レビュー:ラフロイグ1990 21年 ハイスピリッツ 強いハチミツとバラ

Laphroaig 1990 21yo by High Spirits Natural Cask Strength Selection(ハイスピリッツ社のナチュラル・カスク・ストレングス・セレクションのラフロイグ1990 21年熟成)を飲んだ。87点。
(同じヴィンテージのカラーズコレクションとは異なる)

ハイスピリッツのラフロイグ21年 ヴィンテージは1990

【評価】
グラスから立ち上る香りは、赤い花の蜜。熟成され花畑に吹く風のような穏やかさをまとった煙。燻しの酸味と花の蜜がとろんととろけて黄金色の液体になったみたいだ。
口に含めば、強烈に熱く萌ゆるも、強いハチミツとバラの香りを放って、パッと消え、あっさりとしている。最後に木の香りを少しずつ伝え、このウィスキーのエンドロールのような。
変わった姿を見せるが、決しておどけているようでもなし、紗に構えているようでもなし、飽くまでも正統派であるが、個性の育った一杯といえる。

【Kawasaki Point】
87point

【基本データ】
銘柄:Laphroaig 1990 21yo Natural Cask Strength Selection(ナチュラル・カスク・ストレングス・セレクションのラフロイグ1990 21年熟成)
地域:Islay, アイラ
樽:Oak, Bourbon, オーク、バーボン
ボトル:High Spirits(ハイスピリッツ社)





丁寧なテイスティング・ノート

燻しの酸味と花の蜜がとろんととろけて

飽くまでも正統派であるが、個性の育った一杯



レビュー:ボウモア1995 15年 エクスクルーシヴ カスクス 夜開く花

Bowmore 1995 15yo Exclusive Casks, Creative Whisky (クリエイティブ・ウィスキー社のボウモア1995 15年熟成 エクスクルーシヴ・カスクス)を飲んだ。88点。

ちょっと変わったボトルデザインの
ボウモア15yo エクスクルーシブ・カスク

【評価】
その香りは、ウッディネス、煙との調和が美しい。柑橘のフレーバー。夜開く花。ラベンダー。誘われる。
口に含めば、強烈なラベンダー。灰色の混じった赤紫、香りがゆっくりと浸透してくる。崩れそうで崩れないバランスが、水のように分解していく。違和感のない切れ味。ほんのりペデロヒメネスの甘みを残す。
煙とは何かをそっと、分解しながら教えてくれる美しいウィスキー。

【Kawasaki Point】
88point
※この点数の意味は?

【基本データ】
銘柄:Bowmore 1995 15yo Exclusive Casks, ボウモア1995 15年熟成 エクスクルーシヴ・カスクス
地域:Islay, アイラ
樽:Oak, Sherry Pedro Ximenez, オーク、シェリー(ペドロヒメネス)
ボトル:Creative Whisky (クリエイティブ・ウィスキー社)

ウッディネス、煙との調和が美しい

大麦のエンボス

エクスクルーシヴとは
「限られたものだけに許された高級な」というニュアンス


灰色の混じった赤紫、香りがゆっくりと浸透してくる

煙とは何かをそっと、分解しながら教えてくれる
美しいウィスキー





レビュー:カヴァラン ソリスト シェリーカスク おぉ南国の・・・

KAVALAN SOLIST Sherry Cask (カヴァラン ソリスト シェリーカスク)を飲んだ。85点。
カヴァラン(カバラン)は、この頃元気な台湾のウィスキーだ。日本にも少しずつ入ってきているが、まだまだお目にかかる頻度は少ないだろう。今回は、エバー航空で提供されていたというお土産のミニボトルを少しいただいた。(中身はWWA2011のベストシングルモルトに選ばれたものと一緒)
亜熱帯の気候で熟成されるウィスキーの香味やいかに。

カバラン ソリスト シェリー・カスク
カスクストレングスだ

【評価】
グラスから立ち上るのは、薫煙したシェリー。甘くメローな香り。角がない。フルーティな香りと葉っぱのフレッシュさ。
口に含めば、浅いが口の中で、踊る、踊る、この軽快なハーモニー。フルーツの甘煮。熱帯夜に吹く風のような。若くフルーティだが、それが「個性」となっている。
おぉ、南国を思わせる不思議なウィスキーよ。

【Kawasaki Point】
85point
※この点数の意味は?

