レビュー:グレンフィディック 1989 24年 スプーンモルト=バルベニー

THE MALT Ran Away with THE SPOON Glenfiddich with Balvenie 1989 24yo by WARDHEAD(ティースプーンモルトウィスキー グレンフィディック with バルベニー 1989 24年熟成 by ウォードヘッド)を飲んだ。89点。

この長いウィスキーのタイトルを直訳すれば「麦芽とスプーンの逃走」となる。ラベルに描かれた麦芽の腕に「グレンフィディック」とあり、スプーンの腕には「バルベニー」とある。シングル・モルトのグレンフィディックがスプーン一杯のバルベニーを連れて逃げ出している、というユーモラスなラベルだ。

ティースプーンモルト グレンフィディック with バルベニー

この通称「スプーンモルト」シリーズは、あるシングル・モルトの樽に対してティースプーン一杯分の別のシングル・モルトをブレンドしている。割合から言ってほとんど影響はないだろうが、スプーン1杯分でも別の蒸溜所のシングル・モルトが混ざれば、それはもうシングル・モルトではない。なぜこんな面倒なことをしているかといえば、グレンフィディックなどの有名蒸溜所はボトラーズからシングル・モルトをリリースすることを制限しているらしく、それをかいくぐるため「スプーン1杯分別のモルトが混じってるんでこれは違いますよ」で通る・・という噂だ。
そんな一休さんみたいなトンチを効かせて、こんな「逃げろ、逃げろ」みたいなラベルで果たして蒸溜所は納得なのかな・・・とは思うが、きっと成立しているユーモアなのだろう。

さて、前置きが長くなったが、このボトルの中身の香味はどのような世界を見せてくれるのだろうか。


【評価】
グラスから立ち上るのは、芳ばしく燻った麦。中流域の穏やかな流れと、収穫された果物。秋の穏やかな夕刻前の日差し。
口に含めば、甘くビターなチョコレート。ロウと柑橘。メロンと麻袋。
広い草原で木のベンチに腰掛け、ゆっくりと愉しみたいモルト。

【Kawasaki Point】
89point
※この点数の意味は?

【基本データ】
銘柄:THE MALT Ran Away with THE SPOON Glenfiddich with Balvenie 1989 24yo by WARDHEAD(ティースプーンモルトウィスキー グレンフィディック with バルベニー 1989 24年熟成 by ウォードヘッド)
地域:Highland, ハイランド
樽:oak, オーク
ボトル:WARDHEAD, ウォードヘッド

モルト(麦芽)が

スプーンを連れて逃げていく

モルトはグレンフィディック、スプーンはバルベニー

ロウと柑橘。メロンと麻袋。

モルトの脚。デザインはkeith shore氏。






レビュー:グレンリベット ガーディアンズチャプター この春は・・・

GLENLIVET Gurdian's Chapter Exotic(グレンリヴェット ガーディアンズ・チャプター エキゾチック)を飲んだ。95点。
グレンリベットの「ガーディアン」(ファン)達がテイスティングして「これ!」と選んだ一本を発売しようという企画だったようだ。日本では1,000本限定。日本で1,000本限定のウィスキー、というのは私の感覚値だが、「まぁまぁあるな」というレベルだ。このときばかりは現状のウィスキー人口に感謝する。今後、ますますウィスキー人口が増えていくだろうから、今のような入手しやすさではなくなるかもしれないが・・・。
さて、このボトルの香味はどんな世界を見せてくれるのだろうか。

グレンリベット ガーディアンズチャプター

【評価】
グラスから立ち上る香りに集中すれば、世界に引き込まれる。畳の部屋のすだれの奥の、庭に開けた大きな窓の。ほとりのお香。高貴さと優雅さ。
口に含めば、ジリジリと甘い、悠久の時を感じるかのような落ち着いた物語性を持っている。眼鏡を外して、ぼんやりとした春の庭を眺める。どうやら小鳥が飛び立ったようだ。この春はいつまで続くのだろう。

(なんとファンタジックな一杯だろうか)

【Kawasaki Point】
95point
※この点数の意味は?

