レビュー:VAT69(特級) 意外な主張

VAT69(特級表示)を飲んだ。83点。
特級表示のあるウィスキーは1962~1989年に発売されたウィスキーだ。なにが特級かって、税率が特級だった。今は2,000円のスコッチ・ウィスキーが10,000円以上した時代だ。
ちなみにウィスキーの原料や製法は、微妙にではあるけど日々変わっているので、同じVATというウィスキーでも、昔のものと今のものとでは味わいが違う。


【評価】
グラスを鼻に近づけると、甘くゆるい香り。白いユリの香り。木目の間の樹液。主張しすぎない腐葉土。
口に含めば、拡がる薄いヨード香。あっさりと薄く味わう。煙の音が聞こえる。鉄の煙突。
安価なブレンデッドウィスキーだと思い、何気なく飲むと意外な主張に驚き、すごくうまいウィスキー。

【Kawasaki Point】
83point
※この点数の意味は?

【基本データ】
銘柄:VAT69(特級表示)
地域:Highland, ハイランド
樽:Oak, オーク
ボトル:Blended, ブレンデッド

甘くゆるい香り。白いユリの香り。

何気なく飲むと意外な主張に驚く

昔は素晴らしいものにはなんでも
「デラックス」と付いていたらしい

1882年、ウィリアム・サンダーソンさんが
100のVAT(調合具合を変えたバッチ)をつくり、
皆で飲んだところ69番目のVATが一番うまかったそうな。
それがVAT69の由来。
時代を偲ぶ特級表示

VAT69はイギリスはハイランド、ロイヤル・ロッホナガー蒸留所にて生産されている。

大きな地図で見る



レビュー:キャメロンブリッジ1954 グレーン 35年 飲んだことある?

Cameron Brig Vintage 1954 Pure Grain Scotch Whisky 35yo (キャメロンブリッジ ヴィンテージ1954 ピュア・グレーン・スコッチ・ウィスキー 35年熟成)を飲んだ。65点。
グレーン・ウィスキーとはなにか?それがウィスキーの歴史にどんな革命をもたらしたか?についてはいずれ別記事にしようと思う。ここではさらっと。簡単にいうと、グレーン・ウィスキーとは蒸留するときに「連続蒸留器」という蒸留器を使ったウィスキーだ。この「連続」というのがポイント。その名のとおり、連続でひたすらウィスキーを生産できる。効率の変わりにこの蒸留器が失ったものは個性。結果として、極めて穏やかなウィスキーが出来る。原料は大麦麦芽(モルト)が少量と、大麦以外の穀物(トウモロコシ、小麦、ライ麦など)だ。
グレーン・ウィスキーは通常、モルトウィスキーと混ぜて味の調整に使われる(そしてブレンデッド・ウィスキーとして世に出る。キャメロンブリッジの場合だと、ジョニーウォーカーに使われている)。単体でリリースされることは非常に珍しい。
ましてや、1954年に仕込まれた35年熟成のグレーン・ウィスキーなどほとんどないはずだ。けれども長熟のブレンデッド・ウィスキーにはこういった長熟のグレーン・ウィスキーが使用されている。一度は飲んでみたい。さてはて、どんな味がするのか?

(あ、細かいことをいえば、今回のキャメロンブリッジはPure Grain、つまり大麦麦芽は一切使っていない。ついでに世界で始めてグレーン・ウィスキーを製造した蒸留所ということも附記)



【評価】
香りは澄んでいて、甘み、甘み、そして甘み。かすかに醤油の酸味も混じる。穏やかな畑の風景。湧き出る水。
口に含めば、野菜を洗った夏の水。バーベキューのトウモロコシ。夏草。
濃い色の割りに、意外とさらさら入ってくる。
驚くべきことに、このグレーンは、厚みにも重みにも軽さにも薄さにもなりえる。
(普通のグレーンならば軽さと薄さにしかなりえないが、長熟のせいか、厚みや重みの表現もあるのだ・・)

単体では美味くはないが、大変勉強になった。もし出会えば飲むことをオススメする。

【Kawasaki Point】
65point
※この点数の意味は?

