンペーンを実施中)

発売日の前日2018/5/28までに書籍をAmazonで予約購入いただいた方に、もれなく著者2名のサイン入りオリジナルポストカードをプレゼントいたします。

オリジナルポストカード

◆応募期間
2018/4/29(日)~2018/5/28(月)

◆応募方法
送信内容:アマゾンでの「購入完了画面のスクリーンショット」あるいは、「購入完了メールのスクリーンショット」をお送りください。

送信方法:TwitterのDM(Twitterアカウントはこちら)あるいは、Facebookページのメッセージ(Facebookページはこちら)でお送りください。

対象書籍Japanese Whisky: The Ultimate Guide to the World's Most Desirable Spirit With Tasting Notes from Japan's Leading Whisky Blogger

※本文は英語の書籍です

発送:発送の際にご住所を伺います。尚、発送に使用した氏名・ご住所のデータは発送のみに使用し、発送完了後1週間以内に削除いたします。
※本キャンペーンでは発送は国内のみに限定しております


ぜひ、これをご縁にご応募お待ちしております。


Yuji Kawasaki そのウィスキーをもう一杯: エッセイ:ウィスキーの本や映画

これからニッカのウィスキー工場「余市蒸溜所」を見学する人へ

今年2014年はニッカウヰスキーの80周年であり、創業者の竹鶴政孝(たけつるまさたか)をモデルとしたNHKドラマ「マッサン」が公開になるとあって、ニッカの北海道工場である「余市蒸溜所」の見学が盛り上がっている。

このウィスキーブログは一企業の周年に興味はないが、それがジャパニーズ・ウィスキーの歴史と重なるとあっては、無視できない。世界5大ウィスキーのひとつに数えられる日本のウィスキーがいかに生まれたか、どんな情熱的な男がそれをもたらしたか、その答えは「余市蒸溜所(よいちじょうりゅうしょ)」にある。

余市蒸溜所はニッカウィスキーの北海道工場だ。
この記事では、これから工場見学をしようと思う人、また工場見学はできないが興味がある人へ向けて、いかに余市蒸溜所が美しいかも含めて、役立つ情報を提供する。


余市蒸溜所は、なにがすごいの?

息を呑むほど美しい風景と、おいしい空気

余市蒸溜所で最初に目に入り込んでくるのは、特徴的な屋根の形がリズムを作っている美しい風景だ。

写っている人がとても小さい。スケール感が伝わるだろうか。

青い空、白い雲。東京ドーム3個分の敷地面積の中に、これらの美しい建物と、ウィスキーをつくるための設備がゆるやかに配置されている。歩くたびにウィスキーが吸っているのと同じおいしい空気を吸うことができる。


ジャパニーズ・ウィスキーの父が「本当に作りたかった」ウィスキー工場

日本に今のウィスキー文化があるのは、ジャパニーズ・ウィスキーの父と呼ばれる「竹鶴政孝(たけつるまさたか)」のおかげである。彼が1900年代初頭(大正時代)に単身、ウィスキーの本場英国にウィスキーづくりを学びにいかなければ、日本にウィスキーづくりはもたらされなかった。
彼には「日本初のウィスキー工場長」という地位があり、大きな会社の雇われの身という安定があった。しかし、それでも彼の“理想”とするウィスキーづくりへの情熱が、会社を辞め、北海道へ移住し、自身の会社を興すという一見すると“苦労の道”を選択させたのだった。そして、その“理想の地”こそが余市であり、「本当につくりたかったウィスキー工場」が、余市蒸溜所だ。

(参考書籍)
ヒゲのウヰスキー誕生す (新潮文庫)
参考書籍:ヒゲのウヰスキー誕生す (新潮文庫)

どこにあるの?蒸溜所へのアクセス

余市蒸溜所の場所は、北海道は余市(よいち)町だ。札幌から西にバスかJRで約1時間~1時間40分(JRは本数が少なく乗り換えもある)。
(参考サイト)ニッカによる『余市蒸溜所見学ガイド

ガイド付きがオススメ

蒸溜所についたら、30分間隔でスタートする60分の蒸溜所内ツアーを利用するのが楽しく、わかりやすいだろう。もちろん、その後に自由に見て回ることもできる。
※天候が悪いとガイドあるなしにかかわらず見学自体がほぼできないことがある。気になる場合は事前に電話してみよう。


見学の訪問レポートはある?

