レビュー:オールドパー 12年 スコッチ博物館みたいな・・・

Old Parr 12yo(オールドパー 12年熟成)を飲んだ。83点。
日本人がはじめて口にしたブレンデッド・ウィスキーかもしれない。

日本での歴史も古いオールド・パー


このオールド・パーは、「語りたくなる酒」として有名だ。ウンチクをちょっと紹介。
  • オールド・パーは「パー爺さん」という意味
  • トーマス・パーという人は152歳まで生きた伝説のスコットランド人
  • 80歳で結婚し子供を授かり、105歳で不倫して教会で懺悔(ざんげ)、122歳で再婚
  • 伝説の生命力にあやかってメーカーがウィスキーに命名
  • キーモルトはクラガンモアである
  • ボトルがちょっと変わった形で、斜めにしても倒れない
  • 岩倉具視が持ち帰って明治天皇に献上した
  • 吉田茂が愛飲。それに憧れ田中角栄も愛飲。
パー爺さんのエピソードが本当かどうか?それは誰も気にしない。「伝説」にツッコむのは無粋なこと。


「伝説」を名前にしたウィスキー


【評価】
グラスから立ち上るのは、燻した煙、麦、夏草、土とハチミツ、白いリネンのテーブルクロスの上の木の蜀台とキャンドル。皿の上のブドウや青リンゴ。近くで暖炉の火。
口に含めば、軽やかなのに深い、ロウを擦り付けた木の香り。リンゴの皮に近い部分。
いろんな香りの要素が整理されて、綺麗にまとまった、まるでスコッチ博物館みたいなウィスキー。
主張というより、厚みや歴史を感じる。生きている、というより、生きてきた、という感じ。


【Kawasaki Point】
83point
※この点数の意味は?

【基本データ】
銘柄:Old Parr 12yo(オールドパー 12年熟成)
地域:Highland, ハイランド など
樽:Oak, オーク
ボトル:Blended, ブレンデッド

トーマス・パー爺さんは1483年生まれ、1635年没。


マクドナルド・グリンリース社

古い瓶の演出

斜めでも倒れないボトル

土とハチミツ、白いリネンのテーブルクロスの上の木の蜀台とキャンドル。

香りの要素が整理された、まるでスコッチ博物館




レビュー:SMWS 夏の試飲会 ~13本のレビューを一挙掲載~

スコッチ・モルト・ウィスキー・ソサエティの夏の試飲会に行ってきた。(The Scotch Malt Whisky Society Summer Bottles Sampling)
この試飲会は、「5,000円で12種類のウィスキー飲み放題」の会だ。春・夏・秋・冬の毎シーズンに各地で開催される。20歳以上のあなたなら、気軽に参加できる。ウィスキーの知識などなくても「飲みたい」という気持ちさえあればいい。残念ながら夏の会はもう終わったが、また秋にあるだろう。
(イベントの開催情報はこちらのページでチェックしてほしい)
参考:春のサンプリング会のレビューはこちら

ちなみに「ソサエティ」とは、世界最大のスコッチ・ウィスキー愛好団体で、本部はスコットランドのエディンバラにある。世界のモルトウィスキーを樽で買い、樽出しのまま、一切ブレンドや加水せずリリースする。



今回は通常の12本に加えて、「ソサエティ日本支部設立20周年記念ボトル」が1本加わっていた。計13本のテイスティングの結果、13位から1位までを一挙公開する。
(ウィスキーの名前の冒頭についている数字は、ソサエティ独自の蒸留所と樽コード)
(点数の意味はこちら


13位
29.133 LAPHROAIG 1993 19yo(ラフロイグ 1993 19年熟成)
【Kawasaki Point】
56point
【評価】
香りは、夏の涼しい日陰の午後、ドライ、塩み、甘くふくよかなラフロイグ。
口に含めば、主張がはっきり、だがぼやける余韻。まとまりきっていない。
日本支部設立20周年記念ボトルのひとつだったが、期待が外れた。


12位
72.26 MILTONDUFF 1983 29yo(ミルトンダフ1983 29年熟成)
【Kawasaki Point】
58point
【評価】
香りは、暑い夏にはうっとおしい。安い甘み、たばこの煙。ウッディ、それだけ。
口に含めば、バニラ、トーストを木の皿で、小気味よく、甘くうっとり華やかになる。


11位
53.189 CAOL ILA 1995 17yo(カリラ 1995 17年熟成)
【Kawasaki Point】
68point
【評価】
香りは、ハチミツとミントがほのかに香る煙。頬ずりしたくなる優しい木の家具。鉄、水道の蛇口。
口に含めば、柔らかく入ってきた後に煙が暴れる。熱い余韻が狂おしい。驚きやバランスはもうひとつ。


