スコッチ・モルト・ウィスキー・ソサエティの秋の試飲会に行ってきた。(The Scotch Malt Whisky Society Autumn Bottles Sampling)
この試飲会は、季節ごとに開催される、5,000円(会員4,000円)で12~13本のウィスキーがテイスティングできるおトクなイベントだ。
SMWS、スコッチ・モルト・ウィスキー・ソサエティという長い名前は、世界最大のウィスキー愛好家団体のことをさしている。世界各地の樽を買い付け、よい頃合いに“樽出しそのまま”でリリースされるそのボトルは、会員でしか買えないが、バーなどではお目にかかることがある。
今回も13本のウィスキーのレビューを、ランキング形式で一挙掲載する。
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同じボトルデザイン。ラベルだけが違うSMWSのボトル。 |
第13位
121.72 Isle of Arran 1998 15yo(アラン 1998 15年熟成)
【Kawasaki Point】
56point
【評価】
その香りは、松林、チョコレートの銀紙。
口に含めば、チョコレートケーキの欠片。
鳥が飛び去った後、羽音を思い出すような、一瞬の、あまり気に留めない出来事のような。
第12位
95.16 Auchroisk 1990 23yo(オスロスク 1990 23年熟成)
【Kawasaki Point】
68point
【評価】
香りは、カカオの多いチョコレート。カラメルを焦がす。
口に含めば、砂糖が弾けて、チョコレートブラウニーを食べる感じ。
同点第9位
1.181 Glenfarclas 2002 11yo(グレンファークラス 2002 11年熟成)
【Kawasaki Point】
76point
【評価】
香りは甘酸っぱい。使い込んだ木のデスク、インクが沁みている。校庭に現れた夏のカゲロウ。
口に含めば、その印象は攻撃的なようで、静かである。誰もいない図書室で読みふける本。
同点第9位
29.155 Laphroaig 1995 18yo(ラフロイグ 1995 18年熟成)
【Kawasaki Point】
76point
【評価】
グラスから立ち上る香りは、高音だけで奏でたヴァイオリン三重奏。厳しい冬の寒さと、その寒さのための心ばかりの一斗缶での焚き火。
口に含めば、上品な花の蜜を集め、灰を振りかけたようだ。
同点第9位
73.66 Aultmore 1989 24yo(オルトモア 1989 24年熟成)
【Kawasaki Point】
76point
【評価】
その香りは、古い屋敷のようであり、太い木の柱、石畳、ぽたっ、ぽたっ、と水の音が聞こえる。
口に含めば、すごく濃く、甘く煮たマスカットのよう。
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あらかじめ注がれたウィスキー。さまざまな香りを放つ |
第8位
53.209 Caol Ila 1995 15yo(カリラ 1995 18年熟成)
【Kawasaki Point】
78point
【評価】
グラスに鼻を近づければ、渋い香り。海辺の雑木林。オイルサーディンの缶詰を温めるための小さな焚き火。海の音。
口に含めば、潮、生牡蠣。海藻。
無愛想な男に黙って注がれたい。
第7位
117.4 Cooley 1991 22yo(クーリー 1991 22年熟成)
【Kawasaki Point】
79point
【評価】
香りは、花畑に水晶玉をかざして、凝縮した風景。グラスいっぱいに甘いガムを詰め込んだような。
口に含めば、そのガムを噛んだような甘みが広がる。
第6位
3.216 Bowmore 1995 18yo(ボウモア 1995 18年熟成)
【Kawasaki Point】
82point
【評価】
この香りの果汁感!スイカ、パイナップル、木苺、マンゴー。
口に含めば、そのまま舌の上でフルーツの幸福を分け与える。そして灰。
よくまとまったウィスキー。
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参加者は口々に感想を |
第5位
9.92 Glen Grant 1990 23yo(グレングラント 1990 23年熟成)
【Kawasaki Point】
84point
【評価】
その香りの印象は、イタリアの婚礼音楽。カッチリした雰囲気もあるのにどこか陽気。
口に含めば、あっさりとしているのに力強い。
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ボトルはどれも個性的 |
今回はなんと、同点1位が4つ。飛び抜けたものはなかった。
同点1位
50.57 Bladnoch 1990 23yo(ブラッドノック 1990 23年熟成)
【Kawasaki Point】
86point
【評価】
グラスに鼻を近づければ、乳酸。日にやけた木。旨味を感じる香り。
口に広がるのは、しめ鯖の寿司の旨味。
同点1位
39.102 Linkwood 1990 23yo(リンクウッド 1990 23年熟成)
【Kawasaki Point】
86point
【評価】
グラスから立ち上る香りは、クリーミーで、穏やかな詩を読んでいるような気持ち。香水としても成り立つ陶酔感。
口に含めば、スイカに生クリームを塗って食べた感じがする。
同点1位
2.86 Glenlivet 1992 22yo(グレンリベット 1992 22年熟成)
【Kawasaki Point】
86point
【評価】
魅惑の香り。
口に含む。あぁ、華やか。遠い憧憬を眺める、小春日和の午後。
同点1位
76.117 Mortlach 1988 25yo(モートラック 1988 25年熟成)
【Kawasaki Point】
86point
【評価】
グラスから立ち上る香りは、土に染み込んだセメダイン。野菜のタネ。夏野菜を水で洗う。
口に含めば、上質な和食を味わった後に感じるバランス感。
サンプリング会は終わり、肌寒い秋の夜に、参加者は散り散りになっていく。今回は突出したウィスキーはなかったように感じられた。それは多くの参加者の共通した意見だったが、われわれは単に贅沢なだけなのかもしれない。
ウィスキーという単なる液体に、ついドラマのような感動を求めてしまっているのだから。