当ブログでは幸運なことに、余市蒸溜所の非公開部分も含めた見学をさせてもらったレポートを1~8まで掲載している。かなり詳しくボリュームのあるレポートなので、見学できる人もできない人も、ぜひ読んでほしい。

1 はじまりと役員室編

日本で最も北にあるウィスキー工場といえば、ニッカの「余市蒸溜所」だ。一般非公開の竹鶴政孝が会議した役員室とその窓からの眺めを公開。

2 キルン塔編

ウィスキーが製造される一番最初の工程として案内されたのは「キルン」という建物だった。

3 糖化釜(とうかがま)編

ウィスキーの原料である発芽した麦を「糖化釜」と呼ばれるでっかい釜で、お湯をつかってぐるぐるかき混ぜると・・・あたりには甘い香りが立ち込め・・・

4 発酵槽編

発酵槽(はっこうそう)が担当しているパートはなにか?それは、「アルコールをつくり出す工程」だ。

5 蒸留器編

ウィスキー蒸溜所の中で、一番華やかな工程と言っても過言ではないだろう。なんせ蒸溜所とは「蒸留をする所」なのだから。職人の間近で撮影した動画も公開。


6 熟成編

ウィスキーのもっとも神秘的なパートであり、多くの人を惹きつけてやまない魅力であり、最高の価値、それはウィスキーができるまでに費やされた「時間の価値」だ。
ニッカのご厚意で、一般非公開の「旧竹鶴邸」内部を見せていただけた。マッサンとリタとの暮らしぶり。


当初想定より反響が良く、未紹介の写真もかなりの数があるため、さらに蒸溜所内の様子を追加でレポートした。



見学の旅に必要な物は?

私の経験から、北海道の余市蒸溜所への旅に必要なモノをリストアップした。ご参考までに。

あたたかい衣服と滑らない靴

冬場の話ではあるが、ダウンジャケット(フード付きが最強)やヒートテックのような温かい衣服と、マフラー、手袋、イヤーマフか帽子があったほうが良い。靴はできれば底がゴムが良い。北海道のコンビニでは靴に装着できる“すべりどめの靴底”が売られているはずだ。

モバイルバッテリー

夢中になって写真や動画を撮っていたら、携帯の充電はすぐ切れてしまう。せっかく現地に行ったのにもったいない。充電の心配が不要になるモバイルバッテリーは必須。1個カバンに忍ばせておけば、スマホを3回ぐらいフル充電できる。
ANKER Astro M3 モバイルバッテリー 13000mAh 【Amazon限定セット】ハイパワー電源アダプタ付属モデル 2USBポート同時充電 iPhone5S 5C 5 4S/iPad Air/Galaxy/Xperia/Android/各種スマホ/Wi-Fiルータ等対応 大容量かつコンパクト 147x62x22mm (日本語説明書付) Astro M3+adapter
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飲むときの味方

ノ・ミカタのような飲むときの強い味方。飲み過ぎは良くないけれど、せっかくの旅行でうっかり飲み過ぎてしまった時にダウンすることがないよう、念のためのサポート。効果は人により異なるので、飽くまでも念のためだ。現地でドラッグストアを探すのは面倒なので、旅立つ前に入手しておきたい。ドリンクタイプではなく、顆粒や錠剤のタイプが持ち運びに便利。

ノ・ミカタ 30本入箱
参考商品:ノ・ミカタ 30本入箱
(他にはウコンの力やヘパリーゼがある)

旅行ガイド

せっかく北海道に来たのだから、ついでに小樽や札幌も少し見て帰ろうか、という場合には旅行ガイドも役に立つ。北海道は魚介が美味いのでぜひ味わってほしい。
参考サイト:小樽観光協会の「おたるぽーたる
参考サイト:札幌市の「さっぽろ観光ナビ
参考サイト:サッポロビールの「工場見学

ことりっぷ 札幌・小樽 ニセコ・旭山動物園 (国内|観光・旅行ガイドブック/ガイド)
参考書籍:ことりっぷ 札幌・小樽 ニセコ・旭山動物園 (国内|観光・旅行ガイドブック/ガイド)




以上の情報を参考にして、存分に余市蒸溜所を愉しんでほしい。そしてできれば、それまでの厚待遇を捨て、北の大地で0からウィスキーづくりをした“マッサン”こと竹鶴政孝の、燃えるような情熱に思いを馳せてみてほしい。彼のお陰で、今のジャパニーズ・ウィスキーはあるのだ。

どうか、よい旅を!