10位 
31.25 JURA 1988 24yo(ジュラ 1988 24年熟成)
【Kawasaki Point】
76point
【評価】
香りは、生い茂る草むら、粉っぽい和菓子の砂糖、花。
口に含めば、スッキリ目覚める、華やか、しかし草つゆの爽やかさ。


9位 
1.169 GLENFARCLAS 1984 28yo(グレンファークラス 1984 28年熟成)
【Kawasaki Point】
78point
【評価】
香りは、シナモンの乗ったバニラアイス、メープルシロップがけ。
口に含めばスパイシーで、ジリジリと香り、うまみを伝える。少し味わいの厚みが薄い。


同点6位 
4.176 HIGHLAND PARK 1991 21yo(ハイランドパーク 1991 21年熟成)
【Kawasaki Point】
83point
【評価】
香りは、スッキリしており、ひんやりとした大理石、スイカ、火薬、麦々しさ。
口に含めば、クリアー、透明感、夏の鉄道レール。


同点6位 
G10.3 STRATHCLYDE 1988 24yo(ストラスクレイド 1988 24年熟成)
【Kawasaki Point】
83point
【評価】
※これはグレーンウィスキー。
おだやかでゆったりとしている味わい、通常ブレンデッドの土台となるグレーンウィスキーだが、これなら単体として成り立つ。素晴らしいグレーン。


同点6位 
76.102 MORTLACH 2003 9yo(モートラック 2003 9年熟成)
【Kawasaki Point】
83point
【評価】
香りは、夏の日の水さし、バニラ、ジンジャー、バナナの華やかさ。
口に含めば、甘みと同時に感じる潮味。展開される香味のバリエーションは限定的だが、主張はハッキリとして、しかもまとまっている。これが9年の熟成とは・・。


同点3位 
121.61 ARRAN 2002 10yo(アラン 2002 10年熟成)
【Kawasaki Point】
85point
【評価】
香りは、醤油の酸味、バター、バナナ、空間的な奥行きを感じる。
口に含めば、ゆっくりと展開していく。ザ・シェリーな一杯。


同点3位 
9.70 GLEN GRANT 1995 17yo(グレングラント 1995 17年熟成)
【Kawasaki Point】
85point
【評価】
香りは、まず最初にかなり強めのアルコール感、そのあとに香木。
口に含めば、インパクトの強いアルコールだが、クリーミィ、時間をかけて少しずつ分解されていく・・。不思議な扉をあけていく。煙。そして憧れ。


同点3位 
127.30 PORT CHARLOTTE 2002 10yo(ポートシャーロット 2002 10年熟成)
【Kawasaki Point】
85point
【評価】
香りは、煙の立ち込める数奇屋の茶室、ミントキャンディ、珪藻土。
口に含めば、刺激の奥に甘さ、しかしその後、スーッと消える。意外性のあるウィスキー。


さて、いよいよ今回の1位。なんと2つのボトルが同点。


同点1位
3.203 BOWMORE 1988

3.203 BOWMORE 1988 24yo(ボウモア 1988 24年熟成)
【Kawasaki Point】
88point
【評価】
香りは、華やかでおだやか、ほのかにラベンダーが香る。
口に含めば、プレゼントされたひと束のラベンダー。大きな花束ではなく、ひと束。渡されて、胸元にある。いつまでも嗅いでいられる香り。


同点1位 
39.89 LINKWOOD 1990

39.89 LINKWOOD 1990 22yo(リンクウッド 1990 22年熟成)
【Kawasaki Point】
88point
【評価】
香りは、あまさの奥に隠れたスパイス、山小屋、青空。
口に含めば、熱さも清流もある。複雑な要素を、秀逸なバランスでまとめている。



今回のサンプリング会では、「実力派ぞろい」というのが参加者の共通した意見であった。中には、私が9位にしたグレンファークラスを1位に挙げる人もいた。また、私が3位に挙げたアランの評価は人によってはずっと低かった。ただ、記念ボトルのラフロイグを推す声は聞かれなかった。

17時からの2時間で終わったサンプリング会だが、夏の19時はまだ空が明るく、もう一軒足を運ばずに入られなかった参加者も多かったようだ。まぁ、かくいう私も・・・。



レビュー:カリラ 1989 22年 SMWS 53.170 ジューシーさと大人の味わい

Caol lia 1989 22yo SMWS 53.170(スコッチ・モルト・ウィスキー・ソサエティのカリラ 1989 22年熟成 )を飲んだ。83点。
スコッチ・モルト・ウィスキー・ソサエティは通称「ソサエティ」と呼ばれている。世界最大のウィスキー愛好団体だ。ソサエティのボトルはすべて「樽出しそのまま」だ。(参考:ウィスキーの「シングルカスク」とは何か?

