レビュー:バランタイン17年 華やかさと安定感

Ballantine's 17yo(バランタイン17年熟成)を飲んだ。86点。
バランタインは、非常に有名なブレンデッド・ウィスキーだ。
(ブレンデッドが何かということについては、こちらの記事を参照してほしい。
 参考:シングルモルトと、ブレンデッドウィスキーの違いとは?

名の通ったブレンデッド・ウィスキー 「バランタイン」


【評価】
グラスに鼻を近づければ、ミツバチの飛ぶ花畑、さらさらと流れる小川、きらきらと太陽が反射している。やわからい土の香り。画家がなんども構図を検討した絵のような、深くどっしりとした熟成感。
口に含めば、先ほどの小川に横たわり水の流れを感じながら、焦げた土、イチゴとスパイスを感じる。
華やかさと安定感の同居したウィスキー。

【Kawasaki Point】
86point
※この点数の意味は?

【基本データ】
銘柄:Ballantine's 17yo(バランタイン17年熟成)
地域:Highland, ハイランド など
樽:Oak, オーク
ボトル:Blended, ブレンデッド

ブレンデッド・スコッチ・ウィスキー

エンブレムの背景のエンブレム

ジョージ・バランタイン&サン社が生産

GEORGE BALLANTINE & SUN

熟成感のある色

華やかさと安定感の同居したウィスキー




シングルモルトと、ブレンデッドウィスキーの違いとは?

よく考えればどうでも良いかもしれないが、ふと気になってしまう、「シングル・モルト・ウィスキー」と「ブレンデッド・ウィスキー」の違いを解説する。

ちょっと気になる“その違い”

シングル・モルトとブレンデッド、ひとことで言えば何が違うか?

ひとことで正確にいえば、「かかわった蒸留所の数がちがう」となる。

シングル・モルト・ウィスキーの「シングル」は「ひとつの蒸留所」を意味する。手に取ったそのひと瓶の中身が、ひとつの蒸留所から生まれたものならば、それはシングル・モルト・ウィスキーだ。

対してブレンデッド・ウィスキーは、ふたつ以上の蒸留所が関わっている。いろんな蒸留所のウィスキーを混ぜ合わせ、ブレンドしたものだ。手に取ったひと瓶の、その中身をつくり上げるのに、数十の蒸留所が関わっている場合もある。つまり、複数の蒸留所のウィスキーをブレンドすれば、ブレンデッド・ウィスキーとよばれる。


流通量はどっちが多い?

圧倒的にブレンデッド・ウィスキーの流通が多い。世界のウィスキーの流通量の8~9割はブレンデッド・ウィスキーと言われている。100~200年ぐらいのウィスキーの歴史の中では、ブレンデッドが王道なのだが、最近になって「蒸留所ごとの個性を愉しむ」シングルモルトも伸びてきている。


ちょっと待って。さっきからシングル・モルトの「モルト」ってなに?

モルトとは、大麦麦芽(おおむぎばくが)のこと。これがモルト・ウィスキーの原料。モルトを原料としたウィスキーだから、モルト・ウィスキー。地域でいえば、日本やイギリス(スコッチ)、そしてアイルランドでは、ウィスキーといえば、モルト・ウィスキーのことを差している。
(ちなみにカナダでウィスキーといえば、ライ麦が主原料のライ・ウィスキー。アメリカでウィスキーといえば、もちろんトウモロコシ主原料のバーボンウィスキー)
シングル・モルトとは何か?についてはこちらの記事を参照してほしい。


ブレンデッドの立役者、「グレーン」ってなに?

「安くて美味いウィスキーをつくる手段はないものか」と考えていくと、グレーン・ウィスキーに突き当たる。グレーン・ウィスキーは、安くつくれる。モルト(大麦麦芽)以外の穀物(主にトウモロコシ)でつくるウィスキーのこと。ただし、モルトのような強い香りの個性はない。
ブレンデッド・ウィスキーの場合、ほとんどがモルト・ウィスキーと、グレーン・ウィスキーを混ぜている。いくつかのモルト・ウィスキーで香味の方向性を決めて、グレーン・ウィスキーでバランスを調整するのだ。映画にたとえれば、ギャラの高い主役がモルトで、主役を支える立役者がグレーン・ウィスキーだ。

このウィスキーという名前の液体に、
そんなに種類があるなんて・・・

ちなみに、「ピュアモルト」ってなに?

日本に流通している言葉で、「ピュアモルト」がある。これは、大きな分類の中ではブレンデッドウィスキーなのだが、グレーン・ウィスキーをつかわず、モルト・ウィスキーだけでブレンドしました、というアピールだ。主役級が勢ぞろいの映画みたいなものだ。日本にはどうも純粋信仰みたいなものがあるので、「シングル」とか「ピュア」とか言うと、ありがたい、と感じる人が多いため、この言葉は、ウィスキーのまじめな分類というより、ほとんどマーケティング用語である。


もひとつちなみに、「ヴァテッドモルト」ってなに?

