レビュー:SMWS 春の試飲会 ~12本のレビューを一挙掲載~

スコッチ・モルト・ウィスキー・ソサエティの春の試飲会に行ってきた。(The Scotch Malt Whisky Society Spring Bottles Sampling)
分かりやすく言うと「5,000円で12種類のウィスキーが飲み放題」、という大変お得な会だ。まぁご想像の通り、アルコール度数の高いウィスキーをガバガバ呑めはしないのだけれども。春夏秋冬の季節ごと、全国で年4回開催されている、通称「おとなの飲み放題」だ。(開催情報はこちら

スコッチ・モルト・ウィスキー・ソサエティは、ボトラーズ。いろんな蒸留所から樽を買って、いい感じの時に瓶詰めして販売する。このボトラーズの特徴は、会員しか買うことが出来ないという点だ。(実際には会員に買ってもらったものを譲り受けたりすれば、会員じゃなくても手に入れられるけど)また、このボトルを入れているバーもちらほらある。

SMWS 2013年 春のボトルサンプリング会


今回は2013年春に発表された12種類のボトルのテイスティング・レビューを掲載する。
12位から1位までを一挙公開。
(ウィスキーの名前の冒頭についている数字は、SMWS独自の蒸留所と樽コード)


12位

R 1.4 PORTMORRANT1991 21yo (ポートモーラント1991 21年熟成)

【Kawasaki Point】
53point
【評価】
香りは、ミントキャンディ。古い木の棚。口に含めば、まとまった味わいだが、紹興酒。
ソサエティから出るラムとしてはハッキリ言って期待はずれ。前回のラム(R5.2)は良かったのに・・。


11位

33.128 ARDBEG 2005 7yo (アードベッグ 2005 7年熟成)

【Kawasaki Point】
68yo
【評価】
グラスに鼻を近づければ、炭の香りが強く主張する、青々とした茎の太い草を感じる。
口に含めば、煙が上がってくるが、同時に青臭い。


10位

37.53 CRAGGANMORE 1985 27yo (クラガンモア 1985 27年熟成)

【Kawasaki Point】
68point
【評価】
香りは甘くスパイシー。スパイスの上に柑橘のピール(皮)が乗る。アルコール感は強め。
口に含めば、刺激が小さく弾ける。アルコールに乗ってバーボン樽。肉汁、コンソメ、ブラックペッパー。香りの奥行きを感じる。
早めの時間に一杯飲みたい。



9位

93.54 GLENSCOTIA 2002 10yo (グレンスコシア 2002 10年熟成)

【Kawasaki Point】
71yo
【評価】
漂う香りは、清涼感のある、冬の生きている獣の毛の香り。
グラスを傾け一口含めば、鹿の毛を口に入れたかのよう。トウガラシパウダー。


8位

85.25 GLEN ELGIN 1999 13yo (グレンエルギン 1999 13年熟成)

【Kawasaki Point】
78yo
【評価】
グラスから立ち上る香りは、さわやかなぶどうとパイナップル、マスカットのミックスジュース。
口に含めば、少し煙たいバーベキューのほとりでかじった木の板。


7位

73.54 AULTMORE 1992 20yo (オルトモア 1992 20年熟成)

【Kawasaki Point】
80yo
【評価】
香りは、スイカ。ホースの水。陽炎と、山の上で突如吹く風の清涼感。
口に含めば、ヒレ肉、バターガーリック。木のうまみ。焦がした金網。


6位

29.128 LAPHROAIG 1990 21yo (ラフロイグ 1990 21年熟成)

【Kawasaki Point】
85yo
【評価】
薫るのは、燻製と、正露丸。少しのペッパー。
口に含めば、燻製したシャケトバ。囲炉裏の鉄瓶に垂らした醤油。
山荘にこもって書き物をしたくなるウィスキー。