Yuji Kawasaki そのウィスキーをもう一杯: エッセイ:ウィスキーの本や映画

Kawasaki's Whisky Award 2013 ~2013年もっともオススメのウィスキー~

その年、もっとも輝いたウィスキーに贈られる Kawasaki's Whiskey Award が今年も発表されました(本ブログのオリジナル賞です)。厳選なる審査の結果は下記のとおりです。(尚、2012版のリンクはこちらです)

註)
・この賞はリリース年に関わらずこのブログで記事になった年でエントリーしています。
・通常記事の評価に加え、「現時点での入手しやすさ」も賞の基準です。


最優秀ウィスキー賞 BEST WHISKY

~今年もっとも輝いたウィスキー。陰と陽をバランスし、飲む者の人生に深みを与える~

響 ディープハーモニー (HIBIKI DEEP HARMONY)


大阪府は山崎蒸留所、そして山梨県は白州蒸留所の皆様、おめでとうございます。
“このウィスキーは、「ジャパニーズウィスキーのなんたるか」を体現したひとつの答えでしょう。ディープハーモニーの名に違わず、すべての香味の要素がすばらしい調和を見せてくれます。香味が描く世界観は繊細で奥深く、まさに和そのもの。これは、スコッチでもバーボンでも味わうことの出来ないオリジナルの世界でしょう”
ジャパニーズウィスキーを背負っているという気概と誇りすら感じられる点も評価ポイントです。

記事はこちら・・・
レビュー:響 ディープハーモニー 稀に見る・・・


最優秀新人賞

~今年もっとも驚きをもたらした若いウィスキー~

MACMYRA THE 1st EDITION(マックミラ ザ・ファースト・エディション)


スウェーデンのマックミラ蒸留所の皆様、おめでとうございます。
“今年の最大の驚きは、このスウェディッシュ・ウィスキーでしょう。台湾のカヴァラン(記事はこちら)もこの賞の候補に上がりましたが、もうかなりメジャーです。しかし、このスウェディッシュ・ウィスキーはまだ6年目で、規模もかなり小さいようです。なんでも仲間内で「スウェーデン産のウィスキーをつくろう!」と盛り上がって本当につくってしまったとか・・・ウィスキーの新世界に期待します。肝心の香味は、まだまとまりには欠けますが、めくるめく複数種の甘さのアタックは特徴的で可能性を感じさせてくれます”

ウィスキーの世界では意外なことに作り手は女性のようで、様々な点で新しいといえます。そういった未来の夢があるストーリーも評価のポイントとなりました。

記事はこちら・・・
レビュー:マックミラ 初のスウェーデン・ウィスキー


最優秀技術賞

~今年もっとも高いウィスキー技術に贈られる。次のウィスキーの発展を予感させる~

GLENMORANGIE SIGNET(グレンモーレンジ シグネット)


グレンモーレンジのビル・ラムズデン博士、受賞おめでとうございます。
“この「詳細が秘密」にされたウィスキーは、不思議な気品に満ちています。濃厚でしかも焦げた余韻を漂わせるのに、こってりなりすぎずに華やかな蜜の香りを絶妙なバランスで漂わせる・・・この妙技には舌を巻きます。普通は相容れにくい要素が見事に調和しているからです。飲んだあと、ゆったりとよい気分にさせてくれます”
香味のコンセプトにぴったりなボトルデザインも秀逸で総合評価を上げています。
尚、「竹鶴(ノンエイジ)」や「シンジケート58/6」も選考対象でした。

記事はこちら・・・
レビュー:グレンモーレンジ シグネット 心を落ち着かせる気品

特別功労賞

~今年もっともウィスキー文化の発展に寄与したと評価される活動~

映画 『天使の分け前』(Angels' Share)

『天使の分け前』公式画像。引用

イギリスの映画監督ケン・ローチさん、おめでとうございます。

“この世界初のウィスキー映画が、多くの人にウィスキーをポジティブなものとして印象付けてくれるでしょう。息を呑むほど美しい蒸留所シーンや、自然豊かなスコットランドの蒸留所の風景なども素敵ですし、ウィスキーを全く知らない若者達の目を通して見るウィスキーの世界というのも斬新でした”
ウィスキーファンならずとも、この映画でウィスキーの魅力を感じることでしょう。グラスゴーの街並みや若者達のリアリティ追求も素晴らしい映画でした。

