レビュー:リトルミル1988 23年 WA&3R 小さな暖炉・・・

LITTLEMILL 1988 23yo Whisky Agency & Three Rivers(リトルミル 1988 23年熟成 ウィスキーエージェンシーとスリーリバースのWネーム)を飲んだ。87点。

世界でこのボトルは162本しかないが、特別高価というわけでもない。あるひと樽の原酒が素晴らしかったので、それをボトリングしたらたまたま162本とれて、発売しただけ――。そんな小回りの効くリリースの仕方は、大手蒸溜所やメーカーではあまりされないが、ボトラーと呼ばれる瓶詰め業者にとっては得意技だ。(参考:ボトラーズとオフィシャルの違いとは?

リトルミルといえば「今はもうない」閉鎖系蒸溜所だが、スコットランドでは最古の蒸溜所だったとされている。もう数年すれば、原酒もほとんどなくなっていくのだろうか。
さて、このボトルの中身はどのような香味だろうか。

リトルミル 1998 23年熟成

【評価】
グラスから香るアロマは、優しいチョコレート、溶けたロウと鉄分。まっすぐに伸びる針葉樹。小さな暖炉。
口に含めば、一瞬で解ける鉄と、赤い果実の果汁。イチジク。フレッシュな酸味。
ゆっくりと楽しむことのできる一杯。

【Kawasaki Point】
87point
※この点数の意味は?

【基本データ】
銘柄:LITTLEMILL 1988 23yo (リトルミル 1988 23年熟成 )
地域:Lowland, ローランド
樽: Ex-Sherry Hogshead, Oak, シェリー、オーク
ボトル:Whisky Agency & Three Rivers ウィスキーエージェンシーとスリーリバースのWネーム

ドイツのボトラー Whisky Agencyと、
日本のボトラー Three Rivers。
Three Riversは「三河屋さん」

この綺麗なラベルは
Whisky Agencyでは「アートワークシリーズ」と
呼ばれているようだ

一瞬で解ける鉄と、赤い果実の果汁

ゆっくりと楽しむことのできる一杯












レビュー:駒ヶ岳 ザ・リバイバル 2011 六月の雨上がり・・・

駒ヶ岳 ザ・リバイバル 2011(KOMAGADAKE THE REVIVAL 2011)を飲んだ。56点。

「駒ヶ岳」ブランドを生み出しているマルスウィスキーの生みの親は岩井喜一郎という人物だ。この人、“マッサン”として知られるジャパニーズウィスキーの父、竹鶴政孝と縁が深い。当時、竹鶴政孝をスコットランドへウィスキー留学させてくれた会社の上司が岩井喜一郎であったのだ。(そもそも政孝は岩井喜一郎を頼って摂津酒造に入社した)
ところで、ウィスキー蒸溜所の経営はギャンブルの要素が多く不安定だ。マルスウィスキーもしばらく蒸留をストップしていたが(その間も熟成させていた原酒でリリースはしていた)、2011年に19年ぶりに新規の蒸留を再開した。そして、蒸留再開後の初リリースがこのボトル。最低限の3年しか熟成させていないが、「REVIVAL(復活)」のネーミングにつくり手の意気込みがうかがえる。

さて、このボトルの香味はどうだろうか。

The Revival 2011 駒ヶ岳

【評価】
爽やかな麦の香りと強烈なアルコール!森林浴をしているような爽やかさの後ろに乳酸のうまみ。
六月の雨上がりの苔むす森林。爽やかでありながらも鮮烈な印象。
あぁ、ここにウィスキーが生まれてきたのか。

【Kawasaki Point】
56point
※この点数の意味は?

【基本データ】
銘柄:駒ヶ岳 ザ・リバイバル 2011(KOMAGADAKE THE REVIVAL 2011)
地域:信州、Shinshu
樽:Oak, オーク
ボトル:Distillery Bottle, オフィシャルボトル

マルスウィスキーのエンブレム

稜線をイメージしたエンボスの施されたボトル

6,000本限定

非常に若い色。美しい。









レビュー:グレンリベット15年 野原を進む・・・

The Glenlivet 15yo(グレンリベット 15年熟成)を飲んだ。87点。
グレンリベットはスコットランドの政府公認蒸溜所第一号で長い歴史を誇っている。ちなみに、わざわざ公認を名乗るその背景には、いわずもがな政府“非”公認の蒸溜所があったことを指し示している。実はもともとグレンリベットもそのひとつで、名の知れた密造酒であった。しかし時の権力者キングジョージ4世に気に入られ、蒸溜所は政府公認となる。
ところで、蒸溜所のオーナーであるジョージ・スミスは「イチ抜けた」の状態となり他の密造業者から妬まれたため、常に2丁の拳銃を護身用に持ち歩いていた(そして実際に発砲していた)・・・というのはまた別のお話。

さて、現在のこのボトルの香味はどのようなものだろうか?

ザ・グレンリベット 15年

【評価】
グラスから立ち上る香りにそっと近づく。色とりどりのポピーやスイートピーが群生している。淡い色合いに心が癒される。
口に含めば、長い月日で柔らかくなった枕木を踏みしめながら、野原を進む。ここは高地だろうか。空気が澄んでいる。美しい音楽が流れている。やがて夜になり、星が綺麗だ。
人を静かで穏やかにさせるウィスキー。

【Kawasaki Point】
87point
※この点数の意味は?

