レビュー:マルス モルテージ 3 plus 25 夏の果実と、麦の香り

MARS MALTAGE 3 plus 25(マルス モルテージ 3 プラス 25)を飲んだ。87点。

WWA2013(ワールド・ウィスキー・アワード)で「ベスト・ブレンデッドモルト」に選ばれたボトルだ。この「ベスト」は世界の最高賞ということで、WWAのベストはそれなりにすごい。(シングルモルト部門では「アードベッグ・ガリレオ」や、ブレンデッド部門では「響21年」がそれぞれベストに選ばれている)
このウィスキーをつくっているのは「マルス蒸留所」という蒸留所だ。ジャパニーズ・ウィスキーの中でも、サントリーやニッカに比べれば知名度は低い。今回の初受賞で、このボトルは一気に売り切れ、その他のボトルにも注目が集まっている。(ちなみに、当ブログ選出2012の最優秀賞は、同じマルス蒸留所の「駒ヶ岳1985」だ。こっちをエントリーしても面白かったと思う)

「3plus25」というのは、鹿児島で3年寝かしたあと、信州で25年寝かしました、という意味。結局28年熟成。あんまりウィスキーが「お引越し」することはないので、珍しいといえる。今回の受賞で改めて味わってみた・・・さて、その香りと味はいかほどか。

初エントリーで初受賞、おめでとう!



【評価】
グラスに鼻を近づければ、甘くふくよかな香り。うっとりする、木の酸味とスパイシーさが、アルコールに乗る。木造校舎と砂煙。川魚の燻製。
口に含めば、爽やかな夏の果実の甘み。熱く上がってくるアルコールが、ジリジリと麦芽のうまみを分解する。その後に、ノドで感じる甘み。
爽やかで奥深いウィスキー。

【Kawasaki Point】
87point
※この点数の意味は?

【基本データ】
銘柄:MARS MALTAGE 3 plus 25(マルス モルテージ 3 プラス 25)
地域:信州、Shinshu
樽:Oak, オーク
ボトル:Distillery Bottle, オフィシャルボトル





うっとりする、木の酸味とスパイシーさが、アルコールに乗る

爽やかで奥深いウィスキー



レビュー:トーモア1983 28yo SMWS 105.19 賛美歌にスパイスを

Tormore 1983 28yo SMWS 105.19(スコッチ・モルト・ウィスキー・ソサエティのトーモア1983 28年熟成)を飲んだ。86点。
SMWSは世界最大のウィスキー愛好家コミュニティである。スコットランドの首都、エディンバラに本部がある。会員しかその酒を買うことは出来ず、本当にウィスキー愛好家のための集団だ。ボトルも特徴的。華美ではなく、スッキリとそぎ落としたデザインで、蒸留所の名前は書かれておらず、番号でどの蒸留所の何番目のリリースのボトルであるかを示す。このストイックさが(例えばワインなどとは違った)、ウィスキーらしいカッコよさだろう。
そして必ずどのウィスキーにもタイトルがついている。今回のトーモアには、
‘神の御子は今宵しも’ ‘O Come All Ye Faithful’
というタイトルがついている。美しい賛美歌のタイトルだと思われるが、なぜこのウィスキーにこのタイトルなのか、正直、意味は分からない。しかし、これは詩なので意味が分からなくてよい。
さて、その香りと味はいかほどに。

華美ではなく、スッキリとそぎ落としたデザイン

【評価】
香りは刺激的。グレープフルーツを右手にもって、テーブルの上にはコンソメスープがある。スパイシーかつ、旨みのある香り。さらに辿れば、テールスープのスパイシーさだ。
口に含めば、一転してすっきりとした味わい。目が覚める!花々を感じる。濃縮されたうまみ。
確かに、賛美歌のような和声は感じるウィスキー。・・ただ、賛美歌よりもやや刺激的。

【Kawasaki Point】
86point

【基本データ】
銘柄:105.19 Yoichi Tormore 1983 28yo(トーモア1983 28年熟成)
地域:Highland, ハイランド
樽: 1stSherryHogg, 1度目のシェリー・ホグスヘッド
ボトル:Scotch Malt Wisky Society スコッチ・モルト・ウィスキー・ソサエティ

口に含めば、一転してすっきりとした味わい。目が覚める!