ラベルも質素で、パッと見はぜんぶ同じに見える。蒸留所は番号で示される。余計な先入観なしで愉しんでほしいという意味なのだろうか。

ソサエティのカリラ。53番はカリラを意味する。


【評価】
グラスから立ち上る香りは、知的にすら構えているのに、生き生きとしたカリラの香り、煙のシャープさ、グレープフルーツ。それらも大人の雰囲気が包み込む。
口に含めば、グレープフルーツジュースのうまみ、薄くスライスしたハム、釘、ドライレーズン。
ジューシーさと大人の味わいの同居したウィスキー。

【Kawasaki Point】
83point
※この点数の意味は?

【基本データ】
銘柄:Caol lia 1989 22yo SMWS 53.170(カリラ 1989 22年熟成 )
地域:Islay, アイラ
樽: Refill Hogshead, ホグスヘッド リフィル
ボトル:Scotch Malt Wisky Society スコッチ・モルト・ウィスキー・ソサエティ

53(カリラ)の170番目のリリース。
ソサエティはこのウィスキーを「ハワイトースト」と表現。



ウィスキーはスコットランドのエディンバラはリースに、貯蔵されているようだ。

ボトルのくびれ

生き生きとしたカリラの香り、煙のシャープさ、グレープフルーツ。

ジューシーさと大人の味わいの同居したウィスキー




レビュー:余市1988 25年 シングル・カスク 海辺のキャンプ

余市1988 25年熟成  シングル・カスク(YOICHI 1988 25yo Single Cask)を飲んだ。86点。
シングルカスクなので、必然的に数量限定である。

余市はよくシングルカスクの商品を出す。当然、世界にひと樽しかないため、希少感を演出できるほか、ブレンドしない原酒の出来を「どうだ」と世に問うかのようでもある。
参考:ウィスキーの「シングルカスク」とは何か?

シングル・カスク 余市1988 25年熟成

【評価】
グラスを傾け、そっと鼻を近づければ、くぬぎの木の皮、ざらついたテクスチュア、若い木の蜜を見つけ、顔を近づけると、なんて甘いんだろう、と思う。夜の森の静けさを感じ、焚き木、有機溶剤、湧き水。風が吹いて木の葉が揺れて触れ合う音がする。
口に含めば、波の音が聴こえる。木の丸太に座って、焚き木を見つめる。潮の風が顔に当たる。赤いプラム(すもも)を木の枝にさして火に当て、表面を焦がしている。
夏の日の夜のこじんまりとした海辺のキャンプ。見上げれば綺麗な星々が見えるかのようなロマンティックさ。

【Kawasaki Point】
86point

【基本データ】
銘柄:余市1988 25年熟成  シングル・カスク(YOICHI 1988 25yo Single Cask)
地域:余市、北海道、Yoichi, Hokkaido
樽:Oak, オーク、新樽
ボトル:Distillery Bottle, オフィシャルボトル

樽番号100212
カスクストレングス、樽だし度数の62%
潮の風が顔に当たる。
赤いプラム(すもも)を木の枝にさして火に当て、表面を焦がしている。
見上げれば綺麗な星々が見えるかのようなロマンティックさ。

札幌から西へ、小樽から西へ、余市蒸留所はそこにある。

大きな地図で見る



ウィスキーの「シングルカスク」とは何か?

たまにしか聞くことはないが、「シングルカスク」とはなんだろうか?どういう意味だろう。

シングルカスクの意味

答えは、「ひとつの樽から取り出して、そのまま瓶詰めしたウィスキー」だ。
ひとつの樽=シングル・カスク。

ウィスキーの蒸留所にはたくさんの樽がある。樽ごとに風味が違うので、マスターブレンダーは、通常、複数の樽の原酒を理想的な香味になるようブレンドするのだ。原酒をまぜ合わせて、シングルモルトをつくったり、ブレンデッドウィスキーをつくったりする。
参考記事
シングルモルトと、ブレンデッドウィスキーの違いとは?
ウィスキーのシングル・モルトとは何か?