記事はこちら・・・
映画のレビュー:『天使の分け前』 世界初のウィスキー映画
映画のレビュー:ネタバレ編 『天使の分け前』 賛否両論


以上、Kawasaki's Whiskey Award 2013 でした。
2014年の今年も皆様が良いウィスキーに出会えますように。



Yuji Kawasaki そのウィスキーをもう一杯: エッセイ:ウィスキーの本や映画

書評:北のライオン 大人のウィスキー漫画

もしも、ウィスキーのことを好きになる、ちょっとほろ苦くて、大人の、キレイな一枚一枚の絵がつらなった、粋なストーリーの漫画があったなら・・・?

北のライオン(1)
北のライオン(1)

ぜひ紹介したい漫画がある。『北のライオン』は、まさに冒頭に挙げたような要素のつまった漫画だ。コミック版はA4版で全ページフルカラー、わせせいぞうの綺麗な絵をじっくり眺めるのにふさわしいサイズだ。(Kindle版もあるけれど、この作品に関しては印刷の美しさが意味をもってくると思う。今ドキちょっと珍しい・・・)

毎回、ひとつのウィスキーがさらりとおシャレに登場する。決してウィスキーのウンチクが主体の漫画ではない。ウィスキー自体と、それよりももっとウィスキーを取り囲む人々への愛にあふれている作品だ。

主人公のライオンは、日本語が話せない。Keiko's Barという、亡き妻の名をとったバーを営んでいる。バーを訪れる人々のさまざまなストーリーが、どのコマをとっても額に入れて壁に飾りたいような絵で、しっとりと展開していく。

さびしい男の背中・・・、かつて愛した恋人・・・、きっぱりとした強い女の飲み方・・・、大和撫子な女の小唄・・・、故郷を想う人の・・・・

どの客人に対しても、ライオンは多くを語らず、いつもやさしい。
実際、現実のバーでも多くの「ちょっと良い話」がたくさんあると思うが、それらは毎夜、当事者の記憶の中だけに留まり生きつづけていく。だからバーという場所は、初心者にはわかりづらく、当事者にとっては大切な場所になる。
この作品は、そういったほとんど世に出ることのないバーでの「良い話」や、「大人の美しさ」みたいなものを、ライオンのKeiko's Barへ美しく投影しているのだろう。


ウィスキー好きに贈りたい秀逸な作品。


北のライオン(1)
北のライオン(1)




Yuji Kawasaki そのウィスキーをもう一杯: エッセイ:ウィスキーの本や映画

映画のレビュー:ネタバレ編 『天使の分け前』 賛否両論

事実上、世界初のウィスキー映画である『天使の分け前』について、賛否両論あるようだ。これはウィスキー市場にとっては良いことなのかもしれない。(当ブログのレビューはこちら

映画が公開されて日も経ったことだし、賛否両論のネタバレの感想と、私の見解を以下に書こうと思う。それを読んで、まるであなたと私がバーで映画談義を深めているような感覚を持ってもらえると嬉しい。

公式サイトより。賛否両論の『天使の分け前』だ。

賛否両論のネタバレ感想


決してウィスキーのサクセスストーリー(成功物語)ではないということについて


やはりまずは「主人公が更生してないじゃないか!もっと神がかりなテイスティング能力を発揮してどんどん真っ当な道に進むかと思ったのに!」という意見だ。これはやはり、映画の予告編でテイスティングをするシーンがそれを予感させたし、まぁ予告編を見ずとも、誰もがなんとなしに期待してしまうストーリーラインだろう。ウィスキー好きなら尚さら、ウィスキーを希望と成功の詰まった象徴として描いてほしいと潜在的に思うものだ。

しかし私はこうも思う。
「もしウィスキーの天才的なテイスティング能力を発揮させる“ウィスキーヒーロー”みたいな分かりやすい人物が描かれていたら、それはそれで冷めるだろうな」と。「ワインならそれもありだけど、ウィスキーでそんな安直なストーリーは嘘っぽい」と。
あなたはどう思っただろうか。


「クズ」の描写にかなりの時間をかけていることについて


つぎに「この映画に、被害者と向き合わせる場面までの綿密な“クズ”の描写は必要なかったのではないか?」という意見だ。確かに、被害者は人生めちゃくちゃだし、喧嘩のふっかけ方も異常だ。たしかにちょっと日本人的な感覚からすると「やりすぎじゃね?映画の中で描く必要あった?」と思うような描きっぷりだ。

