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これからニッカのウィスキー工場「余市蒸溜所」を見学する人へ

今年2014年はニッカウヰスキーの80周年であり、創業者の竹鶴政孝(たけつるまさたか)をモデルとしたNHKドラマ「マッサン」が公開になるとあって、ニッカの北海道工場である「余市蒸溜所」の見学が盛り上がっている。

このウィスキーブログは一企業の周年に興味はないが、それがジャパニーズ・ウィスキーの歴史と重なるとあっては、無視できない。世界5大ウィスキーのひとつに数えられる日本のウィスキーがいかに生まれたか、どんな情熱的な男がそれをもたらしたか、その答えは「余市蒸溜所(よいちじょうりゅうしょ)」にある。

余市蒸溜所はニッカウィスキーの北海道工場だ。
この記事では、これから工場見学をしようと思う人、また工場見学はできないが興味がある人へ向けて、いかに余市蒸溜所が美しいかも含めて、役立つ情報を提供する。


余市蒸溜所は、なにがすごいの?

息を呑むほど美しい風景と、おいしい空気

余市蒸溜所で最初に目に入り込んでくるのは、特徴的な屋根の形がリズムを作っている美しい風景だ。

写っている人がとても小さい。スケール感が伝わるだろうか。

青い空、白い雲。東京ドーム3個分の敷地面積の中に、これらの美しい建物と、ウィスキーをつくるための設備がゆるやかに配置されている。歩くたびにウィスキーが吸っているのと同じおいしい空気を吸うことができる。


ジャパニーズ・ウィスキーの父が「本当に作りたかった」ウィスキー工場

日本に今のウィスキー文化があるのは、ジャパニーズ・ウィスキーの父と呼ばれる「竹鶴政孝(たけつるまさたか)」のおかげである。彼が1900年代初頭(大正時代)に単身、ウィスキーの本場英国にウィスキーづくりを学びにいかなければ、日本にウィスキーづくりはもたらされなかった。
彼には「日本初のウィスキー工場長」という地位があり、大きな会社の雇われの身という安定があった。しかし、それでも彼の“理想”とするウィスキーづくりへの情熱が、会社を辞め、北海道へ移住し、自身の会社を興すという一見すると“苦労の道”を選択させたのだった。そして、その“理想の地”こそが余市であり、「本当につくりたかったウィスキー工場」が、余市蒸溜所だ。

(参考書籍)
ヒゲのウヰスキー誕生す (新潮文庫)
参考書籍:ヒゲのウヰスキー誕生す (新潮文庫)

どこにあるの?蒸溜所へのアクセス

余市蒸溜所の場所は、北海道は余市(よいち)町だ。札幌から西にバスかJRで約1時間~1時間40分(JRは本数が少なく乗り換えもある)。
(参考サイト)ニッカによる『余市蒸溜所見学ガイド

ガイド付きがオススメ

蒸溜所についたら、30分間隔でスタートする60分の蒸溜所内ツアーを利用するのが楽しく、わかりやすいだろう。もちろん、その後に自由に見て回ることもできる。
※天候が悪いとガイドあるなしにかかわらず見学自体がほぼできないことがある。気になる場合は事前に電話してみよう。


見学の訪問レポートはある?

当ブログでは幸運なことに、余市蒸溜所の非公開部分も含めた見学をさせてもらったレポートを1~8まで掲載している。かなり詳しくボリュームのあるレポートなので、見学できる人もできない人も、ぜひ読んでほしい。

1 はじまりと役員室編

日本で最も北にあるウィスキー工場といえば、ニッカの「余市蒸溜所」だ。一般非公開の竹鶴政孝が会議した役員室とその窓からの眺めを公開。

2 キルン塔編

ウィスキーが製造される一番最初の工程として案内されたのは「キルン」という建物だった。

3 糖化釜(とうかがま)編

ウィスキーの原料である発芽した麦を「糖化釜」と呼ばれるでっかい釜で、お湯をつかってぐるぐるかき混ぜると・・・あたりには甘い香りが立ち込め・・・

4 発酵槽編

発酵槽(はっこうそう)が担当しているパートはなにか?それは、「アルコールをつくり出す工程」だ。

5 蒸留器編

ウィスキー蒸溜所の中で、一番華やかな工程と言っても過言ではないだろう。なんせ蒸溜所とは「蒸留をする所」なのだから。職人の間近で撮影した動画も公開。


6 熟成編

ウィスキーのもっとも神秘的なパートであり、多くの人を惹きつけてやまない魅力であり、最高の価値、それはウィスキーができるまでに費やされた「時間の価値」だ。
ニッカのご厚意で、一般非公開の「旧竹鶴邸」内部を見せていただけた。マッサンとリタとの暮らしぶり。


当初想定より反響が良く、未紹介の写真もかなりの数があるため、さらに蒸溜所内の様子を追加でレポートした。



見学の旅に必要な物は?

