レビュー:SMWS 春の試飲会 2014 ~13本のレビューを一挙掲載~

スコッチ・モルト・ウィスキー・ソサエティの春の試飲会に行ってきた。(The Scotch Malt Whisky Society Spring Bottles Sampling)
シーズンごとに開催される、5,000円でウィスキーがたくさん飲める会だ。

この通称SMWS(または“ソサエティ”と呼ばれる)という団体は、ウィスキーが好きな人々の間では結構有名で、各地の樽を買い付けて、独特のボトルデザインで会員のみに販売している。会員でなくとも、ボトルが置いてあるバーなら飲むことはできる。

さて、前回私が参加した会は試飲方法が改悪されて不評を買っていたが、今回は改善されていた。最初から目の前に自分の分のグラスが全種類並んでいた。これなら自分のペースで好きな順に飲める。
普段はワインが好きだという女性客も複数名参加していた。ウィスキーはぜんぜん知らないけれど、「勉強のために参加してみたいと思った」そうだ。イベントって大切なのだなと思った。ウィスキーとの素敵な出会いでありますように。

シーズンごとに開催されるソサエティの試飲会

並ぶグラス。果たしてどのような出会いがあるのだろう


今回も、ランキング形式で13本のウィスキーのレビューを一挙掲載する。


第13位
127.38 PORTCHARLOTTE 2003 10yo (ポートシャーロット 2003 10年熟成)
【Kawasaki Point】
56point
【評価】
香りは、風と砂埃。
口に含めば、くゆらせたパイプタバコの煙。


第12位
17.36 SCAPA 2003 11yo (スキャパ 2003 11年熟成)
【Kawasaki Point】
76point
【評価】
グラスから立ち上る、穏やかでたおやかだが、厚めに重ねた甘さ。
目を閉じ飲み込めば、ハチミツの向こう側に透けて見えるボート。


第11位
4.182 HIGHLAND PARK 1999 13yo (ハイランドパーク 1999 13年熟成)
【Kawasaki Point】
78point
【評価】
グラスが放つ果汁そのままの甘さ。
舌の上をすぎさっていく甘さ。


同点7位
28.24 TULLIBARDINE 1990 23yo (タリバーディン 1990 23年熟成)
【Kawasaki Point】
83point
【評価】
鼻腔に感じる不思議な燻製感。心豊かになるふくよかさ。
この液体はまるで、焦がした樽を舐めているかのような。
アンティーク家具に囲まれて飲みたいウィスキー。


同点7位
46.22 GLENLOSSIE 1992 20yo (グレンロッシー 1992 20年熟成)
【Kawasaki Point】
83point
【評価】
グラスの放つ香気は、花の蜜と、古いテーブル。
その印象を頭に浮かべながら、あごを上げグラスから液体を流し込めば、華やかさを残したまま、木の個性と絡まり、美しさともいえるまとまりを見せる。


同点7位
72.35 MILTONDUFF 1984 28yo (ミルトンダフ 1984 28年熟成)
【Kawasaki Point】
83point
【評価】
この香りは、夏の果実、朝顔。桐の箪笥。
飲めば、煙い、甘みが少し深い。崩れないがドラマティックでもない。


同点7位
23.73 BRUICHLADDICH 2002 11yo (ブルイックラディ 2002 11年熟成)
【Kawasaki Point】
83point
【評価】
グラスを揺らすと香りが立ち上る。それはシンナーのようであり、キリリと尖った個性。狂おしい情熱。
少量口に含んでみれば、おぉ、バシャバシャと夏の海で水遊びする子供たちよ。朽ちかけた桟橋と、太陽よ。


同点5位
29.145 LAPHROAIG 1990 22yo (ラフロイグ1990 22年熟成)
【Kawasaki Point】
85point
【評価】
鼻から息を吸い込むと、煤(すす)を嗅ぎながら、オイルサーディンを開けるようだ。わずかに柑橘。
そのまま口に含めば、ぬるっとした煙感。
このウィスキーは味覚が鈍る厳しい冬の海でもこの個性を感じられるだろう。


同点5位
121.63 ARRAN 1995 17yo (アラン 1995 17年熟成)
【Kawasaki Point】
85point
【評価】
この香りは!目の覚めるような陶酔感、夏の朝の水やり後のツタ。水滴がキラキラしている。
グラスを傾け口に流し込めば、さわやかに水をゴクゴクのんだ感じ。体の芯があたたかい。



同点2位
G4.5 CAMERONBRIDGE 1979 34yo (キャメロンブリッジ 1979 34年熟成)
【Kawasaki Point】
88point
【評価】
ケーキ。小麦感。
おいしいウィスキー。


同点2位
35.102 GLEN MORAY 1974 39yo (グレンマレイ 1974 39年熟成)
【Kawasaki Point】
88point
【評価】
鼻で感じるこのウィスキーは、上質な木の煙。パイプの名品の木のツヤ。吸い込むたびに魂が癒される。
口の中で転がせば、上品な気の渋みと塩み。
逸品。


いよいよ、今回の1位は?