5位

41.55 DAILUAINE 2004 8yo (ダルユーイン 2004 8年熟成)

【Kawasaki Point】
86yo
【評価】
グラスから薫るのは、花々がトラックの荷台に揺れて、麦畑を進む風景。
口に含めば、ゆっくりと分解されていく麦の味。まとまりと主張を感じる。


4位

64.42 MANNOCHMORE 1990 22yo (マノックモア 1990 22年熟成)

【Kawasaki Point】
86yo
【評価】
香りは、オレンジとグレープフルーツのかご。ガラスの中の煙。
口に含めば、シェリーの緩やかな香り。ぎゅっと詰まってはいない味。オレンジピールの苦味。
主張は強くはないが、何気ない午後に本を読みながら飲みたい。


3位

44.56 CRAIGELLACHIE 1989 23yo (クレイゲラヒ 1989 23年熟成)

【Kawasaki Point】
86yo
【評価】
グラスに鼻を近づければ、うっとりする畳の間の香り。バターの枯れた草。優雅。
ところが口に含むと、一転してスパイシー。花々の香り。うすくゆっくり二つ隣の席のドライフルーツを感じる。
香りと味に裏切りがあり、微笑をもたらすウィスキー。


2位

27.100 SPRINGBANK 2000 12yo (スプリングバンク 2000 12年熟成)

【Kawasaki Point】
87yo
【評価】
香りは、水仙のような華やかさ。鉄。水。
口に含んで舌でころがせば、華やかさは水に溶けて穏やかに香る。水苔。花弁を乾燥させた感じ
後味が鉄なのに、激しさではない。味わいを感じる。


1位

7.81 LONGMORN 1992 20yo (ロングモーン 1992 20年熟成)

【Kawasaki Point】
88yo
【評価】
香りは、缶詰のパイナップルの汁。湿度を感じる(ドライではない)。ホワイトペッパー。
口に含めば、ゆっくり滑らかなのに鋭くうまみ。ただし果実感ではない。
爽やかな夏の朝に、風でレースカーテンが揺れ、ゆっくり時間が流れるかのようなウィスキー。



今回のサンプリング会には、スコットランドはエディンバラから参加した人もいた。SMWSの会員で、日本旅行中にインターネットでサンプリング会があると知り参加したという、筋金入りのウィスキー好きだ。彼のお気に入りはオルトモアとラフロイグだった。ちなみに、グレンスコシアのスコシア(scotia)は、スコットランド(scotland)の古い言い方だ、というプチ情報もくれた。
また、参加者の中には私が11位にしたクラガンモアを1位に挙げる人もいた。また、6位のラフロイグは、「長熟の割りに期待を裏切られた」という声もあった。1位にしたロングモーンはやはり概ね評価が高かったようだ。

とにもかくにも春の宴は、さまざまの幸せそうな声で包まれていた。



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このブログ『ウィスキーをもう一杯』は、初心者から達人まで、ウィスキー好きの人のための情報を提供しています。さまざまなウィスキーのレビューから、関連情報まで、一愛好家の立場から発信しております。おかげさまで開始より多くのアクセスを記録しています。

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お知らせまでに、このブログ自身の情報を下記にまとめております。


この『ウィスキーをもう一杯』というブログはなんですか?コンセプトは?
ウィスキー初心者の方が見て「ほほ~」と興味深く感じ、達人の方が見て「なるほど!」と思えるブログです。詳しくは「このブログの説明」というページをご覧ください。

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書き手はどんな人ですか?なぜ実名ですか?
書き手の私は普通のウィスキー好きです。ウィスキーといえば、「裕福そうな」「素敵なオジサマ」が飲んでいるイメージがありますが、残念ながら私はどちらのイメージにも当てはまりません。また、お酒に強いわけでもなく、たくさん飲むこともありません。家にウィスキーのボトルは2~3本しかありませんし、しかもプレゼントで貰ったものです。このブログに掲載しているウィスキーは、私一人、もしくは友人と連れ立って行ったバーで勧められたものです。頻度は週に1回か2回です。そういった飲み方をなさっている方は多いでしょう。ただ、私はあるときにふと「これを記録してみよう」と思い立ちました。
ブログを始めるにあたり、私の忌憚なき意見が読む方にストレートに伝わるよう、実名としました。