しかし、シングル・カスクはまったくブレンドしないウィスキーなのだ。

ウィスキーは樽の中で眠る。どんな夢を見るか。

関連する「カスクストレングス」という言葉の意味

「カスクストレングス」という言葉もある。
これは、「樽出しのまんま」という意味である。通常のウィスキーは、水を加えてアルコール度数を調整しているが(40~45度程度)、カスクストレングスのものは樽から出したまんまなので、50度ないし60度クラスのものも珍しくない。
「ちょっとそのまんま味わってみてよ」というものだ。
シングルカスクの場合、このカスクストレングスで世に出てくる場合も多い。


科学的な説明だけでなく・・・

と、ここまではよくある説明だが、やや科学的で味気ないかもしれない。
より情緒的に説明すならば、シングルカスクとは「樽の個性を味わうもの」だといえる。手にしたグラスの中にある液体を見つめるとき、実は、あなたはその「樽の個性」と向き合っているのだ。なぜそういえるのだろうか?また、この「樽の個性」は、どんな風にしてわれわれに届けられているのだろうか?

何万樽もの中から・・・

毎年、ウィスキーの蒸留所ではたくさんのウィスキー原酒が蒸留され、たくさんの樽に詰められる。
新樽もあれば、数十年使用した樽もあるだろう。大きな樽、小さな樽、樽の木材もさまざま、かつてバーボンを詰めていた樽もあれば、シェリー酒を詰めていた樽もあるだろう。それぞれの樽にヒストリーがある。

蒸留したての、まったく透明の、ウィスキーがそれぞれの樽に注がれる。

眠るあいだに、個性が育つ

そして、樽は静かに眠る。その土地で、樽は呼吸をする。1年、2年、10年、20年と時間をかけて、横並びの樽の中のウィスキーは、全く違うものへと変化する。もともと同じウィスキーだったものが、“個性”を発揮しはじめるのだ。

ブレンダーは樽に問いかける

ブレンダーは見極める。
「この樽の、この原酒は、そのままで味わえるだろうか?」
「このひと樽で充分なバランスを持っているだろうか?」
「“今”がその時だろうか?」
そうして、何万樽のなかのたったひと樽が選ばれる。

つまりシングルカスクとは

つまりシングルカスクとは、「選ばれた樽の個性」を味わうものだ。はるか彼方の地でねむる、数万という樽の中から、たったひとつ選ばれ、ボトリングされ、われわれの手の中のグラスへと注がれる。
だから、シングルカスクのウィスキーを飲むときには、その樽の過ごした「時間」や、育った「個性」に思いを馳せるのも愉しみとなる。


こんなことを頭の片隅に少し置いておいてほしい。
今宵もよいウィスキーライフを。



レビュー:バランタイン17年 シグネチャー・ディスティラリー スキャパ

Ballantine's 17yo Signature Distillery SCAPA(バランタイン17年熟成 シグネチャー・ディスティラリー スキャパ)を飲んだ。86点。
バランタインというブレンデッド・ウィスキーを構成する原酒は、数十種類あるといわれる。その中で中心的な役割を果たしているのが「バランタインの魔法の7柱」と呼ばれるシングル・モルトたちだ。その7柱のうちの特に「スキャパ(SCAPA)」を強調してブレンドしたのが、今回のこの限定ボトル。(通称:スキャパ・エディション)
さてはて、その香味やいかに。



【評価】
グラスを傾け、立ち上る香りは、海辺に咲いた可憐な花。潮風。ヨット、オイル、ビーチバレー、桟橋の木。
唇からそっと流し込めば、ガラス窓の付いた船底、太陽の照った海原をゆっくりと進む。
潮の香りを味わいながら、可憐な花に思いを馳せる、そんなウィスキー。

※通常の「バランタイン17年」よりもSCAPAの特徴である爽やかな塩の香りが強調されている。

【Kawasaki Point】
86point
※この点数の意味は?

【基本データ】
銘柄:Ballantine's 17yo Signature Distillery SCAPA(バランタイン17年熟成 シグネチャー・ディスティラリー スキャパ)
地域:Islands, Highland, アイランズ、ハイランド など
樽:Oak, オーク
ボトル:Blended, ブレンデッド

シグネチャー・ディスティラリー・シリーズ

17年熟成

ジョージ・バランタイン&サン社

ラベルには、スキャパ湾から見たスキャパ蒸留所が描かれている。

潮の香りを味わいながら、可憐な花に思いを馳せる

“スキャパはバランタインを構成する象徴的なモルトのひとつです。
バランタインの歴史におけるスキャパの重要性に敬意を表し、
マスターブレンダーは特別にこの蒸留所ブレンドをつくりだしました”