【基本データ】
銘柄:GLENLIVET Gurdian's Chapter Exotic(グレンリヴェット ガーディアンズ・チャプター エキゾチック)
地域:Highland, ハイランド
樽:oak, オーク
ボトル:Distillery Bottle, オフィシャルボトル

ファンたちの投票によって選ばれたという

グレンリベットはスコットランド最古の政府公認蒸溜所

マスターディスティラリーのサイン、「A.J. Winchester」 

悠久の時を感じるかのような落ち着いた物語性






もしグレンリベットに旅するなら、地図で確かめてみて。





レビュー:イチローズモルト MWR どこかに優雅さを・・・

Ichiro's Malt MWR(イチローズモルト ミズナラ・ウッド・リザーブ)を飲んだ。83点。

イチローズモルトというブランドは2004年に設立されたばかりの会社「ベンチャーウィスキー」からリリースされている。ウィスキーの新しいブランドや蒸溜所が生まれることはとてもワクワクすることだ。世界でも多くの蒸溜所が生まれていると聞く。アメリカでは現在進行形で多くの小規模蒸溜所が生まれていると聞くし、今年WWA(ワールド・ウィスキー・アワード)でベスト・シングル・ウィスキーに輝いたのはタスマニアの蒸溜所「サリヴァンズ・コーヴ」で設立は1994年。一般企業で10年や20年といえばなかなか厚みのあるイメージを受けるが、1700年や1800年代から操業していますといった老舗がゴロゴロいるウィスキー蒸溜所の中では「新しい」部類に入る。

歴史があることと、新しいことは、どちらも同じほど素晴らしい。ウィスキー好きとしてはこれからも多くの蒸溜所による多種多様なウィスキーのリリースを期待するばかりだ。

さて、今回のMWRはMizunara Wood Reserveの略のようだ。ミズナラは日本の蒸溜所が用いることがある樽材で、独特の香味が付与される。白檀(びゃくだん)や伽羅(きゃら)などのお香を想起させるとよく言われる。日本人にとっては高貴なイメージとして結びつきやすく、ヨーロッパ人にとってはエキゾチックでより刺激的な香りと受け取られることもあるようだ。

さて、このボトルの香味はどうだろうか。

イチローズモルト ミズナラ・ウッド・リザーブ

【評価】
グラスを傾け鼻を近づければ、小石と小石の間をすり抜けるように流れていく水、川のほとりに石で釜を組んでおこなう飯盒炊爨(はんごうすいさん)。炊けていくご飯の甘い香り。誰かが取り出したチョコレート。
口に含めば、独特の木の苦味。深く突き刺さるような苦みではなく、どこかに優雅さを漂わせながら香り続ける。上質な川魚を焼いた時の皮の苦味のニュアンス。
ユニークな苦味のハーモニーを楽しむ一杯。

【Kawasaki Point】
83point

【基本データ】
銘柄:Ichiro's Malt MWR(イチローズモルト MWR)
地域:Chichibu, Japan 日本、秩父
樽:Mizunara, ミズナラ
ボトル:Distillery Bottle, オフィシャルボトル



イチローズモルトのラベルは葉っぱの形

埼玉は秩父にある蒸溜所

どこかに優雅さを漂わせながら香り続ける・・・




レビュー:ホワイトホース 特級表記 赤く燃える火を・・・

WHITE HORSE(ホワイトホース 特級表記)を飲んだ。86点。
「特級表記」があるウィスキーなので1962~1989年の間に発売されたものだろう。ということは、どんなに短く見ても25年以上は前のお酒。ウィスキーはそのアルコール度数の高さによって、かなり長期間に渡る保存が可能で、若者一人分程度の時間であれば難なく飛び越えることができる。
さて、このホワイトホースの香味はどうだっただろうか。

ホワイトホース 特級表記

【評価】
グラスから立ち上るのは、麦のいぶしと窯のスス、古びた甘み。銅の香り。香ばしい。
口に含めば、穏やかな麦の香りが広がるが、同時に赤く燃える火を連想させる。ずぅっと長く赤く燃えている。
遠い記憶の輝きのようなウィスキー。

【Kawasaki Point】
86point
※この点数の意味は?