お読みいただいているあなたへ
当ブログをお読みいただきありがとうございます。このブログは、ウィスキーのように「クセがある」でも、「そのクセが素敵だね」と言われるブログでありたいと考えています。また、その違いをわかっていただけるあなたに書き続けたいと思います。


以上、お知らせでございます。


レビュー:ザ・ニッカ・ウィスキー 1999 34年 ~幻のウィスキーその2~

The NIKKA WHISKY 1999 34yo(ザ・ニッカウヰスキー 1999 34年熟成)を飲んだ。98点。
昨日の『レビュー:ザ・ニッカ・ウィスキー 1998 34年 ~幻のウィスキー~』に引き続き、今度は1999年版のウィスキーだ。この幻のウィスキーについては、1998年ものと1999年もの、片方に言及した記事は少数ながらあるものの、両方に言及し、かつテイスティング・コメントを掲載したのは、このブログが日本初(ということは世界初)となる。(なぜこのウィスキーが“幻”かは、1998年版の記事を参照してほしい)

世界初、幻のザ・ニッカ・ウィスキーの
1998(右)と1999(左)の両方のテイスティングコメントを掲載
めぐり合えた仕合せ・・



【評価】
グラスに鼻を近づければ、深く、うっっっとりとする香り。鎖と岩と冬の腐葉土のニュアンス。やや感じる酸味の奥に、小さくてかわいらしい花が咲いている。乾燥させた草花。線香。校庭に引かれた白線の石灰。
グラスを傾け、口に含めば、驚くほど“しっとり”と入ってくる。重く、熱く、ジリジリとした余韻なのに、軽やかな香水が湧き上がり、鼻に抜けていく。うまみが幾重にも厚く重なっている。
いわゆるシェリー樽の、「甘い」とか「渋い」などという単純な言葉では評価できない、不思議な存在感を放つウィスキー。

※尚、1998年版の記事に書いた「どっちのほうが旨いのか?」という質問の答えだが、下記の通りだ。
もしあなたが、香水の華やかさ、フルーティさ、めくるめく香りの世界を堪能したければ1998年ものの方が旨い。そしてもしあなたが、シェリー樽の重厚な、岩と森と光と影、ドライな草花、次々と重なってくる味の世界を堪能したければ、1999年ものの方が旨い。
実は点数は同点なのだ。「ザ・ニッカ・ウィスキー 34年」というタイトルは一緒だが、1998と1999のウィスキーは全く別のコンセプトのウィスキーである。土台となっている長熟のグレーン・ウィスキーの表情の豊かさを味わうという意味では共通点があるのだけれども。(ウィスキー評論家の土屋守氏いわく「グレーンの質の高さに心底驚かされた」そうだ)

【Kawasaki Point】
98point
※この点数の意味は?

【基本データ】
銘柄:The NIKKA WHISKY 1999 34yo(ザ・ニッカウヰスキー 1999 34年熟成)
地域:Japan
樽:Oak, Sherry, オーク、シェリー
ボトル:Distillery Bottle, オフィシャルボトル

1000本限定。99年版は樽の絵入りのラベル。

なぜわざわざ「Real」Vintage と書いてあるのか。
また、社名であるニッカウィスキーに定冠詞「The」をつけて
リリースしたのはどのような想いだったか。

深く、うっっっとりとする香り。
通常のシェリー樽の陶酔感を超えている。

最低でも34年熟成以上なのだ。

裏書がシンプルだった1998年版に比較し、1999年版は充実。
テイスティングコメントの
「円熟感の中ですべてが調和します」というのが
一番言いたかったポイントなのではないだろうか。