私の経験から、北海道の余市蒸溜所への旅に必要なモノをリストアップした。ご参考までに。

あたたかい衣服と滑らない靴

冬場の話ではあるが、ダウンジャケット(フード付きが最強)やヒートテックのような温かい衣服と、マフラー、手袋、イヤーマフか帽子があったほうが良い。靴はできれば底がゴムが良い。北海道のコンビニでは靴に装着できる“すべりどめの靴底”が売られているはずだ。

モバイルバッテリー

夢中になって写真や動画を撮っていたら、携帯の充電はすぐ切れてしまう。せっかく現地に行ったのにもったいない。充電の心配が不要になるモバイルバッテリーは必須。1個カバンに忍ばせておけば、スマホを3回ぐらいフル充電できる。
ANKER Astro M3 モバイルバッテリー 13000mAh 【Amazon限定セット】ハイパワー電源アダプタ付属モデル 2USBポート同時充電 iPhone5S 5C 5 4S/iPad Air/Galaxy/Xperia/Android/各種スマホ/Wi-Fiルータ等対応 大容量かつコンパクト 147x62x22mm (日本語説明書付) Astro M3+adapter
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飲むときの味方

ノ・ミカタのような飲むときの強い味方。飲み過ぎは良くないけれど、せっかくの旅行でうっかり飲み過ぎてしまった時にダウンすることがないよう、念のためのサポート。効果は人により異なるので、飽くまでも念のためだ。現地でドラッグストアを探すのは面倒なので、旅立つ前に入手しておきたい。ドリンクタイプではなく、顆粒や錠剤のタイプが持ち運びに便利。

ノ・ミカタ 30本入箱
参考商品:ノ・ミカタ 30本入箱
(他にはウコンの力やヘパリーゼがある)

旅行ガイド

せっかく北海道に来たのだから、ついでに小樽や札幌も少し見て帰ろうか、という場合には旅行ガイドも役に立つ。北海道は魚介が美味いのでぜひ味わってほしい。
参考サイト:小樽観光協会の「おたるぽーたる
参考サイト:札幌市の「さっぽろ観光ナビ
参考サイト:サッポロビールの「工場見学

ことりっぷ 札幌・小樽 ニセコ・旭山動物園 (国内|観光・旅行ガイドブック/ガイド)
参考書籍:ことりっぷ 札幌・小樽 ニセコ・旭山動物園 (国内|観光・旅行ガイドブック/ガイド)




以上の情報を参考にして、存分に余市蒸溜所を愉しんでほしい。そしてできれば、それまでの厚待遇を捨て、北の大地で0からウィスキーづくりをした“マッサン”こと竹鶴政孝の、燃えるような情熱に思いを馳せてみてほしい。彼のお陰で、今のジャパニーズ・ウィスキーはあるのだ。

どうか、よい旅を!






レポート:余市蒸溜所への訪問8 ~マイブレンドウィスキー・博物館・旅の終わり

連載した「余市蒸溜所への訪問レポート」は、一般非公開部分も含むニッカのウィスキー工場見学に加えて、竹鶴政孝とその妻リタとの暮らしの思い出を紹介し、終了した。ネット上で気楽に見られる蒸溜所レポートとしては、長文かつ写真枚数も豊富で、動画もありなので、情報量がトップクラスに多いレポートとなった。
しかし、当初想定より反響が良く、未紹介の写真もかなりの数があるため、さらに蒸溜所内の様子を追加でレポートする。


今回はニッカのご厚意により、通常余市蒸溜所では開催されていない「マイブレンドウィスキー体験」を体験できた(仙台の宮城峡蒸溜所では「マイウィスキー塾」の一部カリキュラム)。


マイブレンドウィスキー体験キット
手順は以下のとおり。
原酒5種
(フルーティ&リッチ、シェリー&スイート、
ピーティ&ソルティ、モルティ&ソフト、グレーン)を
スポイトで取り、mlをメスシリンダーで測りながら、
フラスコに入れ、混ぜる。
これをテイスティンググラスでテイスティングして、
好みのブレンドを見つけていくのだ。
20mlになるように調整しながらレシピを見つけたら、
これを10倍して、200mlの“マイボトル”を作る。


テイスティングはもちろん“竹鶴政孝スタイル”で。
竹鶴政孝はニッカの創業者であり、同時に初代マスタブレンダーだ。
グラスを手のひらでおおい、温めながら、
鼻へむけて筒状にすることで香りを集める。
鼻はひとつの穴で。たくさんテイスティングするときに
同時に2つの鼻の穴を使うと早く疲れる、というのが理由らしい。

ニッカウィスキーアンバサダー箕輪氏も
竹鶴政孝のひとつ穴スタイルで。


よし、この表にしたがって・・・。

“スコットランドは今も100位上の蒸溜所が稼働しているが、
日本は原酒の蒸溜所が少ないため、
ニッカではバラエティに富んだ
いくつものタイプを自前で作る”