第1位
3.124 BOWMORE 1995 18yo (ボウモア 1995 18年熟成)
【Kawasaki Point】
89point
【評価】
果実を蒸留したのかと思わせるほどの上品さ。銅の香り。
そっと口に含んでみれば、パウダーシュガー、お菓子のようなファンタジーを感じさせ、サーカスの夜に目を輝かせる子供のような気分。



午後5時からのサンプリング会が終わっても、街はまだ明るかった。これから徐々に暗くなるが、さほど寒くもない。ほろよいの気分で、さらに繰り出す者もいれば、しずかに家に帰る者もいるだろう。
それぞれが果たしたウィスキーとの出会いを胸に抱きながら、会は散り散りとなった。



レビュー:カリラ 1980 30年 ベリーブロス 暖炉の前で静かに過ごすなら・・・

BERRY BROs & RUDD の CAOL ILA 1980 30yo(ベリーブラザーズ&ラッドのカリラ1980 30年熟成)を飲んだ。89点。
通称BRRというボトラー。果たして、このウィスキーの香味やいかに。

BBRのカリラ1980 30年熟成

【評価】
グラスを傾け鼻を近づければ、すぅーっと香る甘い柑橘。樽の木の繊維の一本一本が良き思い出のように浮かび上がる。この煙の向こうに、何があるのか飲んでみたくなる。
グラスの縁を唇に付け、そっと口に含めば、柔らかな香りと裏腹におどろくほどの煙。熱く燃えている。塩味を味わわせながら、そのウィスキーは土に染み込んで行くように口の中で印象を消す。
寒い冬を、暖炉の前で静かに過ごすなら、このウィスキーをお供にしたい。

【Kawasaki Point】
89point

【基本データ】
銘柄: CAOL ILA 1980 30yo(カリラ 30年熟成)
地域:Islay, アイラ島
樽: Bourbon, Oak  バーボン、オーク
ボトル:BERRY BROs & RUDD, ベリーブラザーズ&ラッド

すぅーっと香る甘い柑橘

1980年蒸留のカリラ





ウィスキーは土に染み込んで行くように


カリラ蒸溜所の場所はここ。アイラ島とジュラ島のはざま、ジュラ海峡に面している。



レビュー:ジョニーウォーカー ダブルブラック 鮮やかな満足感

Johnnie Walker Double Black(ジョニーウォーカー ダブルブラック)を飲んだ。83点。
もともとは免税店向けだったようだが、昨年から日本でも普通に流通している。

少しぼけちゃった。 ジョニー・ウォーカー ダブルブラック

【評価】
グラスに鼻を近づければ、すっきり透き通った香りの“高音”と、油絵具の“重低音”。時おり、きらきらしている。深く吸い込めば、リンゴと、リンゴの入っている木箱の香り。しとしと雨の降る柔らかさ。
口に含めば、ライトな爽やかさと、満足を与える重量感がある。リンゴの木箱が思い出され、その表面を指の腹で触ると、ざらざらとしている。バーナーで焼いた木片の印象もある。
深くはないが、鮮やかな満足感を与える一杯。

【Kawasaki Point】
83point
※この点数の意味は?

【基本データ】
銘柄:Johnnie Walker Double Black(ジョニーウォーカー ダブルブラック)
地域:Highland, Island, Islay, ハイランド、アイランド、アイラ
樽:oak, オーク
ボトル:JOHNNIE WALKER(ジョニー・ウォーカー)

ラベルの角度は決まって24°

すっきり透き通った香りの高音と、油絵具の重低音

ストライディングマン(闊歩する人)のシルエット




満足を与える重量感がある




レビュー:グレン・グラント 5ディケイズ 爽やかでありながら・・・

The Glen Grant FIVE DECADES (グレン・グラント ファイブ ディケイズ)を飲んだ。86点。
世界で12,000本、うち日本では200本限定。同蒸溜所の責任者であるデニス・マルコム氏が「ウィスキーづくりに携わって50年」を記念してリリースされた。

