レビュー: ブルイックラディ X4+3 意外なウィスキー

BRUICHLADDICH X4+3(ブルイックラディ エックス4 プラス3)を飲んだ。68点。
かなり変わったウィスキーだ。「X4」は、なんと4回蒸留!そして「+3」は3年熟成という意味だ。(蒸留回数についての参考記事はこちら)。ブルイックラディ蒸留所のマスターディスティラリーであるジム・マッキュワン氏が“デザイナーズウィスキー”と名づけて世に問うシリーズのひとつ。

BRUICHLADDICH X4+3
(ブルイックラディ エックス4 プラス3)


【評価】
グラスから立ち上るのは、アンズの香り、蜂蜜漬けの梅。バニラ。煙。甘い香り。
グラスを傾けて唇から少量流し込めば、すっと入ってくるシェリー酒のような、木の酸味、後味が甘ったるくしびれる煙で不快ではない。まろやかだが、アルコールが上がってくる。
3年熟成でこの香味は意外だが、絶妙なバランスの粋なウィスキー。

【Kawasaki Point】
68point
※この点数の意味は?

【基本データ】
銘柄:BLUICHLADDICH X4+3(ブルイックラディ エックス4 プラス3)
地域:Islay, アイラ
樽:Oak, オーク
ボトル:Distillery Bottle, オフィシャルボトル

アンズの香り、蜂蜜漬けの梅




3年熟成でこの香味は意外だ
実験的なウィスキーを続々リリースしているブルイックラディ蒸留所の位置を地図で確かめてみて。

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レビュー:グレントファース1989 15年 SMWS 63.15 大人のミックスジュース

Glentauchers 1989 15yo SMWS 63.15(スコッチ・モルト・ウィスキー・ソサエティのグレントファース1989 15年熟成)を飲んだ。88点。SMWSは世界最大のウィスキー愛好家コミュニティ。会員しかそのボトルを買えないが、バーなどでは結構お目にかかる。今回のボトルは旧ラベル。





【評価】
グラスから立ち上る香りは、果実感。ミックスジュースのよう。しとやかで、大人のミックスジュース。甘く酔ってしまいそう。
グラスを傾け口に含めば、洋ナシ、赤いフルーツの果実と果汁、煙も感じるが、まるでワインのような果実感。後味に煙とスパイシーを残す。
複数種のフルーツの香りが調合されたウィスキー。

【Kawasaki Point】
88point
※この点数の意味は?

【基本データ】
銘柄:Glentauchers 1989 15yo SMWS 63.15(グレントファース1989 15年熟成)
地域:Highland, ハイランド
樽: 不明
ボトル:Scotch Malt Wisky Society スコッチ・モルト・ウィスキー・ソサエティ



SMWSのボトルには蒸留所名は書かれず、蒸留所コードが記されている。
グレントファースは63番。このボトルはこの蒸留所の15番目のリリース。

ワインのような果実感。大人のミックスジュース。スパイシーな後味



レビュー:スプリングバンク1973 18年 ラムカスク ~激しいドラマ~

Springbank 1973 18yo Rumcask(スプリングバンク 1973年 18年熟成 ラムカスク)を飲んだ。88点。
現在はほとんど流通していない、いわゆるオールドボトルである。さてはて香味やいかに。

1991年9月にボトリングされている

【評価】
グラスを傾け香りを味わえば、アルコールの刺激、甘みと重みの含まれた酸味、そして甘みの奥にうっとりする木の香り。清涼感もある。木に擦り付けたアッシュ(灰)だが、まろやか。雨上がりの草花。古い洋書の読書。永い時間を連想させる。
いよいよ口に含めば、うっとりする甘みの後に、スパイシーさが上がってきて、その後、アルコールが全体を覆い、すべての要素をまとめて、旨みと調和させる。
激しいドラマを見せるウィスキー。

【Kawasaki Point】
88point
※この点数の意味は?

【基本データ】
銘柄:Springbank 1973 18yo Rumcask(スプリングバンク 1973年 18年熟成 ラムカスク)
地域:Campbeltown, キャンベルタウン
樽:Rum Butt, ラム
ボトル:Distillery Bottle, オフィシャルボトル



今はほとんど蒸留所が残っていないキャンベルタウンという港町で、操業を続けるスプリングバンク蒸留所の位置を地図で確かめてみて。

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レビュー:ブルイックラディ ロックス 実験的なウィスキー

BRUICHLADDICH ROCKS(ブルイックラディ ロックス)を飲んだ。56点。

ブルイックラディ蒸留所は一度は閉鎖していたものの、ジム・マッキュワン氏が「なんとかならないか」と皆に頼まれ、2001年に蘇らせた、いわゆる「復活系蒸留所」だ。このジム・マッキュワンは、天才的なブレンド技術を持つことで知られるスター・ブレンダーだ。世界一のピートを効かせたウィスキー「オクトモア5」(※レビューはこちら)も彼の仕事。また、この蒸留所は昨年、レミーコアントロー社に買収されたが、ジム・マッキュワンが買ったときの値段の5倍で取引された。ジムは引き続き蒸留所にいるが、今年の8月に引退を予定している。

ボウモアでマスターブレンダーをやった後、地元のアイラ島のブルイックラディを復活させ、企業価値を5倍に高め、商業とアートのバランスを取り、引退を決めている男。毒舌でも知られ、自らのウィスキーをべた褒めする、ひとクセあるカッコいい男なのだ。

今回の「ロックス」はそのジムが「デザイナーズ・ウィスキー」と名づけ、世に放つシリーズ。ラベルにはブルイックラディの「18億年前の岩盤を通ってきた水を使用し・・・云々」の説明がある。アイラ島の地層ってなんだか古くて、世界から調査に来るみたい。それが味にどう影響するのかは・・不明。

金色のシールは「ジム・マッキュワン」のサイン

【評価】
グラスから立ち上る香りは、ニューポットかと思うほどの麦の酸味だが、割とまろやか。男性的。
グラスを傾け、口に含めば、まろやかかつ滑らかで、麦が分解されていく不思議な味わい。ミネラリー(鉱物感)。甘み、渋み、これらを支える構造がさりげなく、主張しないので、ひたすらこの麦とミネラルに集中できる。
実験的なウィスキー。(ウィスキーとしての点数は低いが、この実験的な姿勢は評価したい)

【Kawasaki Point】
56point
※この点数の意味は?