【基本データ】
銘柄:WHITE HORSE(ホワイトホース 特急表記)
地域:Islay, Highland, アイラ、ハイランド
樽:Oak, オーク
ボトル:Blended, ブレンデッド

Estab. 1742 = 1742年創業

特級表記シール。当時は今より高い酒税を払わなければならなかった。

馬のエンボス

白馬の上には英国王室御用達のマークあり
現在のボトルには存在しない

年季の入った裏ラベル
エディンバラのキャノンゲートにあった「ホワイトホースセラー」の説明

麦のいぶしと窯のスス、古びた甘み

赤く燃える火を連想させる




レビュー:ブラックニッカ 初期リリース 甘みがそのまま・・・

BLACK NIKKA WHISKY(ブラック・ニッカ・ウィスキー)を飲んだ。ボトルはおおよそ初期リリースのものらしい。
ということはつまり、竹鶴政孝が社長をしている頃のものであるが、残念ながらすでにほとんど現存しない。近々、復刻版がリリースされるとのことだが、元にしている香味はこのボトルの中身と同じものだろう。
さて、どのような香味なのだろうか。

初期リリースの「ブラック・ニッカ」

【評価】
グラスから立ち上るのは、すごく強い麦。まっすぐこちらに向かってくる。実直な香り。ほのかにいぶした麦の焦げ感がこみあげてくる。
口に含めば、独特の陶酔感。麦ジュースの甘みがそのまま濃く煮詰まって厚みを増している。
飲み進めて酔いたくなる味。

※保存状態も良かったのか生き生きとした味だった。

【Kawasaki Point】
86point

【基本データ】
銘柄:BLACK NIKKA WHISKY(ブラック・ニッカ・ウィスキー)
地域:Japan
樽:Oak, オーク
ボトル:Distillery Bottle, オフィシャルボトル

年季の入ったボトル

BLACK NIKKAの丸い札の裏側には
「リボンは飾りでございますのでそのままにして御使用下さい
◎印の所を指で裂いてお開け下さい」
とある

「RARE OLD」に雰囲気を感じる
ニッカの狛犬のエンブレム
すべてアルファベット表記
これをリリースした時、竹鶴政孝はどのような心持ちであったか

日本のウィスキーの歴史上記念碑的なボトル


飲み進めて酔いたくなる味





レビュー:マスターブレンダーズブレンド 12年 赤い水彩絵の具・・・

Master Blender's Blended Whisky 12yo 70th Anniversary Selection(ニッカマスターブレンダーズブレンド 12年熟成)を飲んだ。87点。
いまからちょうど10年前の2004年、ニッカの創業70周年を記念したボトルがいくつかリリースされていた。写真は4本セットの箱入りのリリースで、今回取り上げるのはそのうちのひとつ。
マスターブレンダーというのはニッカのウィスキーづくりの総監督だが、実際にその方の手書きのサインが書かれた貴重なボトルだ。

マスターブレンダーズ・ブレンド ニッカ12年熟成

Master Blender's Blended Whisky 12 years old

【評価】
グラスから立ち上る香りは、花火終わりのクヌギの木。蜜の香りと、赤い水彩絵の具。夜の潮騒。
口に含めば、重たくて冷たい鉄の棒。土の香り。苔と苔の花。白くて小さい。
金属音みたいなジャズピアノを聴きたくなる一杯。

【Kawasaki Point】
87point

【基本データ】
銘柄:Master Blender's Blended Whisky 12yo 70th Anniversary Selection(ニッカマスターブレンダーズブレンド 12年熟成)
地域:Japan
樽:Oak, オーク
ボトル:Distillery Bottle, オフィシャルボトル