ただ、なんだか調べていくと・・・巨匠ケン・ローチ監督「The Angels' Share/天使の分け前 」鑑賞にあたり知っておきたい2、3の事項によれば、

  • グラスゴー東部は英国の失業率平均の倍
  • 暴力沙汰絶えず警察の統率イマイチで貧困と暴力とドラッグのスパイラル
  • 主役は実際にその地域の子
  • 実際に「撃ったり撃たれたり、刺したり刺されたり」の日常
  • 主役の子は銃撃戦で4年の服役経験あり
  • この映画のプレミアの際、主役の母親はヘロイン中毒
  • 父親もヘロイン中毒だったけど初のリハビリに成功
  • 主役の子の顔の傷は本物(兄と喧嘩してできた)

という、、映画の世界よりもっとスゴイ。
なんなら映画の中での「クズ」の描き方がちょっとオシャレなんじゃないの、って気がしてくる。ちょっと見方が変わってこないだろうか。主役の子も映画初デビューで主役の割りに演技ができてるなぁと思っていたけれど、むしろ経験からにじみでてくるものだったのか・・。
あなたはこれらの事実についてどう思われただろうか。



結局酒を盗む、という行為について


やはり最大の賛否が分かれるポイントはエンディングだ。「結局、ウィスキー盗んだらダメじゃん!」というものだ。それでは天使の分け前ではなく、“盗人(ぬすっと)の分け前”ということだ。「それを天使の分け前って言われてもねぇ・・・」という感想。たしかに、ハッピーな分け前かどうか、というとかなり微妙だ。しかしエンディングはハッピーエンドな描かれ方と音楽で陽気に終わる。ここに違和感を持つ人も多いようだ。

しかし私はこうも思う。
結構誠実な描き方なのではないかと。考えてみてもほしい。もしこれがハリウッド映画なら?人のお金を盗む人や大勢を殺す人がヒーローっぽく描かれていて、その際にはハッピーエンディングでも「ダメじゃないか!あんなに盗んだり、殺したりして!」とは誰も本気で怒らない。

そう、これは飽くまでもフィクションだ。

盗みを推奨しているわけじゃない。誰もジャッキー・チェンのアクション観るときにぐちゃぐちゃに壊される街とかお店とかのことをどうも思わない。あれはフィクションなので、その部分に違和感を覚えるより、「アクション楽しかったな~」とか思う。それと一緒だと思う。でもリアリティのある描き方なので、あの「盗み」が引っかかるのだ。

また、劇的に更生しないのもある程度のリアリティがあってよいのではと思う。いくらでも更生するという描き方も出来ただろうし、盗む以外の描き方もあっただろうし、盗むにしたって“やむなく”感をいくらでも演出できたはずだ。ただそれをしなかったところに、この映画のグラスゴーの現状に対するリアリティ、誠実さが表れているのではないかと思う。

最後のシーンでは、「あなたってやんちゃなんだから」と彼女に言われた主人公が、ウィンクして終わる。まさかのウィンク!この最後のシーンのポップさが、監督からのメッセージ。「この物語はフィクションだよ。そんなにすぐに希望が持てるわけじゃないけど、このヒドイ現状に対して、もしウィスキーがきっかけで、ほんの少しでも希望が持てたなら・・・そんなフィクションだよ」と書く代わりだったようにも思う。

さて、あなたはどう思っただろうか。


バーなどでウィスキーのグラスを傾けながら、映画談義も楽しいかもしれない。
今宵もよいウィスキーライフを。



追記

※ケン・ローチ監督のインタヴュー記事
仕事こそが希望、仕事を持つことで人は自分に誇りを持つことが出来るんだ


※脚本を書いたポール・ラヴァティのインタヴュー記事(英語)
The Filmmakers’ Portrait Series: Paul Laverty
英語なのでほんのちょっとつまんで説明を。

  • スコットランドの国民的飲み物でもあり、巨大な産業でもあるウィスキーをその土地の若者がほとんど口にしていないことなど、多くの矛盾を入れ込んだことなどを語っている。
  • また、「若者が自らの国の文化、ウィスキーやエディンバラ城を知らないことが描かれています。彼ら(若者)の目から見えているものは何なのでしょう?」という問いに対して、「スコットランドの25歳以下の若者の60%に職がない危機的な状況。彼らは仕事や、家族や、安全な生活を望んでいるが、ヨーロッパで1000万人の若者がそれができない状況」と答え、労働者階級の若者の状況について描きたかった思いなども語られている。