【基本データ】
銘柄:KAVALAN SOLIST Sherry Cask (カヴァラン ソリスト シェリーカスク)
地域:Taiwan 台湾
樽: Sherry, Oak  シェリー、オーク
ボトル:Distillery Bottle, オフィシャルボトル

燻煙したシェリー

ソリスト カスクストレングス 58%
温かい台湾では熟成が3倍速で進むという・・

筆者は中国語が読めないので定かではないが、
「賞味期限:無期限」みたいなことが書いてある。
そうだとしたらチャーミングなウィスキー

金車(KING CAR)という会社がつくっているようだ

浅いが口の中で、踊る、踊る、この軽快なハーモニー

おぉ、南国を思わせる不思議なウィスキーよ。

KAVALANの蒸留所はここ。KAVALANはカバラン族のことらしい。

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レビュー:ラフロイグ1984 12年 ケイデンヘッド 詩人の書きかけの・・

WILLIAM CADENHEADのLaphroaig 12yo(ウィリアム・ケイデンヘッドのラフロイグ 12年熟成)を飲んだ。89点。
ケイデンヘッドは老舗のボトラー。この緑の瓶は美しい。

ウィリアム・ケイデンヘッドのラフロイグ 12年熟成

【評価】
グラスを傾け、鼻を近づければ、石畳の階段を降りて、草むらの庭にたどり着く。赤い実をつけた木の横に立って、子供達のサッカーを眺めている。煤(すす)けた石の壁、焚き木のあと。
口に含めば、円熟味を増したピアニストによるモーツァルトのような、膨らみのある甘さと、主張のバランスよ。強烈な光を放つ瞬間に出会う。
詩人の書きかけのノートブックをめくっているような、満足を得つつ、続きが気になる、そんなウィスキー。ストーリーのある煙。

【Kawasaki Point】
89point
※この点数の意味は?

【基本データ】
銘柄: Laphroaig 12yo(ラフロイグ 12年熟成)
地域:Islay (アイラ)
樽: Bourbon, Oak  バーボン、オーク
ボトル:WILLIAM CADENHEAD, ウィリアム・ケイデンヘッド

石畳の階段を降りて、草むらの庭にたどり着く

煤けた石の壁、焚き木のあと

シングルカスクの魅力について

1984-1996 12年熟成

満足を得つつ、続きが気になる、そんなウィスキー

ラフロイグ蒸留所の位置を地図で確かめてみて。Laphroaigは「広い湾の側にある美しい窪地」という意味。

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レビュー:ジョニーウォーカー グリーンラベル 濃厚な香り体験

JOHNNIE WALKER GREEN LABEL 15yo (ジョニーウォーカー グリーンラベル 15年熟成)を飲んだ。89点。
このグリーンラベルは15年以上熟成のモルトウィスキーだけをブレンドしたものだが、もう新規で発売されない(すでにほとんど流通していない)。ジョニーウォーカーのラインナップが刷新され、「ゴールド」が新しく発表されている。
グリーンラベルにブレンドされているモルトウィスキーは主に4つとされている。パワー(力)にタリスカー、フィネッス(繊細な技巧)にリンクウッド、ハート(核)にクラガンモア、そしてミステリー(神秘)にカリラ、という構成だ。もちろん実際には他にも数十種類のモルトウィスキーをブレンドしているはずだが、その微妙な調整作業を想うとき、ブレンダーはどんな完成系のイメージを持ってこの酒を作ったのかということに驚嘆せずにはいられない。

さてはて、その香味はいかに。

今はもうないジョニー・ウォーカー グリーンラベル

【評価】
グラスから立ち上るのは、煙の中に漂うアップル、麦の穏やかさ、レモン。黒胡椒。濃厚でギュッと詰まっている感じ。
口に含めば、ライトな苦味が、アプリコットとはじけ、あとに上がってくる苦味が大人の香り。夏の果実を味わっているようでもあり、海のそばに止めた車に腰掛けているようでもある。
濃厚で緻密な香りの体験として完成された味。

【Kawasaki Point】
89point
※この点数の意味は?

【基本データ】
銘柄:JOHNNIE WALKER GREEN LABEL 15yo (ジョニーウォーカー グリーンラベル 15年熟成)
地域:Highland, Island, Islay, ハイランド、アイランド、アイラ
樽: Oak, オーク
ボトル:JOHNNIE WALKER(ジョニー・ウォーカー)


1820操業


四角いボトルに斜め24°で貼られたラベル

ウォーカー(歩く人)のブランドイメージを支える、
ストライディングマン(闊歩する紳士)
 

濃厚で緻密な香りの体験として完成された味



ウィスキーの保管の仕方:テクニック編

この記事は、自宅でウィスキーをいかに保存するかのテクニックについて紹介する記事だ。(保管の理論を紹介したロジック編はこちらを参照してほしい)
家飲みのウィスキーのための、5つの保管テクニックは下記の通り。