今はあまり使わない表現。ピュアモルトと同じ意味。モルト・ウィスキーと別のモルト・ウィスキーをまぜあわせて作ったウィスキーのこと。「もうそれ、ブレンデッド・ウィスキーでいいじゃん」ってことで、数年前からスコッチウィスキー協会が「もうヴァテッドって言葉はやめよう、ブレンデッドで統一!」と宣言。
(テクニカルに言えば、シングル・モルトもヴァッティングするし、ピュア・モルトもヴァッティングするので、両方ヴァテッド・モルトと呼べてしまって、超ややこしい。忘れてください)
※WWA(World Whisky Award)では、モルト・ウィスキーだけをブレンドしたウィスキーのことを、「ピュアモルト」とも「ヴァテッドモルト」とも言わず、「ブレンデッド・モルト」と表現。


結局、シングルモルト・ウィスキーとブレンデッド・ウィスキーの違いを知ってどうする?

正直な話、「へぇ~」といえるトリビア以上のなにものでもない。シングルモルト・ウィスキーといえども、ひとつの蒸留所の複数の樽の原酒をブレンドしているし、ブレンデッド・ウィスキーはブレンドする地域・種類の幅を広げただけだ。
いずれにせよ、最終的にウィスキーをつくるマスターブレンダーの卓越した鼻によって、今日も素晴らしいウィスキーがこの世に生み出されているのだ。それは本当に神秘的な世界だと、私は思う。マスター・ブレンダーの生み出す豊かな香りの世界観に、私たちは酔う。


グラスを傾けながら、ウィスキーの成り立ちについて少し思いを馳せるのも、楽しいかもしれない。
今宵もすてきなウィスキー・ライフを。



レビュー:竹鶴21年 少し不思議な物語を・・・

竹鶴21年(TAKETSURU 21yo)を飲んだ。88点。
海外での受賞暦のわりに国内ではまだまだ知名度の低いウィスキーといえるだろう。

「ピュアモルト」の代名詞。竹鶴


【評価】
グラスに鼻を近づければ、その香りは強く主張しない。おだやかで上品な香りが横たわる。その香りに手を伸ばせば、感じられる酸味、い草の香り。オレンジの白皮、スモークしたイチジク。
口に含めば、おだやかでふくよか。森の洞窟に入り、見上げればかなり高い頭上の岩の間から、光が注いでいる。湿った空気の漂う洞窟内の、水滴の音に耳をすませる。足元をみると、なぜこんなところに木の舟が。かなりボロボロである。くたびれた木の香り。長く愉しめる余韻。舌の中心にほのかに甘みを残す。
おだやかで少し不思議な物語を飲んでいるかのよう。

【Kawasaki Point】
88point
※この点数の意味は?

【基本データ】
銘柄:竹鶴21年(TAKETSURU 21yo)
地域:Japan, 日本
樽:Oak, オーク
ボトル:Distillery Bottle, オフィシャルボトル


12年、17年、そして21年


い草の香り。オレンジの白皮、スモークしたイチジク。

おだやかで少し不思議な物語を飲んでいるかのよう



レビュー:竹鶴17年 水彩の風景画のような・・

竹鶴17年(TAKETSURU 17yo)を飲んだ。88点。

竹鶴というのは、山崎蒸留所の初代工場長で、ニッカウィスキーの創設者の竹鶴政孝(たけつるまさたか)のこと。ジャパニーズウィスキーの父と呼ばれている。その竹鶴の作ったふたつの蒸留所(余市、宮城峡)のウィスキーをブレンドしたのが「竹鶴」というピュアモルトだ。
(ピュアモルトが何であるかについては竹鶴12年のレビューに書いた)

ジャパニーズウィスキーの父「竹鶴」の名を冠したウィスキー


【評価】
グラスに鼻を近づければ、甘い樽の香り。甘さの向こう、もわっとした煙を抜けて、スイカ、イチジク、ざら目の砂糖。深みを感じる香りを放つ。無骨で、仕事にまじめな男が目の前に立って、まっすぐこっちを見つめているかのような印象を受ける。
口に含めば、山間を走るSLに乗って、風を感じているかのよう。煙と、山の木をたしかに感じるが、しかし風が吹き抜けているのでしつこくならず。足元の木の床、リズミカルになる金属の音、近くの座席の誰かの塩むすびの香り。
ここにあるのはノスタルジー、水彩の風景画。素朴だが情緒豊かなウィスキー。

【Kawasaki Point】
88point
※この点数の意味は?