【基本データ】
銘柄:Cameron Brig Vintage 1954 Pure Grain Scotch Whisky 35yo (キャメロンブリッジ ヴィンテージ1954 ピュア・グレーン・スコッチ・ウィスキー 35年熟成)
地域:Lowland, ローランド
樽:Oak, オーク
ボトル:Distillery Bottle, オフィシャルボトル


香りは澄んでいて、甘み、甘み、そして甘み。

Signatoryシリーズの"S"

元から付いていたコルクはもうボロボロ

このヴィンテージにはなかなかお目にかかれない。
大変勉強になった一本。




レビュー:ボウモア1991 21年 デュワーラトレー 心に静けさを

A.D. RATTRAY Cask Collection BOWMORE 21yo (ボウモア21年熟成 デュワー・ラトレー社 カスク・コレクション)を飲んだ。85点。
このデュワー・ラトレイというボトラーズ(瓶詰め業者)は、かつてボウモア蒸留所のオーナーであったモリソン家によって運営されているようだ。ボトルには社長のサインがあり、自信の程をうかがわせる。

【評価】
グラスから立ち上る香りは、ぶどうの一房、雨の日の日本家屋、曇り空だが嵐の前の静けさ。小さな貝殻をじっくり眺める。空(から)のワインボトル。
口に含めば、生牡蠣の潮っぽさ。クリーミィな煙たさ。手のひらで感じるビーチの砂。
心に静けさを取り戻す一杯。

【Kawasaki Point】
85point
※この点数の意味は?

【基本データ】
銘柄:A.D. RATTRAY Cask Collection BOWMORE 21yo (ボウモア21年熟成 デュワー・ラトレー社 カスク・コレクション)
地域:Islay, アイラ
樽:Oak, Sherry, オーク、シェリー
ボトル:A.D. RATTRAY

グラスから立ち上る香りは、ぶどうの一房


かつてボウモア蒸留所のオーナーであった
モリソン家によって運営されている


口に含めば、生牡蠣の潮っぽさ。クリーミィな煙たさ。
1度使用したシェリー樽で熟成

社長(S.W.Morrison)のサイン入りで自信を示す

イギリスはアイラ島のボウモア蒸留所。湾がはっきり見える。
ボウモアはゲール語で「大きな湾」というのがよく分かる。

大きな地図で見る

レビュー:アルバータ・スプリングス10年 雨後の水たまり

ALBERTA SPRINGS 10yo(アルバータ・スプリングス 10年熟成)を飲んだ。79点。
アルバータ・スプリングスはカナダ産のカナディアン・ウィスキーだ。
カナディアン・ウィスキーの原料は、ライ麦と、トウモロコシ。ライ麦と言えば「キャッチャー・イン・ザ・ライ」(ライ麦畑で捕まえて)でその名前は有名だが、実物は日本ではあまり馴染みがない。寒冷な地でも育つため、カナディアン・ウィスキーの原料なのだ。カナダで単に「ライ(rye)」と言えば、ウィスキーのことを指すらしい。
ちなみに、アルバータ・スプリングスは100%ライ麦のウィスキーだ。(日本語の説明だとトウモロコシも使っているかのような説明が多いんだけれども・・)


【評価】
グラスに鼻を近づければ、柑橘の果肉。ハチミツ漬けのオレンジの皮。アルコール。少しのミント。
グラスを傾け唇から液体が入ってくると、樽の木の破片が口に入ってきたのかと思うほどウッディ。オレンジの皮の苦味。木の苦味。後味は雨後の水たまりのように爽やかなウィスキー。

【Kawasaki Point】
79point
※この点数の意味は?

【基本データ】
銘柄:ALBERTA SPRINGS 10yo(アルバータ・スプリングス 10年熟成)
地域:Canada, カナダ
樽:Oak,  オーク
ボトル:Distillery Bottle, オフィシャルボトル


ハチミツ漬けのオレンジの皮

アルバータ・スプリングスは
カナダ産のカナディアン・ウィスキー
ライウィスキーだ。(ライ麦100%)
CANADI Nの表記は英語
CANADI Nの表記はフランス語

樽の木の破片が口に入ってきたのかと思うほどウッディ

カナディアン・ウィスキーのアルバータ蒸留所の場所はここだ。この地から日本まで旅して来る。

大きな地図で見る