レビュー:カバラン ソリスト フィノ 春の陽射しが集まって・・・

KAVALAN SOLIST FINO(カバラン ソリスト フィノ)を飲んだ。87点。
カバラン(カヴァラン)は、台湾の蒸留所のウィスキーだ。亜熱帯の台湾でどのようなウィスキーづくりが可能となるのか。なんでも、熟成は早くすすむらしい。しかし、成長を早めた分、熟成の質が、深みが物足りなくなるのでは・・・と思われがちでもある。ところがこのシェリー(の中でもフィノ)樽で熟成された一本は・・・・・、さてはて香味やいかに。

カバラン ソリスト フィノ

【評価】
グラスに鼻を近づければ、あまい香りの中に、ジンジャーのスパイス。春の若草(芽吹きはじめ)。陽気な弦楽を奏でそうな。不思議な三重奏。明らかだがふくよかな調和。
口に含めば、春の陽射しが集まってとろけて蜂蜜になり舌の上に垂れてきたかのような。クリスタルボールに野原の風景を映して、それをいっぺんに味わったような。土の香りもあり、どっしりしている。
確かに感じる不思議な調和。

※カヴァランは注目すべきニューワールド・ウィスキーで、既にその個性を確立しているといえるだろう。

【Kawasaki Point】
87point

【基本データ】
銘柄:KAVALAN SOLIST FINO(カバラン ソリスト フィノ)
地域:Taiwan 台湾
樽: Sherry(FINO), Oak  シェリー、オーク
ボトル:Distillery Bottle, オフィシャルボトル

特徴的なロゴ

ソリストのシリーズはカスクストレングスのようだ


確かに感じる不思議な調和

漢字って面白い

カバランの蒸留所はこちら。地図を拡大して台湾を旅してみては。




レビュー:ロッホインダール2007 5年 キングスバリー 赤いカニが・・・

LOCHINDAAL 2007 5yo Kingsbury(ロッホインダール 2007 5年熟成 キングスバリー)を飲んだ。87点。
ロッホインダールは、一時期、ブルイックラディ蒸留所で作られていた、ピートを効かせたモルトだ(つまり煙り臭い)。同じ蒸留所のポートシャーロットよりもピーティで、オクトモアほどではない。
今回は5年という短い期間での熟成だが、果たしてその香味やいかに。

ロッホインダール2007 5年熟成

【評価】
グラスを傾け、鼻に近づけると感じる、酸味のある細い香り。郷愁がある。砂であり果物である。海での一日。甘くしびれる、赤いカニが逃げていく。
口に含めば、蜃気楼が立つほどじりじり熱い。この甘みはけだるさか、それとも一日海で泳いだ疲れなのか。
まどろむ午後の一杯。

【Kawasaki Point】
87point

【基本データ】
銘柄:LOCHINDAAL 2007 5yo (ロッホインダール 2007 5年熟成)
地域:Islay, アイラ
樽:Oak, オーク
ボトル:Kingsbury, キングスバリー社

ボトルの顔には大きく2007の文字

酸味のある細い香り。郷愁がある。

この甘みはけだるさか、それとも一日海で泳いだ疲れなのか

まどろむ午後の一杯


ブルイックラディ蒸留所はスコッチウィスキーの聖地、アイラ島の海岸沿いに位置している。






レビュー:カリラ1984 26yo ダンカンテイラー 港の絵描き

Caol ila 1984 26yo Duncan Taylor(カリラ1984 26年熟成 ダンカンテイラー社)を飲んだ。87点。

カリラ1984 26年熟成

【評価】
そっと目を閉じグラスに鼻を近づければ、果汁を混ぜた灰がキャンバスの上を流れる。黄色の絵の具と混ざる。赤を少し。少し離れた位置に木の絵筆でサッと緑が走る。港の絵描き。オイルにまみれた水夫。波の音。
口に含めば、フレッシュのグレープフルーツジュース。ミネストローネ。燻(いぶ)しのよく効いたベーコン。灰の混じったグレープフルーツジュース。
日に焼けた本のページをめくる。窓から少し風が吹く。あゝ、新緑の季節か。

【Kawasaki Point】
87point
※この点数の意味は?

