レビュー:フロム・ザ・バレル 滑らかで情熱的・・・

FROM THE BARREL(フロム・ザ・バレル)を飲んだ。86点。
実勢価格が1,000円台の流通力のあるウィスキーを1,000円台ウィスキーシリーズとして紹介しているが、フロム・ザ・バレルもそのひとつ。

このウィスキーはコンセプトがおもしろい。熟成したモルト原酒とグレーン原酒をブレンドしたあと(普通この段階で出荷するが)、さらに樽に入れて熟成させる。これによってひとつのウィスキーとしての香味の調和を図る。この手法はマリッジ(直訳すると“結婚”)と呼ばれている。そして、その樽からほぼ“樽出し”の状態でアルコール度数51%でリリースされる。実際には割り水を使用(加水)しているが、このウィスキーではアルコール度数を一定にする調整程度のようだ(割り水しなければ法的基準をクリアするため樽ごとにわずかに違う度数表記をいちいち変えなければならない)。この“ほぼ樽出しそのまま”が、このフロム・ザ・バレルのコンセプトなのだ。

さて、このボトルの香味やいかに。

ニッカ フロム・ザ・バレル

【評価】
グラスから立ち上る香りは、きわめてスウィーティーでフレッシュな木苺。ほのかに香る古びた本や灰の香り。アルコールが鼻腔を満たすがさわやかな甘みを届ける。
口に含めば、滑らかで情熱的。軽くて鮮やか、だが色味は多くなりすぎない絵のような。
情熱を秘めた大人のウィスキー。

【Kawasaki Point】
86point
※この点数の意味は?

【基本データ】
銘柄:FROM THE BARREL(フロム・ザ・バレル)
地域:Japanese, 日本
樽:Oak, オーク
ボトル:Blended, ブレンデッド

極めてシンプルなラベル。このウィスキーをよく顕している

四角い塊のようなボトル
フランスではコスパとボトルの扱いやすさから
カクテルの割り材としての需要が伸びているようだ

色味は多くなりすぎない絵のような







レビュー:ヘーゼルバーン 12年 手づくりのパイ・・・

HAZELBURN 12yo(ヘーゼルバーン 12年熟成)を飲んだ。83点。
ヘーゼルバーン蒸溜所はイギリスはスコットランド、キャンベルタウンに存在した。かつて竹鶴政孝(ジャパニーズウィスキーの父)が修行した蒸溜所として知られるが、1926年に閉鎖している。
今ではこの「ヘーゼルバーン」ブランドは同じ街にあるスプリングバンク蒸溜所が手がけており、毎年数千本の限定的な生産だ。ちなみに同蒸溜所のメインブランドである「スプリングバンク」はライトピート(すこし煙の香りがする)で、「ヘーゼルバーン」はノンピート(煙の香りがするピートを使用していない)。

さて、このボトルの香味やいかに。

ヘーゼルバーン12年

【評価】
グラスを傾けその香りを辿れば、艶やかな着物、紅、金、優雅な白い線。ハチミツとレモンが絶妙なバランス。透き通っているがとても深い。
口に含めば、ゆっくりと印象を裏切る。手づくりのパイ。カステラ、大き目のアメ。
穏やかな気持ちにさせる素朴さと深み。

【Kawasaki Point】
83point

【基本データ】
銘柄:HAZELBURN 12yo(ヘーゼルバーン 12年熟成)
地域:Campbeltown, キャンベルタウン
樽:oak, オーク
ボトル:Distillery Bottle, オフィシャルボトル

スプリングバンク蒸溜所から

ヘーゼルバーン12年 すっきりとした香りの3回蒸留

紅、金、優雅な白い線

穏やかな気持ちにさせる素朴さと深み





レビュー:アードベッグ オーリヴェルデ 焼きとうもろこしの・・・

Ardbeg  AURIVERDES(アードベッグ オーリヴェルデ)を飲んだ。78点。
2014年のワールドカップイヤーに発売されたボトル。オーリは「黄金」で、ヴェルデが「緑」。W杯開催国のブラジルのナショナルカラーに乗っかったネーミングだ。
企画ボトルが多く、毎回シングル・モルトの新たな可能性を広げ続けるアードベッグだが、このボトルの香味はどうだろうか?

アードベッグ オーリヴェルデ

【評価】
グラスに鼻を近づければ、蒸しパプリカの甘さ、焼きとうもろこしの甘み、本をゆっくり読むスピードで分解していく香り。
口に含んでみる。1人用のくつろげるソファに座って、フルーツ盛りを眺めている。マイルドな葉巻の香りが近くから漂う。
50年代のアメリカンポップスのレコードがかかる。

【Kawasaki Point】
78point
※この点数の意味は?

【基本データ】
銘柄:Ardbeg  AURIVERDES(アードベッグ オーリヴェルデ)
地域:Islay, アイラ島
樽:oak, オーク
ボトル:Distillery Bottle, オフィシャルボトル

渦(うず)模様のロゴ

ボトルにデザインされたアードベッグ

AURIが金色、VERDESが緑でデザインされている

本をゆっくり読むスピードで分解していく香り

マイルドな葉巻の香りが近くから漂う

50年代のアメリカンポップスのレコードがかかる



アードベッグ蒸溜所は「アイラ島」という小さな島に存在する。イギリスのスコットランドの西。
地図を拡大したり縮小したりして確かめてみて。






A HAPPY NEW YEAR

明けましておめでとうございます。本年も拙ブログ『そのウィスキーをもう一杯』を宜しくお願い致します。

2012年の元旦からスタートしたこのブログも2周年を迎えました。多くの方にご覧頂き、感謝に耐えません。今後も更新して参りますので、どうぞご支援下さい。
本年もあなた様が素晴らしいウィスキーと出会われることをお祈りしております。