共通ポイント:香り分子を変質させない・逃がさない

どの方法もポイントは、ウィスキーを紫外線に当てず、酸素に触れさせず、ウィスキーの香りを逃がさないということだ。簡単に実践できるものから順に紹介する。


その1. 「光が届かない、もっとも涼しい場所」で保管する※ただし冷蔵庫以外

ウィスキーは、自宅の中で、光がまったく届かず、一番涼しい場所で保管しよう。ただし、この定義だと冷蔵庫も当てはまってしまう。冷蔵庫は考え物だ。他の香りがつく心配もあるし、冷えすぎてしまう。また、都度冷蔵庫から出して飲む際のタイムロスや温度変化を考えると単にまどろっこしい。気をつけなければいけないのは紫外線を発生させるモデルの冷蔵庫では、ウィスキーの香り分子が変質してしまう危険性が高い。(※冷蔵庫はNGだが、15℃程度に温度設定できるワインセラーなら理想的といえる。ただ、ウィスキーはタフな酒なので、気を遣ってもワインほどの変化はない)


その2. 箱に入れて保存 

ウィスキーを買ったときの箱にそのまま入れて保管するのはオススメだ。大抵、光を遮断してくれるし、多少の衝撃も吸収してくれて安全だ。(少し場所をとるのがやや難点)

大切なウィスキーの箱を取っておこう

光を遮断できる

※より完璧な遮光(紫外線対策)を目指すなら、アルミシートやアルミホイルを使うのが手軽だ。箱の内側に貼ってあればもうほぼ完璧といえるだろうし、ボトルそのものに巻きつけたり、ボトルを格納する場所にどうしても一部光が入る場合もアルミホイルで塞げばいい。(商品:クッキングホイル 30cm×50mC)。


その3. パラフィルムを使ってボトルを密封

ボトルとボトルキャップとのわずかな「間」から、アルコールが抜けたり、外の空気が入ったりするのを防ぐのが、パラフィルムだ。(商品:エル・エム・エス パラフィルム4インチ 長さ125フィート PM996
もともとは実験室で使われる素材だが、多くのバーで使用されている。小さく切って、少し伸ばしながら巻きつける不思議な素材。これを使っているかどうかで、香りを愉しめる期間がかなり違う。

巻き付け方の詳細は動画で見られるようにした。


パラフィルムをこれぐらいに切って

引っ張りながら巻く

巻き終わった。これで密閉。


その4. 小瓶に移し変えて、空気の量を減らす

ボトル自体をどんなに密閉しても、ボトルに含まれる空気(≒酸素)がウィスキーの香り分子を酸化させる。だから、小瓶に移し変えてしまえばいい。小瓶と移し変える手間がすこしかかるが、かなり効果的な方法だ。

詳しい解説は動画を見てほしい。

参考:動画中の「密閉タイプの瓶」はこちら(『ボルミオリ・ロッコ』 スイング ボトル 0.25L
参考:動画中の「イチョウ型の“ろうと”」はこちら(シリコン漏斗 イチョウ グリーン 07438
※この“ろうと”は収納に便利。しかしもっとデザインを気にしなければ百均にもあり機能は一緒。


その5. プライベート・プリザーブで酸素からの遮断層をつくる

プライベート・プリザーブはもともとワイン用の商品だが、原理はごくシンプル。ウィスキーのすぐ上にガスの層を作ってしまって、酸素とウィスキーを隔離するものだ。多くのワイナリーで採用されている。(商品:プライベート プリザーブ private preserve
3~4回、シュッ、シュッと吹き込めばOK。割合に手軽な方法だが、頻繁に飲む人はやや面倒に感じるかもしれない。

使い方の詳細は動画を見てほしい。



その6(奥義):さっさと飲む

どのような保管方法も、この方法にはかなわない。どのような方法も時をとめることはできないが、時間とともにウィスキーの香りは失われていく。
栓を開けてから2~3日はどんなウィスキーもほぼ同じクオリティで飲める。ただ、1週間以上になると、徐々に変化がある。その変化を愉しむ、という発想もあるが、出来る限り豊かな香りを愉しもうとするなら早く飲むに越したことはないのだ。
だが、それができないから、さまざまな保存方法を、われわれは頭をひねって生み出している(それで開栓後も数ヶ月はいける)。いずれにせよウィスキーを飲むときに「完璧」はあり得ない。あれこれしても、最後はどうかおおらかな心でウィスキーの香りを存分に愉しんでほしい。

ちょっとやそっとではその魅力は失われないのが、ウィスキーという酒のタフなところだからだ。