【基本データ】
銘柄:Caol ila 1984 26yo (カリラ1984 26年熟成)
地域:Islay, アイラ
樽:Oak, オーク
ボトル:Duncan Taylor, ダンカンテイラー社

果汁を混ぜた灰がキャンバスの上を流れる


ダンカンテイラー社は老舗のボトラーだ

このボトルは世界に173本しかない・・・一期一会

窓から少し風が吹く。あゝ、新緑の季節か。

カリラ蒸留所は海に面している。それは26年たってもボトルの中身から感じられる。
ぜひ、地図で確かめてほしい。





レビュー:アムルット ブラックペッパーをまぶしたブッシュドノエル

アムルット(AMRUT)を飲んだ。78点。
アムルットはインド産のシングルモルトだ(参考:シングルモルトとは何か?)。インドのかなり温暖な気候の下で、スコッチ(スコットランド産のウィスキー)と比較して3~4倍程度熟成が早く進むそうだ。台湾などと並んで、新世界ウィスキーのひとつと呼べるだろう。
さてはてその香味やいかに?

アムルット インドより来たるウィスキー 熟成年数は4、5年

【評価】
グラスに鼻を近づければ、バニラビーンズ、それから甘みを増した蜂蜜、濃いシェリーの木、胡椒。薪。
口に含めば、意外とさらっとしている。ブラックペッパーをまぶしたブッシュドノエル(薪の形をしたチョコレートケーキ)。かすかにハッカやミントなどのハーブ。
熱い情熱が舌の上でとろけるが、ただ過ぎ去っていく。長い余韻は楽しめない。

【Kawasaki Point】
78point
※この点数の意味は?

【基本データ】
銘柄:アムルット(AMRUT)
地域:India, インド
樽:Oak, オーク
ボトル:Distillery Bottle, オフィシャルボトル

バニラビーンズ、それから甘みを増した蜂蜜

アムルットの操業は1948だが、
ウィスキーを蒸留し始めたのはもっと最近のようだ

ブラックペッパーをまぶしたブッシュドノエル


熱い情熱が舌の上でとろけるが、ただ過ぎ去っていく。





レビュー:ボウモア2002 12年 W.Agency ゴツい漁師の手

BOWMORE 2002 12yo Liquid Library by Whisky Agency(ボウモア2002 12年熟成 ウィスキーエージェンシーのリキッドライブラリー)を飲んだ。87点。

ボウモア2002 12年熟成 W.Agency

【評価】
グラスを傾けて鼻を近づけると、花とグレープフルーツの皮、灰、ぬっとりとした潮感(決して嫌ではない)。怠惰なようで、洗練された大人。部分的に晴れた空。
目を閉じ口に含めば、濃いグレープフルーツジュース、暖炉の火にあたった記憶、潮の引けた砂。
長い闘いを経験してきたゴツい漁師の手のようなウィスキー。温かみがあるが、それはキレイで無垢だからではなく、経験に裏打ちされている。

【Kawasaki Point】
87point

【基本データ】
銘柄:BOWMORE 2002 12yo (ボウモア2002 12年熟成)
地域:Islay, アイラ島
樽:Burboun Rifill Butt, バーボン
ボトル:Whisky Agency,  ウィスキーエージェンシー

花とグレープフルーツの皮、灰





長い闘いを経験してきたゴツい漁師の手のような

ボウモア蒸留所付近のストリートビュー。白い建物が並んだ風景を堪能してほしい。

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レビュー:グレンスコシア 1992 20年 ウェストウッド どこか寂しさの漂う・・・

GLEN SCOTIA 1992 20yo Westwood(グレンスコシア1992 20年熟成 ウェストウッド社)を飲んだ。84点。

グレンスコシア1992 20年熟成

【評価】
グラスから立ち上る香りは、灰に混じった赤紫色の花弁、空を見上げて煙を吐き出すような。秋口に遠くを見る目をして、物思いに耽たくなる。レモン果汁を少し。
口に含めば、ライトな甘み、くどくならないのは、熱い灰と共に消えてゆくから。
秋になって誰もいない寂しい海を眺めているかのような気持ちになるウィスキー。

詩にもなる、絵にもなる、でもどこか寂しさの漂うウィスキーである。

【Kawasaki Point】
84point
※この点数の意味は?

【基本データ】
銘柄:GLEN SCOTIA 1992 20yo (グレンスコシア1992 20年熟成)
地域:Campbeltown, キャンベルタウン
樽:EX-Bourbon Hogshead, バーボンホグスヘッド
ボトル:Westwood, ウェストウッド社

Westwood社のウィスキー

灰に混じった赤紫色の花弁

蒸留所のイメージ図


誰もいない寂しい海を眺めているかのような



ストリートビューでグレンスコシア蒸留所を確認してみて。

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