Decadesとは“10年間”のことで、ここでいう「5 Decades」は具体的には1960年代、70年代、80年代、90年台、2000年台のことを指している。ここ50年間のそれぞれの年代の原酒を使用している。デニス・マルコム氏の経験したこの50年間と、それぞれの年代の原酒。彼にとってはこのウィスキーの味わいとはどのようなものなのだろうか・・・と考えずにはいられない。

さてはて、このウィスキーの香味やいかに。

グレン・グラント ファイブ ディケイズ
【評価】
グラスから立ち上る香りをそっと吸い込めば、下草を刈った山にさわやかな風が吹く。木の筒から青空を覗く。不思議な高揚感。緑に包まれて。
口に含めば、ライト、ライトなのだが、山の緑が芽吹いて燃えているかのように舌の上でドラマを見せる。水晶に映った風景。
爽やかでありながら複雑性を持ち合わせているウィスキー。

【Kawasaki Point】
86point

【基本データ】
銘柄:The Glen Grant FIVE DECADES (グレン・グラント ファイブ ディケイズ)
地域:Highland, ハイランド
樽:oak, オーク
ボトル:Distillery Bottle, オフィシャルボトル


5つの年代を示す「V」の文字

グレン・グラントというブランドはイタリアではかなりメジャー

デニス・マルコム氏のサイン

下草を刈った山にさわやかな風が吹く。

爽やかでありながら複雑性を持ち合わせているウィスキー


グレン・グラント蒸溜所の位置を地図で確かめてみて。




レビュー:クライヌリッシュ 1997 16年 ベリーブロス かなり湿度の高い春・・・

BERRY BROs & RUDD のCLYNELISH 1997 16yo (ベリーブラザーズ&ラッドのクライヌリッシュ 1997 16年熟成)を飲んだ。87点。
ボトラーのBBRは、ウィスキー好きにとってはウィスキーのボトラーとしておなじみだが、実は世界最古のワイン商として有名。
さてはて、このクライヌリッシュの香味やいかに。

クライヌリッシュ 1967 16年熟成 BBR

【評価】
グラスから立ち上る香りをかげば、かなり湿度の高い春。花々の間からモンシロチョウがひらひらと舞い出る。やがてシトシトと降る雨。向こうの空は晴れているのに。気まぐれな空。モンシロチョウは葉の影で休んでいるのだろうか。
口に含めば、雨上がりを舞う蝶。よくみれば懸命に羽を動かし、短い命に誠実であるように。やがて太陽が土を乾かしていく。
ひと時の儚い夢であり、懸命で誠実な春の日の一日のようなウィスキー。

【Kawasaki Point】
87point

【基本データ】
銘柄: CLYNELISH 1997 16yo (クライヌリッシュ 1997 16年熟成)
地域:Highland, ハイランド
樽: Bourbon, Oak  バーボン、オーク
ボトル:BERRY BROs & RUDD, ベリーブラザーズ&ラッド


1997年蒸留 16年熟成 樽No.6867


花々の間からモンシロチョウがひらひらと舞い出る

懸命で誠実な春の日の一日のような


クライヌリッシュ蒸溜所の場所を地図で確かめてみて。緑で覆われたなだらかな丘、低層の建物・・・。





レビュー:マックミラ スペシャル06 サマーメドウ むせるほどの・・・

Mackmyra Special 06 Summer Meadow(マックミラ スペシャル 06 サマーメドウ)を飲んだ。73点。
マックミラはスウェーデンのウィスキーで、このスペシャルシリーズはいくつかある。今回は、マックミラの05に続き。サマーメドウは、「夏の牧草地」という意味だ。果たしてその香味は・・・・

マックミラ スペシャル 06 サマーメドウ

【評価】
グラスから立ち上るのは、夏草、むせるほどの。柑橘もある。煙たい野焼き。アスファルトの焦げたタイヤ。
口に含めば、なんの印象も残さず去って行く。オレンジの皮と陽炎。

【Kawasaki Point】
73point

【基本データ】
銘柄:Mackmyra Special 06 Summer Meadow(マックミラ スペシャル 06 サマーメドウ)
地域:Sweden, スウェーデン
樽:oak, オーク
ボトル:Distillery Bottle, オフィシャルボトル

特徴的なロゴ

手でちぎってあるロゴのシール

このMACKMYRAの部分は、なんていうフォントだろう。
賢くリズミカルでありながら冷たさがないフォントだ。

夏草、むせるほどの。

煙たい野焼き

オレンジの皮と陽炎