4本セットが木箱入りでリリースされた。
余市12年、宮城峡12年、カフェグレーン12年、
そして今回取り上げたマスターブレンダーズブレンド12年。

苔と苔の花。白くて小さい。






レビュー:余市1992 12年 ニッカ70周年記念ボトル ガラスにはめ込んで・・・

余市1992 12年熟成 ニッカ70周年記念ボトル(Yoichi 1992 12yo)を飲んだ。85点。
今年2014年はニッカの創業80周年でさまざまな記念ボトルがリリースされているが、丁度10年前の2004年にも記念ボトルがリリースされていたようだ。今回取り上げるのはニッカ創業70周年の記念ボトルのひとつで、マスタ-ブレンダーの佐藤茂生氏のサイン入りだ。

さて、どのような香味の世界なのか。




【評価】
グラスから立ち上る香りは、燃えている薪の香りを煙ごと四角いガラスにはめ込んで眺めているかのような。カカオの濃いチョコレートのかけら。生き物のようにダイナミックに変化する。
口に含めば、ろうそくの炎が熱く舌の上で燃えて、ロウが溶けていく。ロウが溶けるとチョコレートに変化する。
熱いが静かなウィスキー。

【Kawasaki Point】
85point

【基本データ】
銘柄:余市12年(Yoichi 12yo)
地域:Japan
樽:Oak, オーク
ボトル:Distillery Bottle, オフィシャルボトル

こっちが余市12年

熱く舌の上で燃えて、ロウが溶けていく



レビュー: ザ・ニッカ12年 柑橘の薄いベールが・・・

ザ・ニッカ 12年(The NIKKA 12yo)を飲んだ。87点。
これまでもニッカが「ザ・ニッカ」と名づけて世に放ったウィスキーはいくつかあるが、自らの社名に定冠詞「The」をつけるのは余程のこだわりと自信があるためだろう、その都度、高い評価を得ている。
さて、今回のザ・ニッカはどうだろうか。

ザ・ニッカ12年

【評価】
グラスから立ち上るのは、甘く崇高さにまで昇華された香り。焦げた蜂蜜を水で溶いて。さわやかな柑橘が奥で支える。
口に含めば、柑橘の薄いベールが覆う丸太の焦げた香り。パチパチと音が聞こえそうだ。
重厚なのに明るいウィスキー。

【Kawasaki Point】
87point

【基本データ】
銘柄:ザ・ニッカ 12年(The NIKKA 12yo)
地域:Japan
樽:Oak, オーク
ボトル:Distillery Bottle, オフィシャルボトル




狛犬が2匹向かい合うエンブレムのデザイン
竹鶴政孝が発案したと以前余市でニッカの人に聞いた

柑橘の薄いベールが覆う丸太の焦げた香り












レビュー:ラフロイグ1998 8年 Whisky Fair 灰にレモン果汁が・・・

Laphroaig 1998 8yo Limburg Whisky Fair Artist Edition(ラフロイグ 1998 8年熟成 リンブルグウィスキーフェア アーティストエディション)を飲んだ。86点。
リンブルグ・ウィスキー・フェアといえば、ドイツの都市リンブルグで毎春に開催されるウィスキー好きの祭典で、さまざまなボトラーがウィスキーを持ち寄って展示&試飲&販売するという、いかにも愉しそうなお祭りだ。
このボトルはそのお祭りからリリースされた一本。

リンブルグ・ウィスキー・フェアからの一本

【評価】
グラスを傾け鼻を近づければ、灰のかかったレモン。熟した果肉が温められ、あたりに香りを放つ。灰の上にパラパラと塩をまいて。どこかお菓子のような柔らかさ。
口に含めば、灰にレモン果汁が染み込んで行くスピードで、口中に柔らかく激しい煙が広がる。イチゴのコンポート。
落ち着きのある情熱を秘めた一杯。

【Kawasaki Point】
86point
※この点数の意味は?

【基本データ】
銘柄:Laphroaig 1998 8yo(ラフロイグ 1998 8年熟成)
地域:Islay, アイラ
樽:Oak,  Bourbon, オーク、バーボン
ボトル:Limburg Whisky Fair Artist Edition(リンブルグウィスキーフェア アーティストエディション)

Artist Edition Laphroaig 1998 8 years old

熟した果肉が温められ、あたりに香りを放つ

口中に柔らかく激しい煙が広がる


リンブルグはだいたいこのあたり。