【基本データ】
銘柄:竹鶴17年(TAKETSURU 17yo)
地域:Japan, 日本
樽:Oak, オーク
ボトル:Distillery Bottle, オフィシャルボトル


山間を走るSLに乗って、風を感じているかのよう。

ノスタルジー、水彩の風景画。素朴だが情緒豊かなウィスキー。


レビュー:竹鶴12年 香りのバリエーション

竹鶴12年(TAKETSURU 12yo)を飲んだ。85点。
竹鶴は、ピュアモルトだ。

ちょっと解説。
“シングルモルト”は単一の蒸留所でつくられたウィスキー。“ピュアモルト”は、複数の蒸留所でつくられたモルトウィスキーをブレンドしたもの。ちなみに“ブレンデッドウィスキー”は、モルト(麦芽)だけでなく、他の穀物からつくるグレーンウィスキーを混ぜ合わせたもの。

竹鶴は、北海道は余市蒸留所と、宮城県は宮城峡蒸留所のウィスキーをブレンドしたもの。

竹鶴12年。最低でも12年以上熟成された
余市と宮城峡からできている。

【評価】
グラスに鼻を近づければ、あまいイチジク、杏子、竹墨、清涼感のあるハーブが木のお皿に盛られている。一筋、芯が通っているのに、堅苦しくならず華やかさをまとっている。おっと、少し飲んでごらんよ、と誘われる。
口に含めば、初夏の苔むす森の滝に打たれるかのよう。苔、花、岩、草。爽やかな香りたちがすっと通り過ぎていく。最後にもう一度思い出すかのように、同じ香りがリフレインする。
味の分かりやすさと、香りのバリエーションが素晴らしい一杯。

【Kawasaki Point】
85point
※この点数の意味は?

【基本データ】
銘柄:竹鶴12年(TAKETSURU 12yo)
地域:Japan, 日本
樽:Oak, オーク
ボトル:Distillery Bottle, オフィシャルボトル


ラベルには、少し見づらいけれど、
日本のウィスキーの父である竹鶴政孝の肖像が。


味の分かりやすさと、香りのバリエーションが素晴らしい一杯。





レビュー番外編:トレヴュー ヴィエーユ ド コニャック およそ百年の時を経て・・・

COGNAC TRES VIEILLE RESERVE Lafite Rothschild (コニャック トレヴュー ヴィエーユ  シャトー・ラフィット・ロートシルト)を飲んだ。88点。
コニャックはブドウからつくる蒸留酒。ウィスキーは大麦からつくる蒸留酒。大雑把に言えば、ワインを蒸留するとブランデーになり、ビールを蒸留するとウィスキーになる。ブランデーの中でも、フランスのコニャック地方のものを「コニャック」と呼んでいる。

このコニャックに出会えるとは。


ワインにお詳しい方なら、5大シャトーのひとつである「シャトー・ラフィット・ロートシルト」に「おっ」と思うかもしれない。世界でも最高のテロワール(土壌)をもつと言われている。
このシャトーがつくるブランデー。今回たまたま開ける機会があったので、レビュー番外編としてUPする。使われている原酒はなんと1900年のものがあるのだとか。というと・・・100年以上の時を経て口に運ばれるわけだ。

もはや味として成立するのか?いかに最高のテロワールで、蒸留酒であっても、1世紀以上もの歳月に耐えうるのだろうか?

この木箱に入っていた。ドメインはロートシルト男爵。


【評価】
おそるおそるグラスに鼻を近づければ、ブドウの木を連想させる、小粒で色の濃いブドウ、イチゴのショートケーキ、吸い込んでもツンとしない気品のあるアルコール。香りは、生きている。
目をとじて、口に含めば、ふくよかである。主張はしすぎず、しかし充分に豊か!香りのバリエーションが豊富なのに、口中に静かに充満する。
リッチで、おだやかな気分になるブランデー。

長熟でかなり歳月の経ったブランデーだけあって、かつて放っていた輝きは失っているであろうに、別の輝きを感じずにはいられなかった。
しかしそれは決してノスタルジーではない。現役の酒の中に混じって戦えるかといえば、戦える実力を持ったブランデーだ。

【Kawasaki Point】
88point
※この点数の意味は?

【基本データ】
銘柄:COGNAC TRES VIEILLE RESERVE Lafite Rothschild (コニャック トレヴュー ヴィエーユ  シャトー・ラフィット・ロートシルト)
地域:Borderie, ボリドリ地区
樽:Oak, オーク
ボトル:Distillery Bottle, オフィシャルボトル



瓶の中のこの色!
蝋結されたコルクを苦労して開けたあと、2回濾した。
さすがにコルクが古かったのでボロボロであった。
魅惑の色
小粒で色の濃いブドウ、イチゴのショートケーキ、気品のあるアルコール
かつて放っていた輝きは失っているであろうに、
別の輝きを感じるブランデーである

銘シャトーのラフィット・ロートシルトの場所を地図で確かめて。ロートシルトは、ロスチャイルド。

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