レビュー:ボウモア 10年 テンペスト バッチNo.3 強烈な潮と焦げ

BOWMORE 10yo TEMPEST Small Batch Release No.3(ボウモア 10年熟成 テンペスト スモール・バッチ・リリース No.3)を飲んだ。83点。
Tempest(テンペスト)の意味は、暴風雨だ。荒れ狂う鉛色の空と海、吹き荒れる風、、といったイメージだろうか。ただでさえボウモアはピート香がガッツリ効いているが、果たして、このウィスキーはいかほどか。

ボウモア テンペスト バッチ3

【評価】
グラスに鼻を近づければ、夏の夕立のあとの土の香り、爽やかな水しぶきと岩。鮮やか。煙がゆるやかにではあるが、薫っている。
液体を口に含めば、焚き木を口の中にいれたような、煙と焦げ。しかし甘さもあり、青い夏の空の下の海、という光景が浮かぶ。
強烈な潮と焦げが、大きな岩のゴツゴツした輪郭を浮かび上がらせるような印象を与えるウィスキー。

※強烈ではあるが、暴風雨というだけでない、バランスも整ったウィスキー

【Kawasaki Point】
83point
※この点数の意味は?

【基本データ】
銘柄:BOWMORE 10yo TEMPEST Small Batch Release No.3(ボウモア 10年熟成 テンペスト スモール・バッチ・リリース No.3)
地域:Islay, アイラ
樽:Oak, Bourbon, 1st Fill オーク、バーボン樽のファーストフィル
ボトル:Distillery Bottle, オフィシャルボトル


アイラ島の形がエンボスされたボトルキャップ

Small Batch Release、少量のリリースだ

大きな岩のゴツゴツした輪郭を浮かび上がらせるような印象を与える

夏の夕立のあとの土の香り、爽やかな水しぶきと岩


焚き木を口の中にいれたような、煙と焦げ。強烈。

イギリスの小さな島、アイラ島に位置するボウモア蒸留所を、グーグルマップで確かめてみて。

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そもそもウィスキーとは何か?(後編)

ウィスキーとは何か、というのを、ウィスキーの魅力の面から語ろうというのがこの記事の趣旨だ。「そもそもウィスキーとは何か?(前編)」では、ウィスキーの香り特異性である「凝縮」、すなわち、
たった1滴の中から宇宙が見えるような、香りの爆発
の背景には、ワインやビールにはない「蒸留」という工程があることを明かした。
後編ではすでに予告していた通り、ウィスキーのロマンティックな面、すなわち、「熟成」に焦点を当ててみたいと思う。


ウィスキーは時が育てる

ウィスキーをひと口含む。あなたはその瞬間に、そのウィスキーが生まれてからの数年から数十年を味わう。その時間を経たウィスキーがあなたの嗅覚と味覚を満足させてくれる。ところで、この酒の評価は、生まれたときにはまったく定まらない。どう育つかで評価が決まるのが、面白いところだ。だから、生まれた年の「当たり年」や「はずれ年」もない。生まれた瞬間に評価がある程度決まってしまうより、その後の時によってなにかが作られていくほうが、ずっとロマンがある。
では、ウィスキーはどのように育つのだろうか?

樽の中で眠っているウィスキーに何が起きているのか?

木の樽の中でウィスキーは、時間をかけてゆっくりと変化する。何千という自然の香味成分が、樽の中で徐々に調和していく。隣り合う同じような樽のはずなのに、中身は毎年違うものになっていく。樽の中では、無数の科学的な反応が絶えず起こっていると予想されている。
つまり、毎日、何かが足されて、何かが失われていく。それは神秘的なプロセスで、その熟成の秘密は、科学的にも解明できていない。

だから、どんな風に育つかは、まったく予想ができない。若いときに「ぜんぜんダメだ」と思われた樽も、しばらく寝かせて、年月を経たとき、素晴らしい樽になっていることもある。樽の材質なのか、気候なのか、どういう条件が揃えば「よいウィスキー」ができるか、よく分からないのだ。そのウィスキー自身にも未来とは暗闇のなかで必死に模索するもので、自らの可能性を信じながらも、不確実性の毛布に包まれて育つ。

ウィスキーは、たくさんの偶然と、毎日変化する無数の環境要因によってつくられている。

つまり、時間に揉まれ磨かれることが宿命の酒だ。
その液体を口に含むとき、あなたはその宿命を感じながら、そのウィスキーが辿ってきた時を飲む。厳しい冬や、穏やかな春。爽やかな夏や、切ない冷え込みの秋を、いくつもくぐって。もし、このことを少しでも感じながらウィスキーを飲んだなら、あなたはもう、ウィスキーの虜で「なぜウィスキーを飲むのか」の答えを、たしかに実感しているだろう。

ウィスキーをつくる「熟成」とは、なんと人間らしいプロセスで、なんとロマンティックなのだろう。
今宵も、素敵なウィスキーライフを。



そもそもウィスキーとは何か?(前編)

ついうっかりしていて、「ウィスキーってなんだっけ?」という疑問に答えていなかった。
ウィスキーブログとして迂闊だった。
Wikipediaに載っている歴史とか科学とかはさて置き、ここでは飲み手としてのウィスキーを語ろう。

  • ウィスキーってどんな美味しさなの?
  • なんで人は他の酒がある中でもウィスキーを飲むの?