下記、読者の方への2つの年賀状のご紹介です。

ひとつ目の画像は『そのウィスキーをもう一杯』Facebookページでお届けしたものです。未年だけにおひつじ座を、ウィスキーの入ったグラスでデザインしています。グラスはバカラのショットグラス「タリランド」。



ふたつ目の画像は『そのウィスキーをもう一杯』Twitterページでお届けしたものです。この架空のボトルは2003蒸留-2015リリースの、12年熟成。丁度ひと回り前の未年に仕込まれたもの・・・という想定です。グラスはリーデルの「シングル・モルト」。



以上、FacebookとTwitterそれぞれでお届けした年賀状のご紹介でした。よろしければ「いいね!」や「フォロー」をお願い致します。ウィスキーの情報をお届けすることができると思います。

Facebookアカウント:https://www.facebook.com/onemorewhisky
Twitterアカウント:https://twitter.com/whisky1more


では、失礼致します。本年も良いウィスキーライフを!




レビュー:グレンフィディック 1989 24年 スプーンモルト=バルベニー

THE MALT Ran Away with THE SPOON Glenfiddich with Balvenie 1989 24yo by WARDHEAD(ティースプーンモルトウィスキー グレンフィディック with バルベニー 1989 24年熟成 by ウォードヘッド)を飲んだ。89点。

この長いウィスキーのタイトルを直訳すれば「麦芽とスプーンの逃走」となる。ラベルに描かれた麦芽の腕に「グレンフィディック」とあり、スプーンの腕には「バルベニー」とある。シングル・モルトのグレンフィディックがスプーン一杯のバルベニーを連れて逃げ出している、というユーモラスなラベルだ。

ティースプーンモルト グレンフィディック with バルベニー

この通称「スプーンモルト」シリーズは、あるシングル・モルトの樽に対してティースプーン一杯分の別のシングル・モルトをブレンドしている。割合から言ってほとんど影響はないだろうが、スプーン1杯分でも別の蒸溜所のシングル・モルトが混ざれば、それはもうシングル・モルトではない。なぜこんな面倒なことをしているかといえば、グレンフィディックなどの有名蒸溜所はボトラーズからシングル・モルトをリリースすることを制限しているらしく、それをかいくぐるため「スプーン1杯分別のモルトが混じってるんでこれは違いますよ」で通る・・という噂だ。
そんな一休さんみたいなトンチを効かせて、こんな「逃げろ、逃げろ」みたいなラベルで果たして蒸溜所は納得なのかな・・・とは思うが、きっと成立しているユーモアなのだろう。

さて、前置きが長くなったが、このボトルの中身の香味はどのような世界を見せてくれるのだろうか。


【評価】
グラスから立ち上るのは、芳ばしく燻った麦。中流域の穏やかな流れと、収穫された果物。秋の穏やかな夕刻前の日差し。
口に含めば、甘くビターなチョコレート。ロウと柑橘。メロンと麻袋。
広い草原で木のベンチに腰掛け、ゆっくりと愉しみたいモルト。

【Kawasaki Point】
89point
※この点数の意味は?

【基本データ】
銘柄:THE MALT Ran Away with THE SPOON Glenfiddich with Balvenie 1989 24yo by WARDHEAD(ティースプーンモルトウィスキー グレンフィディック with バルベニー 1989 24年熟成 by ウォードヘッド)
地域:Highland, ハイランド
樽:oak, オーク
ボトル:WARDHEAD, ウォードヘッド

モルト(麦芽)が

スプーンを連れて逃げていく

モルトはグレンフィディック、スプーンはバルベニー

ロウと柑橘。メロンと麻袋。

モルトの脚。デザインはkeith shore氏。






レビュー:グレンリベット ガーディアンズチャプター この春は・・・

GLENLIVET Gurdian's Chapter Exotic(グレンリヴェット ガーディアンズ・チャプター エキゾチック)を飲んだ。95点。
グレンリベットの「ガーディアン」(ファン)達がテイスティングして「これ!」と選んだ一本を発売しようという企画だったようだ。日本では1,000本限定。日本で1,000本限定のウィスキー、というのは私の感覚値だが、「まぁまぁあるな」というレベルだ。このときばかりは現状のウィスキー人口に感謝する。今後、ますますウィスキー人口が増えていくだろうから、今のような入手しやすさではなくなるかもしれないが・・・。
さて、このボトルの香味はどんな世界を見せてくれるのだろうか。

グレンリベット ガーディアンズチャプター

【評価】
グラスから立ち上る香りに集中すれば、世界に引き込まれる。畳の部屋のすだれの奥の、庭に開けた大きな窓の。ほとりのお香。高貴さと優雅さ。
口に含めば、ジリジリと甘い、悠久の時を感じるかのような落ち着いた物語性を持っている。眼鏡を外して、ぼんやりとした春の庭を眺める。どうやら小鳥が飛び立ったようだ。この春はいつまで続くのだろう。

(なんとファンタジックな一杯だろうか)

【Kawasaki Point】
95point
※この点数の意味は?

【基本データ】
銘柄:GLENLIVET Gurdian's Chapter Exotic(グレンリヴェット ガーディアンズ・チャプター エキゾチック)
地域:Highland, ハイランド
樽:oak, オーク
ボトル:Distillery Bottle, オフィシャルボトル

ファンたちの投票によって選ばれたという

グレンリベットはスコットランド最古の政府公認蒸溜所

マスターディスティラリーのサイン、「A.J. Winchester」 

悠久の時を感じるかのような落ち着いた物語性






もしグレンリベットに旅するなら、地図で確かめてみて。