ウィスキーの飲み方:初心者がストレートを味わうための7つの手順

もっとも魅力的で、とっつきにくい飲み方

ウィスキーという酒のもっとも美味い飲み方は、ストレートだが、もっとも“とっつきにくい”飲み方でもある。興味はあるけれど、ストレートはアルコールが強すぎてなんとなく敬遠している人も多いだろう。しかし実際は手順さえ知ってしまえば、ウィスキーのストレートはほぼ誰でも飲める。この記事では、初心者がストレートを味わうための手順をガイドをする。

もっとも魅力的な飲み方、ストレート。愉しむためには手順が必要。

ウィスキーのストレートはゴクゴク飲まない

ストレートのとっつきにくさは、なんと言ってもそのアルコール度数の高さにある。ビールなら5~8%、ワインなら10~15%といった度数だが、この度数の感覚でウィスキーを飲むと大変だ。ウィスキーの平均的な度数は40~60%といったところ。ウィスキーのストレートはごくごく飲まない。ほんのわずかに、少量、口に含むようにしてほしい。

かつての私も含め、この基本を知らない人は多い。学校では教えてくれないし、社会人になっても、誰かから教わらない限り「あんな高い度数の酒を飲む人は、きっと酒が強いに違いない!」と思ってしまうのも無理はない。有名メーカー各社のHPでさえ、ストレートの説明は「そのまま飲みます」ぐらいにしか書いていない不親切な状況では仕方ないが、実際はストレートを愉しむ人は、酒が強いわけではない。愉しみ方を知っているだけなのだ。


ウィスキーのストレートを愉しむ7つの手順

かならず成功するウィスキーのストレートの愉しみ方の手順を下記に書いた。度数が高くて飲みづらい、というハードルをらくらく乗り越えられるはず。

  1. グラスに注ぐ。この記事に掲載した写真のようなグラスが香りを集めやすいが、まずはこだわりすぎず。バーであれば、最適なグラスで出してくれるはず。
  2. さて、まずは色を愉しんで。といっても、「キレイだな」とか、「濃い色だな」といった程度でOK。色にもたくさんの情報が含まれているが、ここでは省こう。
  3. 次に香り。ストレートの最大の愉しみ。ただし、吸い込みすぎに注意。グラスと鼻を近づけすぎず、まずは遠めからそっと、一気に吸い込まず、ゆっくり吸い込んでほしい。ワインより、もっと繊細に。どんな香りがするだろうか。グラスをすこし揺らして、なかの液体をくるくる回してもいい。さて、ふたたび慎重に、どんな香りがするだろうか。
  4. いよいよ飲む。飲むというより、ほんの少量含む。唇にそっと液体をつける感じで。少しだけ口に含んでも、一気に飲み込んではいけない。舌の上でころがして、口の中をひとめぐりさせてみよう。どんな味や、そして香りがするだろうか。味わったなら、ゆっくり飲み込んで。
  5. 飲み込んだ後、すぐにもう一口、といってはいけない。飲み込んだ後も、香りが続くのがウィスキーという酒のおもしろいところ。余韻と呼ばれているが、この余韻も設計されている。ノドから上がってくる香りはどんなだろうか。口を閉じたまま鼻呼吸してみると、どんな香りがするだろうか。どれぐらいその余韻は続くだろうか。そして、どんな変化をしていくかも愉しんでほしい。
  6. さて、やっと次の一口、と行く前に、チェイサーを飲んでほしい。チェイサーとは“追っかけ”で飲む、水やソーダ水だ。ウィスキーとチェイサーは交互に飲む。口の中をリフレッシュするという効果と、アルコール度数の高い酒をゆっくり愉しむという効果がある。これを知っているかどうかは、初心者の分かれ目だ。
  7. 次の香りや、一口を。一杯あたり、20~30分かけて飲む。くれぐれもビールやワインのスピード感覚で飲むことは無謀だと覚えておいてほしい。ウィスキーの香りは30分なら30分の間で変化することがある。よく言う「ウィスキーが開く」というやつだ。ワインでもいうのだけれど、まるで香りのつぼみが花開くかのような、そんな体験もできる。
とにもかくにも、ウィスキーのストレートを愉しむこつは「ゆっくり」「少しずつ」だ。この基本をおさておけば、かなりとっつきやすくなるはずだ。