【基本データ】
銘柄:BRUICHLADDICH ROCKS(ブルイックラディ ロックス)
地域:Islay, アイラ
樽:Oak, オーク
ボトル:Distillery Bottle, オフィシャルボトル

ひたすら麦とミネラル

18億年前の岩盤を通ってきた水を使用。ウィスキー界でもっとも古い岩盤だ。・・と書いてある。


ブルイックラディ蒸留所は湾を挟んでボウモアの向かい側にある。地図で確かめてみて。

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レビュー:マルス モルテージ 3 plus 25 夏の果実と、麦の香り

MARS MALTAGE 3 plus 25(マルス モルテージ 3 プラス 25)を飲んだ。87点。

WWA2013(ワールド・ウィスキー・アワード)で「ベスト・ブレンデッドモルト」に選ばれたボトルだ。この「ベスト」は世界の最高賞ということで、WWAのベストはそれなりにすごい。(シングルモルト部門では「アードベッグ・ガリレオ」や、ブレンデッド部門では「響21年」がそれぞれベストに選ばれている)
このウィスキーをつくっているのは「マルス蒸留所」という蒸留所だ。ジャパニーズ・ウィスキーの中でも、サントリーやニッカに比べれば知名度は低い。今回の初受賞で、このボトルは一気に売り切れ、その他のボトルにも注目が集まっている。(ちなみに、当ブログ選出2012の最優秀賞は、同じマルス蒸留所の「駒ヶ岳1985」だ。こっちをエントリーしても面白かったと思う)

「3plus25」というのは、鹿児島で3年寝かしたあと、信州で25年寝かしました、という意味。結局28年熟成。あんまりウィスキーが「お引越し」することはないので、珍しいといえる。今回の受賞で改めて味わってみた・・・さて、その香りと味はいかほどか。

初エントリーで初受賞、おめでとう!



【評価】
グラスに鼻を近づければ、甘くふくよかな香り。うっとりする、木の酸味とスパイシーさが、アルコールに乗る。木造校舎と砂煙。川魚の燻製。
口に含めば、爽やかな夏の果実の甘み。熱く上がってくるアルコールが、ジリジリと麦芽のうまみを分解する。その後に、ノドで感じる甘み。
爽やかで奥深いウィスキー。

【Kawasaki Point】
87point
※この点数の意味は?

【基本データ】
銘柄:MARS MALTAGE 3 plus 25(マルス モルテージ 3 プラス 25)
地域:信州、Shinshu
樽:Oak, オーク
ボトル:Distillery Bottle, オフィシャルボトル





うっとりする、木の酸味とスパイシーさが、アルコールに乗る

爽やかで奥深いウィスキー



レビュー:トーモア1983 28yo SMWS 105.19 賛美歌にスパイスを

Tormore 1983 28yo SMWS 105.19(スコッチ・モルト・ウィスキー・ソサエティのトーモア1983 28年熟成)を飲んだ。86点。
SMWSは世界最大のウィスキー愛好家コミュニティである。スコットランドの首都、エディンバラに本部がある。会員しかその酒を買うことは出来ず、本当にウィスキー愛好家のための集団だ。ボトルも特徴的。華美ではなく、スッキリとそぎ落としたデザインで、蒸留所の名前は書かれておらず、番号でどの蒸留所の何番目のリリースのボトルであるかを示す。このストイックさが(例えばワインなどとは違った)、ウィスキーらしいカッコよさだろう。
そして必ずどのウィスキーにもタイトルがついている。今回のトーモアには、
‘神の御子は今宵しも’ ‘O Come All Ye Faithful’
というタイトルがついている。美しい賛美歌のタイトルだと思われるが、なぜこのウィスキーにこのタイトルなのか、正直、意味は分からない。しかし、これは詩なので意味が分からなくてよい。
さて、その香りと味はいかほどに。

華美ではなく、スッキリとそぎ落としたデザイン

【評価】
香りは刺激的。グレープフルーツを右手にもって、テーブルの上にはコンソメスープがある。スパイシーかつ、旨みのある香り。さらに辿れば、テールスープのスパイシーさだ。
口に含めば、一転してすっきりとした味わい。目が覚める!花々を感じる。濃縮されたうまみ。
確かに、賛美歌のような和声は感じるウィスキー。・・ただ、賛美歌よりもやや刺激的。

【Kawasaki Point】
86point

【基本データ】
銘柄:105.19 Yoichi Tormore 1983 28yo(トーモア1983 28年熟成)
地域:Highland, ハイランド
樽: 1stSherryHogg, 1度目のシェリー・ホグスヘッド
ボトル:Scotch Malt Wisky Society スコッチ・モルト・ウィスキー・ソサエティ

口に含めば、一転してすっきりとした味わい。目が覚める!

トーモアは「大きな丘」という意味。スコットランドのハイランド地域にあるその蒸留所の位置を、地図で確かめてみて。

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