トーモアは「大きな丘」という意味。スコットランドのハイランド地域にあるその蒸留所の位置を、地図で確かめてみて。

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レビュー:モートラック2008 ザ・ファースト・ドロップ ~ウィスキー誕生前夜~

MORTLACH The First Drop 2008(モートラック ザ・ファースト・ドロップ 2008)を飲んだ。熟成していないで点数はつけず。
このウィスキーはいわゆる「ニューポット」というやつだ。ニューポットとは、樽に入れて熟成させる前のウィスキー。だから、液体はいつものあの琥珀色ではなく、透明だ。樽で熟成させてはじめてウィスキーと呼べるのだけれども、このニューポットは逆に「ウィスキー誕生前夜」を知ることが出来る通なアイテムといえる。(特にモートラックは「ジョニー・ウォーカー」の原酒として知られる)さて、ウィスキー誕生前夜の香りと味やいかに。




【評価】
香りは、麦の甘みと酸味。温度でいうなら“ぬる目”。麦を感じる部分は穏やかでロマンティックだが、同時に旨みより酸味が強いため、全体の香りのバランスは荒々しい。
恐る恐る口に含めば、強烈な麦の香りの主張。後味は穏やかな味わい。オイリーさ、粋なアルコール、ムンムンとした少し暑い日の麦畑。
ウィスキー好きのための麦の酒。(これが樽で熟成されてウィスキーとなるのだ)

【Kawasaki Point】
-point
※ニューポットは熟成させていないので、点数はつけない。

【基本データ】
銘柄:MORTLACH The First Drop 2008(モートラック ザ・ファースト・ドロップ 2008)
地域:Highland, ハイランド
樽:-
ボトル:Distillery Bottle, オフィシャルボトル

色は無色透明
麦を感じる部分は穏やかでロマンティックだが、
同時に旨みより酸味が強い

モートラック蒸留所の位置を地図で確かめてほしい。モートラックはゲール語で「お椀状のくぼ地」の意味。

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レビュー:アードベッグ ガリレオ 宇宙熟成記念ボトル

アードベッグ ガリレオ(ARDBEG GALILEO)を飲んだ。86点。
アードベッグがNASAのプロジェクトに協力したことがきっかけの、限定ボトル。だから名前が「ガリレオ」。別にこのウィスキーが宇宙で熟成されたわけじゃないが、そういう実験はしていて、「宇宙での熟成」がテーマらしい。そしてその実験にアードベッグの原酒が使われているとのこと。
尚、ウィスキー・マガジン社主宰のWWA(ワールド・ウィスキー・アワード)の2013年の、「ワールド・ベスト・シングルモルトウイスキー」に選ばれている。

名前が「ガリレオ」で、宇宙にウィスキーを送り出した記念ボトル・・・それだけ聞くと、敬遠しがちだが、さすがはラムズデン博士(アードベッグの責任者)。しっかりと仕上げてくる。
一瞬で売り切れたので、ほとんどの酒屋さんで今はもう在庫切れのはずだ。この3月に発表された2013のWWAの受賞ニュースの後でこのボトルが残っているバーがあれば、そこそこ貴重かもしれない。

アイラ島から飛び立っている・・

【評価】
グラスに鼻を近づければ、香りの高音部分のなめらかさと、花の蜜、海の潮。低音部分には、木の素朴さがある。香りだけでうっとりしすぎず、「飲んでみなよ」と誘われる感じ。
グラスを傾け唇から少量、流し込めば、口の中でピートが暴れるが、花の蜜がそれを覆う。花の蜜はピートを覆いはするが、密着はしない。その後味は美しく、ピートと蜜がそれぞれのメロディで、まるで対位法のように奏でられる。
煙の奥のアルコールが美しさをまとったウィスキーである。

【Kawasaki Point】
86point
※この点数の意味は?