【基本データ】
銘柄:The Glenlivet 12yo(グレンリベット 12年熟成)
地域:Highland, ハイランド
樽:Oak, オーク
ボトル:Distillery Bottle, オフィシャルボトル

ジョージ&ジョン・ゴードン・スミス
蒸溜所の初代オーナーとその息子の名だ

グレンリベットおなじみの「1824」のエンブレム(創設年)

15年熟成

色とりどりのポピーやスイートピー

人を静かで穏やかにさせるウィスキー



グレンリベット蒸溜所はだいたいこのあたり。地図で確かめてみて。グレンリベットの意味はゲール語で「スムースな流れの谷」。よくウィスキーでは「グレン~~」とあるが、グレンは「谷」を意味している。





レビュー:フロム・ザ・バレル 滑らかで情熱的・・・

FROM THE BARREL(フロム・ザ・バレル)を飲んだ。86点。
実勢価格が1,000円台の流通力のあるウィスキーを1,000円台ウィスキーシリーズとして紹介しているが、フロム・ザ・バレルもそのひとつ。

このウィスキーはコンセプトがおもしろい。熟成したモルト原酒とグレーン原酒をブレンドしたあと(普通この段階で出荷するが)、さらに樽に入れて熟成させる。これによってひとつのウィスキーとしての香味の調和を図る。この手法はマリッジ(直訳すると“結婚”)と呼ばれている。そして、その樽からほぼ“樽出し”の状態でアルコール度数51%でリリースされる。実際には割り水を使用(加水)しているが、このウィスキーではアルコール度数を一定にする調整程度のようだ(割り水しなければ法的基準をクリアするため樽ごとにわずかに違う度数表記をいちいち変えなければならない)。この“ほぼ樽出しそのまま”が、このフロム・ザ・バレルのコンセプトなのだ。

さて、このボトルの香味やいかに。

ニッカ フロム・ザ・バレル

【評価】
グラスから立ち上る香りは、きわめてスウィーティーでフレッシュな木苺。ほのかに香る古びた本や灰の香り。アルコールが鼻腔を満たすがさわやかな甘みを届ける。
口に含めば、滑らかで情熱的。軽くて鮮やか、だが色味は多くなりすぎない絵のような。
情熱を秘めた大人のウィスキー。

【Kawasaki Point】
86point
※この点数の意味は?

【基本データ】
銘柄:FROM THE BARREL(フロム・ザ・バレル)
地域:Japanese, 日本
樽:Oak, オーク
ボトル:Blended, ブレンデッド

極めてシンプルなラベル。このウィスキーをよく顕している

四角い塊のようなボトル
フランスではコスパとボトルの扱いやすさから
カクテルの割り材としての需要が伸びているようだ

色味は多くなりすぎない絵のような







レビュー:ヘーゼルバーン 12年 手づくりのパイ・・・

HAZELBURN 12yo(ヘーゼルバーン 12年熟成)を飲んだ。83点。
ヘーゼルバーン蒸溜所はイギリスはスコットランド、キャンベルタウンに存在した。かつて竹鶴政孝(ジャパニーズウィスキーの父)が修行した蒸溜所として知られるが、1926年に閉鎖している。
今ではこの「ヘーゼルバーン」ブランドは同じ街にあるスプリングバンク蒸溜所が手がけており、毎年数千本の限定的な生産だ。ちなみに同蒸溜所のメインブランドである「スプリングバンク」はライトピート(すこし煙の香りがする)で、「ヘーゼルバーン」はノンピート(煙の香りがするピートを使用していない)。

さて、このボトルの香味やいかに。

ヘーゼルバーン12年

【評価】
グラスを傾けその香りを辿れば、艶やかな着物、紅、金、優雅な白い線。ハチミツとレモンが絶妙なバランス。透き通っているがとても深い。
口に含めば、ゆっくりと印象を裏切る。手づくりのパイ。カステラ、大き目のアメ。
穏やかな気持ちにさせる素朴さと深み。

【Kawasaki Point】
83point

【基本データ】
銘柄:HAZELBURN 12yo(ヘーゼルバーン 12年熟成)
地域:Campbeltown, キャンベルタウン
樽:oak, オーク
ボトル:Distillery Bottle, オフィシャルボトル

スプリングバンク蒸溜所から

ヘーゼルバーン12年 すっきりとした香りの3回蒸留

紅、金、優雅な白い線

穏やかな気持ちにさせる素朴さと深み





レビュー:アードベッグ オーリヴェルデ 焼きとうもろこしの・・・

Ardbeg  AURIVERDES(アードベッグ オーリヴェルデ)を飲んだ。78点。
2014年のワールドカップイヤーに発売されたボトル。オーリは「黄金」で、ヴェルデが「緑」。W杯開催国のブラジルのナショナルカラーに乗っかったネーミングだ。
企画ボトルが多く、毎回シングル・モルトの新たな可能性を広げ続けるアードベッグだが、このボトルの香味はどうだろうか?

アードベッグ オーリヴェルデ

【評価】
グラスに鼻を近づければ、蒸しパプリカの甘さ、焼きとうもろこしの甘み、本をゆっくり読むスピードで分解していく香り。
口に含んでみる。1人用のくつろげるソファに座って、フルーツ盛りを眺めている。マイルドな葉巻の香りが近くから漂う。
50年代のアメリカンポップスのレコードがかかる。

【Kawasaki Point】
78point
※この点数の意味は?

【基本データ】
銘柄:Ardbeg  AURIVERDES(アードベッグ オーリヴェルデ)
地域:Islay, アイラ島
樽:oak, オーク
ボトル:Distillery Bottle, オフィシャルボトル

渦(うず)模様のロゴ

ボトルにデザインされたアードベッグ

AURIが金色、VERDESが緑でデザインされている

本をゆっくり読むスピードで分解していく香り

マイルドな葉巻の香りが近くから漂う

50年代のアメリカンポップスのレコードがかかる



アードベッグ蒸溜所は「アイラ島」という小さな島に存在する。イギリスのスコットランドの西。
地図を拡大したり縮小したりして確かめてみて。