試行錯誤の末、レシピが完成

200mlでつくって、この空き瓶に入れよう。


ドライヤーで圧着密閉
これをしないと飛行機に乗れない


オリジナルの一本が完成。
ちなみにタイトルは「雪と塩」
やさしく澄んだ香りと塩っぽさを強調してつくってみた

紙袋に入れて思い出に持って帰る。

上記は今回だけの「おまけ」体験だが、なかなか興味深かった。ウィスキーのブレンドなど体験することはないだろう。その気になれば自宅でもできるが、原酒にこだわってかなり高価になる割に成果があまり期待できないという趣味の真骨頂を味わうことになりそうだ。
もし興味がお有りなら、ニッカの仙台工場、宮城蒸溜所のマイウィスキー塾という本格ウィスキーづくり体験の一部として同じようなブレンドが体験できる。



蒸溜所内レストラン「樽」でいただくランチ。
北海道の幸など。
食中酒はニッカのお酒をハイボールで。


さて、「ウィスキー博物館」だ。かなりコンテンツが豊富で紹介しきれないが、特に興味深い点をいくつか挙げてみよう。


ポットスチル(蒸留器)の展示から始まる

樽の実物

熟成の神秘

樽にいれたばかりのウィスキー
透明だ

本物のウィスキーが入っているので、
香りを嗅ぐことができる

20年ぐらい熟成させると
樽の中のウィスキーは色づき、
半分が蒸発する
蒸発分を“天使の分け前”と呼んだりする
そりゃ長熟のウィスキーが高価なわけだ

博物館の中にはその場で原酒を飲めるバーがある

博物館内のバー


政孝が実際に使っていたパスポート

政孝(右)とリタ(左)の旅券。
旧字体が難しいが「日本帝国海外旅券」だろうか。

パスポート。若かりし頃の政孝。

有名な「竹鶴ノート」
今や1900年台はじめのスコットランドの蒸留の様子を知る
第一級の資料である
政孝は留学先の蒸溜所の様子を必死でメモしたという

“壽屋スコッチウィスキー醸造工場設計図面”
壽屋(ことぶきや)はサントリーの前身で、
これは今の「山崎蒸溜所」の設計図面だ。
竹鶴政孝は山崎蒸溜所の初代所長&マスターブレンダーでもあるので、
彼の死後、荷物を整理していた時にこれが見つかったという。
ニッカはサントリーに連絡して、
「山崎蒸溜所のものなのでそちらにお返しします」と言ったそうだが、
サントリーは「政孝さんのものなので、そちらで展示なさってください」と返事したそう。
そういういきさつで、今、余市蒸溜所に山崎蒸溜所の初期図面が展示されれている。
日本のウィスキー史に触れるエピソードだ。

政孝が受賞したメダル
日本のウィスキーのパイオニアに贈られた賞だ

これが政孝が世に放った「第1号ウイスキー」だ。
他にも歴史的ウィスキーの展示多数。

昔のCMも放映中

世界最大のウィスキー愛好家団体
「スコッチ・モルト・ウィスキー・ソサエティ」に
初めてリストアップされた日本の蒸溜所が余市蒸溜所だ。

以上、ウィスキー博物館のほんの数ポイントを挙げた。この余市のウィスキー博物館はすなわち、竹鶴政孝の歴史博物館であり、つまりジャパニーズ・ウィスキーの博物館といってもいいだろう。


おみやげコーナーも少しだけ紹介。

ショットグラス。
浮き彫りになっている絵が見やすいよう、
中に黒い布が入れられている。
これはポットスチル(蒸留器)の絵。

ヒゲのおじさん(ローリー卿)バージョン。

蒸溜所限定のボトルも売られている

興味深いおみやげと言えば、蒸溜所限定のボトルだろう。「原酒10年」あたりはよいおみやげと思うが、変わったものとして「ピーティ&ソルティ」などの「なんとか&なんとか」という名前のついた、ちょっと極端なテイストにしてあるボトルもある。これらに関しては好き好きだろう(一本だけ選ぶとしたら極端なやつはおすすめしない。バリエーションとしてならよいけれど)。


以上、私のとても濃い余市蒸溜所訪問は終わった。

余市駅に

ワンマン電車が滑り込み

夕日と共に余市を後にした

1~8までの余市蒸溜所訪問レポートを書けたことを嬉しく思う。同時に、その分量に対してどれだけのことをあなたにお伝えできたか、いぶかしく思う。ニッカウィスキーのご厚意(特に工場長の杉本氏、ずっと解説してくださった箕輪氏、小原氏)も感謝するし、これらのことをつくり上げた竹鶴政孝その人の偉大さに敬服する。

今回の旅は、ウィスキーがどのように作られるかという工場見学でもあり、そして工場見学以上のものであったと思う。竹鶴政孝の情熱に触れることができたと感じているからだ。
それは余市という北海道の町の凛とした空気の影響なのか、あるいは工場内でたびたび嗅いだあの麦の香りのせいなのか、あるいは、今も竹鶴政孝のやり方に影響を受け続けている蒸溜所の人々の姿に、物言わぬ説得力を感じたからなのか・・・私には定かではない。


以来私は、ウィスキーの香りをかぐたびに、これらのことを思い出さずにはいられなくなる。



~おわり