【基本データ】
銘柄:アードベッグ ガリレオ(ARDBEG GALILEO)
地域:ISLAY, アイラ島
樽:Oak, Burbon, Marsala Wine,  オーク、バーボン樽、マルサラワイン樽
ボトル:Distillery Bottle, オフィシャルボトル



ワンちゃんも宇宙へ!
このあたりのユーモアが効いている

銀の箔押しのGALILEO(ガリレオ)

ゴールドに輝く色


宇宙に旅立った世界初のウィスキーをつくった蒸留所といえば?もちろん答えはアードベッグ。
そのアードベッグ蒸留所の位置を地図で確認してみて。

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レビュー:ストラスアイラ 12年 初心者も飲みやすいウィスキー

STRATHISLA 12yo(ストラスアイラ 12年熟成)を飲んだ。80点。
ストラスアイラといえば、有名な「シーバスリーガル」に使用されている。シーバスリーガルのキー・モルトだ。「キー・モルト」とは、そのウィスキーを構成する“主要なウィスキー”のこと。野球でいえば4番だし、サッカーでいえばエースストライカー、チェスでいえばキングといったところだ。
このストラスアイラを「初心者の方にもおすすめできるシングル・モルト」という声もある。まるでリンゴのような華やかな香りと味がするからだ。

ストラスアイラはシーバスリーガルのキー・モルトだ。

【評価】
グラスから立ち上る香りは、リンゴの蜜と酸味、アルコール刺激、ハチミツを2~3滴。
グラスを傾け口に少量含めば、樽の木の香りが華やぐ。樽の上に乗せられたリンゴ。滑らかでオイリー。
生チョコが合うウィスキー。

やや加水すると・・・ (まったく初めて飲む方は少し水を足してアルコールの刺激を消すといい)
香りは、さらにリンゴ。かじりたてである。種類はサンフジ。
飲むと、シェリー樽の香り、穏やかに入ってくるが、ぼやっと広がりすぎず、味のコンセプトは絞ってあるのが分かる。

さらに加水すると・・・
香りは、リンゴ飴。スパイス、シナモン。
飲めば、落ち着いた木の香り。その木にはリンゴの蜜が擦り付けてある。

【Kawasaki Point】
80point

【基本データ】
銘柄:STRATHISLA 12yo(ストラスアイラ 12年熟成)
地域:Highland, ハイランド
樽:Oak, Sherry,  オーク、シェリー樽
ボトル:Distillery Bottle, オフィシャルボトル

リンゴの蜜と酸味、アルコール刺激、ハチミツを2~3滴

ストラスアイラ蒸留所は1786操業。かなり古い部類。

ストラスアイラは、「アイラ川の広い谷間」を意味する。よくある「グレン~」のグレンよりもストラスは広い谷という意味らしい。この酒がどこで生まれたか場所をぜひ地図でも確かめてみて。

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レビュー:ダグラスレイン バルブレア17年 香りの素晴らしさは・・

Douglas Laing Old Malt Cask BALBLAIR 17yo (ダグラスレイン社 オールド・モルト・カスク シリーズ バルブレア 17年熟成)を飲んだ。66点。
スコッチ・ウィスキー映画『天使の分け前』にも登場するというので、バルブレアを飲んでみた。ダグラスレイン社というボトラーの17年。(ボトラーズボトルとは何かはこの記事に詳しい

バルブレア17年 ダグラスレイン社

【評価】
グラスに鼻を近づければ、麦の酸味があるのに爽やかな木の落ち着き。若い木の木材。麦の甘みと主張。不思議なまとまり。すっぱすぎない。
口に含めば、アルコールの熱さと木のえぐみ、麦の酸味。スッと引いていくが、それだけで終わる。えぐみが後味。
香りの素晴らしさは特筆に値するウィスキー。

【Kawasaki Point】
66point
※この点数の意味は?

【基本データ】
銘柄:Douglas Laing Old Malt Cask BALBLAIR 17yo (ダグラスレイン社 オールド・モルト・カスク シリーズ バルブレア 17年熟成)
地域:Highlanda, ハイランド
樽:Oak, Sherry,  オーク、シェリー
ボトル:Douglas Laing, ダグラスレイン社

麦の酸味があるのに爽やかな木の落ち着き

シェリー樽の割りに明るい色
香りは特筆に価する


スコットランドでもかなり古い蒸留所のひとつと言われるバルブレア蒸留所の位置を地図で確かめてみて。

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