今宵も、よいウィスキーライフを。


補足:「どんな飲み方でもいい」に隠された本音

ちなみに、ウィスキーの飲み方なんて何でもいい、という立場をこのブログはとらない。そのありふれた意見なら、他をあたってほしい。たいていウィスキーを提供する側の人々は、いろいろ配慮して、公には“本音”を話せない。それこそストレートに“本音”を表現すれば、「ストレートが一番美味い」と思っているに違いなのだが、それではハイボールや水割りを否定しているように受け取られてしまう。だから、ストレート以外の飲み方をしている人に配慮するあまり、「飲み方はそれぞれ素晴らしい」と大人の意見を言ってしまう。究極は好みだし、それはそれで間違ってないのだが、飲み手としては、「先達の本音のオススメの飲み方を聞いた上で、自分で判断するよ。はじめっから本音を隠さないでくれよ」と思うものだ。だから当ブログでは意見をハッキリとさせているし、今後もそのつもりだ。
“ウィスキーをいつでも一番安定して、美味しく飲めるのがニート(ストレート)だ”
(参考記事:ウィスキーの飲み方は、ニートで。




レビュー:ディーンストン 12年熟成 サーモンのムニエルと合う

DEANSTON 12yo Un-Chill Filtered(ディーンストン 12年熟成 アンチルフィルタード)を飲んだ。63点。
天使の分け前の蒸留所ツアーのシーンで使われている蒸留所だ。

ディーンストン、またはデーンストンとも。

【評価】
グラスから立ち上るのは、ニューポットのような麦の香りだが、厚みがある。ほのかに香る柔らかくクリアな樽のスパイス。
口に流し込めば、ゆっくりとモルト(麦芽)のうまみと甘みが分解されていき、最後にスパイスを残す。ノドで感じる熱いスパイスだ。
個性的ではあるが、食後酒としてではなく、食中酒として、例えばサーモンのムニエルなんかと合わせたいウィスキー。

【Kawasaki Point】
63point

【基本データ】
銘柄:DEANSTON 12yo(ディーンストン 12年熟成)
地域:Highland, ハイランド
樽:Oak, オーク
ボトル:Distillery Bottle, オフィシャルボトル

簡素で、手づくりで、自然。



グラスゴーの北にあるディーンストン蒸留所。ハイランドとローランドの中間あたりだが、一応ハイランド。

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レビュー:ジェムソン 版画のインクと木の香り

JAMESON(ジェムソン)を飲んだ。85点。
ジェムソンはアイルランドで作られるアイリッシュウィスキーだ。

アイリッシュのジェムソン。3年熟成。



【評価】
グラスに鼻を近づければ、ハッカの飴、甘さでコーティングされている。メロンの皮に近い部分。爽やかでしとやか。版画のインクと木の香り。
口に含めば、ハッカの爽やかさを残したまま、落ち着きをもたらす木の香り。飲み口はやさしい。丸太の木のテーブル。体温を上げる熱。
雪深い夜に飲みたいウィスキー。

【Kawasaki Point】
85point
※この点数の意味は?

【基本データ】
銘柄:JAMESON(ジェムソン)
地域:Irish, アイリッシュ
樽:Oak, オーク
ボトル:Distillery Bottle, オフィシャルボトル






飲み口はやさしい。丸太の木のテーブル。体温を上げる熱。

アイルランドのジェムソン(JAMESON)蒸留所の場所を地図で確かめてみて。

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レビュー:ボウモア1987 25年 枯れてくたびれた・・

BERRY BROs & RUDD のBOWMORE 1987 25yo(ベリーブラザーズ&ラッドのボウモア25年)を飲んだ。1980年代の希少なボウモア。88点。
ボウモア1987 23年と同じシリーズで、さらに2年熟成させたものだ。23年は驚異の98点だったが・・。

1987年のボウモア。80年代の輝き。



【評価】
グラスに鼻をやれば、煙たく香るくたびれたシュガー。い草の爽やかさと酸味。その香りは、くぐもっているのに存在感を放つ。
口に流し込めば、なめらかで、生ぬるく入ってくる。海岸の岩、甘いシロップ、鉛色の空で海は割と穏やかな風景が浮かび、ほのかに香る金属、そして、枯れ草の後味。
枯れてくたびれ果てた、だが穏やかで個性的なボウモア。

【Kawasaki Point】
88point
※この点数の意味は?