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Yuji Kawasaki そのウィスキーをもう一杯: エッセイ:ウィスキーの本や映画

映画のレビュー:『天使の分け前』 世界初のウィスキー映画

映画 『天使の分け前』(Angels' Share)を見た。小気味よい展開。2013年カンヌ映画祭審査員賞受賞。
世界的にも珍しいスコッチ・ウィスキーを前面に押し出した映画だ。
といっても、スコッチ・ウィスキーをつくろう!とか、ウィスキーをめぐる愛憎劇とか、そういう類のものではない。この映画でのウィスキーは舞台装置であり、“きっかけ”なのだ。(だからウィスキーを知らない人にもオススメできる)

『天使の分け前』公式画像。引用

といっても、蒸留所の見学ツアーのシーンや、たくさんの樽の眠る貯蔵庫のシーン、テイスティング、オークションのシーンなど、ウィスキーに興味がある人やウィスキー好きの人が「ニヤッ」とすることは間違いない。ウィスキー評論家のチャールズ・マクリーン(雑誌「ウィスキー・マガジン」創始者)が、ウィスキー評論家の役でかなりガッツリ出演していたことは驚きだ(しかも演技も上手かった・・)。

ではどういったストーリーなのか?
その詳細に言及してしまうと、シンプルなだけに即ネタバレとなる。
全編を通して感じられるのは、イギリス映画的なシニカルなユーモア。皮肉が効いてるっ!ってやつだ。
ウィスキーなどぜんぜん知らない荒くれ者が(映画の中の表現では「クズ」)が主人公で、実はよい鼻を持っていることを発見する。・・・といっても、彼が隠れた天才的なテイスティング能力を発揮し、更生する・・・・という単純な流れでなく、ウィスキーに興味を持つきっかけに過ぎない。

まずウィスキーは立ち直りの“きっかけ”を与える。彼女との間に子供ができて、今のままじゃダメだと立ち直ろうとし始める彼を導いてくれる良き指導者がいる。ハリーというオジサンだ。ワルたちの社会奉仕活動の取りまとめ役だ。このオジサンがなかなか良い味をだしている。主人公のロビーに子供が出来たことを知ると、「もらいものだが」といって、スプリングバンクの32年を棚からスッとだしてくる。いかにグラスゴーが舞台でも、スプリングバンクの32年が出てくるというのは、この指導者のハリーがウィスキー好きであることの良い紹介の仕方だ。

次にウィスキーは、主人公が小さな旅をするとき、人間のいろんな面を知る“きっかけ”を与える。
前半では主人公がいかに「クズ」かということが丁寧にリアリティをもって描かれている。この主人公目線でウィスキーをめぐる大人たちを映し出すことで、皮肉が効いてくる。希少価値の高いウィスキーが高騰していく一方で、本当にその味が分かるのか、といった“矛盾”や、正しいことと正しくないことの“ものの見方”が、印象づけられる。善と悪をハッキリ分けてしまうハリウッド映画にはない複雑性を奏でている。

最後は小気味よく締めくくる“きっかけ”としてウィスキーが最高の登場をする。
これはぜひ観てほしい。まさに『天使の分け前』だ。


この映画の感想を、ウィスキーの香味の表現に置き換えるなら、苦く、ビターで、ヒリヒリとする刺激を持ちながらも、まろやかな樽香、そして、ミントのような爽快な後味、やや長めのホワイトオークの余韻・・。といったところだろうか。
複雑な味わいだが、「クズ」と呼ばれる若者の状況に対する監督の愛情が感じられ、「善き指導者」への想いが明確に感じられる。そして、ウィスキーはブルジョアないしエリートと呼ばれる層が似合う飲み物ではなく(それはワインに任せておいて)、もっと幅広く人間に希望をもたらす飲み物であるという感覚も全体に流れている。


尚、日本の著名なウィスキー評論家の土屋守氏は「オークションで1億円を突破するようなウィスキーが“モルトミル”であるというのは、やられた!という感じ」という趣旨のことを書いていた。
ウィスキー好きの人向けの、ちょっとマニアックな話だ。


たまには映画をつまみに・・・、今宵もよいウィスキーライフを。


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