レビュー:ザ・ニッカ・ウィスキー 1998 34年 ~幻のウィスキー~

The NIKKA WHISKY 1998 34yo(ザ・ニッカ・ウィスキー 1998 34年熟成)を飲んだ。98点。
これは、間違いなく幻のウィスキーである。ネット上でもそのテイスティング・レビューは見当たらないので、このブログがほとんど初めてのレビューだろう。代わりに見かけるのは「空きボトルは見たことがある」とか、「ウィスキー評論家の土屋守氏が、“もう一度飲みたいと切に願うウィスキーだ”と雑誌に書いてた」など、それも5~6年前の記事がほとんどだ。

このウィスキーは、ニッカが1998年と1999年にそれぞれ1,000本限定でリリースしたボトルだ。当時大変な人気で、しかも2013年現在ではもう14、5年前の話だから、現存するボトルはほぼ「幻」と呼んでよいだろう。余市蒸留所のモルト・ウィスキーと、宮城峡のグレーン・ウィスキーを1:1でブレンドしたものだ。
驚くべきは、34年以上熟成されたグレーン・ウィスキーを使っていることだろう。ややテクニカルな話ではあるが、ニッカの創業者の竹鶴政孝(たけつるまさたか=ジャパニーズ・ウィスキーの父)は、穀物からつくるグレーンウィスキーをつくるのに、“より効率の悪い”「カフェ式」と呼ばれる蒸留器を採用した。なぜ効率の悪い方を選択したのかと言えば、その方がより穀物の風味が強く残るからだ。その決定のおかげでニッカは、上質のグレーン・ウィスキーを手に入れた。竹鶴の職人らしいこだわりをうかがわせる話だ。彼は自分の作った蒸留所のグレーン・ウィスキーが34年熟成して世に出る日を見ずに亡くなった。当然、ウィスキーづくりとはそういう「自分の時間」を超えて取り組むものである。しかし、すごい情熱。

今回は、2回連続で、このザ・ニッカ・ウィスキーの98年と、99年の2本のテイスティング・レビューを掲載する。月並みだが「どっちのほうが旨いのか?」という質問にも後ほど答えよう。


【評価】
グラスに鼻を近づければ、理性を飛び越えて“心地よい”と感じる香り。香水のようなシェリー樽の香り。長い時間をかけて日に焼けた窓の木枠。切りたての上質なハムの香りと、そのナイフに反射する光。深く記憶を呼び覚ますかのよう。「この香りなら、酔っ払ってもいいかも」と思わせる。
口に含めば、やわらかく入ってくると同時に、舌の外側で重みを感じ、鼻に抜けていくどこまでも上品に熟成した木と花の香り。
重みと気品のあるウィスキーである。

【Kawasaki Point】
98point
※この点数の意味は?

【基本データ】
銘柄:The NIKKA WHISKY 1998 34yo(ザ・ニッカ・ウィスキー 1998 34年熟成)
地域:Japan
樽:Oak, Sherry, オーク、シェリー
ボトル:Distillery Bottle, オフィシャルボトル

理性を飛び越えて“心地よい”と感じる香り

鼻に抜けていくどこまでも上品に熟成した木と花の香り

1000本限定なのはもったいぶったのではなく、
それが当時の限界だったのではないだろうか

1998年のボトルの裏書はいたってシンプルだ

男の隠れ家、2006年の3月号「幻の酒が飲める店」特集

ウィスキー編は土屋守が案内人だったのだ

土屋守氏が挙げた4つのウィスキーの中でも、
『これぞ僕が「もう一度飲みたい」と切に願うウィスキー』
という強い表現をしている。
土屋さん、2013年の今でも、実はまだ飲めますよ。

重みと気品のあるウィスキーである。

続編、『レビュー:ザ・ニッカ・ウィスキー 1999 34年 ~幻のウィスキーその2~』も掲載。