【基本データ】
銘柄:BOWMORE 25yo (ボウモア25年)
地域:Islay (アイラ)
樽: Oak  オーク
ボトル:BERRY BROs & RUDD, ベリーブラザーズ&ラッド

海岸の岩、甘いシロップ

ほのかに香る金属、そして、枯れ草の後味

枯れてくたびれ果てた、だが穏やかで個性的なボウモア



レビュー:ラガブーリン 16年 ピートと樽香の螺旋

LAGAVULIN 16yo (ラガブーリン16年熟成)を飲んだ。88点。
映画『天使の分け前』でも紹介されていたウィスキーだ。

“アイラ島のプリンス”とも称されるラガヴーリン

【評価】
グラスに鼻を近づければ、麦、酸味、ピート香の先端は丸みを帯びているが、同時に鋭さも忘れておらず、雄雄しく上品。素朴でありながら洗練されている。ミレーの絵画のようなバランス。
グラスを傾け少量口に含めば、口当たりは柔らかいが、激しくピートが樽の香りと螺旋を描きながら主張する。しかしくどさがまったくなく、後味は満足のいく絵を描き終わったあとかのよう。
充実感を味わうウィスキー。

【Kawasaki Point】
88point
※この点数の意味は?

【基本データ】
銘柄:LAGAVULIN 16yo (ラガヴーリン16年熟成)
地域:Islay, アイラ
樽:Oak, オーク
ボトル:Distillery Bottle, オフィシャルボトル

ピート香の先端は丸みを帯びているが、
同時に鋭さも忘れていない

アイラ島のポートエリン地区に位置するラガブーリンの設立は1816年


充実感を味わうウィスキー

イギリスのアイラ島に位置するラガブーリン蒸留所の場所を、地図で確かめてみて。

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レビュー:ブラックニッカ クリア (CWシリーズ)

ブラックニッカ クリア(NIKKA BLACK Clear)を飲んだ。56点。

コンビニでよく見かけるウィスキーを真剣にレビューしようというCW(コンビニ・ウィスキー)シリーズ。実勢価格は300~500円程度の180mlの「」「TORYS」「ブラック クリア」の3つ。さて、第三段は『ブラッククリア』、その香味やいかに。

コンビニウィスキーたち。左から、トリス、ブラックニッカ、角。


【評価】
グラスに鼻を近づければ、焦がした穀物のうまみ、樽の甘み。ずっと嗅いでいたい“焦がし感”。
口に含めば、穏やかにして芳醇、軽く味わえるのに深い、モルト(麦芽)とグレーン(穀物)の饗宴。すっきりまろやかな鉄分。
ウィスキーの芳ばしさとは何かを知り、味わうためのウィスキー。

ブラックニッカ


※日本を代表するコンビニ・ウィスキーの双頭を張るのが「角」と「ブラック クリア」だが、その違いにも分かりやすく言及しておこう。味わうときの参考にしてもらえたら。

」の味のコンセプトは“受け入れられやすい甘み”、“ウィスキーの苦味の再現”といったところだろう。苦味のエッセンスが甘みを引き立てるようにデザインされている。「味の対象性」を利用した普遍的な組み合わせだ。
対して「ブラック クリア」は“穀物の焦がしの芳ばしさ”、“やや抑えた甘みによるクリア感”といったところ。口当たり、ノド越しの柔らかさと、後からの味わいの余韻が両立するようにデザインされている。「時間経過」を利用した普遍的な味の設計だ。

両方のウィスキーを上記の観点で飲み比べるのも楽しいかもしれない。
「味の対象性」と「時間経過」。安価なので手軽だ。

【Kawasaki Point】
56point
※この点数の意味は?

【基本データ】
銘柄:ブラックニッカ クリア(NIKKA BLACK Clear)
地域:Japan, 日本
樽:Oak,  オーク
ボトル:Distillery Bottle, オフィシャルボトル

このおじさんの正式なお名前は
「ニッカおじさん」ではなく「ローリー卿」だそうだ。


ニッカウィスキーのエンブレム(紋章)


芳ばしさとは何かを知り、味わうためのウィスキー。