さまざまなオススメの「角度」
「はじめてウィスキーを飲むなら、なにを飲めばいいですか」
という質問は、個人的にもよく聞かれるものだ。
その時々の思い付きを話したり、いっそ個性的な銘柄を挙げたり、その人の食や酒の好みを伺ってそれと似たようなものを挙げてみたりしてきたが、はたしてそれはどれぐらい役に立ったのだろうか。
とはいえ、その質問をする人にとっては、「ウィスキーを好きな人から、なにかひとつアドバイスがほしい」ということであったろうから、その要望には都度、答えることができていたのだろう。
きっと、具体的な銘柄をひとつ、その人が思う好きな銘柄を挙げることは、とても誠実な答えの一つだろうと思う。自分が好きなものを勧めることは、あらゆることの基本だろう。
ただ、それが本当にその人にオススメすべきものであったかどうかは、正直、よく答えがわからない。
もし「ウィスキー初心者のビッグデータ」でもあれば、Amazonが使う協調フィルタリングのアルゴリズムでもって、似たような好みの人を探り当てて、統計的にぴったりのオススメでも出すのだけれど、それもかなわない。
では、「初心者が好みそうな」バランスの取れた、まろやかなウィスキーはどうだろうか?これもきっとあてずっぽうにならざるを得ない。
または「よく売れているウィスキー」はどうだろうか。これはビッグデータ的な解釈に近いし、高い確率でおいしいと思ってもらえるのではないだろうか。酒屋さんの売れ筋ランキングを見てもらえばいいだろう。
初心者にオススメのウィスキーとは? |
オススメのウィスキー「体験」とは
ではもうひとくせ、ふたくせあるような「おすすめ」を聞きたい人がいた場合はどうだろうか?(申し訳ない!この記事では最後までオススメ銘柄はでてこない。)
それを真摯に考えると、「初心者にオススメのウィスキー」はかなり難しいが「初心者にオススメのウィスキー体験」なら、少し実りあるアドバイスができるのではないかと思えてくる。
「自分がどんなウィスキーが好きかについて自信がない人」が初心者だとするならば、以下のようなウィスキー体験をしてみるのが、きっとその後のウィスキー人生にプラスになるはずだ。
どんなことでも初心者には「ガイド」があったほうがい。それが本やブログでもいいだろうし、おすすめのアルゴリズムでもランキングでもいいだろう。近いうちにウィスキーの知識が完ぺきなAIも登場してくるだろう。ただ、この時代にもっとも贅沢なガイドは、あなたに向き合ってくれる「生身の人間」であることは間違いない。
その意味で、ウィスキーの最高のインストラクターはバーテンダーだ。
その意味で、ウィスキーの最高のインストラクターはバーテンダーだ。
(バーという場所への抵抗がある方は、ぜひこちらの記事を読んでみてほしい。:ウィスキー初心者が初めてバーで注文するとき、知っておきたいこと(前編))
初心者にとってバーテンダーに手ほどきをしてもらえることほど、良いウィスキー体験はないだろう。「お酒のことをちょっと知っていないとバーではなんだか恥ずかしい」と思うなら、それは間違いだ。むしろお酒のことをしらないことは素晴らしいことで、これからできるウィスキーの香味体験を思えば、出会いの衝撃を最大に愉しめるというよいポジションなのだ。
初心者とバーとウィスキー
できればバーテンダーに「ウィスキーのことを知らない」とストレートに告げてみよう。すると会話が始まり、おそらく目の前にいくつかのボトルが並ぶだろう。あるいは、会話の結果、ひとつのウィスキーを提示されるかもしれない。
大切なのは、ウィスキーのことをその場で教えてもらうことだ。そしてあなたがウィスキーを口に運ぶとき、バーテンダーはあなたの反応を見ていてくれるだろう。それによって、あなたに何をお勧めするかが変わってくるだろう。
あるいは(そういったバーが増えればいいと思って書くのだが)、バーによっては「初心者のためのテイスティング・セット」を提供してくれるところがあるかもしれない。つまり、2千円か3千円ぐらいで、5~6種類のウィスキーをほんの少量ずつ味わわせてくれるところだ。これがあれば素晴らしい初心者体験になるだろう。
だれでも同じボトルを購入できるこの時代において、ボトルを買って飲む方が圧倒的にmlあたりの価格はお得なのに、それでもバーが続くのはなぜだろうか?それは、バーとは「飲料」の提供にプラスして「体験」ができる場であるからだ。それは照明とインテリアと音楽がつくりだす雰囲気かもしれない。年季の入ったバーカウンターかもしれない。重たい扉を開けるときの感触かも知れない。あるいはバーテンダーが広げてくれるあなたのウィスキーの世界かもしれない。それらの「体験」にバーの本質がある限り、あなたがウィスキーの初心者として真っ先に頼りにしていいのは「バー」なのだ。
(むろん、あなたにとっておいしいと感じるウィスキーと、そうでないウィスキーとがあるように、バーについても好みが生まれるだろう。そうしたとき、あなたはもはや「初心者」ではない・・・)
なぜバーを頼っていいか?
だれでも同じボトルを購入できるこの時代において、ボトルを買って飲む方が圧倒的にmlあたりの価格はお得なのに、それでもバーが続くのはなぜだろうか?それは、バーとは「飲料」の提供にプラスして「体験」ができる場であるからだ。それは照明とインテリアと音楽がつくりだす雰囲気かもしれない。年季の入ったバーカウンターかもしれない。重たい扉を開けるときの感触かも知れない。あるいはバーテンダーが広げてくれるあなたのウィスキーの世界かもしれない。それらの「体験」にバーの本質がある限り、あなたがウィスキーの初心者として真っ先に頼りにしていいのは「バー」なのだ。
(むろん、あなたにとっておいしいと感じるウィスキーと、そうでないウィスキーとがあるように、バーについても好みが生まれるだろう。そうしたとき、あなたはもはや「初心者」ではない・・・)
参考になれば幸いだ。
今宵も、よいウィスキーライフを!
今宵も、よいウィスキーライフを!