といった観点から、ウィスキーとは何かを紹介しよう。



ウィスキーの美味さは、その香りにあり

なぜ人がウィスキーの虜になるのか、その秘密は香りにある。ウィスキーの香りは、ほぼ香水なのだ。なんでも一杯のウィスキーには、数千の香りが含まれているとか。代表的な香りは、、

  • 木の香り
  • バニラの香り
  • チョコレートの香り
  • 花の香り
  • レモンの香り
  • リンゴの香り
  • 煙の香り
  • 皮の香り

などがある。(詳しくはこのブログのさまざまなテイスティングコメントを参考にしてほしい)
なぜ多様な香りを凝縮できるのか?それは香水と同じで、「蒸留」という神秘的なテクニックを使うからだ。


蒸留して、樽で寝かせるから神秘的に香る


香りだけなら、ワインもビールも豊富ではないか、と思うかもしれない。
確かに香りの「豊富さ」ではワインもビールも素晴らしいのだが、ウィスキーの香りは「豊富」であると同時に、「凝縮」しているのだ。たった1滴の中から宇宙が見えるような、香りの爆発。それがウィスキー特有の「香り体験」をつくりだす。

なぜウィスキーの香りは、香水のような、エッセンシャルな香りの「凝縮感」があるのか。
それはワインにもビールにもない「蒸留」という工程が2つの効果を生み出すからだ。

ひとつ目の効果は、蒸留することで香り成分を取捨選択できること。これは蒸留器の「形状」によってコントロールできる。香りの科学だ。

ふたつ目の効果は、アルコール度数を高めることで木の樽の香りを最大限に得られること。
ワインもビールも(ついでに日本酒も)、蒸留していない醸造酒で、アルコール度数は高くても20度程度だ。ウィスキーは、醸造酒をぐつぐつ煮て「蒸留」してつくるから、蒸留したてのウィスキーの原液は60度以上ある。ここがポイントで、木の樽はアルコール度数が60度程度のとき、たくさんの香り成分が溶け出すという。
だから、人類が「蒸留」という技術を手に入れないと出会えなかった自然の香りが、ウィスキーには含まれているのだ。

ウィスキーのできるプロセスはざっくり4つ。香りに注目してみよう。

  1. 自然の原料を採取、加工
  2. 微生物の力で醸造(香り成分とアルコールが生まれる)
  3. 蒸留器で蒸留(好ましい香り成分だけ抽出し、アルコールを凝縮させる)
  4. 木の樽で熟成させる(木の香り成分と、その土地の風の香りもついていく)

大まかに言えばワインやビールは「2」番どまり。3番以降は、人類が「蒸留」という技術を手に入れるまでは出来なかったのだ。(当時はあまりに神秘的すぎて魔術の一種と思われていたようだ)

ここまででも、ウィスキーのユニークさ(独自性)が分かってもらえたと思う。数千の香りが凝縮したウィスキーを口に含んだ際の、その香りの爆発はウィスキー特有のものだ。
「なぜ人がウィスキーを飲むのか」の秘密に少し迫れたと思うが、もうちょっとロマンティックな話もしておかなければならない。でもそれはまた、後半に引き継ごう。


後編はこちら
そもそもウィスキーとは何か?(後編)



レビュー:キルホーマン 100%アイラ 2011 3年熟成 アイラ島の主張

KILChOMAN INAUGURAL RELEASE 100% ISLAY 2011 3yo(キルホーマン イノーギュラル・リリース 100%アイラ 2011 3年熟成)を飲んだ。85点。
キルホーマン蒸留所はアイラ島の蒸留所の中でもっとも若い。2005年に出来た蒸留所だ。今回のボトルは「100%アイラ島」がコンセプト。麦の栽培からボトリングまで、すべて島の中でやったようだ。


【評価】
グラスに鼻を近づければ、爽やかなピート香、夏の水しぶきを思わせるフレッシュネス。焦がした麦。しっとりとしていて、重くならず、だが香りの展開が物語を感じさせる。
口に含めば、爽やかな酸味とコク、このコクは厚みのある複数種の焦げとコク。順番では、焦げがくる、イチゴの甘みがくる、そして麦がくる。
潮の香りが後味に漂う、アイラ島のウィスキーの要素をまとめた主張を感じる一杯。

【Kawasaki Point】
85point

【基本データ】
銘柄:KILChOMAN INAUGURAL RELEASE 100% ISLAY 2011 3yo(キルホーマン イノーギュラル・リリース 100%アイラ 2011 3年熟成)
地域:ISLAY, アイラ島
樽:Oak, Burbon,  オーク、バーボン樽
ボトル:Distillery Bottle, オフィシャルボトル

美しいシャイニーゴールド

アイラ島にこだわったボトル

キルホーマンは「Islay's Farm Distillery = 農場蒸留所」
蒸留所なんだけど、麦も栽培しているという今となっては変り種蒸留所


ボトルの下にも「ISLAY'S FARM DISTILLERY」のエンボスが

アイラ島のウィスキーの主張を感じる一杯

アイラ島の唯一内陸部(と言っても小さな島だから潮風が吹いているに違いない)にあるキルホーマン蒸留所の位置を地図で確かめてみて。

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レビュー:スプリングバンク2000 12年 SMWS 27.102 波音のメロディ

Springbank 2000 12yo SMWS 27.102(スコッチ・モルト・ウィスキー・ソサエティのスプリングバンク 2000 12年熟成 )を飲んだ。85点。

スプリングバンク 2000年 12年熟成

【評価】
グラスに鼻を近づければ、木の蜜、搾りたてのライム果汁、おぉグッド・シェリー・パフューム。土の香りも漂わせるが野暮にならないのは、上品な甘みがあるから。夜の海辺で線香花火をしているような静かな主張。
グラスを傾け口に含めば、木の酸味と渋みを漂わせながら、すっきり、さわやか、甘い、熱い。にがみと煙があとから上がってくる。
波音をメロディにしてジャズドラムを聞きたい、そんな気分にさせるウィスキー。

【Kawasaki Point】
85point
※この点数の意味は?

【基本データ】
銘柄:Springbank 2000 12yo SMWS 27.102(スコッチ・モルト・ウィスキー・ソサエティのスプリングバンク 2000 12年熟成 )
地域:Campbeltown, キャンベルタウン
樽: 1st Fill Sherry Hogshead,  ホグスヘッド ファーストフィル、シェリー
ボトル:Scotch Malt Wisky Society スコッチ・モルト・ウィスキー・ソサエティ


ファーストフィルのシェリー樽なのに、
くどくなく、すっきり爽やか

12年塾生の割りにバランスが良い

野暮にならないのは、上品な甘みがあるから

ソサエティは世界最大のウィスキー愛好家団体

すっきり、さわやか、甘い、熱い

波音をメロディにして、ジャズドラムを・・・

イギリスはキャンベルタウンにあるスプリングバンク蒸留所の位置を、地図で確かめてみて。

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レビュー:アードボッグ 香りの構成の妙

ARdbOG(アードボッグ)を飲んだ。83点。
決して誤植ではなく、アードベッグから出た「アードボッグ」だ。アイラ島のウィスキーはスモーキーな香りを出すためピート(泥炭)を焚くのだけれど、そのピートの採れる湿地(Peat Bog)と、Ardbegを掛けているジョークというか言葉遊び。責任者のビル・ラムズデン博士のセンスなのだろうか。

ARdbEGから出たARdbOG

【評価】
グラスから立ち上るのは、華やかな麦の香り、穏やかでありながら柑橘の効いたピート香、不思議な存在感がある。ジャーキーのスパイシーさ。
口に含めば、穏やかでしっかりなめした革(カーフ)を感じ、その奥に隠れた柑橘香が、この滑らかで個性的なテクスチャを支え、バランスしているかのよう。
この香りの構成の妙。まるで科学書を紐解いたような知的な刺激に溢れているウィスキー。

【Kawasaki Point】
83point
※この点数の意味は?

【基本データ】
銘柄:ARdbOG(アードボッグ)
地域:ISLAY, アイラ島
樽:Oak, Burbon,  オーク、バーボン樽
ボトル:Distillery Bottle, オフィシャルボトル

キャップはやっぱりアードベッグ


eがoになっている。年数表示はない

ピート採掘のレトロな写真。
写真右側にはトレードマークの犬(名前:ショーティー)

穏やかでしっかりなめした革(カーフ)、奥に隠れた柑橘

ウィスキーの聖地のひとつ、アイラ島に位置するアードベッグ蒸留所をGoogle Mapで確かめてみて。

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